「そ、それで…?うちの会社のサーバーは、直せるんですかい…?」
この状態から復旧する方法は、ただひとつ…
巣食っているデジモン達を、駆除するしかありません。
「駆除…できるんですか?」
やってみなければ分かりませんが…
それなりに戦力はあります。
「それじゃお願いしやっす!」
決めた。
ズルモンとゲレモン達を、駆除しよう。
とはいえ、いきなり何の情報もなしに突入するのは危険だ。
下手を打てば、我々の大切な仲間を失いかねない。
まずは更なる情報収集と分析をして、奴らの弱点を探ることにした。
まずはゲレモンを一匹捕獲して、隔離チェンバーへ閉じ込め、分析をすることにしよう。
ゲレモンはレベル4のヌメモンに似てはいるが、レベル3のデジモンだ。
純粋な戦闘能力ではこちらの勢力が上だろう。
とはいえ…奴らが毒を持っている可能性がある。
正面からいきなりケンカを仕掛けるのは得策ではない。
だが、暴れるレベル3デジモンを、デジモンキャプチャーで捕獲することは難しい。
…やはりマッシュモン、コマンドラモン、フローラモンのうち誰かに捕獲してもらうしかない。
そんな話をしていると、マッシュモンがチャットを飛ばしてきた。
『かみよ すこし ながいたたかいに なっても へいきか』
ん?
まあ、今のところ回線が重くなってるだけで、データを食われているわけではないから…
多少長引いても、確実に駆除できるならいいよ。
『では わたしに まかせてくれ』
どうするつもりだ?
『わたしが ここでふえれば せんりょくがますはずだ』
前みたいに根城にする気か!?
いや考え直せ。仮に君がたくさん増殖してゲレモン達を倒したとして…
その後、増えた個体はどうするんだ?
『また いぜんのように たびにいかせれば いい』
…別の手段も考えようか。
『わかった』
そうして我々は再び、ゲレモン捕獲作戦を考えるのだった。
我々は様々な案を考えた。
いかに安全に、確実に捕らえるか、作戦を練った。
その中で、「試しにフローラモンやコマンドラモンにも作戦を考えさせてみてはどうか」という意見が上がった。
せっかくだし、やらせてみよう。
フローラモンは早々に飽きたようで、コマンドラモンに一任するつもりのようだ。
そしてコマンドラモンが出した案は…
我々が一切予想していなかった作戦だった。
それは『普通にデジモンキャプチャーで捕まえる』というものだった。
今までレベル3デジモンを捕獲できたことはないのだが…
とりあえずものは試しだ。ゲレモンをデジモンキャプチャーで捕獲してみよう。
デジモンキャプチャーのゲートを、ランドンシーフの隔離チェンバー内に設定。
そして我々はさっそく、ゲレモンの近くでゲートを開いた。
すると驚くべきことに、なんとゲレモンは自分からゲートの中に入ってきたのである。
え?え?
どういうことだこれは?
とりあえず、ゲレモンがチェンバーに入ってから、ゲートを閉めた。
全くの予想外だった。
なぜ自分から捕まりにきたのだろうか。
ゲレモンは、チェンバー内をゆっくり這い回っている。
我々はあれこれと捕獲作戦を練っていたのに…
コマンドラモンの言う通りに、デジモンキャプチャーを起動したら、自分からゲートに入ってきた。
一体どういうことなんだ…?
コマンドラモンに思惑を聞いてみた。
コマンドラモンはチャットで返信してきた。
『よわそうだから キャプチャーで つかまえられそうだと おもった』
…そういうことだったのか。
なんかすごい計算をしているのかと思ったぞ。
だが、「レベル3はデジモンキャプチャーで捕まえられない」という固定観念を排して考えることもまた重要だということなのかもしれない。
さて。
何から調べるべきか…
チェンバーの中で、ゲレモンの体から一体のズルモンが分離した。
…デジタマを産まずに幼年期を殖やすとは。
やはり粘菌型デジモンのようだ。
ズルモンは、地面をずるずると這い回っている…。
我々が最初に発見したズルモンとは、見た目が同じなのに、明らかに性質が異なる。
我々が知っているズルモンは、海底の熱水噴出孔付近のデジタマから出現した。
そしてゴロモン、ゴツモン、スターモン、ゴーレモンといった、鉱物を身に纏ったデジモンへと進化していった。
どうやらデジモンは、外見が同じでも、全く異なる性質となることがあるようだ。
これはピチモン・プカモンに幼年期のまま殖える個体群と、成長期まで進化する個体群があるのと同じようなものだろうか…?
それを調べるには…
ゲレモンの遺伝子を調べる必要がある。
このゲレモンの遺伝子を、今まで採取してきたデジモンの遺伝子と比較するのだ。
最も近しい遺伝子を持つものがどれか分かれば、どのような進化を遂げてきた存在かも推理できる。
解析した結果…
粘菌型のズルモンとゲレモンは、意外なことに、マッシュモン系統から派生して進化した種であることが判明した。
なるほど、言われてみれば…
デジタマを産まずに殖える習性。
菌類型(植物型から進化したとはいえ)のマッシュモンと、粘菌型のゲレモン。
共通点はある。
そもそもマッシュモンは、一見するとキノコの子実体に手足と顔がついたような姿をしているが、これはマッシュモンそのものではない。
マッシュモンの正体は「菌糸」である。一個体のように見えているのは、菌糸が束になって運動能力と知性を得たカタマリなのだ。
そう考えると…
パッと見の姿は全然違うが、その「正体」は割と近いのかもしれない。
そしてマッシュモン系統ということは、毒があるのだろうか。
ゲレモンのデータを解析したところ…
やはり毒はあるようだ。
マッシュモンが持つものと同種類の毒を薄めたような感じだ。
厄介だな…
あの粘菌に纏わりつかれたら危険極まりない。
うかつに手が出せないぞ。
すると、ボスマッシュモンがチャットで話しかけてきた。
『かみよ ちょっとおおめに しょくりょうを いただきたい』
腹減ったのか?いいぞ。
私はデータマイニングでキノコをたくさん作った。
マッシュモンはそれらを食べまくった。
するとマッシュモンの足元から、菌糸がぼわっと伸びた。
やがて菌糸から、小さなキノコが生え始め…
そのままミニサイズのマッシュモンとなった。
「マシー!」
ミニマッシュモンは、ボスマッシュモンの足から離れた。
ど…どうする気だ?
『どくみを させる』
…え?
まさかゲレモンをミニマッシュモンに食わせる気か!?
お腹壊したらどうする!
『だから ぶんしんを だした もんだいは ない』
し…しかしだ。
ミニマッシュモンも命じゃないのか?
『そういわれても これは わたしの いちぶだ どうするか わたしが きめては いけないのか』
…ま、まあいいよ。君本体が無事ならいいさ。
我々は恐る恐る、ミニマッシュモンをチェンバー内へ投入した。
ミニマッシュモンは、ズルモンの方に駆け寄ると…
ズルモンに噛み付いた!
暴れるズルモンを、ミニマッシュモンはもぐもぐと食っていく。
そうしてミニマッシュモンは、見事ズルモンを飲み込んでしまった。
「ウマ~」
美味いの!?
『おなじどくなら われわれに きくはずがない われわれももっている どくなのだから』
おお…それもそうか。
凄いなマッシュモン。
チェンバー内では、ズルモンが食われたのを見て怒ったゲレモンが、ミニマッシュモンに襲いかかっていた。
ミニマッシュモンはゲレモンに包まれた。
ミニマッシュモンも負けじとゲレモンを食おうとした。
お、おお…互いに互いを食おうとしている!
だが、サイズ差もあり、やがてミニマッシュモンは溶かされ始めてきた。
このままではミニマッシュモンが食われてしまう…助けないと!
『いいや そのまま みていて いい』
うーん…
そう言われても、ちょっとかわいそうだ。
やがて、ミニマッシュモンはゲレモンを構成する粘菌達に包まれて溶かされてしまった。
ああいうふうに消化吸収するのか…
しかし、今まで毒をもつマッシュモンを食えたデジモンはモリシェルモン以外見たことなかったな。
互いに互いの毒が効かないとなると、フィジカルでの食い合いになるのか。
『かみよ つぎは わたしが いく』
だ…大丈夫なのか?
『わたしは たたかいに じしんはないが あれになら かてるかも しれない』
本当か…?
し、死ぬなよ。
私はマッシュモンと、ついでにコマンドラモンをチェンバーへ投入した。
マッシュモンは、ゲレモンに向かって突撃した。
ゲレモンはマッシュモンを迎撃しようとする。
…そこへ。
コマンドラモンの自動小銃が飛んできて、ゲレモンの柔らかい肉体をバラバラに引き裂いた。
びちゃびちゃと地面に落ちたゲレモンの肉体は、それぞれがズルモンとなって再生した。
マッシュモンは、複雑そうな表情をしている。
…うん。それでいいよコマンドラモン。
そしてマッシュモンは、ズルモン達を捕食した。