ずっと考えていてばかりでは、ゲレモンがどんどん増殖していくだけだ。
私は鉄鋼会社の情シス部門リーダーの合意を得て、例の作戦を開始した。
まずはゴミ箱の中のゴミデータを削除しよう…
削除を実行。
デジタル空間上では、ゴミ箱に向かってクレーンアームのようなものが近付いて来た。
あれでゴミ箱を運び、ゴミデータ焼却炉へ搬送するらしい。
しかし、ゲレモン達はなんと、クレーンアームがゴミ箱を掴むのを妨害した!
クレーンアームは、ゲレモン達の粘菌塊投げの集中砲火を受け、撤退していった。
やがて画面にメッセージが表示された。
「ゴミ箱のファイルがロックされています。完全に削除できません」
え…えええ!?
初手でいきなり出鼻をくじかれた。
作戦の最初の一歩が進めない!
これじゃゲレモンを誘き寄せられないぞ…
データマイニングで生成したキノコを投げようかとも考えたが…
ウジャウジャ巣食っているゲレモンをみんなおびき寄せるのには生産量が足りなさすぎる。
リーダーが苦い顔をしている。
「いきなり頓挫したぞ…ど、どうするんだ…。別の作戦を考えるか?」
いや…まてよ。
ようはゴミ箱のデータよりも美味い餌をばら撒けばいいわけだ。
フローラモン!
花粉をばら撒いてくれ!できるだけデジタル空間の隅々まで行き渡るように!
私の指示を聞いたリーダーは慌てた。
「おい、何言ってるんだ!花粉攻撃をしたらかえって逃げて行ってしまうだろ」
まあ見ていて下さいリーダー。
「どうする気だよ…」
フローラモンは指示を了承し、花粉をばら撒いた。
すると…
ズルモンやゲレモンが、一斉に大挙して押し寄せてきた。
リーダー「んん!?あ、集まってきた!何があったんだ!」
思い出してくださいリーダー。
デジモンは、ただのデータそのものよりも、デジタル生命体由来のデジタル物質を餌として好むんです。
そして花粉とは…
自然界では、ダニや蜂、ハナムグリが好んで餌にする物質なんです。
特に蜂は、花粉を集めて蜂蜜を作ります。
したがって、ゲレモンやズルモン達は、花粉を餌として認識し、誘き寄せられてきたんです。
しかも、花粉は風に乗って遠くまで飛んでいけるようにできています。
だからレベル3デジモンの手では届かないような隙間にいる粘菌デジモン達のところまで、餌付けができたというわけです。
リーダー「な、なるほど…。この役割はフローラモンにしかできないな。コマンドラモンやマッシュモンではこんなに効率よくゲレモン達を誘き寄せられない…!」
そうです。
フローラモンは、戦闘能力では他二体に比べて大きく劣っています。
しかしフローラモンの技…「花粉を撒くこと」は、今この状況下では、他のどんなデジモンの技よりもゲレモン駆除に有効といえます。
リーダー「デジモンの優劣は、単純な戦闘能力の強弱だけでは測れないな。時には弱く進化したデジモンが、強いデジモンを凌ぐ働きを見せる…」
そうして、おびき寄せられたゲレモン達は自らデジタルゲートへ入っていき…
隔離チェンバーに閉じ込め次第、コマンドラモンの射撃でバラバラにし、マッシュモンが捕食した。
いける!このままならいけるぞ!
…その時。
『コラァァァーーッ!キサマら、ワガハイの命令を無視して勝手に何やってる!!』
!?なんだ…
やや電子音声気味のエフェクトがかかった、日本語の音声が聞こえてきた。
声がした方を向くフローラモン。
やがて、声の方からドスン、ドスンと、足音?のようなものが聞こえてきた…。