やがて声の主が、ドッタンバッタンと音を立てながらやってきた。
こ、こいつは…!?
我々の世界のいかなる生物にも似ていない、奇妙な姿のデジモンが出現した。
強いて言えば、その姿にはゲレモンの面影がある。
全身が黄金の輝きを放ち、肌には金属光沢がある。
脚はなく、頭部から直接長い腕が生えている。
顔には、ギョロっとした大きなふたつの目玉がついており、
口は大きく、歯並びの良い大きな歯が生え、舌がベロンと飛び出ている。
粘菌デジモンであるゲレモンとの相違点は、目玉が飛び出しておらず、きちんと眼孔に収納されていること。
肌が金色であること。
長い腕があること。
そして、身体のシルエットは…
螺旋状に巻かれており、まるで…
リーダー「う…ウ●コだあァーーーッ!!腕の生えた金色のウ●コが出たァーーッ!」
リーダーがつい、見たままをオブラートに包まずに言ってしまった。
私のまわりくどい説明よりもはるかに分かりやすい。
すると黄金のデジモンは、我々のデジドローンを睨みつけてきた。
「無礼者!ワガハイはウ●コではない!我が名は偉大なる粘菌の王!スカモン様だーーーッ!」
リーダー「スカ…?由来はScatology(糞便学)か…?なら…。やっぱりウ●コじゃねーか!」
リーダー落ち着いて!
スカモンはこちらのデジドローンと、フローラモンを睨みながらさらに問いかけてきた。
「だいたいキサマは何だ!?なぜここにデジモンがいる!ワガハイ達の邪魔をするな!」
それはこっちの台詞だ!
いや…なんだこいつマジで。
うちのデジモン達は人語を話すような声帯ではないから、チャットで会話をするのだが…
スカモンを名乗るこいつは、明らかに口を動かして発声している。
人間の言葉をしゃべれる声帯が発達しているということだろう。
どこで言葉を身に着けたんだ?
「ええい!ワガハイの質問を無視するな!これ以上ワガハイの子分を誑かすなら、容赦はせんぞ!」
そう言い、スカモンは周囲のゲレモンを一体掴むと、おにぎりを握るようにこね始めた。
こねられたゲレモンは、スカモンの体のように金属光沢をもった、螺旋状の物体へと変わった。
その外見はまるで…
リーダー「やっぱりウ●コだアァァーーー!!」
リーダー落ち着いて!
スカモン「ウ●コではない!くらえ!スライムモールド・ドリルゥーー!」
スカモンはそう叫ぶと、ゲレモンを硬化させて作ったドリルをフローラモンへ投げてきた。
ドリルはぐるぐるとジャイロ回転している。
いかん!あれに当たったら刺し貫かれかねない!
よけろフローラモン!
驚いたフローラモンは、とっさに飛び退こうとしたが…
足が地面から離れない。
いつの間にか、足元にはゲレモンが纏わりついていたのだ。
なんて奴!
我々とお喋りをしている間に、こっそりフローラモンの足を粘菌で固定していたのか!
ふ…フローラモンにドリルがぶつかる!
その時。
デジモンキャプチャーのデジタルゲートの中から、連続した火薬音が鳴り響いてきた。
飛んできた銃弾が、ドリルの側面に当たってカーンと高い音を鳴らし、ドリルの軌道をそらした。
フローラモンから外れたドリルは床に当たり、そのまま回転しながら床を掘り進んでいった。
スカモン「ヌゥ!?なにやつ!?」
ゲートの中からコマンドラモンが駆け出してきて、スカモンに向かって爆弾を投擲した。
爆弾はスカモンの額に当たり、ボカンと爆発した。
スカモン「ギャアァァーーーッ!?熱ウゥーーッ!!」
スカモンが悶絶している間に、ゲートからマッシュモンが飛び出してきて、フローラモンの足についた粘菌デジモンを払い除けた。
ついでにちょっと食べた。
スカモン「ウヌヌ…キサマ、仲間がいたのか…!ワガハイのスライムモールド・ドリルをかわすとは、少しはできるようだな…!」
何なんだお前は!ここで何をやってる!
迷惑だからとっとと去れ!
スカモン「フン!キサマらなんぞにワガハイの崇高なる使命を邪魔されてなるものか!」
崇高なる使命?
なんだそれは!
スカモン「フフン知りたいか!このスカモン様の栄誉ある使命を!それはだな…」
そこまで言ったところで、スカモンの背中に隠れていた小型のネズミ型デジモンが、スカモンの背中を引っ掻いた。
スカモン「イデデデデッ!わ、わかった!言わん、言わんて!!」
スカモンがそう叫ぶと、ネズミ型モンは引っ掻くのを止めた。
あのデジモンは…よくデジタルワールドにいるやつだ。
レベル3の哺乳類型デジモン、チューモンだ。
人間のような直立二足歩行をするため、齧歯類よりもツパイ目や霊長類に近いのではないかと議論されている。
スカモン「フー…というわけだ、ワガハイの使命はキサマら愚か者共には教えられんのだ!残念だったな!スカーッカッカッカ!」
あいつ、高笑いしてやがる…
突如、コマンドラモンが、自身の足元を銃撃した。
な、なんだ!?
…コマンドラモンが銃撃したのは、スカモンが話している間にこっそり足元へにじり寄っていたゲレモンだった。
先ほど投げ飛ばしてきた粘菌ドリルがゲレモンに戻り、地面の穴から這い出てきていたらしい。
スカモン「な!?ワガハイの『有り難いお話作戦』を見破るとは…なかなかデキる奴!」
あぶねー、つい相手のペースに乗せられていた。
サンキュー、コマンドラモン。
この短時間に二度も罠を仕掛けてきたスカモン…
かなり狡猾な奴だ。
だが、読めてきたぞスカモン。貴様の正体が。
『粘菌コンピュータ』だな。
スカモン「ナヌ!?…ふ、ふん!よ、ようやくワガハイがウ●コではないと理解したようだな!」
真性粘菌達は、互いに結合して情報をやりとりすることで、複雑なネットワークを形成し、演算回路として働くことが分かっている。
迷路のスタートとゴールに餌を置いた場合、はじめは迷路内にまばらに散らばるが、やがて最短経路を結ぶような一本の線となって最適化される。
迷路の最短経路を解くコンピュータのように。
それが粘菌コンピュータ…
Slime mold computer(『ス』ライム・モゥルド・『カ』ンピューター)のデジモン。
それがスカモン、貴様の名前の由来だな!
スカモン「お、おおおお!そこまでワガハイのことを理解するとは!敵ながらアッパレだぞ!感動で涙が出そうだ!」
リーダー「え!?Scatologyじゃなかったのか!?てっきりそうだとばかり…」
スカモン「ふふん、キサマ見所があるな!さてはワガハイのことが好きだな?どうだ、ケンカはやめてワガハイの部下にならんか?」
ならんわ!
お前が何をしているか洗いざらい吐くか…
駆除されるか選べ!
スカモン「それはこっちのセリフだあァァーーッ!」
B A T T L E
S T A R T