デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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底意地

あまりにもフィジカルの差が大きすぎる。

これではコマンドラモンの体力が回復したところで、機銃や爆弾は効かないかもしれない。

奴に弱点はないのか…!

 

「なあ…すごくどうでもいいことなんだけどさ…」

カリアゲの研究員が呟いた。

 

どうした?こんな時に。

 

「なんであのスカモン大王、口を動かさずに喋ってるんだ?さっきは人語の発声には口や声帯を動かす必要があるって言ってなかったっけ…」

 

カリアゲ研究員の言葉に、リーダーがため息をついて答える。

「本当にどうでもいいな。腹話術でもやってるんじゃないのか」

 

腹話術…?

…まてよ。

 

さっきスカモン大王は、自分の歯並びのいい歯がボロボロになったと言っていたけど…

どう見てもスカモン大王の歯はキレイなままだよな。

 

リーダーはそれを聞き、眉間にしわを寄せる。

「そ、それが…?」

 

…そうだ!わかった!

スカモン大王は、あのでかい口で喋ってるんじゃない!

文字通り、腹の中から喋ってるんだ。

 

「腹の中から…!?」

リーダーは眉をぴくっとさせた。

 

そうだ!

スカモンはあのデカい体とまだ完全に融合しきってない!

外側のボディをパワードスーツのように着て、中に本体のスカモンがいるんだ!

 

「確かに…そうかもしれないな。だがどうするんだ?」

 

…まあ、そうは言っても。

あの金属光沢で黄金に光る硬化粘菌ボディに、付け入る隙など見当たらない…。

 

『クヒョトカゲエェ!どこへ消えたァァ!!』

スカモン大王は、我々のデジモンキャプチャーのゲートを左手でふさぎながら、きょろきょろとあたりを眺め回している。

 

チビマッシュモン軍団は、再びスカモン大王の体を登ろうとして足元に集まってくる。

 

『このぉ、ウザいぞ!キヒャマら祖先共は時代遅れなのだ!進化したワガヒャイこそが最新最強なのだああ!』

 

そう叫んだスカモン大王は、自分の頭頂部に生えている螺旋状の物体をパカっと外すと、自分の右腕に装着した。

 

すると、スカモン大王の右腕で金色に輝く螺旋状の物体は、ドリルのように高速回転し始めた。

 

『まとめて逝ね!スライムモールド!ドリィイイル!』

ドリルで薙ぎ払われたチビマッシュモン達は、フードプロセッサーにかけられた椎茸のようにバラバラに切り裂かれて散らばった。

 

うぅっむごい…!

チビマッシュモン達は逃げ惑う。

 

『スカーッカッカッカ!クソキノコ共!まずはきひゃまらから撲滅ひてやゆぞォォ!』

 

スカモン大王は高速回転するドリルを、チビマッシュモンの上から叩きつけた。

チビマッシュモンは一瞬でバラバラに吹き飛んだ。

 

なんて威力…!

コマンドラモンでさえ、一発あれを叩き込まれれば即死は免れない。

 

…その時。

我々のもとへ、一通のチャットが飛んできた。

 

コマンドラモンからだ…!

内容は…?

 

『うえから みえるか』

 

…んん?

なんのことだ?

 

上から?何が?

 

…とりあえず私は、デジドローンを飛ばし、戦局を上空から眺めた。

 

すると…

…おお…!

 

スカモン大王が頭頂部からドリルを取り外したときに頭に空いた穴から、中が見えた。

やはりスカモンが乗っている…!

 

私は『みえる』とチャットを打った。

 

 

すると…

『かめんに すべてを たくす』と返信が来た。

 

その直後…

地面に落ちているコマンドラモンのガスマスクから、コツン、と硬い音が鳴った。

 

ん…なんだ?

ガスマスクをよく見ると…

ピンがついたままの、コマンドラモンの爆弾が乗っていた。

 

そうか…!

コマンドラモンは今、光学迷彩で隠れているのか!

 

さっきまでは周囲に粘菌がひしめいていたから、光学迷彩を使ったところで粘菌の触覚で居場所がばれてしまう状況だった。

 

だが、粘菌がすべてスカモン大王の装甲となった今…

光学迷彩で隠れることが可能になったんだ。

 

 

 

やがて、爆弾から離れた位置で、コマンドラモンの姿が現れた。

光学迷彩はエネルギーの消耗が激しい。きっとエネルギーが切れたのだろう。

 

『見つけたぞおおおお!クヒョトカゲ!』

 

チビマッシュモン達をドリルで蹴散らしたスカモン大王は、大喜びでコマンドラモンの方へにじり寄っていく。

スカモン大王は移動するときに両腕を使って地面をナックルウォーキングしている。

 

…つまり。

デジタルゲートは今、スカモン大王の手で塞がれていない。

 

わかったぞ、コマンドラモン。

…私達にも、一緒に戦えというんだな!

 

私はデジモンキャプチャーを使い、コマンドラモンの爆弾を回収した。

 

スカモン大王は、コマンドラモンにドリルを打ち込もうとしている。

『キヒャマは一息には殺ひゃん!じわじわと嬲り殺しにひてやゆゥゥーーー!死(ヒ)ねェェーーーーッ!!』

 

私はデジタルゲートを、スカモン大王の直上へと移動させた。

 

…今だ!

来い、マッシュモン!!

 

私の合図とともに、デジタルゲートから、ピンの抜けた爆弾を持ったマッシュモンが降下してきた。

 

 

『ワガヒャイの歯をめひゃくひゃにひたクヒョトカゲをこの手でブヒ殺ヒェるなど!スカーーーっとするぜェェーーーー!』

 

コマンドラモンに向かってドリルを突きだすスカモン大王。

 

ゲートから降下したマッシュモンは、そんなスカモン大王の頭にぽっかりと空いた穴へ飛び込み…

内部のスカモンの頭を思いっきり踏んづけた。

 

「ふぎゃん!?な、何奴!?」

 

スカモンは両腕を、スカモン大王の内壁へ突っ込んでいる。きっと何か操縦桿みたいなものをこねくり回しているのだろう。

 

マッシュモンは、すかさずスカモンの口の中に爆弾を放り込んだ。

 

「もごぉ!?」

 

そしてマッシュモンは、その場でジャンプし…

スカモンの頭部へヒップドロップを決めた!

 

「ぶぎゅ!」

 

 

…直後、スカモンの口の中で、コマンドラモンの爆弾が爆発した。

 

「ゴッビャアアアアアアァァァァーーーーーーー!!!!」

 

スカモン大王の頭の穴から、マッシュモンがポーンと飛び出してきた。

爆発と同時に、スカモン大王の腕の動きは止まった。

 

 

 

スカモン大王は、仰向けに倒れた。

頭の穴から、スカモンが転がり出て来た。

 

白目を剥き、口をあんぐりと開けている。

口の中からは煙が立ち上っている。

歯は全部吹き飛び、舌も千切れ飛んだようだ。

スカモンはピクリとも動かない。

 

…勝った…のか?

 

 

マッシュモンは爆発の衝撃で気絶している。

よくやったぞマッシュモン!

私はデジモンキャプチャーで、マッシュモンと、生き残りのチビマッシュモンを回収した。

 

 

コマンドラモンは、スカモンに向かって銃撃をしようとしたが…

エネルギーが残っておらず、弾切れのようだ。

 

 

大丈夫だ、コマンドラモン。無理にとどめを刺さなくても。

そいつはデジモンキャプチャーで回収して、隔離チェンバー内で標本にしてやる。

 

私は、デジモンキャプチャーをスカモンへ近づけた。

 

 

 

すると、そこへ。

先程スカモンの背中に乗っていたチューモンが、どこかから素早く走り寄ってきた。

 

な、なんだ…?

 

すると、なんと。

チューモンはスカモンの口の中に手を突っ込み、何かを引きずり出した。

 

それは…脳か何かのように見えた。

 

チューモンは、スカモンの脳を持ち、走り去っていく。

 

コマンドラモンはチューモンを追い掛けようとしたが、体力の限界が来たようであり、がくんと地面に膝をついた。

 

 

チューモンは、トンネル…ネットワーク回線の方へ向かった。

そして、内壁が粘菌でびっしりと埋め尽くされたトンネルに飛び込んだ。

 

やがて、トンネルの内側にびっしりとこびりついていた粘菌達は、チューモンを包んでネットワーク回線の奥へと引っ込んでいった。

 

 

…チューモンには逃げられたが、ともあれ…

我々は、スカモンに勝ったのだ。

 

 

鉄鋼会社のサーバーに巣食っていた粘菌デジモン達は完全に消え去った。

ネットワーク回線の中を圧迫し専有していた粘菌達も、遠くへ引っ込んでいった。

ひとまず、危機は去ったのだ。

 

…我々は、スカモンの死骸および、チェンバー内に誘引したゲレモン達を標本として保管した。

 

巨大なスカモン大王の抜け殻は…

でかすぎてデジタルゲートを通過できなかったので、その場で処分することにした。

 

どうやれば処分できるのかは分からないが…

とりあえず、他の研究者が処分を担当してくれるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我々は、ランドンシーフの居住スペースで、フローラモンの様子を見ていた。

 

フローラモンの脈拍はどんどん弱まっていく。

 

何か治療を施してやりたいが…

今の我々には、デジモンへの医療技術はない。

 

フローラモンは、頭部が花になっているデジモンだ。

我々が見守っている中で…

フローラモンは、頭部の花を散らせた。

 

…そして、フローラモンの頭部は首からごろりと離れ、地面を転がった。

 

…フローラモンの脈拍が、バイタルサインが…

完全に停止した。

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