デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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season2
クラッカー対策の検討


生命の定義とは何か?

条件は四つだ。

 

一つ、遺伝子を持つこと。

二つ、能動的に栄養活動を行える代謝系を持つこと。

三つ、自己増殖できること。

 

四つ…

『魂』を持つこと。

 

この四つの条件を満たすのであれば、その肉体は素粒子から構成される物質である必要はない。

デジタルデータの肉体を持ち、生命の定義の四条件を満たす、情報生命体…

それを人は、デジタルモンスターと呼んだ。

 

 

これまでの社会では、デジタルモンスター達は好奇の目で見られたり、その生態系を映した映像を娯楽として楽しまれている程度だった。

 

マッシュモンを育成できるデジタルペット端末『デジタルモンスター』は、購入者からとても評判がいい。

動画サイトでは、マッシュモンと飼い主のやりとりを映した動画が上げられることもあり、人気を集めている。

 

そういうわけで現在、奇妙なことだが、一般人に『デジモンの中で一番最初に思い付くのはどれ?』と聞くと…

ほぼ全員がマッシュモンの名を挙げるのである。

キモカワ系マスコットキャラクターとして大人気なのだ。

 

 

 

そうしてデジモンは、良くも悪くも画面の向こう側にしかいない、関わろうと思わなければ関わりようのない存在だと思われていた。

 

しかし、ある事件をきっかけとして…

社会はデジモンへの警戒を一気に強めた。

先日鉄鋼会社が狙われた、デジモンを利用した情報窃盗事件だ。

 

だが、ハッキングデジモンを倒したのもまた、デジモン達であった。

我々が育成したデジモン達である。

 

そうしてコンピューターセキュリティとクラッカーの攻防には、デジモンという新たな要素が否応にも関わってくることになるのであった。

 

 

…そんなわけで、ハッキングデジモンを見事撃退した我々の研究所は、デジモンサイバー犯罪への対策技術開発のために、急遽規模拡大されることになったのだ。

 

 

我々の研究所には、何名か新人が来たので、自己紹介をすることにした。

 

そういえば、我々のチームメンバーの名前をまだ読者の皆様には伝えていなかった。

訳あって本名は伏せるが…

以後はニックネームで名乗らせていただこう。

 

 

まず私は、研究員の一人…あだ名は「ケン」。

自慢は体力だ。

エナジードリンクを一切接種せずとも、二日は余裕で徹夜していられる。

そもそもショートスリーパーで、日に3時間くらいしか寝ないのだ。

好きなデジモンはスターモンだ。だってかっこいいじゃん。

 

 

次は研究所のリーダー…あだ名はそのまんま「リーダー」。

人前で喋るのが得意で、度胸が物凄い人だ。駆け引きや交渉も上手く、皆に慕われている。

自分では目的達成のために非情になれるつもりでいるようだが、根の優しさが枷になったところを何度か見たことがある。

好きなデジモンはゴートモンだそうだ。コカトリモンやディアトリモンといった最強クラスの外敵を葬ったとこに感動したらしい。

 

 

そして女性研究員…あだ名は「クルエ」。

カワイイものが大好きらしい。割りと冷酷な発想ができるあたり、実利主義なようだ。

好きなデジモンはプルルモンやトコモン、ゴマモンだそうだ。

フローラモンやコマンドラモンも好きだと言っていた。それ言うのはズルいぞ。みんな好きだからあえて言わなかったのに。あとその二体を挙げるならちゃんとマッシュモンも好きって言え。

 

 

カリアゲの研究員…あだ名は「カリアゲ」。

一度髪型を変えてツーブロックにしたことがあったが、相変わらずカリアゲと呼ばれていた。

好きな食べ物は鶏軟骨のカラアゲだそうだ。ビールを飲みながらかっこむのがたまらんのだとか。

好きなデジモンはコカトリモンと言っていた。美味そうだかららしい。…後で聞き直したら、どうやらそれは一発ギャグのつもりで言ったらしく、本当はボアモンやサラマンダモン等の炎で包まれた体を持つデジモンが好きらしい。

 

痩せた研究員…あだ名は「メガ」。

趣味でイラストを描いているらしく、デジモンのイラストをネットに投稿して万バズしているらしい。

オタク気質な奴で、ひとつのことにこだわると周りが見えなくなることがある。

好きなデジモンはゴートモンだそうだ。リーダーと被ったな。だがお前の趣味はよくわかるぞ。

 

そして新人研究員…あだ名は「シン」。

デジモンに強い興味があって来たらしい。大変いいことだ。

好きなデジモンはグレイモン、パイルドラモン、ホエーモン(完全体)、ジャガモンだそうだ。素直でよろしい。

 

我々の研究所には、ほかにも多数の研究員が所属しているが…

現在デジモンを研究の主軸に据えて、最前線で研究しているのは我々のチームだ。

 

 

研究所では早速、デジモンサイバー犯罪の対策について議論が始まった。

 

リーダーはプロジェクターで、私が書いてる議事録を映しながら、司会をしている。

「さて…まずは。何か案のある奴はいるか?」

 

リーダーがそう言うが…なかなか案が挙がらない。

そりゃまあ、どうすりゃいいかなんていきなり聞かれても分からんよな。最適解をいきなり出せるはずがない。

 

 

さて…

こういう時に有効な、議論を進めるためのテクニックがある。

 

私は挙手して発言した。

「ハッキングデジモンが出現したら、コマンドラモンとマッシュモンをその場へ向かわせて退治させるのはどうでしょうかー?」

 

一同はしばらく、静まり返ったが…

やがてカリアゲが口を開いた。

「な、何言ってんだ!これから敵がどんどん増えるかもしれないし、強くなっていくかもしれないぞ!この二体だけじゃやられちまうぞ!」

 

続いてメガが発言した。

「前の戦いで勝てたのは運が良かったと思う。次同じ条件、同じ面子で戦ったら、相手はもうスカモン大王のコクピットを曝すような真似はしないだろう。勝てないよ」

 

クルエも続いて挙手した。

「そもそも後手にまわるのがビミョーですよね~。こないだの事件も結局情報は盗まれましたし。未然に防ぎたいですよねー、犯人とっちめたいですねー」

 

新人のシンも続いて言った。

「相手はきっともっと強いデジモン出してくるッスよ!戦力強化は必須ッス!」

 

一通り聞いた後、私は発言した。

「なるほど。つまり今必要なのは、こういうことですね」

 

議事録に箇条書きをした。

①セキュリティデジモンの頭数を増やして、パワーアップする必要がある

②相手にセキュリティデジモンの弱点を突かれないように、多様な戦略を揃える必要がある

③そもそもハッキングデジモンの侵入自体を阻止したり検知する仕組みが必要

④敵の動向を探り、手口の変化に警戒する必要がある

 

4つの箇条書きを書き終えた後、私は続けて話した。

「兎にも角にも、まずは今挙がった4つの課題を解決しないことには仕方ないってことですね」

 

「おぉー」

一同はそれっぽい指針が見えてきたことに感心しているようだ。

 

…これが、発言者が少ない会議を活発にさせるテクニック。

「最初にあえて、すぐできるけどダメな案」を出す。

 

人は誰でも変なこと言って批判されて恥をかきたくないのだ。だからアイデアをいきなり出すのに抵抗を持つ者は多い。

 

だが、あえて即効性があるけどダメな案を出すことで、他の参加者は「批判する側」に回れる。

というか、そうしないと最悪の案に決まってしまうという危機感を煽る。

 

そうすることで参加者は、「批判される側」でなく「批判する側」になれるので、ためらいなく発言できるようになるのだ。

 

しかしまあ…君らいい大人だろ。

私にこんな子供騙しみたいなテクを使わせなくても活発に議論してほしいぞ。

 

 

リーダーが腕組みしながら口を開いた。

「よくまとめたなケン。他にも色々考えるべきことはあるだろうが、取っ掛かりはこんなもんでいいだろう。まずはこれら4つの課題に対して『今できること』を挙げていくことで、ロードマップを組み立てていこう」

 

カリアゲがつぶやく。

「今できることかー…。あんま多くなさそうだな」

 

クルエがため息をついた。

「なんか一気に全部満たす近道とかないすかねー」

 

メガがきっぱり言った。

「無いでしょ」

 

千里の道も一歩から。

地道に研究を進めつつ、その時点でできる精一杯の運用を試行錯誤していくしかない。

我々はこの指針を実現するための具体的な施策について議論を始めた。

 

まずはリーダーが口を開いた。

「スカモンの背後にいる者が何者かは分からないが…敵は少ない方が…いや、増えない方がいい。そして戦いはなるべく、戦う前に勝てる方がいい。武力的衝突を最小限に抑えながらハッカーを排除する…それが最も合理的だ」

 

その通りだ。

 

「えぇっと…どういうことだ?」

カリアゲが首を傾げる。

 

「ようはデジクオリアやデジモンキャプチャーの販売規制を真っ先にやるべきってことじゃないですかー?デジモン達にケンカしてもらうよりもー」

クルエが髪をくるくる巻いて弄りながら答えた。

 

リーダーは頷いている。

「そうだ。結局ハッカー共がハッキング用デジモンを育成するには、有償ライセンスで純正品のデジクオリアを使用する必要がある。ならば、その供給元を抑えてしまえばいい」

 

デジクオリアの販売元といえばカンナギ・エンタープライズですよね。日本発の多国籍企業の。

 

「ああ。悪用される危険性がある以上、デジクオリアの販売規制をかけるべきだ。俺はそう思う」

 

私もそう思います。

 

「…そう言われると、ボクもそう思う」

メガも同意見のようだ。

 

「デジモンちゃん達が必要以上に傷付くのはやですもんねー」

クルエも賛同してくれた。

 

「よ…よし!カンナギ・エンタープライズへ交渉しに行こう!」

満場一致のようだ。

うちの研究所には他にもメンバーが多数いるが、そちらでも特に異論は出なかったようだ。

 

それなりにお偉い公務員の方や、スポンサーにも同行してもらい、我々はカンナギ・エンタープライズへ向かった。

season1で好きなエピソードはどのへんでしょうか?

  • 1話~ジャガモン編
  • ベタモン分岐編
  • マッシュモン事件編
  • グレイモン・ブロッサモン編
  • 寒冷地帯編~コカトリモン編
  • 各種閑話休題(考証フェーズ)
  • スカモン戦編
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