融合デジモン(このときはまだ、ジャガモンという名を与えられていなかった)は、スコピオモンを威嚇するように吠えた。
スコピオモンは、融合デジモンへ突進し、ハサミによるパンチを繰り出した。
すると融合デジモンは、外殻である石のひとつを隕石のような勢いでスコピオモンのハサミへ飛ばした。
ハサミは砕け、筋繊維が露出した。
そこへ、外殻の隙間から伸びた根が絡みつき、露出した筋繊維へ食い込んだ。
スコピオモンは、もう片方のハサミでパンチを繰り出す。
融合デジモンも前足でパンチを繰り出し、スコピオモンのハサミと激突した。
ばきりと音が鳴り、スコピオモンのハサミが千切れ飛んだ。
スターモンが執拗に放った、スコピオモンのハサミの付け根へのパンチは、確実にダメージを蓄積させていたのである。
その傷が、ここにきて一気に響いたのであった。
スコピオモンは、尾とハサミを失った。
スコピオモンは、それでも逃げない。
否、逃げられない。
片方のハサミに、深々と根が突き刺さっているからである。
スコピオモンに残された最後の武器…それは、強靭な顎であった。
スコピオモンは、融合デジモンの顎の下を狙って、噛みつきを繰り出す…!
融合デジモンは、勢いよく頭突きを放ち、スコピオモンの顔面へ、額の硬い角を打ち込んだ。
スコピオモンの顔面の甲殻にヒビが入る。
融合デジモンは、何度も何度も、角をスコピオモンの顔面へ打ち付けた。
顔面のヒビはどんどん広がり…ついに砕けた。
そして、最後の頭突き攻撃によって、スコピオモンの頭部は破裂した。
頭部を失ったスコピオモンは、地面に仰向けに転がり、しばらく手足をばたつかせていたが…
やがて動きを止めた。
ドクネモン達は、スコピオモンの死を目の当たりにして、一目散に逃げ出した。
融合デジモンは、それらを追いかけることはなく…
森へと帰っていった。
我々研究チームは、言葉を失った。
デジモン同士が融合して、ひとつのデジモンになる…
こんな現象は、全くの想定外だったからだ。
この融合デジモンのレベルはいくらなのであろうか。
スコピオモンと同じレベル5なのか?あるいはそれより上なのか…?
議論は一晩中交わし続けられた。
ちなみに、この融合デジモンの名称だが。
岩と植物の融合体であることから、私はボンサイモンという名前を提案した。
ドクネモンだのベジーモンだの、よくわからないネーミングを好む我々のチームだ。こういう名なら採用されるだろうか。
…だが、ボンサイモンという案はすこぶる不評であった。
結局、女性研究員が提案したジャガモンという名称が、可愛くていいと評判になり、そのまま名称として採用された。
なぜだ!?なぜジャガモンなのだ!?
ジャガイモ!?いやあの姿に芋の要素はないだろう!
それにジャガモンという名称にしたら、植物側の性質だけを指し、鉱物側の性質が名前に残らないのではないか?
納得がいかない。
絶対にボンサイモンのほうがいい。
だが、正式にジャガモンが採用されてから尚ゴネるほど私も子供ではない。
ここは…納得いかないが、チームの採決を受け入れるとしよう。
…
森に戻った後、ジャガモンは広い草原で寝そべり…そこで光合成をし始めた。
スターモンの頃のように小型昆虫デジモンを護るわけでもなく、ウッドモンの頃のように小型昆虫デジモンを狩るわけでもなく…
ただひたすら、それを見守りながら、じっと動かずに光合成をし続けた。
目の前で、ゴツモンがウッドモンに捕食されようとも…
ウッドモンが、二代目のスターモンに打倒されようとも…
何ら干渉せず、それを見守った。
おそらく、ジャガモンは分かっているのだ。
レベル5(推定)の肉体は、著しく高いカロリー消費量となるため、動き回っていたら今度は自らが第2のスコピオモンになるということを。
だから、基礎代謝量を落として、ひたすら眠り続けるのである…。
彼が次に目覚めるのはいつになるかは分からない。
だが、もしもその時が来るならば…
それは、本当に第2のスコピオモンが生まれたときになるだろう。
さて、このままジャガモンを観察し続け、森のデジモン達の関係がどう移り変わっていくのかを見守るのもいいが…
我々は研究員である。
デジモンについて、より多くの情報を得なければならない。
故に、いったん観察対象を別のデジモンへ移すことにしよう。