デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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オペレーション・テイマーズ

「ヒトの脳から生まれたデジモンがかつて存在した」という話は、くれぐれも他言無用で…と念を押された。

 

仮にこの話がクラッカーにまで知れ渡ってしまうと…

『ヒトの脳へのハッキングをするデジモン』がクラッカーの手で開発されかねないからだ。

 

古の時代に、世界各地で「呪術」と呼ばれ実際に行われてきた技術は、いわば脳という生体コンピュータを、情報生命体の力を借りてハッキングする行為なのだそうだ。

デジクオリアが、そしてデジモンが発見された現在、デジモンを使った脳へのハッキング…「呪術」がより凶悪な形で行われるようになりかねない。

 

そうなったら…本当に打つ手がなくなる。

クラッカーや独裁国家が、デジモンでヒトの脳へハッキングを仕掛けてくるようになったら、戦いすらできない。

 

現在、それらの研究データは、カンナギ・エンタープライズのクローズドネットワークの中だけで管理されており、外部から参照されることはない。

 

しかし、もしもカンナギ・エンタープライズがクラッカーを冷遇したり規制するようになったら、クラッカーは純正品デジクオリアのライセンスを管理するカンナギへデジモンによるサイバー攻撃を仕掛けるかもしれない。

 

そうして研究データが盗み出されたら、『脳へのハッキング』を試みるようになる可能性がある。

…クラッカーを冷遇できない理由は、自分達が攻撃されないようにするためでもあるのだそうだ。

あっちもあっちで苦労してるんだな。

 

 

 

 

…我々は研究所へ戻ってきた。

 

①セキュリティデジモンの頭数を増やして、パワーアップする必要がある

②相手にセキュリティデジモンの弱点を突かれないように、多様な戦略を揃える必要がある

③そもそもハッキングデジモンの侵入自体を阻止したり検知する仕組みが必要

④敵の動向を探り、手口の変化に警戒する必要がある

 

リーダーは、この4項目をプロジェクターに映している。

「我々は、ひとまずこの4つの指針を目指していくものとする。今できることを積み重ねていくしかないだろう。…まずは何から始めようか」

 

メガが挙手した。

「はじめにやるべきことは…!スカモン大王を食べて大繁殖したマッシュモン達をどうにかすることだ!!」

 

そう。

先日の戦いで大繁殖したマッシュモンは今、ランドンシーフの中にいるのだが…

餌キノコの備蓄を猛烈な勢いで消費しているのである。

数が数ゆえ仕方ない。

このままではコマンドラモンやピョコモン達にあげる餌も底をついてしまう。

 

メガが面倒を見ているようだが…

「真っ先にコレなんとかしようよ!!よそに引き取ってもらうか、スパコンをもう2~3台増強して餌を増やすか!!」

 

引き取ってもらうか…?でも、どこに。

 

クルエはSNSでデジモンについて検索しながら答えた。

「マッシュモンは今世間で大人気ですからねー、引く手数多だと思いますよー。デジタルモンスターの飼育端末ほしいって人今でもたくさんいますからねー」

また抽選販売するか?

それも悪くない手ではある。

 

リーダーは、スクリーンの字を見ながらなにか考え事をしている。

 

「③の…ハッキングデジモンの侵入検知…。これをやるなら、具体的にどんな手段がある?既存のセキュリティソフトじゃ検知できないんだろう」

 

それを聞いたメガは答える。

「だから先にマッシュモンをどうにかーーーー!」

 

デジモンに見張らせて目視で検知すればいいのでは?

 

「え?」

メガがこっちを向いた。

 

今大勢いるマッシュモン達を、優先的にハッキングデジモンから保護したい施設・組織のサーバーへ派遣して、見張ってもらうのはどうでしょうか。

 

メガは手をポンと鳴らす。

「なーるほどー、それなら2つの問題がいっぺんに解決するネ」

スポンサーさーん!

『私をお呼びかな』

今いるマッシュモンを、警備員兼デジタルペットとして派遣するサービスを始めようと思うんですが、いかがでしょうか。

『素晴らしいいいい!イィィンノベェエエエイションだよケン君!客にはアテがある、こちらから声をかけてみようじゃないか!』

よろしくお願いします。

『では、このサービスに名前を付けたまえ!』

な、名前?

デジモン侵入検知サービス、とかでしょうか。

『駄目だ駄目だ!インパクトが弱ぁい!もっとこう、ドカンと来るやつを考えてくれたまえ!』

そう言われても…何がいいかな。

新人のシン君、なんかアイデアはある?

「うーん…サービス…『デジネズミトリ』とかどうでしょう」

デジネズミトリ…

まあ無難な感じでいいね。

カリアゲはなんかある?

「マッシュモン…見張り…!…『見張りまッシュモン』!なんてのはどーお?」

ダジャレかよ!

『素晴らしいいいいい!カリアゲ君、このアイデアに君のネーミング!鬼に金棒だよ!これでいこう!』

いいんですか!?

 

…そんなわけで、マッシュモン達は、サイバー攻撃から優先的に保護したい組織…

金融・保険業、官公庁、医療などの分野の組織へ派遣されていった(勿論有料サブスクリプションだ)。

寂しくならないように、2体のペアで1セットとした。

デジモンはただのソフトウェアでなく意思をもつ生物なので、コミュニケーションをとってあげてほしいと頼んだ。

 

…派遣先組織の情シスには、専門の『デジモンテイマー部』という部署が設立され、1~2人程度の世話係が配備されたそうだ。

 

メガは心配そうにしている。

「これで大丈夫かな…。マッシュモンちゃんと働けるかな…。ハッキングデジモンに食われたり、逃げ出したりしないかな…」

 

まああり得るだろうな。

「うぅ、やっぱガバガバだよなぁ~…」

ガバガバだな。

だけど、今取れる最善策ではある。

検知サービスの発展も、今後視野に入れていかないとな。

「あとこれ、サブスクけっこう割高だよなぁ…」

餌代がどうもかかって仕方ない。

もっと効率よく、栄養価の高い餌を生成できるようにする必要があるな。

 

「…でも、こうしていざ動いてみると、新しい課題がいろいろ見つかってくるね。最初はいまいちビジョンがぼやっとしてて五里霧中だったけど、だんだんやるべき事が具体化されてく」

 

クラッカーとの競争だからね。

石橋を叩いて渡ってたらあっという間に引き離されて追い抜かれる。

 

失敗するのも覚悟で、いろいろアグレッシブに試していくしかないさ。

 

 

 

 

リーダーは、スクリーンに例の四指針を映した。

①セキュリティデジモンの頭数を増やして、パワーアップする必要がある

②相手にセキュリティデジモンの弱点を突かれないように、多様な戦略を揃える必要がある

③そもそもハッキングデジモンの侵入自体を阻止したり検知する仕組みが必要

④敵の動向を探り、手口の変化に警戒する必要がある

 

「③はひとまず、今できることはやった。サービスの改善は必要だろうが、クラッカーに対して先手は打てたとみていいだろう」

通報があったらどうするんですか?

「…難しいところだな。コマンドラモンやマッシュモンをけしかけて駆除させられればいいが…戦力が心許ない」

そうなんですよね。

うちのデジモン達、火力不足なんですよ全体的に。

 

カリアゲがきょとんとしている。

「そうなのか?こないだのスカモン大王戦ではちゃんと敵を倒せてたぞ。コマンドラモンの火力はすげーぜ!」

それは、コマンドラモンが日頃からちょっとずつ爆弾や弾薬を作って備蓄してるからなんだ。

それらが尽きたら攻め手がないんだ。

マッシュモンの毒も、ゲレモンには効かないし…。

「格闘戦とかできないのか?」

コマンドラモンは、基礎代謝量を抑えつつ爆弾で瞬間火力を出すタイプだから、インファイトの格闘戦は苦手なんだよ。

「マジか…こないだはよく勝てたな…」

まあ、爆弾を無駄遣いせず、相手の口の中にぶちこめたおかげで、有効打を打てたからかな。

 

はっきり言って、こないだの戦いでスカモン大王を倒せたのは、弱点を付けたことと、相手が舐めプしたからだ。

次はもう今の戦力じゃ間違いなく勝てない。

「…」

クルエは四指針を眺めている。

「④って具体的に何すればいいんですかねー?」

今みたいに、戦力の分析をして、次の手を考えることを続けていくことですよ。

「なるほどー。じゃ、あとは①と②…戦力の強化と多彩化ですかー。どうやります?あっちみたいに半人工デジモンを作っていきます?」

 

クルエの問いかけに対してリーダーは答える。

「やっていくしかないだろうな…。みんな気が進まないようだが…」

 

カリアゲは苦い顔をしている。

「まあ正直…クラッカーの真似事はやりたくねえよな…やだなー…。それに時間かかりそうだよな。まともに戦わせられるようになるのはいつになるやら…」

 

「あの!」

新人のシンが挙手した。

「コマンドラモンの武器って、どうやって作ったんです?」

銃はコロモンから進化したときに生えてきたよ。

弾薬は日頃からちょっとずつ作って蓄えてる。

「じゃあ、銃って一度無くしたらもうそれっきりなんですか?」

…どうなんだ?コマンドラモン。

チャットで聞いてみた。

『ぶひんの よびは つくれる』

また作れるらしい。

「じゃあ、コマンドラモンにたくさん銃や爆弾を作って貰えば、マッシュモン達も同等の火力出せるんじゃないですか?」

…!

そう言われると確かに…!

手っ取り早く戦線強化できそうな気もしてくる。

 

「はー…コマンドラモンってスッゲー優秀なデジモンっすねー。武器工場役もできるなんて。クラッカーでもこんな凄い戦力持ってないッスよきっと」

そうだと祈りたい。

「でも、どうやってこんな凄いデジモン作ったんスか?設計した人頭良すぎですよ」

いや、設計したわけじゃないよ。

デジタルワールドで一番賢いディノヒューモンのデジタマを頂戴してきて、産まれたコロモンを訓練したらこうなった。

「…フローラモン?っていうんですか?ピョコモンの前世でしたっけ。戦闘記録見たら、弱そうに見えてけっこう活躍してましたよね。こっちはどうやって?」

フローラモンも特に「こういう風なデジモンを作りたい」って考えはなかったよ。

愛情を込めて育てたらこうなった。

「…あの…。…もしかして…」

…。

 

 

「…望み通りのデジモンをわざわざ作ろうとしなくても、拾ってきたデジタマを愛情込めて育てれば…、いい戦力に育つんじゃないですか?」

 

…確かに。

まさに今、そうなってる。

 

リーダーはそれを聞いて、はっとした顔をしている。

「…そうだ。そう考えると…、クラッカーは今、逆に不利なんじゃないか?望み通りのデジモンを作ることに固執するあまり、不確定要素を排除しようとして、逆にチャンスを手放している…のでは?」

 

冷静に考えると…

こっちにアドバンテージは十分ありますね。

この方向性…ワンチャンありますよ!リーダー!

「よし!①と②の案が出たな。コマンドラモンに武器の備蓄を増やしてもらいつつ…!デジタルワールドから、デジタマを集め、愛情をこめて、鍛え、育てる!これでいこう!どうだ?」

なるほど…これなら幾分か気が乗ります。

デジタルワールドの生態系への影響は気になりますが、まあ仕方ないでしょう。

 

「よっし!クラッカーの真似事なんてやめだやめ!こっちはこっちの得意分野がある!愛情という最大の武器がな!」

そう言うカリアゲに対して、クルエは指笛を鳴らしてヒューっと囃し立てた。

 

「善は急げだ!作戦名…『次世代戦力育成(テイマーズ)』!開始!」

 

 

 

 

 

…餌たくさん作れるようにならないと。

ね?スポンサーさん。

 

『ハッハッハ!スパコンがいくつあっても足りないねえ!予算の確保が大変だあぁ!ハーッハッハッハ!』

season1で好きなエピソードはどのへんでしょうか?

  • 1話~ジャガモン編
  • ベタモン分岐編
  • マッシュモン事件編
  • グレイモン・ブロッサモン編
  • 寒冷地帯編~コカトリモン編
  • 各種閑話休題(考証フェーズ)
  • スカモン戦編
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