デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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多様な進化とオクタモンのその後

とにかく高いDP(戦闘力と基礎代謝量の高さを示す指標値)のデジモンを揃えまくり、グレイモンやジャガモンやスコピオモンを従えて、パワーでクラッカーデジモンを鎮圧すれば万事解決…

…というわけにはいかないのだ。

 

最も気をつけなくてはならないのは「飼育崩壊」。

我々がデジモンの餌を生成できるペースには限りがある。

そのため、大食いのデジモンを増やしまくったら即座に餌が底をつくだろう。

そうしたら飢えたデジモン同士が共食いを始めて、こちらの手持ちデジモン達全員が全滅することは想像に難くない。

 

カリアゲがスポンサーさんに「生きるか死ぬかの瀬戸際なんだぞ!スパコンもう10個20個増やせばいいじゃんか!」と言っていたが…

『ハッハッハ!子供心を忘れないのはいいことだよ!ハッハッハ!』

…と、冷や汗混じりの表情であしらわれていた。

 

予算を無限に引っ張ってこれるなら良かったのだが…

残念ながら、不景気な昨今では大人の事情というものがあり、無制限にバカスカ予算を出してくれる猫型ロボット的な救世主の出現は望めないようだ。

 

そういうわけで、当面は…

高いDPのデジモンをひたすらかき集める方針ではなく、成長期や、低DPの成熟期を主戦力とした編成を強いられることになるだろう。

…懐事情が厳しいのは、クラッカー側も同じはずだ。

 

 

 

さて。

これまでのデジモン観察によって、我々は通常進化、ジョグレス進化以外に、新たな3つの進化の形を発見した。

「パッチ進化」

「デジクロス」

「レベルダウン進化」

というものだ。

 

簡単に説明すると…

パッチ進化とは、コロモンがコマンドラモンに進化したときのように、「外部からデータ取り込んで進化する」というものだ。

 

コロモンはコマンドラモンに進化したとき、銃や爆弾、光学迷彩など、明らかにそれまでの爬虫類系統とは異なる形質を獲得した。自然な進化とは言い難いのだ。

あの時コロモンは、飛行型戦闘訓練ボットとコントローラーを食べることで進化したわけだが…

冷静に考えると、あんな栄養にならなそうなものを、餌として食べたわけがないのだ。

 

すなわちコロモンは、戦闘訓練ボットのデータを吸収して己の遺伝子へ組み込むことで、兵装のデータを獲得したのだ。

この進化を我々は、「パッチ進化」と命名した。

 

パッチ進化の発見によって、これまで未解明だった『軟体型デジモン(サンゴモン)が、どうやって植物の形質を獲得して植物型デジモンへ進化したのか』や『植物型デジモンが、どうやって菌類型デジモン(マッシュモン)へ進化したのか』といった疑問を説明できるようになった。

 

サンゴモンが植物のデータを取り込んでパッチ進化したのが植物型デジモン。

植物型デジモンが菌類のデータを取り込んでパッチ進化したのがマッシュモンということだ。

 

パッチ進化は、様々なデジモンのルーツを説明可能となるだろう。

 

 

ジョグレス進化とは、ジャガモンがやったような「2体以上のデジモンが完全に融合し、元に戻れなくなる進化」を指す。

 

当初は何がどうなればデジモン同士の合体ができるのかわけがわからなかったが…

どうやら複数のデジモンが、同次にパッチ進化をして、互いのデータを互いに吸収し合うことで一体化するという仕組みらしい。

ようはジョグレス進化は、パッチ進化の発展型なのだ。

 

 

 

デジクロスとは、エクスブイモンとスティングモンがやったような、「分離して元通りの個体に戻れる」タイプの一時的な合体のことだ。

 

当初我々は、パイルドラモンもジョグレス進化のひとつとして考えていたが…

合体したらそのままのジャガモンと、自在に分離・変形できるパイルドラモンは、明らかに異なる合体プロセスに基づいているのだ。

 

そういうわけで、一時的な合体を「デジクロス」と呼称し、ジョグレス進化と区別することにした。

 

デジクロスは、凄まじくエネルギーの消耗が激しいようで、短時間しか合体していられない。さらに分離後には疲労困憊の腹ペコ状態となる。

 

無理もない話だ。

宇宙から無限にエネルギーが供給されて無限に戦闘継続できる…というわけにはいかない。

成熟期2体の体から無理矢理レベル5デジモン相当のエネルギー出力を捻出しているのだから、無理があるといえば無理があるのだ。

 

だが、「一時的な戦闘力強化」という仕組みは、この上なく合理的だ。

喉から手が出るほど欲しいが…いかなる仕組みで実現しているのかは未解明だ。

 

 

 

最後の「レベルダウン進化」は…

ホエーモンやゲレモンがやったような、進化だ。

 

進化、といっても…

デジモン固有の、一個体の成長に伴う遺伝子変化のことではない。

 

次世代の個体を産むことによる、遺伝子変化…。我々の世界の生物の「進化」に近い意味合いの方の「進化」だ。

 

 

 

…さて、レベルダウン進化といえばホエーモン。

そのホエーモンがかつて戦った相手の、タコ型デジモン、オクタモンを、その後しばらく観察してみた。

 

タコ型デジモン、オクタモンは、淡水にこそ適応できたが…

海のハンターとして暴れまわっていたオクタモンはそこそこ高いDPを持つ。

川の低カロリーな餌では、空腹が満たされないようだ。

オクタモンは、陸上への進出を試みたが…

どうやら陸上では呼吸ができず、その軟体ボディを支えることもできないらしい。

 

落胆するオクタモン。

海には絶対戻りたくないようだ。

 

どうするのだろうか…

シーラモンのように子供を残すのか?

 

川の中で頭を抱えたオクタモンは…

突然絶叫した。

 

凄まじい声だった。

海のデジモンに声帯などないとばかり思っていたのだが…

空気を震わすような大絶叫を発した。

 

そしてオクタモンの肉体は、光り輝き…異様な姿へ変貌した。

 

な、なんだ、これは…?

タコのデジモンというより、所謂タコ型宇宙人のようなデジモンへと進化した。

 

大きな頭部は、まるで人間の脳のようにたくさんの皺が刻まれている。

人のような両腕を持ち、右手には光線銃のような武器を持っている。

たくさんあった筋肉質なタコ足は、ほっそりとした形状になり、細い胴体を支えている。

 

インベーダーのような姿のデジモン…ベーダモンは、ゆっくりと川から陸上した。

とても強そうには見えないが…

レベル5デジモンのようだ。

 

スコピオモン、ホエーモンに続き、独力でレベル5への到達に成功した3体目のデジモンとなった。

しかし、レベル5の割に、DPはかなり低い。

元のオクタモンより一回り低いDPだ。

 

どういうことだろうか…

レベル5になれば必ず強くなるというわけではないのだろうか?

 

ともかく、スペック上は史上最弱のレベル5デジモンであるベーダモンが…

これからどのように生きるか、見ものである。

 

 

このへんで切ろうとしたが…

…ええい、気になる!気になるぞ!

 

やはりベーダモンをもう少し見てみよう。

 

ベーダモンは、ニョロニョロした足で陸上を移動している。

そのスピードはお世辞にも速いとは言い難い。

やはり…タコの姿のデジモンが、いきなり陸上に適応しようとするのは無理があったのではないだろうか。

 

そこへ…

さっそく外敵がやってきた。

 

レベル4の羽虫型デジモン、フライモンである。

こいつは素早く空中を飛び回り、尻尾の猛毒の針を飛ばして獲物を狩る恐るべきハンターである。

 

両者のDPを比較すると…

フライモンの方が上のようだ。

 

フライモンは、弱そうなベーダモンを見て、即座に襲いかかった。

 

細い胴体には針を飛ばしても当たらないとみたのか…

直接噛みつきにきたようだ。

 

フライモンを見つけたベーダモンは…

光線銃を向けて、引き金を引いた。

光線銃から光の輪がいくつも広がり、フライモンを包み込む。

 

すると…

フライモンは突如、襲いかかるのをやめて、地面に降り立った。

 

ん?どうしたんだ?

 

しばらく観察すると…

フライモンは前足で、自分の尻尾から毒針を引き抜いた。

 

そして…

その毒針で、己の喉を刺し貫いたのである。

 

なんだ!?

フライモンが自殺した…!?

 

ベーダモンは、フライモンの死骸へにじり寄ると…

傷口へ口を当てて、体液を啜った。

 

何がおきたんだ、今。

フライモンはなぜ自殺した!?

 

わけがわからないが…

言えることはただ一つ。

 

フライモンよりDPがはるかに劣っていたベーダモンが、フライモンを傷一つ負わず瞬殺したということだ。

 

…このデジモン、危険な匂いがする。

 

 

ベーダモンは、フライモンの体液を吸ったが…

硬い殻に覆われた肉はまだ残っている。

 

どうやらベーダモンは力が弱く、フライモンの殻をむいて肉を露出させることができないらしい。

 

するとベーダモンは、周囲をきょろきょろと見回した。

やがてベーダモンは、あるデジモンを見つけた。

鋭い爪と牙を持った、大きな耳の哺乳類型レベル3デジモン…ガジモンだ。

 

ベーダモンは、ガジモンの方へ声を発した。

何事かと思って振り向いたガジモン。

…目の前には大きなフライモンの死骸がある。

ガジモンはにったりと笑い、フライモンの死骸へ近寄った。

 

するとベーダモンは、ガジモンに光線銃を浴びせた。

光の輪がガジモンを包み込む。

 

光線銃で光の輪を浴びせ続けられているガジモンは…

一心不乱にフライモンを解体した。

鋭い爪と牙で、殻を剥いて、肉を露出させ…

フライモンの肉を爪でバラバラに解体した。

 

そして、フライモンの肉を一口も食わずに、森の奥へ去っていった。

 

ガジモンが去った後、ベーダモンはフライモンの肉を食べ始めた。

 

…胃が小さめらしい。

大半を残して、そのまま去っていった。

 

どうやらベーダモンは…

光線銃から発する光の輪でデジモンを包んでいる間、そのデジモンを操ることができるようだ。

その一芸にのみ特化し、己の肉体の戦闘力を捨て去ったベーダモン。

 

こんな進化があるのか…

いよいよもってデジタルモンスターは、全くわけのわからない方向へと進化を始めた。

スコピオモンとはまた別の意味で、恐ろしいレベル5デジモンといえるだろう。

season1で好きなエピソードはどのへんでしょうか?

  • 1話~ジャガモン編
  • ベタモン分岐編
  • マッシュモン事件編
  • グレイモン・ブロッサモン編
  • 寒冷地帯編~コカトリモン編
  • 各種閑話休題(考証フェーズ)
  • スカモン戦編
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