デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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オバケに似たデジモンを探せ!

研究所の中が何やら騒がしい。

私はメガに、何があったのか聞いた。

 

「カンナギエンタープライズの説ではさ、昔の人がオバケだと思ってたのはモクモンだった…と考えてるらしいって、前に聞いたじゃん?」

 

そうでしたね。

 

「自在にシルエットを変えるケムリの肉体を、頭部の鬼火が照らすから、いろんな姿の怪物に見えたのでは…って予想から、モクモンの姿を考えたらしいんだけど。所謂一般的な『白い布のオバケ』の姿のアーキタイプとはかけ離れてるなと」

 

まあ確かに。

 

「それで、カンナギエンタープライズが、『白い布のオバケによく似たデジモンがいたのでは』と予想して、こんなデザインのデジモンの存在を予想したんだ」

 

どれどれ?

カンナギエンタープライズから送られてきた画像を見てみると、そこには…

 

…白いボロ布を纏い、目と口が布の穴から露出している、所謂オバケ的なデジモンの姿が描かれていた。

なんというか…そのまんまだな。

 

「名前は仮称バケモンっていうらしいよ」

 

名前もそのまんまだな!

しかし…こんなデジモンが存在しうるのか?

どうやって浮遊してるんだこれ?

 

そうツッコむと、リーダーがやってきた。

 

「バケモンの浮遊については…オポッサモンの風船同様に、我々の世界の物理法則に加えて、デジタルワールド特有の未知のエネルギーを利用しているのではないかと考えられてる」

 

未知のエネルギーですか…。

まあオポッサモンのふざけた飛び方を見た後だと、なんでもできそうに見えてきますね。

 

「そうだ。デジタルワールドは、一見すると飛行が明らかに不可能そうな姿のデジモン達が平然と飛行している。エクスブイモンやツカイモンを見てみろ。あんな小さな翼をばたつかせるだけで空を飛べるのはおかしいだろう」

 

それは確かに…。

『空を飛ぶための不思議なエネルギー』がデジタルワールドにはあるんでしょうか。

 

「このバケモンの姿の予想図はな、先日ケンがオポッサモンを発見し、『謎の飛行エネルギー』の存在を見つけてくれたおかげで成り立つようになったんだ」

 

まあ、それはそうか。

ボロ布を纏ったデジモンがフワフワ浮いてるなんて、今までの常識じゃ考えられませんでしたもんね。

 

スターモンのように、エネルギーを噴射して一時的に飛ぶならともかく、常時浮き続けてるとなると、話も違ってきそうですし。

 

「ボロ布の中身がどうなっているかは不明だ。どの系統から進化したデジモンだろうな?」

 

うーん…

植物でも、昆虫でも、哺乳類でも、爬虫類でも、鳥類でもなさそうだ…。

飛べるスターモンと同系統だったり…?

 

「我々が観察を開始するより前に陸上にいたとすると、植物型か昆虫型か…?」

 

バケモンの分類の同定は難しそうだ。

「ん?どうした?」

そこへ、カリアゲが混ざってきた。

 

メガがかくかくしかじかを説明した。

 

「へー、バケモンっていうのか…」

 

そうだ。

仮にコレがいたとして、何の系統から進化したんだろうな?って議論だ。

どう思う?

 

カリアゲはしばらく絵を見つめてから答えた。

「ってかこいつ、ポヨモンじゃね?」

 

「え?」

我々一同は思わず声を上げた。

 

バケモンの姿の予想図を、ポヨモンと見比べると…

そっくりだったのだ。

 

ポヨモン。

ズルモンと並んで、最も原始的な遺伝子を持つ「始祖のデジモン」と考えられている。

水中をふわふわと泳いで漂っており、その形質はクラゲを彷彿とさせる。

 

メガは、うーんと悩んでからカリアゲの言葉に返事をした。

「いや、ポヨモンはクラゲのデジモンだよ。陸上での目撃翌例はない」

 

「えークラゲかこいつ?クラゲに目と口はねーだろww」

「それはそうだけど…言及するの?今更そこに?野暮くない?」

「あーそういうもんか?」

 

いや。

野暮じゃない。

よく考えると…おかしい!

刺胞動物門のクラゲに、こんなくりっとした眼球はないし、こんな位置に口もない。

 

ポヨモンは今までクラゲの枠だと考えてたけど…

冷静に考えると、ぜんぜんクラゲじゃない!!

 

「お、おう…」

 

リーダーは、腕を組みながら頷いている。

 

「ポヨモンは現在、いちばんはじめに誕生したデジモンと考えられている。デジタルワールドに多種多様なデジタル生命体が発生した中で、はじめに出現した『多細胞生物型のデジタル生命体』…それが、『幼年期のまま殖えるタイプのポヨモン』だとな」

 

最初のデジモンにいきなり口や目があるというのも不思議な話ですね。

 

「厳密には『ポヨモンの祖先となる何か』かもしれないな。目や口のないアメーバ状のデジモンだったかもしれない。だからズルモンとポヨモンのどちらが先に発生したのか、未だに断定できていない」

 

なるほど…。

『始祖のデジモン』であるポヨモンが、数百年や数千年前に既に存在しており…

『狐憑き』によってヒトの視界というデジタル空間に住み着き、フワフワ泳いでいたのとすると。

 

その姿はまさしく、『空を漂う白い布』そのものになりますね。

辻綱が合う。

 

うーん、しかし。

まあ仮にそうだったとして…

じゃあ、ヒトの視界というデジタル空間は、ポヨモンが住めるように水で満たされていたのか?

 

そう言うと、メガは首を傾げる。

「まあ、ヒトの視界にデジクオリアをつっこむ手段がないからわからないけど…。海やプール、風呂の中にでもいない限りは、陸上じゃない?」

 

なんとも言えないな…。

 

「要点は『ヒトの心の中が水で満たされてるかどうか』というより、『ポヨモンが陸上で生きてられるか』じゃないか?」

 

うーん、無理では?

デジタルワールドの沖や砂浜では、陸に打ち上げられて窒息死してるポヨモンの死骸が度々見つかってるぞ。

 

それを聞いたリーダーが提案してきた。

「…実験してみたらどうだ?幼年期のまま殖える個体群のポヨモンのデジタマをひとつ持ってきて、ビオトープで孵化してみればいい」

 

どうなりますかね…。

実験してみましょう。

 

我々は、デジモンキャプチャーを使い、デジタルワールドの海からポヨモンのデジタマを採取した。

そしてビオトープの土の上へ置いて、様子を観察した。

 

…しばらくすると…

デジタマにヒビが入った。

 

中から、ポヨモンの姿が現れ…

…ふわふわと浮いた。

 

一同は唖然とした。

水中でしか呼吸できないデジモンのデジタマでも、陸上で孵化させれば陸上に適応するようだ。

 

そして…

浮いている!ポヨモンが!ふわふわ浮いている!

どういう原理なんだ…?

 

カリアゲがそれを見て笑顔で言った。

「見ろ!あれがバケモンの正体だ!空中をふわふわ漂うクラゲ…オバケだ!」

 

うーん。確かに…

それっぽい。

 

この実験結果を、カンナギエンタープライズへ伝えたら…

神木さんはとても喜んでいたようだ。

バケモンという現在見つかっていない種を仮定しても、イマイチ仮説の根拠にはならないが…

現生種ポヨモンが幽霊の正体だと言えるなら、根拠としてかなり尤もらしくなる。

 

…しかし、ポヨモンは徐々に弱っていった。

キノコを与えても、口が小さくて食べれないし、嚙みちぎれないためだ。

 

そこで我々は、ポヨモンをキノコ栽培室へ入れてみた。

 

キノコ栽培室では、デジタルワールドから採取した原木に、毒のない多種多様なキノコを植え付けて、データマイニングで生成したデータを栄養として与えて栽培している。

 

ポヨモンは、ふわふわ浮遊すると…

「データ」そのものを、ぱくっと食べた。

 

おお、そうか。

ポヨモンは原始的な種だから、デジタル生命体よりもデータそのものを餌として好むんだな。

所謂、独立栄養生物型デジモンというやつだ。

 

しばらく経つと…

ポヨモンはデジタマを大量に産んだ。

 

たくさんのデジタマから、ポヨモンが一斉に孵化した。

 

…やばい!

これやばいぞ!!

ほっといたら殖えまくる!

 

ど…どうします?

 

「…」

 

一同は、しばらく沈黙した。

みんな、何か言いたいことがありそうな感じがする。

私にもある。

だが…それを発言してもいいものか。

 

私がそう悩んでいると、カリアゲが最初に口を開いた。

 

「…デジタルワールドに帰せばいいんじゃないか?」

 

…うん、そうしよう。

それがいい。

 

私はカリアゲの発言に賛同し…

喉まで出かかったアイデアを、そのまま飲み込んだ。

 

我々はデジタルワールドの川のあたりへゲートを開き、コマンドラモンやマッシュモンの協力のもとで、ポヨモン達を放逐した。

 

ポヨモン達は、フワフワと漂い、土の上の細かいゴミデータを食べている。

 

…やがて、オタマモンやウパモンなどの野生デジモンがやってきて…

ポヨモンを食べた。

一日と経たずに、すべてのポヨモン達が食い尽くされたようだ。

 

…なるほど、これが、ポヨモンが今陸にいない理由か。

よく分かった。

 

あのポヨモンにはちょっと可哀想なことをしたが…

まあ、できる限りの範疇で、命を尊重したつもりではある。

そう自分に言い聞かせて納得した。

 

実験の後、私はリーダーと二人きりで話をした。

 

リーダー。

実は私、あのポヨモン達をどうするか考えたとき…

ひとつ、アイデアを思い浮かんだんです。

 

「ああ。…おそらく俺も、お前と同じ解決策を思い浮かんだ」

 

どう思いますか?

 

「…植物型デジモンのピョコモンや、自身がキノコであるマッシュモン、農園育ちで野菜から必須栄養素を接種できるコマンドラモンなら、今の餌が…キノコである程度栄養を賄えている。だが…肉食デジモンを飼育するなら、キノコだけを餌にすることはできない」

 

そうですね。

…動物性タンパク質が必要となるでしょう。

 

「…いずれそれをやらねばらならない時が来るかも知れない。だが、弊害もあるかもしれない」

 

弊害…

性格への影響ですか。

 

「ああ。蛇を飼ったことはあるか?」

 

ないですが…

 

「蛇は冷凍マウスだけを与えているうちは比較的おとなしい。だが、活き餌ばかり与えると…飼い主の手に噛み付くくらい凶暴化することもあるそうだ」

 

…なるほど。

 

「…対クラッカー用の戦力として、肉食デジモンを飼育することを本気で考えるならば、それに適した餌の供給方法を考えねばならないだろう」

 

…理解してくれますか。

 

「ああ。俺達人間が、今までずっとやってきたことだ。罪悪感を他人に押し付けながらな」

 

…我々がその役目を負うときが来るかもしれませんね。

 

「ああ」

 

…デジモンにちょっと親近感を持っている今、あまり気は進みませんがね。

 

「そうだな…」

season1で好きなエピソードはどのへんでしょうか?

  • 1話~ジャガモン編
  • ベタモン分岐編
  • マッシュモン事件編
  • グレイモン・ブロッサモン編
  • 寒冷地帯編~コカトリモン編
  • 各種閑話休題(考証フェーズ)
  • スカモン戦編
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