デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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新たな勢力とデジクロス

デジクロスでレベル5となったディノビーモンと、成長期のコマンドラモンとの戦力差は圧倒的だ。

加えてコマンドラモンは脚を怪我しており、光学迷彩もたった今解除されてしまったばかりである。

まともにぶつかり合えば、万に一つも助かる見込みはない。

 

我々は、デジモンキャプチャーで救出を試みた。

マシンアーム付きデジドローンを出現させられるアクセスポイントは、コマンドラモンから20mの距離にある。

 

デジタルゲートを開き、デジドローンを出し、コマンドラモンのところへ向かわせたが…

正直、間に合うとは思えない。

 

コマンドラモンは、背後のパルモンへ、先に逃げるように促した。

 

ディノビーモンは、脚に力を入れて前に屈む。

コマンドラモンとの距離を詰めに来る気だ…!

 

そこへ、何者かが割って入った。

 

背中に大剣を背負った、人型爬虫類デジモン…

農園の主、ディノヒューモンだ。

 

ディノヒューモンは、ディノビーモンとモスモンを制止した。

 

…字面が非常にややこしいが…

ディノ『ビー』モンは、エクスブイモンとスティングモンがデジクロスした蜂型デジモン。

ディノ『ヒュー』モンは、人そっくりなシルエットをした爬虫類型成熟期デジモンだ。

『ビー』と『ヒュー』の部分でうまく読み分けて欲しい。

 

ディノヒューモンは、コマンドラモンへ近寄ると…

そっと手を伸ばした。

その手は優しくコマンドラモンの額に触れた。

 

…どうしたのだろうか?

ディノヒューモンから見れば、相手は群れの仲間のデジタマを奪った憎き盗人であるはずだ。

一体なぜ…?

 

作戦の指揮を務めるメガは、何も言えずにディスプレイを見つめている。

パニックで頭が真っ白になっているようだ。

 

誰だってそうなるだろう。

私が同じ立場でもそうなる。

 

 

 

その時。

ディノヒューモンの少し後ろから、何かが力強く殴打される音がした。

驚いて背後を振り向くディノヒューモン。

 

 

なんと、ディノビーモンとモスモンが…

背後から、謎の類人猿型デジモン達に、武器で後頭部を殴りつけられていたのである。

 

 

モスモンをブーメラン状の武器で殴打したのは、大きな仮面を被った身軽そうな猿型デジモン。

ディノビーモンを骨棍棒で殴打したのは、金色の毛皮を持つ筋肉質な猿型デジモンだ。

 

モスモンとディノビーモンは昏倒した。

ディノビーモンはデジクロスで得た力をスピードに全振りしているため、防御力は並の成熟期デジモン程度であるらしい。

 

メガはそのデジモン達を見て驚いた。

「奴らは…蛮族!何故ここに!?」

 

ば…蛮族!?

蛮族って何ですか!?

 

リーダーが私に教えてくれた。

「ジュレイモンやスターモンがいる森から遠く離れた、別の森林や密林に住んでいるデジモンだ」

 

未探索の地域に住んでるデジモンか…!

 

「ディノヒューモン農園は木材を得るために、度々森林へ行って樹木を伐採しているんだが…どうやらそこで敵対したらしい。サラマンダモンとフロッグモンが死んだのも奴らとの交戦のせいだ」

 

それが何故今ここに…!?

 

「なぜかは分からないが…、蛮族は度々農園の作物を狙って攻めに来ることがあった。もしかしたら、農園の長の命を狙う機会をずっと狙っていたのかもしれない」

 

な…なんてことだ。

変な恨みは買うもんじゃないですね。

 

「あの仮面を着けているヤツはセピックモン。金色のヤツはハヌモンと、我々は呼んでいる。…そして、あれが…ゴリモンだ」

 

リーダーが指さした画面では…

右腕が砲身のような形状のゴリラ型デジモン…ゴリモンが、ディノヒューモンに襲いかかっていた。

 

セピックモンは、小柄なモスモンに馬乗りになって、頭部へブーメランを何度も打ち付けている。

 

その様子を眺めるリーダー。

「モスモンは戦闘力が強大だがDPが低いデジモンだ。つまり肉体が頑丈じゃないということだ。そういうデジモンは、自分のペースで戦えているうちは強いが…ああやって不意打ちをされると、とても脆い」

 

なんか我々、DPが低いのに強いデジモンを探していましたが…

ああいう弱点があるんですね…。

 

「そうだな…」

 

 

ハヌモンは、骨棍棒でディノビーモンの後頭部を滅多打ちにしている。

打撃を受けたディノビーモンは頭部から出血し、殴打される度に血が飛び散っている。

 

ハヌモンに馬乗りになられているディノビーモンは、劣勢を覆そうとして、起き上がろうとしている。

ディノビーモンはスピード特化の形態だが、その超スピードを生み出す筋肉は勿論かなりのパワーがある。

 

しかし、そこへさらなる声が近づいてきた。

「キー!キキー!」

 

…2体のずんぐりむっくりした…頭から手足が生えたような一頭身体形の…類人猿…?型デジモンが出現し、ディノビーモンの手足を地面へ押さえつけたのである。

 

「ヤツはジャングルモジャモンだ。あいつら蛮族が住む密林では最も個体数が多い成熟期デジモンだ」

 

ジャングルモジャモンは、暴れるディノビーモンの手足を掴んでいる。

ディノビーモンの血飛沫が、ジャングルモジャモンの茶色の毛皮に浴びせられる。

 

ディノヒューモンは、大きな剣でゴリモンと戦っているが…

ゴリモンは右腕の硬い砲身で剣を弾きながら、ディノヒューモンへパンチや砲撃を確実に当てている。

明らかに劣勢なディノヒューモンは、だんだん弱っていく。

 

蛮族の成熟期が5体もこの場に集まっている…!

混戦状態だ。

 

その状況を見たコマンドラモンは…

手榴弾を取り出した。

 

そしてコマンドラモンは、その手榴弾を…

 

 

 

…ジャングルモジャモンとハヌモンにボコられている…

ディノビーモンの側頭部へと投げつけた。

 

手榴弾が爆発する。

爆風と破片がディノビーモンの頭部へダメージを与えた。

 

成長期の攻撃といえど、この至近距離で回避不可の状況で頭部にくらったらディノビーモンといえどただでは済まないだろう。

 

そしてコマンドラモンは、パルモンに合図をした。

パルモンは、ツタを伸ばしてコマンドラモンに絡ませ、我々が繰り出したデジモンキャプチャーに掴まって、一緒にデジタルゲートへ飛び込んだ。

これにてデジタマ採取任務は無事完了である。

 

研究所の皆は、コマンドラモンが無事にミッションを達成して帰還したことを喜んでいる。

 

よくやった…

よくやったよコマンドラモン。

状況を的確に判断し、最善を尽くして帰還したことは称賛に値する。

 

し…しかしだ!

情けをかけてくれた相手に対して…それはどうなんだコマンドラモン…!?

ちょっと外道が過ぎるぞ!?

もし君がフィクションの物語の主人公だったら、間違いなく視聴者から反感を買っているに違いない…!

 

だが、この世界はフィクションじゃないし、我々も主人公ではない。ここは現実だし、我々はそこに生きるちっぽけな生き物だ。

 

善人が都合よく報われるような見えざる神の手など有りはしない。利を棄てて仁を選ぶ者ほど損をする世界であることは、歴史が嫌というほど証明しているのだ。

 

…まあ、もし蛮族を攻撃したところで、ジャングルモジャモンあたりがコマンドラモンに狙いを定めるだけだろうから…

変にディノヒューモン一派に加担したところで、状況は好転どころか悪化するだけだ。

その選択をしなかったのは、合理的だし『正しい』判断ではあるのだろう。

…でも…なんかこう…もにょもにょする…!

 

 

コマンドラモンが無事に帰還したが…

少しでもデジクロスに関するデータは計測しておきたい。

 

我々はデジドローンを一機出して、ディノビーモンのデータを計測しながら、戦いを見守った。

 

戦いは農園組が圧倒的に不利だ。

モスモンは夥しい出血をしており、もう戦闘不能に陥っている。

このまま殴打され続ければ頭蓋が割れて死ぬだろう。

 

…ディノヒューモンは、ゴリモンの顎を殴りつけた。

ディノヒューモンの腕についた刃が、ゴリモンの頬を裂いた。

怒ったゴリモンが放った強烈なアッパーカットが、ディノヒューモンの顎を捉える。

ディノヒューモンは地面を転がった。立ち上がろうとしてもふらついている。脳震盪を起こしたようだ。

ゴリモンは右腕の砲身からエネルギー弾を放った。腹部に直撃を食らったディノヒューモンは、腹部を押さえながら悲鳴を上げ、吐血した。

 

セピックモンは、モスモンの首へ思い切りブーメランを突き立てた。

モスモンの首はぐしゃりと捻じ曲がった。

 

ディノビーモンは…

地面に組み敷かれ、ハヌモンに背中に馬乗りになられて、頭部を殴打され続けている。そのせいか、意識が朦朧として態勢を立て直せずにいるようだ。

ディノビーモンの頭部は血まみれになっていく。

 

だが、仲間たちが破壊されていく様を見たディノビーモンは…

地の底まで響くような雄たけびを上げた。

 

そして装甲を組み替え…パイルドラモンへと変形した。

 

ハヌモンは構わずに、パイルドラモンの頭部を殴打し続けるが…

先程までと違い、一切ダメージが入っている様子が見えない。

 

パイルドラモンは、そのまま身を起こし…

手足を押さえつけているジャングルモジャモンや、馬乗りになっているハヌモンを意に介さぬと言わんばかりに、立ち上がった。

 

両腕を勢いよく振るうパイルドラモン。

ジャングルモジャモン2体が遠心力で吹き飛んだ。

 

ハヌモンは一度飛びのいた後、骨棍棒をパイルドラモンの頭部へ向かって振るう。

パイルドラモンはそれを左腕で防御した。

 

そしてハヌモンの腹部へ、右腕で鋭いパンチを放つ。

しかしハヌモンのスピードはかなりのものだ。パイルドラモンの拳をひらりと躱す。

レベル5デジモンと接近戦を行い、その攻撃を回避できるあたり、ハヌモンはかなり強力なデジモンといえるだろう。

 

再度、ハヌモンは骨棍棒で殴り掛かった。

パイルドラモンはそれを頭突きで迎撃し、骨棍棒を逆に粉砕し…

左腕でハヌモンの腕を掴んだ。

 

驚くハヌモン。飛びのこうとするが、腕を掴まれていて離れられない。

パイルドラモンは、右腕についたパイルバンカーを突き出し、ハヌモンの腹部を全力で殴りつけた。

パイルバンカーの針がハヌモンの脊椎を貫通し、右拳ごと背中から勢いよく突き出した。

パイルドラモンは、右腕をおもいっきり振り、遠心力でハヌモンを放り投げて吹き飛ばした。

太い樹木にぶつかったハヌモン。

樹木がべきりとへし折れるのと同時に、ハヌモンの胴体も真っ二つに引き裂かれた。

 

 

続いてパイルドラモンは、ディノヒューモンをケンカキックでボコっているゴリモンの方へ詰め寄る。

ゴリモンは、パイルドラモンへ左腕でパンチを繰り出す。

その剛腕は、ディノヒューモンの顎を殴りつけてノックアウトさせてしまう強靭なパワーをもつ。

 

パイルドラモンは、同じくパンチで対抗した。

両者の拳がぶつかり合う。

 

ゴリモンの自慢の拳は粉々に粉砕され、左腕が根元からちぎれ飛んだ。

恐怖したゴリモンは、右腕の砲身からエネルギー弾を放った。

パイルドラモンの胸部へ命中するが、一切ダメージはないようだ。

 

パイルドラモンはゴリモンの顎へ勢いよくアッパーカットを放った。

ゴリモンの頭部は、水風船が割れるかのように跡形もなく破裂した。

 

 

モスモンの死骸を貪り食っているセピックモンの方へ、パイルドラモンが詰め寄る。

セピックモンはブーメランを投げて攻撃する。

パイルドラモンはそれを手で打ち払った。

 

仲間の無残な死骸に気づいたセピックモンは、悲鳴を上げ、背を向けて逃走した。

だが、パイルドラモンは腰についた2丁の機関銃を構えると、必死に逃げるセピックモンの背へ向かって乱射した。

流れ弾が当たった樹木は一撃でへし折れ、空中できりもみ回転している。

そんな威力の銃弾の集中砲火を浴びせられたセピックモンは、みるみるうちに原型が無くなり、肉塊となって散らばった。

 

 

ジャングルモジャモン達はというと…

凄まじい勢いで地面を駆けて逃げていた。

 

ナックルウォーキングに適した長い腕は、地面を走行するときにも役立つらしい。

 

ジャングルモジャモン達の逃げ足は速い。

あっという間に50mほどの距離をつけていた。

 

パイルドラモンのスピードでは追い付けないだろう。

 

…パイルドラモンは、再び装甲を組み替えて、ディノビーモンとなった。

 

そしてディノビーモンは、脚に力を入れると…

その姿はあまりの超スピードで消え、土埃が線となってジャングルモジャモンを追跡した。

 

ものの1秒ほどで60mの距離を詰め、ジャングルモジャモンへ追い付いたディノビーモン。

その走行スピードは、時速換算でおおよそ200km/hである。

 

 

2体のジャングルモジャモンは驚いた表情をしたが…

ディノビーモンが目にも止まらぬスピードで腕を振るうと、二体のジャングルモジャモンの顔は、驚いた表情のまま真っ二つに両断された。

 

全ての襲撃者を殲滅したディノビーモンは…

デジクロスを解除し、エクスブイモンとスティングモンに戻った。

 

二体はその場で腰を下ろし…

ぜぇぜぇと荒い呼吸をして寝っ転がった。

 

デジクロスには弱点がある。

成熟期デジモン2体の肉体に貯蔵されているエネルギーから、無理矢理レベル5相当の出力を引き出しているのだから、合体が継続するのは短時間なのだ。

しかも凄まじくエネルギーを消耗する。激しい戦闘を続けた今の二体は、餓死寸前までエネルギーを消耗し、ひどく疲労困憊していることだろう。

 

…集落が騒がしい。

チビマッシュモンの生き残りはもう撤退済みのはずだ。

おそらく今の襲撃者達以外にも、手薄の農園を狙って攻めている蛮族デジモンがいるのだろう。

 

頭部が血まみれになっているエクスブイモンはふらふらと立ち上がり、集落の方へ向かおうとする。

 

…スティングモンはそんなエクスブイモンの腕を掴み、引き倒した。

そして、ジャングルモジャモンの死骸から肝臓を引きずり出し、エクスブイモンへ与えた。

 

ジャングルモジャモンの死骸へ齧り付き、肉を食い千切ってかっこむエクスブイモン。

とにかく腹が減って仕方ないのだろう。食事に夢中なようだ。

 

スティングモンは、周囲を警戒しながら、もう一体のジャングルモジャモンを食い始めた。

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