山岳地帯で、コカトリモンのデジタマから産まれた鳥型デジモン、ピヨモン。
あの個体は、あの後どうなったのだろうか。
他の研究者が、あの個体を見張っているそうなので、そちらの様子を見に行った。
…大きな湖で、白鳥のような美しい姿の鳥型デジモンが水浴びをしていた。
これがピヨモンの進化した姿…成熟期デジモン、スワンモンである。
スワンモンはやがて湖から飛び立ち、大空へ飛び去っていった。
デジドローンの移動力ではとうてい追い付けないので、いったんスワンモンの観察をやめることにした。
飛べるデジモンといえば…
ツカイモンやエクスブイモンのように、「その翼で飛ぶのは無茶だろう」と言いたくなるような翼で飛行できる種がいる。
また、スターモンのように、飛べる機構を一切持たないのに、エスパー能力で無理矢理飛行するデジモンもいる。
それらに比べてスワンモンの飛行能力はとても高く、これまでに見た飛行デジモン達の中では頭抜けている。
次いでピコデビモンやピピスモンなど、大きな翼を持つデジモンが優秀な飛行能力をもつ。
どうやら、「飛べそうにない姿なのに飛べるデジモン」に比べて…
明らかに飛ぶのが得意そうなデジモンは、飛行速度や航続距離、エネルギー消耗などの点で、はるかに有利なようだ。
しかしスワンモンは、祖先であるグレイモンと比べて、ずいぶん筋肉量が少なく、骨格の密度も薄い。
パワー代償にして飛行能力をさらに磨いた、ということだろうか。
…ちなみに平原でツカイモンを狩っていたフクロウ型デジモン、アウルモンは、スワンモンの子孫らしい。
既に鳥型デジモンは、デジタルワールド各地で増えているのだ。
しかし、中には「飛ぶのをやめた鳥型デジモン」もいるようだ。
たとえば、サバンナに住むダチョウ型成熟期デジモン、ペックモン。
寒冷地帯に住み付いている、ペンギン型成長期デジモン、ペンモン。
ペックモンやペンモンは、熾烈な生存競争の中で、走行や遊泳が得意な姿へ最適解されたといえるが…
中には、外敵がいない平和な島に産まれたことで、飛行能力と戦闘能力を著しく落としたデジモンがいる。
ドードー型成熟期デジモン、トーカンモン。
キーウィ型成熟期デジモン、キウイモンだ。
これらのデジモンは、成熟期にもかかわらずとてもDPが低く、そこらの成長期並である。
だが、それで問題ないのである。
消費カロリーを抑えることで、島の餌を食い尽くさずに、余裕をもって生きていける。
キウイモンは、羽毛に葉緑素を含み、光合成が可能になっている。
トーカンモンとキウイモンは、互いに争うことはなく、鳥語のような鳴き声で度々コミュニケーションを取っている。
…戦闘能力はなさそうだが、これはこれで、うまく環境に適応できているといえる。
これらのデジモンの生態を映像に収め、デジモン特集番組で放映したところ…
トーカンモンに対して「可愛い」「飼いたい」という要望が殺到した。
デジタルモンスター飼育端末は、現在ラインナップがマッシュモンしかいないが、そこへ加えて欲しい、という願望があるようだ。
しかし、トーカンモンの繁殖力は高くない。
デジタマを捕獲するのはいかがなものか…。
例の島を見ると…
トーカンモンは、4個のデジタマを温めていた。
…あれを取るのは、やめておいた。
エクスブイモンやスティングモンからデジタマを奪った我々が、今更善人ヅラするつもりは毛頭ないが…
なんだか捕りたくないので、やめとくことにした。
それから数日後…
なんと、島からトーカンモンがいなくなっていた。
キウイモンは、走り回ってトーカンモンを探しているようだ。
我々がキウイモンのいる方へ、デジドローンを近づけると…
キウイモンはデジドローンを激しく威嚇してきた。
な…なんだ!?
どうしたんだ!?
突っつき回されそうになったので、我々はデジドローンを退却させた。
それからしばらくの日が経過した頃…
SNS上で、収入ランキングトップ最上位クラスの人気インフルエンサー達が、デジモン飼育の動画を上げていた。
そこに映っていたのは…
鳥の雛型の幼年期デジモン、プルルモンやポロモンが、携帯端末で飼育されている姿だった。
とても可愛らしい雛デジモン達は、たちまち人気となった。
動画の再生回数はどんどん伸びていく。
簡単な言語を理解できるらしく、投稿者の声に応じて羽を動かすなどの芸を披露していた。
…
…そういうことが、あるのか。
デジドローンやデジモンキャプチャーはライセンスさえ買えば、誰でも使える。
ならば、こういうことが起きるのも時代の流れか。
…野生デジモンのデジタマを奪って、戦力として飼育している我々は…
この行為に対して、何か言う資格は無い。
島では、キウイモンが寂しそうに歩いていた。
すると…
…がさがさと草陰から音がした。
そして、トーカンモンが姿を現した。
驚くキウイモン。
その様子を見てきょとんとするトーカンモン。
…よく見ると、最初に見たトーカンモンより、微妙に体のサイズが小さい。
あのトーカンモンの子供が、成熟期へと進化したのだろう。
つまり別個体だ。
キウイモンは、それでも嬉しそうにトーカンモンへ駆け寄り、トーカンモンの頬をぺろぺろ舐めた。
トーカンモンは驚いたが…
キウイモンに害意がないことを察したようであり、やがて二羽で楽しそうに島を散歩し始めた。
やがて二体は、海辺へ近付いた。
海の潮風を感じているようだ。
心地よさそうに、浅瀬へ足をつけて、ぱちゃぱちゃと水遊びをしている。
…いつかこの弱い鳥デジモン達は、海から来た外敵に襲われ、全滅するかもしれない。
あるいは、さらに強い猛禽類デジモンがやってきて、餌にされるかもしれない。
あっさりと全滅する可能性は大いにあるのだ。
そう考えると…
インフルエンサーに飼育されている雛鳥デジモン達は、早急に保護された、運のいいデジモンなのかもしれない…。