熱帯雨林には、至るところにたんぽぽの綿毛のようなデジモンが浮いていた。
このユラモンは、植物型デジモンの幼年期のようだ。
おやつのように気軽に捕食されているが、たくさんいるので何匹かは生き残って成長するらしい。
さて、この熱帯雨林には、これまで森林やサバンナで目撃した昆虫デジモン、植物デジモン、軟体デジモンのほとんどが生息している。
成熟期デジモンの数も多い。
ベタモンは、木陰に隠れながら、昆虫デジモンを狙った。
ベタモンには電気ナマズのように電撃攻撃をする力があり、それを使って獲物を狩った。
だが、時折接近がバレて逃げられてしまうこともあった…。
…
やがて、シーラモンが産んだと思われる、ベタモンが数匹上陸してきた。
ベタモンCは、これらの歳の離れた兄弟と共に狩りをすることもあった。
だが、ベタモン達は思い知らされた。
自分達が、狩る側だけでなく、狩られる側でもあるということを。
あるときベタモン達は、ミノモンが群生している木を発見した。
ミノモンを捕食しようと近づくと…
突然、弟ベタモンの足元に穴が空いた。
地下からデジモンが襲いかかってきたのである。
蜘蛛型デジモン…ドクグモン。
ドクグモンは毒の牙で弟ベタモンのうち一匹を噛みつくと、物凄い勢いで地中に引きずり込んでいった。
…おそらく、このドクグモンはあのミノモンの親だ。
子供を守るついでに、やってくる捕食者を逆に狩ろうとしているのである。
ベタモン達は、たまらず逃走した。
昆虫デジモンだけではない…。
ウッドモン、レッドベジーモンといった植物型の肉食デジモンも脅威であった。
何よりも驚かされたのは…
陸上ではこれまで大して怖くないと考えられていた、軟体型成熟期デジモンの発達である。
大きな貝殻と、強靭な腕と強い顎を持つ…モリシェルモン。
おそらく、カラツキヌメモンの系統とみられるこのデジモンは、歩くのは遅いが、高圧水流を使って弾丸のように小さな貝殻を飛ばして獲物を狙撃する力を持っていた。
弟ベタモンのうち数匹は、モリシェルモンの餌食となった。
…そう。
この熱帯雨林、成熟期デジモンがやたら多い。
これまで観察していた地域よりも肥沃な大地であるためか、サバンナに比べてデジモン達が大食いであり、そして強靭であった。
気がつけば、兄弟ベタモン達の生き残りはたった3匹となっていた。
ベタモン兄弟は、この厳しい環境へどう適応するか…!?
弟の一匹は、なんと風景に溶け込んで隠れ、舌を伸ばして獲物を捕らえるという、攻防一体の力を身に着けた。
その姿はカメレオンそのもの。カメレモンと命名された。
もう一匹の弟は、背中のヒレを鋭い刃にし、それを飛ばして攻撃できるようになった。
主食は草食性となった。
その姿は、ステゴサウルスそのもの…。
ステゴモンと命名された。
そして、ベタモンCは…
逃げ足がひたすら速くなった。
このあたりのデジモンは好戦的であり、より栄養価の高そうな獲物を狙う傾向があった。
その習性を利用し、ベタモンは敵に追われているとき、他のデジモンと鉢合わせるようにした。
そうした場合、敵がベタモンを狙って攻撃をすると、遭遇したデジモンに攻撃の隙を見せることになり、漁夫の利(?)を得られてしまう。
そのため、膠着状態に持ち込むことで、危機を脱することができたのである。
そうしてベタモンCは、逃げ足がどんどん早くなった。
うまく逃げるために、その前足はいつしか翼に変化していた。
体は木々の隙間をすり抜けられるように、細長い形状となった。
これは…蛇だろうか?
だが、翼を持つ蛇など、我々の知る生物の中にはいない。
議論の末に、神話のケツァルコアトルになぞらえて、クアトルモンと命名された。
クアトルモンは、逃げるだけではなく、時として獲物をその細長く強靭な肉体で締め上げて捕食することもあった。
成熟期の中では、格闘能力は低い方のようだ。
こうしてシーラモンの子孫たちは、各々が独自の進化を遂げ、厳しい熱帯雨林へ上陸することに成功した。
成熟期まで育てば、めったに死ぬことはないだろう。
…シーラモンの子孫の中には、無理に上陸せず、水中生活の中で進化した個体もいたようだ。
亀の姿をしたアーケロモン。
鮫の姿をしたティロモン等である。
ゆくゆくは、これらのデジモンが上陸することもあるだろうか…?
…さて。
我々は先日、新たなツールを開発した。
その名もデジモンキャプチャー。
デジモンを捕獲し、我々の所有するサーバー内に仮設したローカル空間内で飼育することのできる設備である。
我々のチームのうち数名は、デジタルワールドの観察ではなく、捕獲したデジモンの飼育を試みる…との話である。
現在のキャプチャーは出力が弱く、幼年期のデジモンしか捕獲できないが…。
尚、餌としては、データマイニングによって生成したキノコを与えるつもりらしい。
私はどうするか…
引き続き観察をするか、飼育を試みるか。
それは次回決めるとしよう。