エクスブイモンとスティングモンのデジタマは孵化し、現在は幼年期レベル2へと至っている。
エクスブイモンのデジタマから育ったのは、幼竜型デジモンのチビモン。
ブイモンをそのまま小さくしたような姿だ。
スティングモンのデジタマから育ったのは、ミノムシ型デジモンのミノモンである。
チビモンとミノモンには、幼少期からチャットや音声による言語教育を施している。
人間側ではカリアゲが教育の主担当であり、デジモン側ではパルモンが主担当、マッシュモンが補助だ。
カリアゲを主担当に据えたのは、サラマンダモンから見事に各種情報を聞き出せたからだ。
イエスかノーしか答えられないサラマンダモンから、あそこまで話を引き出せたのは大したもんである。
…そこまでやっても飼い主の情報を聞き出せなかったのは玉に瑕か。
パルモンは、フローラモンだった頃同様に優しい性格をしており、まだ言語を扱うのが得意でないチビモンやミノモンと、楽しそうに意思疎通を取っている。
ボディランゲージを取ったり、鳴き声だけで意思疎通をしたり…
一緒に歌を歌ったり、遊んだり…。
我々人間目線では、コミュニケーションを教える目的は『セキュリティデジモンとして育成するため』なのだが…
パルモンはあくまでも、『仲良く一緒に過ごして、意思疎通を取りたい』という目的で教えているようだ。
その心が伝わったおかげだろうか。
チビモンやミノモンは、会話やチャットはまだまだ上手でないが、『交流や意思疎通を試みる気持ち』それ自体は順調に育まれているようだ。
…現代人には、それらの気持ちを育まれないまま、言葉を身に着けたせいで、会話できるのにしようとしない若者もいるとか…。
…世知辛い話はよそう。
ちなみに、モスモンのデジタマからは蜂の幼虫型デジモンのププモンが産まれ、小蜂型幼年期のプロロモンへと進化したのだが…
プロロモンは一切コミュニケーションに興味を持たない。
餌をやれば来るのだが、まったく懐かない。
パルモンがコンタクトを取ろうとしても、一切興味を示さない。
大丈夫なのだろうか…
先が少し心配だ。
人間側では、カリアゲが二体の教育をしている。
カリアゲは『新しいことを教える』役割を担う。
デジドローンで撮影したデジタルワールドの様子や、そこから拾ってきた食べ物、ゲームなど…様々な概念だ。
そうして二体の幼年期デジモンは、言語を覚えることで、新しい概念を知ることができる喜びを感じ、言語に自ら興味をもつようになっていっている。
…私にはできないことだ。
もっとも、カリアゲの手腕をもってしても、プロロモンと意思疎通を取ることはできずにいる。
そして、コマンドラモンへそうしたように、チビモンとミノモンにも幼年期のうちからトレーニングをさせている。
果物を仕込んだ戦闘訓練用ボットと模擬戦闘をさせたり、迷路におやつを仕込んで探させたり…など。
…フローラモンやコロモンへ行ったトレーニングのことを思い出して懐かしい。
我々の計画では、チビモンとミノモンにはいずれデジクロスの力を習得してもらいたい。
だが、成熟期になるまで待つのはちょっときつい。
高DPのデジモンを抱えるには、もっと生活インフラを発達させる必要があるのだ。
そのため戦力強化は段階的に行う必要がある。
そこで我々は、チビモンとミノモンに、成長期の段階でデジクロスの力を身に着けてもらいたいと考えている。
デジクロスによって一時的に成熟期相当の強さを発揮できるようになれば、セキュリティデジモンとして強大な戦力になるだろう。
だが、このままミノモンがワームモンに育つと考えると…
あの幼虫型デジモンが、バラバラになってブイモンとデジクロスできるようには思えない。
そこで我々は、ミノモンには『パッチ進化』をさせることを試みた。
ミノモン達に、成長期のうちからデジクロスの概念を教え、連携攻撃の訓練をさせつつ…
ミノモンへ合体機構をもつ機械のデータを食べさせることで、パッチ進化を誘発させようとしているのだ。
どうやればそれが成功するのかは不明だ。
手探りでやるしかない。
まずチビモンには、『道具を使って戦闘ボットと戦う』訓練をさせた。
己の肉体以外のもの…武器などを操って、攻撃する訓練をさせることで、エクスブイモンのような『装甲化したデジモンを纏って、それを操る力』の発達を促しているのだ。
一方のミノモンには、『他のデジモンとくっついて戦う』訓練をさせた。
ミノモンは、小さな松ぼっくりを投げたり、糸を吐いて攻撃する力をもつが…
他のデジモンに抱えられたり、乗ったりした状態で、連携しながらそれを使う訓練をさせることで…
『我が身を他デジモンの武器として運用する力』の発達を促した。
そしてミノモンとチビモンには、特別な餌を用意した。
かつてのパイルドラモンやディノビーモンから計測した、デジクロスに関するデータを入力として、データマイニングによって生成した、デジクロスに関する様々なシミュレーションデータである。
そのうちチビモンとミノモンは、トレンド中以外にも…
遊びの時間にも、『合体遊び』をするようになった。
ミノモンがチビモンの背中に乗り、ミノモンの指示通りにチビモンが動いたり…
チビモンがミノモンを抱えて、まつぼっくり砲(?)を撃つ遊びをしたり。
カリアゲは、その遊びを褒め、推奨し…
なんならデジドローンVRで投映したアバターを使って自分も混ざったりした。
デジモンと人間のアバターのデジクロスは流石に無理だろうけども…
案外こうやって一緒に遊ぶことが、彼らが自らデジクロスを習得したがる動機づけになるのかもしれない。
ある晩。
チビモンやミノモンは、少しずつ言葉を使えるようになってきているようだ。
そんなチビモンが、カリアゲにチャットで話しかけていた。
『かりあげ おいら しんかしても でじくろす できなかったら どする おこるか』
「ん…?ああ、頑張って成功してはほしいけどな…できなくても、それはそれでいいんだ。元々、デジタルワールドのブイモン達もデジクロスはできねーみたいだからな」
『でも こまる ちがうか』
「困らねーよ。武器を使うトレーニングは頑張ってきたんだろ?それならデジクロスがたとえダメでも、マッシュモンやコマンドラモンから武器を借りて、それで戦えばいいんだ。お前にできることを、できる限りやってくれればいい」
『そなのか だめでも いいのか』
「ああ。やれることを精一杯やればいいんだ!案外へたにデジクロスに拘らない方が、デジクロスよりずっと強い力を身に着けたりできるかもしれねーぞ!」
『それ きけて よかった こわかった』
「…俺達のこと、気遣ってくれてたんだな。ありがとな!俺達の大事な相棒!」
『おいら がんばる!』
…そんなカリアゲとチビモンのやりとりを、ミノモンも聞いていた。
ミノモンはまだブイモンほどチャットを使いこなしていないが…
どことなく、ほっとした顔をしている。
やがて…
三体の幼年期デジモンは、数日程度時期をずらし、成長期へ進化した。
まず、プロロモンがファンビーモンへ。
次に、ミノモンがワームモンへ
最後に、チビモンがブイモンへ進化した。
尚、ファンビーモンは現在第二ビオトープへ隔離して育成している。
チビモンへ毒針を突き刺して昏倒させ、そのまま捕食しようとしたためだ。
ファンビーモンが、麻痺毒でしびれているチビモンの喉を食いちぎろうとした、まさにその瞬間に、ミノモンはワームモンへ進化した。
そして蜘蛛の巣のような糸を吐きだして、ファンビーモンを拘束した。
なんとか一命をとりとめたチビモンは、その後でブイモンへ進化したのだった。
カリアゲは、どうにかファンビーモンとコンタクトを取ろうとしているが…
全くうまくいっていない。
餌をやっているときだけは大人しくなるが、それ以外は終始イライラしているようだ。
デジタルワールドに住むファンビーモン達は、個体群によって性格が全く異なる。
たとえば集団で営巣する個体群は、性格が穏やかであり、集団生活をする。
単独で狩りをする個体群は、集団生活など知ったことかと言わんばかりに凶暴な振る舞いをする。
モスモンから産まれたこのファンビーモンは、後者に近いようだ。
…さて。
ブイモンとワームモンは、現在も幼年期の頃と同じようにデジクロスや合体攻撃の訓練をしている。
しかし…
ワームモンの体は、デジクロスができる構造になっているとは思えない。
デジクロスの前兆はまったく見えないが…
幼年期の頃にやった合体攻撃を、うまく実戦で通じるように昇華させようと頑張っているようだ。
…ワームモンのパッチ進化には、失敗したのだろうか…?
…
そんなある日、『見張りマッシュモン』のサービスに提携しているクレジットカード会社から、連絡が来た。
見張りマッシュモンが、クレジットカード会社の回線に潜り込もうとしているデジモンを発見したとのことだ。
回線をすべて遮断したら、クレジットカード決済処理のシステムが動かなくなってしまう。
だから大至急セキュリティデジモンを呼び、侵入したデジモンを排除してほしいという依頼だ。
ランドンシーフを持って直接出向く時間はない…!
オンラインでデジモンを出撃させなくてはならない。
顧客のカードの暗証番号が盗まれる前に…!
我々は、大急ぎでデジモンをクレジットカード会社へ出撃させた。