デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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粘菌のトンネル

見張りマッシュモンから、クレジットカード会社のサーバー内部からの映像が送られてきた。

 

この会社は、複数の回線を外部へ接続している。

そしてデジクオリアでは、ネットワーク回線はトンネルとして可視化されるのだが…

トンネルの1つ1つの内壁が、どんどんズルモンやゲレモン等の粘菌型デジモンの集合体で埋め尽くされていっている。

前回と同じ手口だ。

 

これは前回戦ったスカモンやゲレモンのような「スパイウェア型デジモン」だ。

 

このままでは、全てのネットワーク回線に粘菌型デジモンが巣食い、やがてサーバー内部の情報が盗まれて、送信されていくだろう。

 

鉄鋼会社のときは、社内サーバーのデータが盗まれたからといって、現在のところは被害は出ていないようだが…

クレジットカード会社は、ひとつ情報が盗まれただけでも一大事だ。

 

当初は、オンラインでセキュリティデジモンを出撃させることを試みていたが…

ネットワーク回線トンネルが塞がれてしまっては、サーバー内に我々のデジモンが入ることもできない。

 

くそっ…

止むを得ない…!

 

クレジットカード会社は、苦肉の策として、全てのネットワーク回線を遮断した。

これにより、一時的に一切の決済処理が行えない状態となってしまった。

 

いちおう予備の代替システムで決済処理ができるようにしてみたようだが…

やがてそちらにも粘菌デジモンがやってきたので、遮断せざるを得ないようだ。

 

このネットワーク回線遮断による決済処理の緊急停止は、クレジットカード会社にとって大きな損害になるだろう。

 

だが、その程度ならばあくまでも一時的な被害で済む。

顧客のカード情報が流出して悪用されたとなれば、顧客が立て続けに解約していってしまうことは想像に難くない。

 

そのため、クレジットカード会社は、一時的に完全なオフラインとなった。

 

…賢明な判断ではあるが…

サーバー内に侵入した粘菌デジモンと、回線のトンネル内に今も詰まっている粘菌デジモンをどうにかしないことには、いつまで経っても決済処理を再開できない。

 

どうやら、我々がランドンシーフを持って、クレカ会社へ直接出向き、社内ネットワークへ接続してセキュリティデジモンを送り込むしかなさそうだ。

 

だが、それまでの間に何もしなければ、粘菌デジモンはサーバー内のデータを食べてどんどん増殖し、やがて顧客のカード情報を盗むだろう。

 

そのデータは、おそらく司令塔デジモン(スカモン?)に集約され、社内サーバーに潜伏する。

 

そしてオンラインになった瞬間を狙って、盗んだカード情報を外部へ送信するのだ。

 

…情報生命体デジタルモンスターは強靭だ。

サーバーのハードウェアの電源をシャットダウンしようがお構い無しに動き続けるし、パソコンのデータを初期化しようとしても、なんとそれに抗って生存し続ける。

…これは前回のスカモン戦で鹵獲して、隔離チェンバー内で飼育しているゲレモンを使った実験で判明した事実だ。

 

さすがに自力でハードウェアから脱出することはできないようなので、ハードウェア自体を交換すればどうにかなるが…

高価な機材を交換するのは、そう簡単にできることではない。

 

そんなわけで、我々が到着するまでの間、できれば「足止め」が欲しいところである。

 

そんな話をしていたところ…ボスマッシュモンからチャットが来た。

『わたしのぶんしんが ふたり いるのだろう それらに たたかわせればいい』

 

…見張りマッシュモンのこと?

『かれらは いまのわたしのぶんしんだ ならば わたしとおなじ せんりょくが あるはずだ』

 

それは頼もしいな。

私はクレカ会社の社員と携帯電話で通話して、作戦概要を伝えた。

 

さっそくクレカ会社内のデジモンテイマー部が、見張りマッシュモンへチャットで作戦を伝えたようだ。

 

オフライン状態のため、デジクオリアは使用不能だ。

ゆえに純粋なチャットソフトだけで指示をすることになる。

 

リーダーがはっとした顔で言った。

「オフライン状態でランドンシーフを接続するなら、我々もデジクオリアを使えないな」

 

ああっそうだった!

それでは状況が把握できないから、我々がサポートできない!

 

くそっ…このオンライン認証の仕様どうにかなりませんかね?

カンナギはなぜこんな面倒な仕組みにしたんでしょうか。

 

「今それを嘆いても仕方がないだろう。前にも聞いただろ、カンナギはクラッカーを冷遇するわけにはいかないと。善にも悪にもフェアだからこそ維持される秩序があるということだ」

 

どうにかならないでしょうか?

 

「いちかばちか…カンナギに問い合わせる。前にオフライン用のドングルを借りたことがあっただろう、あれを至急送ってもらえないか頼む」

 

前に頼んだ時だって2~3日かかりましたよ…

そんなに待てますか!?

 

「…厳しいな。だが、ダメ元でかけあうしかない。ランドンシーフがあろうと、デジクオリア無しでクラッカーのデジモンと戦うのでは宝の持ち腐れになる。勝算はだいぶ減るだろう…。確実に勝つためには、やはりデジクオリアが必要だ」

 

リーダーは、カンナギ社へ通話し、事情を伝えた。

 

『状況は理解した。ドングルの貸出しには、どれだけ早くても2日は要る』

 

うぅ…そうなりますよね、やっぱり。

 

『…そうだ。そういえば、特別なオフラインドングルのテストをしたいんだが、誰か手助けしてはくれないだろうか』

 

特別?どんなですか?

 

『…ネット回線経由で送付する、期限付きのオフラインライセンスを開発中だ。物理デバイスはなく、データとして送るものだ。テストに協力してくれるか?』

 

それは…えっと…今使わせてくれるってことですか?

でもいいんですか?我々を贔屓しても。クラッカーとの戦いをするのに。

 

『ん?よく聞こえなかった、何?…チョコ付きのクラッカーを食べながらテストをするって?』

 

…はい。

 

『よろしい。早速オフラインライセンスを送ろう。しっかりクラッカーを噛み砕くことだね』

 

…ありがとうございます。

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