私とリーダー、カリアゲの3人は、指定されたビルの屋上へ行った。
そのヘリポートには、クレカ会社がチャーターしたヘリコプターが既に停まっていた。
クレカ決済処理の停止は、一分一秒長引くだけで、莫大な人数へ損害が広がっていく。
ゆえに、電車や飛行機、車でノンビリ移動するわけにはいかないのだ。
我々はヘリコプターへランドンシーフを積み込み、ひとっ飛びした。
ランドンシーフに積んだデジモンは…
コマンドラモン、パルモン、ボスマッシュモン、ブイモン、ワームモン…
…そして、かつての戦いで鹵獲した粘菌型デジモン、ゲレモンだ。
ゲレモンは我々の命令を聞かないし、我々の方から命令する気もない。
ボスマッシュモンが手駒を殖やすための餌として運用しているのだ。
現に、ボスマッシュモンは今既に電源を落としているランドンシーフの中で、ゲレモンを食べて配下を殖やしている。
…ゲレモンは多少食っても、断片のズルモンが成長してまたゲレモンになるので、いい餌なのだ。
尚、ファンビーモンは連れてきていない。
やがてクレカ会社へ到着した。
クレカ会社は現在、利用者から殺到している苦情電話やメールへの応対で忙殺されているようだ。
社内のネットワークへ、ランドンシーフを接続する。
そして、オフラインライセンスでデジクオリアを起動し、サーバー内のデジタル空間を観察した。
我々のパートナーデジモン達は待機だ。
…うわぁ、ひどいな。
ズルモンやゲレモンがたくさん這いまわっている。
顧客情報を盗んでいるようだ。
だが…
そこへチビマッシュモンが数体来て、ズルモンをデータから引っ剥がした。
そしてズルモンを食べた。
どうやらクレカ会社で粘菌デジモンの侵入を発見した見張りマッシュモンが、既に戦ってくれているらしい。
我々が到着するまでの間に、できるだけ敵戦力の増強を抑えてくれていたようだ。
だが、そこへ…
何者かが素早いスピードで近付いてきた。
「ホワーッハッハッハッハ!!」
…スカモンだ!
かつて我々が戦ったスカモンとは別個体のようだ。
スカモンは、かつてのように地面の粘菌デジモン達を使って、滑るように接近してきた。
お馴染みの『ローリング・スウォーム』移動である。
スカモンは右手に、黄金に輝く剣を持っている。
…なんだあのゴツくてでかい剣!?
我々も一応ブイモンに使わせるための武器をデジタルワールドから調達し、用意してはいるが…
あんなでかい剣は持っていない。
「時代遅れのキノコ共!淘汰してやります!ズェァアアア!」
スカモンはそう叫び、剣をチビマッシュモン達へ振りかざした。
刃からは熱と光のエネルギーが発せられている。
チビマッシュモン達は、熱く鋭い刃によって溶断された。
そして、逆にズルモン達に飲み込まれていった。
…なんだあの武器!?
とんでもない…成長期デジモンがあんなのくらったら一撃で死んでしまう。
クラッカーは、スカモン自体を改良して強化するのでなく、強力な武器を持たせることで白兵戦力の増強を図ったようだ。
クッソ…狡猾だな!
そんな武器があったら我々も欲しいぞ!
どうやって作ったんだあんなの!?
物陰に隠れていた一体のマッシュモンが、スカモンに向かって爆弾を投げた。
あれはいざというときのために、預けておいた、コマンドラモン製の爆弾だ。
その威力は、成熟期のスカモンにだってダメージを与えることが期待できる。
しかし…
地面の粘菌デジモン達の上をスライドするように、盾が運ばれてきた。
スカモンは盾に身を隠し…
爆弾から身を守った。
盾にぶつかった爆弾が爆発し、轟音と爆炎が放たれた。
やがて煙が晴れると…
傷ひとつないスカモンの姿が現れた。
「フアーッハッハッハ!その程度の攻撃!効きませんのだよ!!我が鉄壁の護りの前にはァァ!!」
盾まであるのかよ…!
くそ、ふざけんな…!
スカモンは、爆弾を投げてきた見張りマッシュモンに向かって粘菌移動で一気に接近した。
「汚物は!!消毒DEAーーーーTH!!」
「マ、マシマァーーッ!!」
見張りマッシュモンは、スカモンへ胞子を吹きかけた。
煙幕で身を隠そうとしているようだ。
「その辺ですなァァーー!ホワァーッハァ!」
だがスカモンは、当てずっぽうに煙ごと剣で切り裂いた。
「マシギャァーーーッ!」
見張りマッシュモンの悲鳴が聞こえた。命中したのか!あんな雑な斬撃が!
どうやら剣から出ている熱と光のエネルギーによって、有効射程が長くなっているらしい。
ビームソードを食らった見張りマッシュモンは、傷口がジュージューと焼けているようだ。
「とどめ喰らえやァーッ!DEATH!」
そう叫んだスカモンは、見張りマッシュモンを縦一文字に切り裂いた。
「マジュッ…」
溶断されパカッと真っ二つに割れた見張りマッシュモン。
体内の菌糸は生きてそうだが、思考中枢はおだぶつのようだ。
うぅ…。
同族がやられる光景を見たボスマッシュモンは、心が痛むだろうか。
『やはり あのけんは つよい』
…ボスマッシュモンが送信してきたチャットには、特に動揺した様子はなかった。
へ、平気なのか?
『あれは わたしのいちぶだ それをつかって てきの じょうほうが えられた なにが かなしいのだ かみよ』
…ううん、気にしないでくれ。
見張りマッシュモンは戦力分析のために立派に役に立ってくれた。
『そういってくれると うれしい』
しかし…厄介だな。
今回の敵は、前回同様に(別個体の)スカモンだが…
強力な武器と頑丈な盾を持っている。
近距離戦を挑んだら、あの剣で溶断される。
遠距離からの攻撃は盾で防いでくる。
我々がデジタルワールドから調達した武器で打ち勝てるかというと…
分が悪い気がする。
…マジでなんだあの剣!?どうやって作ったんだ!?
スカモンを観察していたリーダーが呟いた。
「あの剣…あれ自体がデジモンのようだな。鍔に顔や手足がついている」
んん…?
おお、たしかにそうみたいだ。生体反応がある。
カリアゲは驚いた。
「マジかよ…。まさか盾の方もデジモンじゃねーだろうな?」
…盾にも生体反応があるぞ。
「とんでもねーな。武器と防具のデジモンなんて、一体どうやって育てたんだ…。俺はワームモンをそういうふうには育てられなかったのに…」
カリアゲはちょっと落ち込んでいる。
クラッカーに先を行かれたからだろう。無理もない。
とりあえず、剣のデジモンにはズバモン、盾のデジモンにはルドモンと名付けた。
厄介な敵だ…奴らをどうやって攻略する…?
「…だが我々にも、奴の剣や盾に負けない武器がある。ランドンシーフと、自在に開けるデジタルゲートだ」
確かに。
こっちの手札を有効活用していきましょう。
「それだけじゃないぜ、こっちの武器は!」
ああ、そうだなカリアゲ。
ブイモン用に作った、例の…
「俺達とデジモン達の…!絆の力だ!」
…。
「…カリアゲ。遊びのつもりなら帰ってくれ」
「ああっすんませんリーダー!ちょっと空気読めてませんでした!わりッス!」
「まったく…俺たちの戦いは漫画やアニメじゃないんだ。次ふざけたら以降シンに代わってもらうからな」
辛辣だなぁリーダー…。
士気は戦いにおいて大事な要素だと思いますよ。
さて…どう戦うか…。
頭を悩ませていると…
クレカ会社の社員さんから叫び声が聞こえてきた。
「あのー!まだ駆除できないんですかー!?苦情が次から次へと殺到してきて!オペレーターが限界になりそうですゥゥウ!!!」
うっ…。
対処への時間が長引くと、どんどんクレカ会社への被害が増していく。
なんてことしてくれたんだクラッカー…!