デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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道具と仲間

我々はどう攻めるかを相談し…

そして作戦を実行に移した。

 

まずはデジタルゲートから、コマンドラモンが飛び出して、スカモンの背後に向かって爆弾を投げた。

「お無駄ですッ!不意打ちできると思ったかッ!」

すぐに粘菌デジモン達がルドモンを運び、爆弾からスカモンを保護した。

 

だが、ルドモンに当たった爆弾は爆発しなかった。

ピンを抜かずに投げたためだ。

「あり?爆発しませんね?」

きょとんとするスカモン。

 

「いまだー!」

そう言って叫んだパルモンが、ボスマッシュモン及び部下マッシュモン2体と共にゲートから飛び出してきた。

パルモンは、ツタを伸ばしてルドモンを絡め取った。

そうして動きを封じたルドモンを、部下マッシュモン2体が組み伏せて、押さえつけた。

 

「てめぇら!シールドラモンを離しやがりませ!粘菌の餌になれ!」

スカモンがそう言うと、ゲレモン達がパルモンとマッシュモンにへばりついた。溶かして消化する気だ!

ゲレモン達には消化液だけでなく、マッシュモンと同じ毒がある。それをパルモンへ浴びせている。

「ホワァーッハッハッハ!!そこの草小僧は粘菌の毒に耐えられまいでしょう!」

 

だが…

「うおぉーくるしい!」

そう叫ぶパルモンの悲鳴は、どこか演技臭い。

 

…スカモンは気付いていまい。

パルモンは幼年期の頃に、自ら望んで地獄の特訓をこなし、マッシュモン由来の毒の解毒剤を体内で合成するできるように進化したことを。

 

「ええい!さっさとシールドラモンを離せ!まどるっこしいですね打ち首にしてくれますゥァ!」

ルドモンのほんとの名前…シールドラモンっていうのか。

だがクラッカーが名付けた名前なんか知らん!長い!どうでもいい!

我々という社会的に正当な立場の研究者が発見して名付けたんだから、今後もルドモンと呼び続けてやる。

 

スカモンは剣を握り、パルモン達へ飛びかかってきた。

 

…今だ!行け!

「よしきたー!いくぞ!ワームモン!」

そう流暢な人語を叫んでデジタルゲートから出てきたのは、ブイモンだ。

ブイモンの左腕にはワームモンがしがみついている。

ブイモンの右手には、我々特性の鎌が握られている。

 

ブイモンは、左腕のワームモンをスカモンへ向けた。

「ギチチッ!」

ワームモンはそう喉を鳴らすと、蜘蛛の巣のような糸をスカモンの腕へ吐きつけた。

「グゲ!?な、なんですかこりゃ!」

作戦開始までの数分間、ワームモンは頬袋へ大量の粘着糸溜めに溜めまくっていた。

それを腕にくらったスカモン。成熟期といえど、動きが鈍ったようだ。

 

パルモンとマッシュモン達は、ルドモンを粘菌デジモンからひったくり、距離を取る。

 

「こ、こんなネバネバでワタクシの動きを封じられると思うなァァ!」

スカモンは腕の粘着糸に構わずに、ブイモン達へ斬りかかろうとする。

 

そんなスカモンの背後にいるボスマッシュモンは、先程コマンドラモンがピンをつけたまま投げた爆弾を拾い…

ピンを抜いて、スカモンの後頭部へ投げた。

 

ルドモンはパルモンが押さえているし、そのルドモンを運ぼうとする粘菌デジモンは部下マッシュモン達が食うなり蹴るなりして攻撃している。

スカモンを護る盾はない!

 

爆音が鳴り響く。

「ギャアアアアッ!!」

今度は直撃だ!

 

「く…こ、この、クソ共がァァァ!いい加減にシールドラモンを離せ!」

スカモンはパルモン達へ襲い掛かる。

さっさと防御手段を確保したいのだろう。

 

「切り裂けエクスカリモン!ホワァーッハァァーー!」

スカモンはそう叫び、パルモンに向かってズバモン剣を振りかざした。

 

そんなスカモンの斬撃へ…

パルモンは、なんとルドモンを向けた!

大きな金属音が鳴り響く。

 

何でも防ぐ盾と、何でも貫く矛がある。

その矛でその盾を突いたらどうなるか?

 

…今回の答えは。

「防げるがタダでは済まない」だったようだ。

 

「リュギイイィイイィィ!!」

パルモンは無傷だが、斬撃を防いだルドモンにはダメージが入ったようだ。

 

「なぁッ!き、きさまッ!シールドラモンをよくもォーーッ!!」

 

斬撃のパワーがよほど凄かったのだろう。

ルドモンが吹き飛び、パルモンは無防備になる。

 

「今度こそ真っ二つにしてやるゥァァァー!くらいやがりませ!エクスカリモン・スラァーーーッシュ!」

スカモンは再び、無防備なパルモンに向かってズバモン剣を振りかざそうとする。

というか、クラッカーはこの剣デジモンにエクスカリモンと名付けていたのか。

まあ知らんけどな。我々はズバモンと呼び続けてやる。

 

「ん?な、なんだ…動きが…鈍い…!剣が…振れない…!」

スカモンは剣を振れなくなっている。

ワームモンの粘着糸が硬化したためだ。

 

パルモンは両腕のツタをスカモンへ絡ませて、さらに動きを拘束した。

 

「今だ!うおおおお!」

ワームモンはブイモンの左腕から離れた。

ブイモンが両手で持つ鎌は、かつて山岳地帯でコカトリモンに敗れたスナイモンの死骸から回収した鎌である。

 

「くらえー!」

そう言い突撃するブイモン。

「ひ、ひいえええーーーッ!」

スカモンがそう叫ぶと、あちこちの粘菌デジモン達が素早くスカモンのもとへ集まってくる。

繭を作ってスカモン大王になる気だ!

 

「させるかー!」

ブイモンはスカモンの脳天へ、鎌を振り下ろす。

「ひいいいいィィイーーーーッ!!」

盾を失い、身動きを封じられたスカモンの眉間へ、ブイモンの鎌が突き刺さった。

「ぐびゅ!」

スカモンは白目を剥いて、力無くへたりこんだ。

 

「し、シール…ドラモン…エクスカリモン…道具の、くせに…肝心な…時に…役に、たた…な…」

「うるせえしねぇー!」

ブイモンはスカモンの頭部の中を鎌でグチャグチャに搔き回し、念入りに思考中枢を破壊した。

「げうっ!…き…キイィィィーーー!!」

 

だが、粘菌デジモン達はスカモンを包み込んだ。

そして壁をずるずると登り、天井で繭になった。

 

繭を呆然と見つめるブイモン。

「…な、なんだよ…たおしきれてなかったのか…?」

このまま繭を放置すれば、やがてスカモン大王になるだろう。

 

だが…

突然、繭にしがみつくデジモンの姿が現れた。

光学迷彩で透明になっていたコマンドラモンである。

 

この戦いで、コマンドラモンは最初に爆弾を投げた時以来、何もしていなかった。

何故ならコマンドラモンは、スカモンが繭を作るタイミングを見計らってずっと潜伏していたからだ。

コマンドラモンは、ナイフで繭と天井の接合部をギコギコと切り裂いていく。

やがて繭は天井から剥がれ、地面に落下した。

 

唖然とするブイモンに向かって、パルモンが叫んだ。

「きりさいて!」

 

「お、おう!」

そう返事をしたブイモンは、スカモンの繭を鎌で切り裂いた。

 

さすがはスナイモンの鎌。

切れ味がいい。

 

そうして、繭の裂け目から形成中のスカモン大王が見えてきた。

 

「マシシシイーー!」

マッシュモン達が、繭へ潜り込んだ。

いったい何をする気だろうか…?

 

やがて繭を引き裂いて、右手にズバモンを構えたスカモン大王が姿を現した。

「ホワアアアアアアア!死!死死死死死死死死死死死!!!!」

どうやら思考中枢の回復が間に合っていないようだ。

「死ィィーーー!!」

そう叫んだスカモン大王が、ズバモンを振りかざそうとした…

 

その時。

スカモン大王の腕は、付け根からボロリと千切れた。

「死ィィ!?」

ぎょっとするスカモン大王。

腕の付け根は…

「マシー!マシマシー!マシシシイー!」

…大量のチビマッシュモンに食い破られていた。

 

そう。

マッシュモン達はスカモン大王の繭へ『寄生』し、スカモン大王の体内へ大量のチビマッシュモンを産み付けたのだ。

「ギヒィイイイ!死!死ィイーーー!」

スカモン大王の全身が、内側から崩れ、チビマッシュモン達に食い荒らされていく。

 

やがて、内部のスカモンが姿を現した。

眉間の傷はまだ完全には塞がっていない。

 

「死ィ!死死ィ死ィ死ーー!」

スカモンはルドモンとズバモンの方を向いて何かを叫んでいる。

だが…

武器の姿をやめ、二足歩行型デジモンとなったズバモンとルドモンは、ノーリアクションでスカモンを見ている。

 

自分からは何も動こうとしない。

おそらく指示を待っているのだ。

そしてスカモンは鎌で頭部を破壊されて喋れないため、ズバモンとルドモンは何も動かないのだ。

 

「死…ッ!き…きさま…ら!道具は…道具らしく…働きなさ…!」

スカモンは言語中枢が回復しかかっているようだ。

あいつ…ルドモンとズバモンを、道具扱いしているのか…。

だがな!

道具は自分からは動けないんだよ!

 

ワームモンは粘着糸を吐き出し、スカモンの両腕に糸を絡ませた。

「いィ!?」

鎌を持ったブイモンが、スカモンへ躙り寄る。

そしてブイモンは、鎌を持ち上げる。

 

「みたか!これが!おいらと!みんなの!!きずなの!ちからだあああーーーーー!」

 

ブイモンは鎌を振り下ろして、スカモンの頭部を両断した。

「死ッ…」

…スカモンは今度こそ動かなくなった。

やがてスカモン大王の中から出てきたボスマッシュモンが、スカモンを解体した。

 

 

決着を見守っていたクレカ会社の社員さん達は、大喜びして歓声を上げた。

 

やがてチビマッシュモン達とパルモンが、粘菌デジモンをすべて片付けると…

クレカ会社のサーバーは再びオンラインとなり、決済処理の再開を告知した。

 

パートナーデジモン達も勝利を喜んでいるようだ。

「やったな!みんな!すごいぞお前ら!」

カリアゲはデジモン達を褒めている。

 

リーダーは、そんなカリアゲの肩をぽんと叩く。

「先程はすまなかったカリアゲ。お前が正しかった。今回の戦いは、まさしく絆の力の勝利だ。…そして、優秀なデジモンを武器としての運用しかしなかったヤツの敗北だ」

 

「…ああ!」

 

もしもスカモン大王を破壊した直後に、ルドモンとズバモンが自らの意思でスカモンを護り、我々に立ち向かってきていたら、勝てていたかどうかは分からない。

 

だが、ルドモンやズバモンは「それをしなかった」。

きっと自分で戦況を分析し、自身の判断で立ち回るような教育はされていないのだろう。

スカモンの口ぶりから察するに、ルドモンとズバモンは道具として指示通りに動くこと以外を求められていなかったのだ。

 

…我々のパートナー達は、ただ指示通りに動いただけではない。

時にアドリブを挟みながら、それぞれが状況に合わせて的確に動き、連携した。

 

最初に立てた作戦通りに戦いが進んだが…

『作戦を失敗させなかった』のは、まさしく彼らデジモン達自身の現場判断のおかげだ。

故にスカモンは、戦力で我々を上回っていながらも、その運用で敗けたのだ。

 

さて…戦いは終わりました。

クレカ会社さんとの話が終わったら、ルドモンとズバモンを鹵獲して帰りましょう。

 

「…それにしても」

どうしましたリーダー?

「…どこかおかしくないか?今回の敵はどこか…杜撰すぎる、気がする」

杜撰?どこがですか?

 

「こんなに優秀な剣と盾のデジモンを育て上げたクラッカーが…こんな杜撰な戦いをするだろうか?」

 

も、もうちょっと詳しく教えてください。

 

「このクレカ会社が見張りマッシュモンのサービスを利用していることは、会社のホームページを少し調べればでかでかと載っていることだ。そんなところへ粘菌デジモンを侵入させたところで、侵入を察知されてネットワークを遮断され、社内サーバーへ粘菌デジモン達を監禁されるだけだ。今回のようにな。…十分想定できたことだろう」

 

そ、それはまあ…。

 

「それなのに、優秀な武器と盾のデジモンをスカモンへ持たせ、立て籠もらせる…。意味がわからない。クレカ決済処理をいたずらに止めただけで、クラッカー側の恩恵が何もない」

 

我々がうまく立ち回って、クラッカーが得しないようにできたってことじゃないんですか?

 

「おかしい…我々が戦ってきたクラッカーは、こんな杜撰なヤツだったか…?奴はチューモンにスカモンの頭脳を回収させたり、使い捨ての幼年期をランサムウェアにしたり…『自身の敗北すら織り込んで作戦を立てる』ヤツだったぞ」

 

…一枚岩じゃないのかもしれませんね、クラッカー側の勢力も。

 

その時。

リーダーに電話がかかってきた。

 

「こちらリーダー。…シンか?どうした」

 

どうやら我々の研究所からの通話のようだ。どうしたんだろう。

 

『や、やべーっすよリーダー!うちらのサーバーに敵デジモンが来て破壊活動をしてますゥゥウ!』

 

「なに!?」

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