デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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本能

小鬼型デジモンと、仮称キャンドモン達は、飛来してきたファンビーモンを見て警戒した。

しかしやる気なさそうに寝ているファンビーモンを見ているうちに、警戒を解いたのか…

クラッカーのデジモン達は再び破壊活動を再開した。

 

くそぅ…どうすればいいんだよ。

パソコンの電源を落としても、デジモン達は構わず動き続ける。

真ボスマッシュモンが戦闘用ボディを形成するのは、破壊活動完了までに間に合いそうにないし…

形成できたとして、炎を操る敵の戦力に対抗できるとは言い難い。

 

…万事休すか。

詰んだ…。

 

すると…

「グワギャアアアアアアアアア!!!」

突如絶叫する小鬼型デジモン。

な、なんだ!?

 

小鬼型デジモンの様子を見ると、眼球に毒針が突き刺さっていた。

あれは…

ブイモンの進化前の姿、チビモンに刺さっているのを見たことがある。

ファンビーモンの毒針だ!

 

小鬼型デジモンはあまりの痛みに苦しみ悶えている。

 

ファンビーモンが毒針を飛ばして攻撃したのか…

どうして?さっきは指示を無視したのに…

いや、そもそもファンビーモンは我々の言語を全く理解していないから、僕が出した指示の意味すら理解していないはずなのに。

なぜクラッカーのデジモンを攻撃し始めたんだ?

 

「ウゴ…ボ…」

やがて小鬼型デジモンは、泡を吹いて、びくびくと痙攣した。

 

画面を見ていたクルエがひょいと頭を出した。

「あー、眼球は直接脳みそに繋がってますからねー。脳に毒を流し込まれたらああなりますよね」

 

キャンドモン達は、ファンビーモンへ炎を放った。

ファンビーモンは円を描くように飛んで、炎を回避した。

 

そして空中を飛び回りながら、再び毒針を放った。

「ギャッ!」

キャンドモンの一体が、毒針で眼球を貫かれた。

つ…強い…!

ファンビーモンは、二体を仕留めると、その場から遠く離れた。

 

あ、あれ、もう戦線離脱…?

ねえケン、ファンビーモンが戦うのをやめたよ。

 

『…前にコマンドラモンが仕留めたバクモンの干し肉がビオトープの地下室にあります。それを一切れだけ与えてください。一切れ以上はダメです。』

 

わ、わかった!

干し肉をファンビーモンへ与えると、ファンビーモンはそれをガジガジと食べ始めた。

 

その頃…

キャンドモン達は、周囲を警戒しているようだ。

火を吐くのは一旦やめている。

襲撃に備えているのだろう。

 

やがて、ファンビーモンは羽を休めた。

ね、ねえ、休み出したんだけど。

『一切れだけあげましたか?』

う、うん。

『じゃあそれは毒針を再生してるとこです。そのまま放置してください』

大丈夫なの…?

やがてキャンドモン達が、適当にその辺を燃やし始めると…

再びファンビーモンが来て、キャンドモンの眼球へ毒針を放った。

「ギャオッ!」

 

 

そのまま僕は、黙ってみていた。

十数分後。

そこには…

 

全滅したクラッカーデジモン達と。

小鬼型デジモンを貪り食うファンビーモンの姿があった。

 

つ…強い。

意味分からないくらい強い。

 

その時。

ファンビーモンが急に小鬼型デジモンから離れた。

直後、ファンビーモンのいたところへ、銀色のドリル状の物体が飛んできた。

 

な、なんだ!?

まだなにかいるのか!?

ドリルが飛んできた方を見ると…

「シィーット!外したか!」

そこにいたのは、銀色のスカモン。

鉱山で見たプラチナスカモンだ。

 

「クソぉ!このまま敗けてなるものか!せめてあの憎きセキュリティデジモンを倒して戦果を挙げねば…!」

 

今までは潜んでたのか…!

く、来るならこいよ!ファンビーモンが相手だ!

ファンビーモンは、プラチナスカモンの眼球へ毒針を飛ばした。

「回転ガード!」

くるっと横を向いたプラチナスカモン。

毒針はその側頭部に当たり、弾かれた。

さ、刺さらない…毒針が!

「げひゃひゃひゃひゃ!以前のワガハイのままだと思うなよ!パワーアップして生まれ変わったのだ!」

ど、どうする…

毒針が急所に当たるのが先か。

バテてジリ貧になるのが先か…?

 

ファンビーモンは…

プラチナスカモンのところから飛び去った。

 

あ、あれ!?

逃げてったよ!?

「ぎひひひひ!このままワガハイが暴れてやる!」

くっ…

ファンビーモンが戦場離脱した以上、本当に打つ手がない。

 

こうなったら…!

こいつを道連れに…

 

『そこまでだ、プラチナスカモン。退却しろ』

…我々のものではないデジドローンが、プラチナスカモンの頭上を飛びながらそう言った。

「ま、マスター!?何故っスカ!?」

『いちいち説明する必要があるのか?私が去れと言ったら去れ』

「は、ハハーッ!」

 

そう言い、プラチナスカモンは螺旋状のボディを回転させ、一輪車の車両のように走行してデジタルゲートから逃げていった。

 

『では研究者諸君。さらばだ』

待て!

『何かね?なにか私に尋ねたところで、君達に有益な情報をくれてやるつもりはないが?』

 

…確かにこのクラッカーと今対話しても、有益な情報は引き出せそうにない。

ならせめて…一言言ってやる…!

『時間稼ぎをして私のデジドローンの通信元を逆探知しようとでもしているのか?くっくっく…やってみるといい』

 

そんなことはいい…(本当はしてやりたいが)。

お前はデジモンのことを何だと思ってるんだ。

『デジモンは道具だ。お前達もそうだろう?違うとでもいうのか?』

 

道具…ふふ…はっはっは!

お前ぇ!道具の使い方が下手くそなんだよ!

『なんだと…』

 

リーダー達からのショートメールで聞いたぞ。

強力な剣デジモンと盾デジモンを鹵獲したってね!

 

そんな優秀なデジモンを使い捨てるなんて…

道具として見るにしても、道具の使い方がド下手くそだ!

 

ぼくたち人間は、大事な道具は大事に使う。

工場の加工装置なんて、人間一人の生涯年収より高いものだってザラだ。

そういう道具は、道具だからこそ大事に扱う!

 

デジモンを道具扱いする奴がいるのは別にいい。

主義主張は各々好き勝手に持てばいい。

 

でもお前は!道具を大事に使うことすらできない、ヘボエンジニアだ!

 

『…お前おもしろいな。くっくっく…いまの私の怒りに共感してくれる者がいるとは…。お前優秀だよ。こっちに来ないか?』

 

来るわけあるか!

お前みたいなヘボクラッカーの仲間になんてなりたくもないね!

 

『…あの女に作戦の一部を任せたんだが…奴はあろうことか欲をかいて、ターゲットとは全く別物の企業にハッキングを仕掛けた。こともあろうにマッシュモンが見張っていると堂々アピールしているところに…』

 

あっちの実行犯とは別人なんだ。

 

『おかげでこちらは私の傑作であるエクスカリモンとシールドラモンを意味もなく失った。おまけに世間のデジモンサイバー攻撃への警戒度は高まるだろう…。無能な味方が最大の敵だ』

 

はは!

クラッカーの結束なんてそんなもんだろうね。

烏合の衆でしかないんだ!

 

『耳が痛いね。できればあの女を即刻ブタ箱へ入れてやりたいが…私にも立場があってね。道具以下の無能な味方といえど情報を売り渡すわけにはいかないのだよ』

 

こっそり情報ちょうだいよ。

 

『はは。…しかしお前、本当に面白いやつだ。てっきり私に、デジモンは大切なパートナーだ、などと説教をしてくると思ったが…。お前がこっち側にいないのが残念だ』

 

こっちの台詞だ。

君がクラッカーなんかでいることが残念だ。

 

『私の名はAAA(トリプルエー)だ。おまえは?』

 

…メガだ。

 

『メガ、また会おう』

 

二度と来るな!

…あ、そうだ。

ひとつ教えてやるよ。

 

『何かね?』

 

なんだっけ…エクスカリモンとシールドラモン?

そいつらには、仲間が既にズバモンとルドモンって名前を付けたよ!

 

『ッ…クソがッ…私の最高傑作たちによくもまた…しょぼい名前を付けたな!スライモンにゲレモンと名付けたこと含めて許さんぞッ…!』

 

勝手に名付けられたくないなら、真っ当な研究者にでもなれよ!

 

『…一応言っておく。ロウソクの方はキャンドモン。小鬼型はシャーマモンだ。では、今度こそさらばだ』

 

そう言うと、デジドローンはネットワーク回線から去っていた。

 

…やがてファンビーモンが戻ってきて、再びシャーマモンを食べた。

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