デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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デジモン飼育実験

まずは、デジタマを捕獲しよう。

環境を整えるのは、その後でいいだろう。

 

さて、まずは1個キャプチャーしよう…。

研究者の一人が「森林で脊椎動物型デジモンのタマゴを捕獲しよう」と言ったので、

我々は、デジドローンを飛ばし、森林を探し回った。

 

脊椎動物型デジモンを探しているが…

 

そういえば、森林にはまだ脊椎動物型デジモンは進出していなかったようだ。

 

もう森林まで来てしまったし、代わりに植物型デジモンのデジタマを捕獲した。

 

森林から採集した細い枯れ木を、アームで加工し、小さな小屋を作った。

一般家庭のような平和な環境を再現したとき、どう成長するかを確かめるためだ。

 

そして、森林からは土や小さな植物、低木の種も採取して、栽培を試みた。

 

デジタマを捕獲する前に、まずはこれらの植物がうまく成長できるか確かめよう。

 

…

 

数日経過したが、植物の成長はやや遅い。

肥料は足りている。

光量が足りないのだ。

 

我々はビオトープの照明を増築し、光量を強化した。

これで植物型デジモンも育つだろう。

 

さて、ビオトープは完成。

森林から植物型デジモンのデジタマを捕獲した。

 

孵化を待つこととしよう。

 

 

 

やがて、デジタマからデジモンが孵化した。

発芽したばかりの種子のようなデジモン…ニョキモンと名付けた。

 

キノコなどを与えてみよう。

 

我々は、特にニョキモンに何かしようとはしなかったが…

マシンアームによる餌付けは行った。

 

そうして育成していると、やがてニョキモンは美しい花を咲かせた。

花の咲いた球根型デジモンへ進化したのである。

私は、この種の名前としてキュウコモンという名称を提案したが…

ピョコピョコ動くからピョコモン、と名付けられた。

 

ピョコモンは、マシンアームでキノコの餌付けを行うとき、自身の花をアームに見せつけてくる。

 

何かをアピールしているのであろうか…?

 

ピョコモンは、たまに地面に潜って睡眠をとることもあったので、肥料の提供も行った。

 

…

 

ピョコモンはやがて成長期になるだろう。

 

デジモンが成長期になる際は、外界からの刺激が大きく作用する。

 

 

退屈そうにしているピョコモン。

我々は、ピョコモンとのコミュニケーションを試みた。

 

猫じゃらしのような玩具で遊んでやったり、撫でたりしてみた。

 

ピョコモンは、マシンアームが餌をくれる存在だと気づいたのか、我々に懐き始めた。

 

もっと遊びたい、もっと美しくなりたいという欲求が強まったためか…

美しい花と、器用な手をもつデジモンへ成長した。

 

美しい花から、フローラモンと名付けられた。

 

さて、成長期まで成長したが…

これからはどう育ててみようか…?

 

 

…

 

 

私はフローラモンの飼育記録をレポートとしてまとめていた。

 

作業中、私は奇妙なことに気付いた。

削除したファイルは、私のPC環境設定では一度ゴミ箱へストックされる。

だが、ゴミ箱の中のファイルがどんどん減っている。

ひとりでに消えているのである。

 

これはコンピューターウィルスにでもやられたか…?と思い、セキュリティソフトでスキャンしたが、異常は検出されなかった。

 

フローラモンが何かしているのか…?とも思ったが、特に脱走の形跡はない。

 

このまま放っておいても、ゴミ箱のゴミファイルを削除する手間が省けるだけなので、無害といえば無害だが…

どうするか。

 

我々は、フローラモンにコンタクトを試みた。

日本語と英語でメッセージを送ったが…

特に言語の教育などしていないため、単なる模様の羅列としか認識していないようだ。

 

どうにかして、フローラモンと意思疎通を取る方法はないだろうか…?

 

私は、これを研究のためのいい機会だと考えた。

 

デジモン研究をしていると、よく聞かれるのだ。

「その研究は金になるのか?」と。

 

もしもデジモンと意思疎通を行い、課題解決をさせることに成功すれば…

金になるかは分からないが、我々の生活の向上のために役立てることはできるようになるかもしれない。

 

手始めに、幼児向けの学習用教材のデータをビオトープ内に置いてみた。

インストールは完了しているため、操作して遊ぶことはできるだろう。

 

…

 

フローラモンの知能がどの程度か、だいたい判明した。

例えるなら小型犬くらいである。

 

何不自由なく餌が手に入り、遊んであげるくらいしか刺激もなかったため、課題解決能力がそれほど発達しなかったようだ。

 

教材ソフトの内容も、あまり理解していないようだ。

簡単なパズルゲームならば、操作して遊べるようだが…。

 

だが、小型犬を侮るなかれ。

ミニチュア・ダックスフンドなどの犬種は、訓練を積ませることで、巣穴の中に潜むアナグマを捕らえるための猟犬として働かせることも可能だという。

 

つまり、このフローラモンも。

訓練を積ませれば、単独でミッションを解決することはできずとも、パートナーとして手伝うことはできるようになるかもしれない。

 

我々は普段、デジタルワールドの観察をするために、デジドローンというアイテムを使っている。

カメラとマイクを搭載した小型偵察機だ。

これを介して受信した情報を、デジクオリアで映像化しているというわけだ。

 

つまり、これの「逆」を行うことで、フローラモンとテレビ通話ができるようになるかもしれない。

 

 

パソコンにマイクを取り付けて、入力した音声情報をデジクオリアによって「逆変換」することで、デジタルワールド内の空気振動に対応させる。

これをドローンから発することで、我々の声を音声信号として送信することができる。

 

カメラで撮影した映像ならば、デジクオリアで変換することで、デジタルワールドの光波長へ対応させることができる。

これをドローンから投映すれば、ビオトープの壁へ我々の姿を映し出せるだろう。

 

試しに、私の姿を壁に映し出し、話しかけてみた。

 

フローラモンは困惑して映像を眺めている。

 

私は、「キノコだよ、お食べ」と言い、キノコの写真を見せた後、フローラモンへ餌をあげた。

すると、フローラモンは私を「自分に餌付けをしてくれている者」と理解したらしく、映像に対して甘えてきた。

 

ふむ、好感度は申し分ないようだ。

言葉はまだ通じていないが、これで何らかの意思疎通はできるかもしれない。

 

それこそ猟犬だって、訓練すれば単語2つ分くらいの命令は理解できるというではないか。

 

先程の教材ソフトは、人間の幼児基準で作られたものだったから難易度が高すぎたようだが…

もう少しレベルを落として、何かしらのトレーニングをしてみてもいいかもしれない…。

 

 

フローラモンが言葉を喋れるようにできないか?と思い、平仮名文字と音声を関連付けさせてみた。

 

その結果、数日の訓練を続けるうちに、我々の発した音声と、文字を書いたカードの対応関係を理解するようになった。

 

だが、フローラモンの声帯は、我々の言語が喋れるほど発達してはいないようだ。

そのため、フローラモン自身が言葉を発することは難しいといえるだろう。

 

そのまましばらく教育を続けていると…

「キノコ」

「土」

「水」

など、ビオトープ内にある物体の名詞については、理解できるようになった。

 

思っていたよりも、言語習得のスピードが早い。

デジモンは、訓練によってどんどん個体の能力が上がるということだろうか。

 

そういえば、スターモンの子供達…ゴツモンもそうだった。

厳しい鍛錬の結果、成熟期のベジーモンよりも強くなっていた。

 

 

しばらく教育を続けてわかったが…

どうやらフローラモンという種を「人間と同レベルの知能になるように教育しよう」とするのは、少々酷なようだ。

 

紙芝居を見せたり、教育ソフトをやらせようともしたが…

そもそも、我々がフローラモンに何を求めているか、という目的の共有に至ることが難しい。

 

猟犬のトレーナーは、別に猟犬を人間と同程度の知能になるよう教育しようとは考えない。

猟犬には猟犬の、身の丈にあったレベルを求め、それに応えれるようになれば十分なはずだ。

 

我々はフローラモンへの教育レベルを、猟犬とかチンパンジーぐらいのことができれば十分だ、というように方針転換することに決めた。

 

 

さて、どういう教育をするか…。

 

ところで、フローラモンの年齢は、既にサバンナのベタモン達が成熟期へ進化したときの年齢を過ぎている。

 

どうやらデジモンは、放っておいても成熟期へと成長する…というものではないらしい。

周囲の環境へ適応するために、さらなる力と単為生殖能力を手に入れるようだ。

 

このままフローラモンへ、今までどおりに教育を続けたとしても…

成熟期には進化しないかもしれない。

 

どんな刺激を与えるべきだろうか…?

 

 

考えてみれば、理に適っているといえる。

今のままの姿で、何も不自由していないのだから。

わざわざ成熟期へ進化して代謝量を増加させる必要はないし、デジタマを産んで限られた(?)餌を奪い合う相手を殖やす必要もないといえる。

 

むしろ、進化の機会を無駄に消費して、環境が現在の状態から変化したときへの適応のチャンスを失うのは勿体無いともいえる。

 

フローラモンをどう育てるか…

根本的に考える必要がありそうだ。

 

 

 

ところで、私のパソコンのゴミ箱の件だが…

既にゴミ箱の中のファイルは空になってしまった。

 

そして、恐ろしいことに…

ネットからダウンロードしたファイルが自動的に入る「ダウンロードフォルダ」の中身が、少しずつ消えてきている。

 

今のところは幸い、ずっと前にダウンロードして、そのまま消し忘れて放置しておいた不要なファイルが消えているだけだが…

このまま放置したらどうなることか…。

 

とりあえず、キノコ生成用のデータマイニングソフトで適当な大容量データを生成し、ゴミ箱へしこたま放り込んでやることで、なんとか重要なデータが削除されないようにしている。

 

現在、このPCはネットワーク上から切断し、完全なスタンドアローンにしてある。

重要な研究データはすべて退避し、新しいパソコンへ保存済みだ。

 

このパソコンは、一体何によってこんな状態にされているのだろうか…?

 

 

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