デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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蛮族の集落と類人猿デジモンの進化

蛮族。

ディノヒューモン農園に度々略奪をしかけているらしい類人猿型デジモンの集団を、シンとメガはそう呼称した。

彼らの住処をすこし覗いてみよう。

 

…デジドローンを移動させ、蛮族の住処を探していると…

森の茂みから何かが飛び出してきた。

コウモリの羽のような耳が生えた、ウサギ型デジモン。ツカイモンだ。

 

ツカイモンはなにかから逃げているようだ…

やがてツカイモンはぱたぱたと飛び始めた。

 

その瞬間。

ブーメランが飛んできて、ツカイモンに当たった。

 

地面にぼてっと落ちるツカイモン。

ブーメランは、飛んできた方向へ戻っていく。

 

それをキャッチしたのは…

セピックモン。

大きな仮面を被った、霊長類型デジモンだ。

かつてモスモンを倒した個体とは別個体のようだ。

 

ツカイモンは起き上がろうとするが…

セピックモンのブーメランで滅多打ちにされ、叩きのめされた。

ぐったりしたツカイモンを肩へ担いだセピックモンは、そのままどこかへ向かった。

 

我々はデジドローンでセピックモンを追跡した。

やがて、森の中に、集落らしきものが見えてきた。

 

ネズミ型成長期のチューモン、類人猿型成長期のコエモン、小鬼型成長期のシャーマモンなどが、せわしなく働いている。

 

蛮族は狩猟・採集生活を送っており、農耕の文化を持たないように見える。

農耕などするくらいなら、戦力を強化してもっとデジモンを狩ろうということだろう。

 

デジモン達の巣は…

…おお?

農園のものとは違うが、なかなかまともな木造の小屋だ。

 

セピックモンは、シャーマモン一体へツカイモンを手渡すと、また狩りへ戻っていった。

 

この集落のボスはどこだろうか…?

ボスを探していると…

集落の声からデジモンの怒鳴り声が聞こえた。

なんだ?

そっちを見に行こう。

 

騒がしい方を見に行くと…

どうやら、2体のシャーマモン同士が、土俵のようなところで取っ組み合いをしているのを、他の蛮族デジモン達が眺めているようだ。

観客の中には成熟期デジモンもいる。

 

皮膚の一部が岩のように硬質化している、ヒヒ型デジモン…

命名バブンガモン。

 

そして、虎柄の布切れで体を覆い、シャーマモン同様褐色の肌を持つ、筋骨隆々な…原人っぽいデジモン…

命名フーガモン。

 

これらが集落のボスなのだろうか。

 

そういえば、蛮族デジモンの成熟期はパイルドラモン戦で、大量に死亡していた。

ハヌモン、ゴリモン、セピックモン、ジャングルモジャモン…。

それによる戦力低下の影響は、決して少なくはないだろう。

 

ここは類人猿デジモンだけの集落なのだろうか…?

そう思っていると、よく見たらフーガモンの隣で大きな獣型デジモンが寝ている。

 

頭部からドリルが生えたモグラ型デジモン…

命名ドリモゲモンだ。

 

クルエさん、どう?こいつ。

 

「…うーん。どうだろ…かわいいかも?ちっこいのいません?」

 

チューモンから進化したっぽいですよ。

 

「そっちはいらない」

 

言い方!

 

シャーマモン同士は、激しい格闘戦をしている。

カリアゲが様子を見に来た。

「おお、プロレスか!?いいぞ、やれやれー!」

…楽しんでるなぁ。

 

…やがて、片方のシャーマモンが、もう片方を殴り倒してダウンさせた。

歓声が湧き上がる。

フーガモンは、勝ったシャーマモンへ何かを与えた。

 

…うおお…。

解体された、トカゲ型成長期デジモン…スナリザモンの干し肉だ。

農園にいる個体だろうか。

そうだよな。

人間同士の戦いと違って、デジモンの集落同士だと、倒した相手の肉を食ってしまえるんだ。

 

シャーマモンは、スナリザモンの肉を食った。

 

すると、シャーマモンの体は光り輝いた。

おお…成熟期への進化だ!

 

「うおお…どうなるんだ!?ハヌモンやゴリモンになるのか!?」

 

やがて光が消えた。

シャーマモンは進化に成功したようだ。

その姿は…

ずいぶん人間に近付いた。

 

進化したシャーマモンは、筋骨隆々な、人間の女性そっくりな姿をしていた。

 

フーガモン同様に、虎柄の布を体に巻いている。

頭部と腕部は、骨のような素材の鎧で覆われている。

 

そして、金棒を持っていた。

 

「うおっ…でっか…!こんなんなるんだデジモンって…!?」

カリアゲはそのデジモンを見て大きく目を見開いている。

巨大な金棒を見て驚いているのだろうか。

 

我々はそのデジモンへ、キンカクモンと名付けた。

 

やがてキンカクモンとフーガモン、バブンガモンは、集落の最奥地へと向かった。

 

そこは、何か…

ヤグラのようなものが建っていた。

フーガモンは、ヤグラに向かって叫んだ。

「カミサマー!カミサマー!ガミサマァーーー!!」

 

その声の後…

ヤグラの前に、デジタルゲートが開いた。

そこから、フーガモンより一回り小さいサイズの人影?が出現した。

 

…天使の羽が生えた、遮光器土偶のような物体だ。

 

それは地面に降り立つと、両足で着地し、あるき始めた。

 

あれは…ああいうデジモンなのだろうか?

デジドローンの映像を解析すると…

 

…土偶のような外殻は、どうやら金属や粘土を固めて焼いて作ったものらしい。

本当の正体は見えないが、あの土偶の姿は身を隠すためのカムフラージュ、もしくは装甲なのだろう。

 

DPは…あまり高くなさそうだ。

 

我々はそのデジモンを…

正体を隠す偽のデジモン。

ニセシャッコウモン(※1)と呼んだ。

 

3体の蛮族デジモンは、ひれ伏すようなポーズを取った。

フーガモンは、ニセシャッコウモンへ、ツカイモンの骸を差し出した。

 

「エモノ!…オソナ!エモノ!…オソナエモノォォォ!!」

 

それを受け取ったニセシャッコウモンは…

「もっとだ」

 

フーガモンは、シャーマモンやコエモン達へ怒鳴った。

「オソナ!エモノ!モットダ!」

 

やがて、いろんなデジモンの干物が運ばれてきた。

 

『よろしい』

ニセシャッコウモンは頭部からそう発声し、ツカイモンらの骸を受け取った。

 

『叡智を授けよう』

 

「エイチ!アリガタキ!シアワセェェ!」

 

なんだ…ニセシャッコウモン、喋ってるぞ。

フーガモンと人語で会話してる。

 

蛮族は、農園よりも高度な言語を使えるようだ。

 

しかし、叡智…?

何を教える気だ?

 

それから、3体とニセシャッコウモンはひそひそ話をした。

ニセシャッコウモンは、粘土板へ文字や図を刻み込み、何かを教えた。

 

やがて、蛮族デジモン3体がひれ伏した。

そうしてニセシャッコウモンは、オソナエモノを抱えてゲートへ戻っていった。

 

やがて3体は、粘土板を持って、集落の賑わった場所へ戻ってきた。

そしてコエモンやシャーマモンへなにかを指示した。

蛮族デジモン達は、土で何かの設備を作っている。

なんだろうか…?

 

やがて蛮族デジモン達は、どこからか青っぽい綺麗な鉱石を、荷車に載せて運んできた。

 

うお、木製の荷車…

すでに車輪を作っていたのか。

もっとも、車輪はちゃんとした円ではなく歪みや凸凹が大きいようであり、進む度にガタガタとはげしく積荷が揺れている。

 

翌日。

 

蛮族デジモン達は、火を使って何かの仕事をしていた。

 

「なんだあれ?なにやってるんだ?」

カリアゲは不思議そうに見ている。

 

…土で作った炉で何かを溶かしているようだ。

私の隣で作業を見ていたリーダーが、青ざめながら呟いた。

 

「…あの青い鉱石は…孔雀石だ」

 

え?なに?クジャク?

 

「ばかな…そんな、早すぎる…!そんなことが…!」

 

ど、どうしたんですか?

 

しばらくすると、赤く光るものが炉から運び出された。

 

シャーマモンの一体が、その赤く光るものをちょんと指で触り…

大絶叫をあげ、泣きながら走り去っていった。

そりゃさっきまで炎で加熱してたんだから、熱いだろうよ。

 

その物体が、やがて冷めると…

ところどころ、金属のような輝きをもつ鉱物となった。

 

それを見た蛮族達は喜んで騒いだ。

「カミサマァーーー!ガミサマァザーーー!」

 

…リーダー…

何をやってるんでしょうか、アレは。

 

「…やばいな…。あのニセシャッコウモン、恐ろしいことを企んでいるように見える」

 

…蛮族の集落はここだけでなく、小規模なものが点々と散財しているようだ。

 

どこもジャングルモジャモンとセピックモンが最大戦力。

 

だが、最大規模なのは…

今我々が目撃した「フーガ集落」だ。

 

今後どうなるか…

見守っていていいものなのだろうか。

 

…夜10時。

私はふと今日中にデータのまとめがしたくなり、ラボへ立ち寄った。

 

すると、暗いラボの中で…

カリアゲがパソコンを起動し、何かを見ていた。

 

ん?

何を見てるんだカリアゲ?

 

「うおっケン!?な、なんでここに!あっそのっこれはだな…」

 

私はモニターをチラ見した。

…デジクオリアの映像にキンカクモンが映っているようだ。デジタルワールドはまだ夕方らしく、それほど暗くない。

 

キンカクモンを観察してるのか。

人間にかなり近いし、気になるよな。

 

「おっおおうっそうだな…じゃ俺帰るんで」

カリアゲはなぜかデジクオリアのウィンドウを消そうとしている。

 

どうしたんだ?急に帰ろうとするなんて。

私は画面を見た。

 

…キンカクモンがデジタマを産んでいるところだった。

 

「うわやば!あ、あのなケン、これはだな、あくまで学術的な目的であってそういうあれでは…!」

 

…デジモン全般に言えるけど。

哺乳類型とはいうが、みんなタマゴを産むよな。

 

こんなに進化しても、まだ胎盤を獲得していないのか。

 

「へ!?あーうん、ふしぎだな、なんでなんだろうなー」

 

…たぶん…

ウィルスへの免疫力が高すぎるせいじゃないか?

 

「おお?免疫力?」

 

そもそも胎盤というシステムは、脊椎動物の純粋な免疫システム上では、本来成立し得ないはずのものだったんだ。

 

なぜなら、免疫機能とは基本的に「自分の体内に、自分の遺伝子情報と異なる遺伝子をもつ異物が入ってきたら、白血球やリンパ球が排除して排除する」というものなんだ。

 

だから妊娠した母胎が、子供と胎盤で繋がった場合…

本来の免疫システムでは、子供を異物と認識して破壊してしまうはずなんだ。

 

「お、おお…なんで人間は平気なんだ?」

 

それは人間のDNAに内在性レトロウイルスポゾンという、ウィルス感染によって偶然組み込まれた遺伝子が存在しているからだ。

 

レトロウイルスは本来、感染した動物の免疫力を下げてしまうんだけど…

哺乳類はウィルスによってこの遺伝子を組み込まれたときに、逆にその機能を利用して、胎盤の免疫力を下げることで、子供を異物として排除しない仕組みを作ったんだ。

これを免疫寛容という。

 

「ほえー、そうなんだ、すげーな」

 

デジモンはほとんどウィルス等の病気にかかったことがない。

だから逆に免疫寛容の仕組みを獲得できず、今だに卵生でいるのかもしれない。

 

「おおー、なるほどー」

 

ところで、なぜキンカクモンの産卵を観察してたの?

 

「ギクッ!あー、え、えーとだなー」

 

…なんて。

理由は一つだよな。

 

「お?グフフ、ケンもそういうの分かる方なんだ?みんなにはナイショな」

 

捕るんだな!?

キンカクモンのデジタマを!

 

「お、おお?…あったりまえよ!!最初からそのつもりでぇい!!」

 

流石カリアゲ!

蛮族最新のデジモンのデジタマを採取すれば、優秀なデジモンが産まれるだろう。

 

善は急げだ!

まだデジタルワールドは夕方だし…

うまく計画を立てて、コマンドラモンやパルモンに協力してもらい、デジタマを獲ろう!

 

「よし!」

 

 

…翌日…。

カリアゲはリーダーに呼び出された。

「キンカクモンのデジタマを採集できたのはいい。それはいい成果だ…。だが、遅くまで残るなら、ちゃんとケンのように申請してから残れ。内緒にするな。でないと俺がおこられる」

 

「ゴメンなさい~!」

 

クルエがカリアゲをジト目で見ている。

「ほんとにデジタマ採るために見てたの…?」

 

「ほんとだって!証人もいる!なあケン!」

 

はい。

私が証人です。

 

「はぁ…ケン。悪い人に騙されないようにね」

 

悪い人?…クラッカーとかかな。

脈絡がよく分からないけど、まあ分かりました。




※1…デジモン図鑑の「シャッコウモン」とほぼ同一の姿だが、似ているだけの別種なので注意されたし
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