どういうことですかリーダー。
パルタス氏の提案には乗り気になれませんが。
『それは彼女の営業が下手だからだなぁ!ハーッハッハッハ!』
今まで黙って聞いていたスポンサーさんの声が、端末から聞こえてきた。
「なっ…!なんだと!?侮辱か貴様!?」
『パルタス君!きみは前から思っていたが交渉がヘタすぎる!せっかくの提案がこれじゃ台無しだ!となりのバンモチ君に代わってはどうかね?』
「ぐ、ぐぬぬ…」
話を振られたバンモチ氏がなにか言おうとすると、リーダーが静かに口を開いた。
「…いや、いい。俺が説明する」
り、リーダーがですか。
「まず…先日のAAAとの戦い。お前らは勝ったと思うか?敗けたと思うか?」
え?
ああ、うちの本拠地を攻めに来たキャンドモンやシャーマモン達ですか。
ファンビーモンが片付けてくれましたよね。
我々の勝利じゃないですか?
「…みんなそう思っているのか?」
カリアゲ、シン、クルエはリーダーの問いに頷いたが…
当時、現場で対処に当たっていたメガは縦には振らなかった。
スポンサーさんはタブレット越しに、我々を観察しているようだ。
…尚、神木さんは「きみたち二人の商談に私が割り込むのは違う」と言って応接室には来ていない。
一通りの反応を確認した後、リーダーはメガの方を向いた。
「…メガ。お前だけ、勝ったと思ってないんだな」
んん…?
本丸を防衛できたから勝利じゃないの?メガ。
「…あの戦いは、キャンドモンとシャーマモンを片付けて終わり、というものじゃなかった。最後にプラチナスカモンが潜んでいたのを覚えてる?」
ああ、うん。いたね。
何もせず帰っていったけど。
「…そこが重要なんだ」
え?プラチナスカモンが?どうして…
「ファンビーモンは、プラチナスカモンを一度攻撃した後…その場から飛び去ったんだ。プラチナスカモンを見て『食えそうにない』と思ったからだ。ファンビーモンにとって、餌にならない相手は威嚇対象ではあっても攻撃続行の対象じゃないんだ」
そ、そうなんだ。
「ここまでまだ分からないの?ケン…!ボスマッシュモンも肉体を構成できておらず、ファンビーモンも戦わない。本拠地が完全に無防備な状況で、プラチナスカモンを自由にさせていたんだ!もし、プラチナスカモンがキャンドモンみたいに火を吐くデジモンだったら、今頃ぼくらの拠点はどうなっていたと思う?」
…コマンドラモンやパルモン達を入れたランドンシーフと共に、私やリーダーがヘリで帰還するまでの間に…
システムを破壊されていた、か。
「…AAAがプラチナスカモンを帰らせたのは、どんな理由があったかは知らないけど…『敗北を認めて撤退した』からじゃない。『チェックメイトを指し終えたから』だと…僕は思う」
…チェックメイト。王手詰めか。
だけどチェックメイトを指し終えても、破壊活動をせずに彼らはそのまま帰ったのが事実でしょ。
戦力が足りなかったから帰ったんじゃないの?
「あちらの残存戦力がどれくらいいるか分からないけど…『キャンドモン達の親デジモン』がいるのは間違いない。やろうと思えば、それを引っ張ってくることはできたはずだ」
じゃあ、なぜそうしなかった?
「僕はあの時、もしも本当に詰んだら、せめてプラチナスカモンやキャンドモンの親などの戦力を監禁して道連れにするために、ネットワーク回線を切断してサーバーをスタンドアローンにするつもりだった。クラッカーからすれば、我々はそのリスクを負うまでもない相手だったから、撤退した…それだけの話だよ」
クラッカーはどんなデジモンでも道具扱いし使い捨てる奴かと思ってたけど、そうでもないのか。
「AAA自身は、貴重で価値ある道具を無駄にしないタイプらしい。もしAAAが、例のクレカ会社を襲った向こう見ずのバカみたいな奴だったら…どうなっていただろうか」
…。
「…これはあくまで、戦いを振り返った僕の解釈だ。ケンやカリアゲ達の解釈は違うかもしれない。それを踏まえた上で今尚、盤面を俯瞰して…胸を張って勝ったといえる?」
…生き延びるチャンスを得たことそれ自体は、敗北じゃないと思うけども…。
「現状認識が甘いんじゃない?ケン」
カリアゲがツッコミを入れる。
「そうだとしてもよ?コマンドラモンがいなくなったら、さらに防衛力が落ちるだろ」
「パルタスさん、仮にそちらでコマンドラモンが成熟期になった場合…産んだデジタマから産まれたデジモンを、我々は買えますか?」
「ん?当たり前だろう!むしろ一時的にとはいえ貴様らの戦力を手薄にしたのだから、サービスしてやるのが筋だろう」
いや、当たり前って…
そんなこと言ってなかったじゃないですか。
「なんだ、こんなこともいちいち言わんと伝わらんのか?」
パルタス氏の隣で、バンモチ氏が「伝わるわけないでしょ…」と呟いた。
『ハーッハッハッハ!きみは本当に交渉が下手なのが玉に瑕だなぁ!パルタス君の得意分野は明らかにこっちじゃないんだから、やはりバンモチ君に任せてはどうかね?』
「黙れクロッソ!!…おほん、話が脱線しているぞ、元に戻せ」
パルタス氏がそう言うと、リーダーが口を開いた。
「メガの言った通りだ。我々は現戦力の構造上の致命的な欠陥を突かれたんだ」
構造上の致命的な欠陥…ですか?
「ああ。この先もしも、クラッカーデジモンが沖縄と北海道に交互に出現したらどうする?我々研究チームが飛行機に乗って北へ南へ往復し続けるのか?」
それは…オンラインで出撃できればそうしたいですけども…。
「それができないから、今までは現場に直行していたのだろう!」
…そうです。
クラッカーはスパイウェア型粘菌デジモンをサーバーへ忍び込ませるときに、ネット回線のトンネル内を粘菌デジモンでびっしりと埋め尽くし、ネット経由でセキュリティデジモンが入ってこれないようにしてしまいます。
それに、オンラインで出撃した場合、我々の最大の武器である「デジタル空間上のいかなる位置にでも自在にゲートを開ける装置」…ランドンシーフを使えなくなる。
あれは直接現場で回線に接続しなきゃ使えないので。
「そういうことだな!ならばどうする!」
…他のデジモン研究者にも頑張ってもらうしかないんじゃないでしょうか。
『ハッハッハ、君達は優秀だね。しかし優秀すぎるあまり、自分達に比べて周りがいかに遅れているか、いかに自分のレベルに遥か遠く追いついていないかを認識できていない!君達ほど優秀なセキュリティデジモンを揃えている組織は、まだローグソフトウェアくらいしか無いよ!!』
…じゃあ、そのローグソフトウェアが動けなかったら…
やはり我々が飛び回るしかないんでしょうか。
やだなあ、我々は研究が本分なのに。
パルタス氏が返事をした。
「今のままではそうなるだろうな!我々のティンクルスターモン達は軍事基地防衛用だ、ゆえに民間のパトロールへ向かわせることはできないからな!」
カリアゲが立ち上がった。
「なんだよ!軍のデジモンなんだろ、市民を守れよ!」
「陽動にすぐに食らいつくわけにはいかないだろう!」
…陽動?
「そうだケン。俺達の戦力は、致命的といえるほど陽動に弱い。我々がコマンドラモン達を連れ出してる間に、我々の本拠地やクレカ会社のような本命を狙われたら、打つ手がなくなる。この致命的な弱点を、このまま放題するわけにはいかない」
でも、今まで相手はその欠陥をついてこなかった。
「いや、仕掛けてきたぞ。先日プチ見張りマッシュモン達が対処した、キーロガー型ゲレモンを覚えているだろう。奴らは見張りマッシュモンがいるユーザーのパソコンだろうと構わず侵入していた。これは情報を盗むことより、我々の戦力を撹乱するための陽動の意味合いが大きいだろうな。俺達はそれが陽動だと読んでいたからこそ、マッシュモンだけで対処することにしたんだ」
そ、そんな駆け引きが…
ちゃんと分かってなかった。
「幸いにも今はまだクラッカー側の戦力も育っていない。陽動用デジモンもマッシュモンで対処できるうちはいい。だがプチ見張りマッシュモンで対処できなるくらい敵の戦力が増したらどうする?見殺しにするか、本隊で出現するしかなくなるだろう」
う、うぅ…!
考えただけで頭が痛くなる!
我々以外にも誰か強いセキュリティデジモンを増やしてくれよ!
「…パルタス氏が今やろうとしていることが、まさにそれだ、ということだ」
あ…。
…そういうことだったんだ。
コマンドラモンを買い取ることそれ自体が目的じゃなく、コマンドラモンを殖やして社会全体のデジモンセキュリティ自衛力の水準を底上げすることが目的だったんですね。
「だから最初からそう言っているだろう!何を聞いていたんだ貴様ら!」
カリアゲが立ち上がった。
「ちゃんと!!!!!!!順を追って!!!!!分かるように!!!!!!話せ!!!!!!」
ひぃぃ!
カリアゲがキレた!!
パルタス氏はカリアゲの気迫に気圧されていない。
「そんなことも言わなければ分からないのか!!!!それくらいの現状分析は済ませているものかと普通思うだろうが!!!!」
「思わねーーよ!!!」
ああうるさい!
二人共声を抑えてくれ!!
『ハーッハッハッハ!リーダー君が日本語に翻訳してくれたおかげでやっとまともに交渉ができたねえ!流石はリーダー君だ!!』
「なんだクロッソ、その言い方は!私はずっと日本語を喋っていたぞ!?」
まあ、わかった…分かりましたよ…。
…コマンドラモン、どう思う。
『…わたしも おなじことで なやんでいた だが なかまのことも だいじだ ふたつにひとつなら わたしは なかまをえらぶしかなかった』
…え。
『なかまをいまいじょうに まもれるように ならなければ わたしはここを はなれられない』
コマンドラモン…。
そ、それはそうだ!
コマンドラモンの火力は貴重だ。それが欠けたら、正直スカモン大王に勝てないぞ。
「うむ!だから代わりに、我々のティンクルスターモンを貸してやろう!ついでにオタマモンもな!成長期だが強いぞ!それならどうだ!?」
『エェー!?アネキ、コイツラ キノコト ヤサイシカ クワネーッテ キーテマスゼ ネーワ!マジネーワ!ニククエネーノハ ゼッテーヤダゼ!』
…ティンクルスターモンは乗り気じゃないみたいですが。
「こらティンクルスターモン!反抗するな!飯抜きにするぞ!」
『ウヌヌ デモ コンヤノ バンメシ ヌイタホーガ マシッスワ! カンベンシテクダセーナアネキ!』
…乗り気じゃないみたいですよ。
バンモチさんが「甘えてるだけですよ、なんだかんだ言うことはききます」と呟いた。
『ハーッハッハッハ!話し合いがグダグダだな!!論点があっち行ったりこっち行ったり!!なあパルタス君!』
「なぜそれを私に言う!?」
『…もういい。我々はあまり暇じゃないんだ。バンモチ君、パルタス君に代わって話を進めてくれたまえ』
「おい!?クロッソ、何を…」
「えー、それでは。改めまして、主任研究員のバンモチです。うちのパルタスが失礼な発言を繰り返してしまい、申し訳ありませんでした。アポも取っていないのにこのように応対していただき、深く感謝しています」
あ…いえいえ。
「まず、提案させていただく取引内容の説明をさせていただきます。その後、お互いにできるだけ損をせず、共に得ができるよう、摺り合わせをさせていただきたいと考えています」
ど、どうも…よろしくお願いします…?
頭を下げた私のそばで、クルエがひそひそと声をかけてきた。
「ケン君、こういう人が一番手強いって相場が決まってるんです。リーダーは大丈夫だと思うけど、ケン君はうっかりペースに乗せられて流されないようにしてくださいね」
あ、う、うん。ありがとう。
いかん!たしかになんか『取引することは決まってる前提』で話す気分になってた。
…気を引き締めないと。
シーズン2で登場したデジモンの中で好きなのは
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ベーダモン
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オタマモン赤
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サラ(サラマンダモン)
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モスモン
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ディノビーモン
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パイルドラモン
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アイスモン
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モクモン
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トーカンモン
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キウイモン
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ティロモン
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ワームモン(パートナー)
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ブイモン(パートナー)
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ファンビーモン
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キンカクモン
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プラチナスカモン
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謎のミサイル型デジモン
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パルモン(パートナー)
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盆栽城(ジャガモン)
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ルドモン/ズバモン