リーダーのもとに、カリアゲとクルエが呼び出されていた。
「オッス、どうしたんっスかリーダー?」
「カリアゲ、クルエ。お前たちにミッションを課す」
「ミッション?なんですか?」
「それは… 『ベーダモンを味方につける』というミッションだ」
「ベーダモン?なんでしたっけそれ」
クルエはきょとんとしている。
「ベーダモン…オクタモンから進化した、タコ型宇宙人のような姿をしたデジモンだ。光線銃によってほかのデジモンを操ることができる」
「あー、いたなぁ。そいつを味方につけると。…意思疎通できんのかよあいつと?」
「できなかったらそれでもいい。大事なのは、味方につけて戦力にすることじゃなく…『敵に回さない』ことだ」
「んー、詳しく聞かせてもらえますかリーダー?」
クルエは唐突なミッションについて、理由を聞きたがっている。
「そうか…まずはそこから話すか」
リーダーはベーダモンの映像を流した。
「見ての通り、ベーダモンは光線銃から出る光を浴びせることでデジモンを一時的に操れる。そして、そのデジモンに口づけをして寄生体を飲み込ませることで、脳に寄生体を植え付けて、永続的に隷属させることができるんだ」
「げ!?めっちゃヤバいデジモンじゃねーかよ!」
「そうだ。現に、ベーダモンは複数のデジモンを操って独自の集団を形成しつつある」
「ボスタコになろうとしてるんですねー」
「さて…。このままベーダモンを放置したとき、もっとも危険なことは何か。想像がつくか?二人とも」
「なんですかねー… デジタルワールドのデジモンすべてがベーダモンに操られるとか?」
「あ!わかったぞ!ベーダモンの子供がデジタルワールドで大増殖するのが怖いんだな!」
「…どちらも大した脅威じゃない。それはそれでデジタルワールドの生存競争の営みだからな。最も恐れることは…『奴の力をクラッカーが利用すること』だ」
「クラッカーが…!」
カリアゲとクルエは驚いた表情をしている。
「そうだ。あらゆるデジモンを操る力…クラッカーがそれを手にしたら、クラッカーデジモンによるサイバー攻撃に対して、セキュリティデジモンで防衛する…なんてことができなくなってしまう。ベーダモンの手駒たちを大量に差し向けられたり、あるいはセキュリティデジモンを操られてしまうかもしれないな」
「やべーじゃん!」
「そうだ、ヤバい。だから先手を打ってベーダモンを味方に引き込む!…そこまで高望みせずとも、『クラッカーに加担しないようにする』ことがミッションだ」
クルエは、少し考えてから口を開いた。
「敵に回さなければいいと…。極端な話、倒しちゃうのはどうですかね?」
「それができたらヤツは大量の手下を従えてなどいない。ヤツは第六感とでもよぶべき異常な機器察知能力を持っている。以前、野生のドクグモンが地面に隠れてベーダモンを捕食しようと試みたが… なぜか飛び出す前にバレていた。どうやって感知しているのかはまるで分からん」
「…倒すのは無理そうですねー」
「…さっき聞いたけどよ、『意思疎通できなければそれでもいい』と言ってたな。なんでだ?」
「簡単な話だ。我々がどれだけ努力しても意思疎通できないのなら、クラッカーだってベーダモンと意思疎通できない。それはすなわち、クラッカーがベーダモンを利用できないということになる」
「あ…なるほど。そこをハッキリさせるのが目的でもあるのか」
「そういうことだ。頼めるか?カリアゲ、クルエ」
「おう、任せてくれ!なんとかしてみる!」
「やってみるけど、どうにかなるかなー…」
「それで最初は何すればいいんですかね?リーダー」
「…分からん」
「はい?」
クルエはぎょっとしている。
「分からんってどういうことですか?」
「…正直、二人には無茶ぶりをしている。何をどうすればベーダモンを味方につけられるかは分からん。手探りで頑張ってくれ」
「投げっぱなしジャーマンですかー!?」
「ただ、気を付けろ。クラッカーの奴はそうとうデキる。アイスモンという言語を使えない野生デジモンを味方につけて、ランサムウェアデジモンとして運用できる奴だ。言語に頼らないコミュニケーションも得意とみえる。放っておくといずれヤツの手駒にされかねないぞ」
「ヒェッ… 頑張らないと…!」
こうして、クルエとカリアゲは、ベーダモンを味方につけるための試行錯誤を始めた。
果たしてうまくいくのだろうか…?
「あ、クルエ。俺の方はフローティア島開拓やパートナーデジモンの教育がけっこう忙しくてな。わりーけど俺は補佐役ってことで、クルエがメインでやってくれ!」
「え…あたしが中心っスかああぁぁぁ!?」
「な、なんだよ急に驚いて…」
「えー、カリアゲに任せておけばなんとかなるかなって」
「やる気出せよ!!」
「だってなんか…脳ミソみたいで…可愛くないし…」
「そういう問題かぁぁ!?」