「さて、ベーダモンとのコンタクトと同時並行で…、これから本格的にフローティア島の開拓を始める。それに伴い、あるデジモンを味方に引き入れたい」
おおっリーダー。
あるデジモンとは…
ベーダモンとは別にですか。どのデジモンです?
「まあ大体分かるだろう。クロッソ・エレクトロニクスへ電話してみる」
リーダーはスポンサーさんへ電話した。
『やあリーダー君!何やら面白そうなことをしているようだね!』
「ああ。拠点を作っている。そこで助っ人が欲しい。オタマモンがいたら売ってくれないか?」
『ふむ…そうしたいのはやまやまだが、需要が多すぎて在庫がいない!まあオタマモン自体はいるにはいるんだが、教育中だったり群れのリーダーだったりで、売りに出せない個体ばかりだ!』
「それは仕方ない…」
『ところでだリーダー君!君たちの島開拓、テレビ映えしそうだね!是非取材させてはくれないか?』
「すまないがクロッソさん…それはできない。フローティア島は我々の軍事拠点だ。クラッカーに座標がバレたら、アクセスポイントからありったけの戦力を送り込まれて破壊されかねないのでな。秘密にさせてもらう」
『そうか、残念だ…。あー、厳しいことを言うようだがね。投資というのは、リターンを期待できるからこそできるものだ。我々はボランティアお金配りおじさんではない…それは分かるね?』
「…ああ」
『君達への投資が打ち切られないようにするためには、その分君達が稼いでリターンを出してくれなくてはならない。それをわかったうえで、賢く立ち回ってくれることを願うよ!ハーッハッハッハ!』
「もちろん…セキュリティデジモンで稼ぐには、今以上に戦力と頭数が要る。そのために、広い土地と食糧増産が必要だ。そのためのフローティア島開拓だ。エンタメ番組の取材がしたいなら、本拠地の整備がしっかり終わってから遊び用にやるさ」
『む、その方が伸び伸びと制約なしにやれてよさそうだね!その時を期待しているよ!ハーッハッハッハ!』
…電話が終わった。
「まずいな…もっと早くオタマモンを押さえておくべきだった」
…あー、火を起こせるデジモンですか。
文明開化には必須ですね。
あれ?
そういえばこないだジャスティファイアが凸ってきた時、コマンドラモンを売ればオタマモンくれるって言ってませんでしたっけ。
ダメもとで当たってみますか?
「…最近あの連中と縁があるな。電話してみるか…」
リーダーはジャスティファイアへ電話した。
『うむ!こちらパルタスだ』
「こちらはバイオシミュレーション研究所のリーダー…リーだ。かくかくしかじかで、島開拓のために炎を使えるデジモンを売って欲しい」
『ふむ…アグモンか?ダメだぞ、あいつは今我々の貴重な戦力に育とうとしている』
えっ、手懐けられたんですか?
『我々の命令を直接聞くわけじゃないし、言語を理解してもいないがな。貴様達から貰った助言にインスピレーションを受けて、再教育してみたのだ』
「再教育?どんな?」
『ふふふ、ティンクルスターモンと同じ部屋に入れてみたんだ』
仲良くなったんですか?
『アグモンがティンクルスターモンに攻撃を仕掛けてきたので…返り討ちにしてしこたまボコってやった!ティンクルスターモンは力加減が苦手でな、うっかり殺しかねなかったぞ!』
ええ…
なんて事を。
『骨折して自力でろくに動けなくなったアグモンを、看病して餌付けしてしてたらな…、なんとティンクルスターモンに懐いたんだ!』
!?
『はっはっは!どうやら自分より強い者には従うようだ!だからアグモンは今、ティンクルスターモンの部下というわけだ!言語は理解してないがな!』
…おっかねー。
絶対真似できない教育方針だ。
「アグモンはいい、手懐けられそうにない…そっちじゃなく、オタマモンを売って欲しい」
『オタマモンか!いいぞ!』
たすかる。
…そんなわけで。
オタマモン(赤)が届いた。
サーバー内のビオトープで、オタマモン達と対面したパートナーデジモン達。
『タマー!』
オタマモンは、コマンドラモン達をじっと見ている。
そこへ、カリアゲがデジドローンVRで姿を投影して出現した。
『よ!オタマモンだな!俺はカリアゲ。今日からお前の仲間だ!』
『タマ…』
『よろしくな!まずはフローティア島でメシ食おうぜ!』
『タマー!』
そうして一同は、デジタルゲートでフローティア島へ向かった。
フローティア島へ移動すると、カリアゲはデジドローンVRのマシンアームで餌を持ってきた。
「プカモンの串焼きだ。塩を振ってあるからウマいぞ」
「タマ…」
オタマモンは、遠くに気になるものがあるようだ。
「なんだ、串焼きより気になるものがあるのか?どこだ、行ってみようぜ」
「タマ、タマ!」
オタマモンが向かった先は…
有機肥料作りの木箱だった。
「お、おおう…そっちはくせえぞ?大丈夫か?」
「タマ~!」
オタマモンの視線の先には…
有機肥料から這い出してきた、丸々と太ったププモン達がいた。
「く、食いたいのか?これ?」
「タマ~…」
「……………いいぞ、食え!」
「タマアァ~~!!」
カリアゲは、マシンアームでププモンをつまんで差し出した。
「アム、アム!ゴクン!」
オタマモンはそれを美味しそうに食べた。
…アレ直接食うのか。すごいな。
言っちゃなんだけど、ハエの幼虫そっくりなんだけどな。
いや、むしろそうだから食いつくのか。
人間の感覚とデジモンの感覚は全然違うからなぁ。
「…タマァ~」
オタマモンはすっかりご満悦だ。
「フゥ~、あれをそんな美味しそうに食うとは。お前すげーな」
カリアゲはオタマモンの頭を撫でている。
「ムフフフ~w」
オタマモンは嬉しそうだ。
…それで、リーダー。
オタマモンをゲットしましたが、何をするんでしょうか。
「…フローティア島を我々のアジトとして利用するにあたり、最も重要なものは何だと思う?」
えーと、何でしょう。
飲水の確保ですか?
「それも大事だが…最も大事なのは。セキュリティだ!」
セキュリティですか。
「そうだ。ここフローティア島は、広すぎず狭すぎない丁度いい広さと、豊かな自然環境、そしてたった一箇所のアクセスポイント…という理想的な条件が揃った島だ。そして、このアクセスポイントには他のデジドローンも来れることだろう」
クラッカーに見つかったら嫌ですね。
「だから…アクセスポイントを檻に閉じ込めて、扉で物理的に塞ぐ。フローティア島にはマッシュモンの分身を滞在させておき、合言葉がなければ開かないようにするんだ」
な、なるほど…
物理的な認証キーですか。
檻と扉は何で作るんですか?
「鉄だ」
鉄…!?
「パートナーデジモン達には、今まで川などで砂鉄集めをさせてきたんだ。たっぷり蓄えてきた砂鉄を使い…鉄の扉を作る!」
お、おお…!
製鉄ですか!
なるほど、そのためのオタマモンか。
「善は急げだ!井戸も欲しいところだが…まずは!フローティア島に製鉄所を作るぞ!」
いろいろすっ飛ばしてきた!
…でも、確かに製鉄所があれば、鉄の武器が手に入る。
セキュリティデジモン達の戦力強化ができるだろう。
我々は「たたら製鉄」の原理で鉄を作ることにした。
それまでの飲み水の確保だが…
デジドローンのパワーは弱いので、川から汲んできた水を搬送するのは何往復も必要となる。
それはそれで仕方ないのだが…ことのついでだ。
製鉄の予熱を利用して海水を蒸発させ、蒸留水を得られる仕組みで炉を設計しよう。
そして早速、デジモン達はたたら製鉄所の建造に取り掛かってくれた。
ブイモンはやる気熱心だ。DIYが好きなのかもしれない。
パルモンは蔓を長く伸ばし、器用な手先と強い腕力で、上手に施工をした。
マッシュモンは、あまり手先が器用ではないが、分身による人海戦術で施工をした。
コマンドラモンは、オタマモンとともに木炭の製造を進めた。
ワームモンは、糸で砂鉄をたくさん採集した。
各々が長所を活かしたおかげで、無事にたたら製鉄所の建設は完了。
そして、砂鉄と木炭を800℃近い高温で加熱した。
そうしてついに我々は、デジタルワールドで鉄器を製造することに成功した。
そうして、アクセスポイントを大きな鉄の部屋で囲った。
ひとまず、セキュリティはこれでいいだろう。
あとは、製鉄所を使って鉄製の農具や工具、武器や道具を作っていけば…
開拓はだいぶラクになるぞ!
しかし…キンカクモンのデジタマは孵化に時間がかかるな。
蛮族デジモンの子孫が成長期に育ってくれれば、こういう作業がもっとはかどるんだけど…。
さて。
そろそろププモンが溜まってきたころだろう。
オタマモンの餌に使うだけでなく、釣り餌にもなるププモン達。
パルモン、また離島に行って釣りを頼むよ。
「わかった!」
しばらくすると…
「わあぁ!?」
パルモンの叫び声が聞こえてきた。
な、なんだ!?
我々はデジドローンを飛ばして、パルモンの様子を見に行った。
怯えるパルモンの視線の先には…
ププモンの飼育小屋があった。
ただし、有機肥料から這い出たププモンを溜めている箱は…
…4体のカニ型成長期デジモン、ガニモンに破壊され、中のププモンを食い荒らされていた。