デジタルモンスター研究報告会   作:タマリリス

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シェル・ファランクス

ディノヒューモンの集落。

ここの住人達は殺気立っていた。

度重なる蛮族の襲撃に苛立ち、ついに蛮族の撲滅に打って出る気になったようだ。

 

農作業の傍ら、ブイモン、カメモン、スナリザモン、ワームモン等の成長期デジモンたちは、戦闘の鍛錬をしている。

 

スティングモンは、特にブイモン達へ力を入れてトレーニングをさせているようだ。

剣道のように木の棒で叩きあう試合形式の訓練もやっている。

 

先日の蛮族との戦いによって、エクスブイモンが命を落としたことで、スティングモンは今パイルドラモン及びディノビーモンへのデジクロスという最大戦力を喪った。

 

加えて、モスモンというナンバー2も同時に死んでしまった。

 

これまで農園を防衛できていたのは、ディノビーモンとモスモンという強大な戦力のお陰と言ってもいい。

それを喪った今、蛮族の撃退には手を焼いているようだ。

現在の最高戦力は、燃える体と鋭い爪を持つ爬虫類型デジモン、フレアリザモンだが…

ディノビーモンのように無双できる程強いわけではない。

故にスティングモンは、早く次世代のエクスブイモンを育て、デジクロスの力を復活させようと躍起になっているようだ。

 

ただし、あの戦いでは蛮族側もハヌモン及びゴリモンというトップ戦力を失った。

ジャングルモジャモンやセピックモン等のDP低めな成熟期はそれなりにいるが、ハヌモンやゴリモンと比べれば戦闘力は雲泥の差だ。

 

特にハヌモンは、不意打ちとはいえどレベル5のディノビーモンと刺し違えた怪物である。

…実際にはディノビーモンとの間には大きな力の差はあるが、パイルドラモンの鋭いパンチを何度もヒョイヒョイ回避した身軽さは成熟期の中では別格といえるだろう。

 

そんなわけで蛮族は、小競り合いを繰り返しながら、ヒヒ型のバブンガモン、原人型のフーガモン、ドリル付きモグラ型のドリモゲモン、そして人間の女性に極めて近い姿のキンカクモンを中心として、戦力増強を図っているようだ。

 

…さて、そんな緊張感が漂う中…

ついにディノヒューモンの集落では、一体のブイモンが成熟期への進化に成功した。

 

エクスブイモンではない。

翼が生えた竜型デジモン…コアドラモンとなった。

 

がっしりとした手足は、格闘戦が得意そうだ。

さらに、集落では昆虫デジモン以外で珍しく飛行能力を持っている。

 

コアドラモンは、空からの偵察を行い、蛮族の集落を監視した。

 

そして…数ある蛮族の集落のうち比較的小規模なものを発見した。

 

コアドラモンは、それをディノヒューモンへ報告した。

 

「コロリ!!ウホウホコロリ!フルフルコロリ!!」

 

ディノヒューモンはどうやら、この集落の蛮族を制圧することに決めたようだ。

スティングモンは、大きなリクガメ型成熟期デジモン…トータモンを呼んだ。

 

トータモンは、かつて我々がクラッカーから鹵獲したルドモン及びズバモンと血縁関係があることが判明している。

クラッカーは、トータモンのデジタマを採取し、そこからルドモンとズバモンを育て上げたのであろう。

 

スティングモンはトータモンになにか指示をしている。

「ノシノシ!!ウホウホ!プチプチ!」

「ガウゥ」

 

トータモンは頷くと…

スティングモンの指示のもとで、戦闘部隊を編成した。

 

今回の主力は、カメ型成長期デジモン、カメモンである。

 

部隊編成はこうだ。

まず、部隊の中心にはトータモンを据える。

 

トータモンの甲羅の上に、ワームモン2体が乗る。

 

その前方に、石槍を持った12体のカメモンが、2列に並んで隊列を作る。

 

そしてその上空を哨戒するように、蜂型成熟期デジモンのフライビーモンが飛ぶ。

 

以上が、今回編成された部隊だ。

成熟期2体、成長期14体…総勢16体で編成された大規模な部隊だ。

 

どのように攻め込むのだろうか。

どうやらこのフライビーモンは、コアドラモンから蛮族集落の場所を聞いているらしい。

 

コアドラモン自身は、農園を防衛しつつ偵察する任務を指示されているので、今回の作戦には加わらないようだ。

 

さて、いよいよ戦闘部隊が出撃した。

 

部隊は…

ゆっくりと歩き、蛮族集落のある方へ真っ直ぐに進んだ。

 

その歩みは決して素早くはない。

カメモン達は途中で弁当(トウモロコシやイモを焼き固めたもの)を食べたり、水たまりで水を飲んで水分を補給した。

 

真っ直ぐに、ゆっくりと、確実に前進し…

蛮族集落へ接近した。

 

突如フライビーモンが、ジージーとセミのような声を鳴らした。

 

それからすぐに、シャーマモン3体とジャングルモジャモン1体が接近してきた。

 

…だが、シャーマモン達は部隊を一瞥すると…

引き返して逃げ出した。

 

なんせ部隊はこれだけの数だ。

実際にぶつかり合う以前の問題として、強烈な威圧感を発している。

 

好戦的な蛮族デジモンといえど、少人数で戦いを挑むほど馬鹿ではない。

 

威圧感を放つトータモン部隊は、確実に蛮族集落へ接近していく。

 

やがてついに、蛮族の群れが飛びかかってきた。

シャーマモン4体、コエモン6体、ジャングルモジャモン2体、セピックモン1体。

計13体だ。

蛮族側もかなりの戦力を集めてきたようだ。

 

蛮族達は、戦闘部隊に襲いかかる…!

 

2列に並んだ最前線のカメモンの1体に骨棍棒で殴りかかるシャーマモン。

だが、カメモンは倒れない。

頭部は硬いヘルメット、胴体は硬い甲羅で覆われたカメモンの防御力は尋常ではない。

 

殴られたカメモンは、殴りかかってきたシャーマモンの腕を掴むと…

その両隣および後ろにいるカメモンが、シャーマモンを石槍でしこたま突き刺した。

 

悲鳴を上げ、倒れたシャーマモンは…

戦いながらも前進を続けるカメモンの群れに踏まれた。

 

そして、トータモンに頭から丸呑みにされた。

 

「キエエーーーーーイ!!」

 

一体で飛びかかっても勝てないと考えた蛮族の群れは、全員でいっせいに飛びかかった。

 

先程は一体で飛びかかったからあしらわれた。

だから同じことを大勢でやればいい…という算段のようだ。

 

襲いかかる蛮族デジモン達を見て、トータモンとフライビーモンが動いた。

 

トータモンは、なんと背中のトゲを1つミサイルのように発射し、ジャングルモジャモン1体へ放った。

 

ジャングルモジャモンの腹部へトゲが突き刺さる。ジャングルモジャモンは悲鳴を上げた。

 

フライビーモンは、ワームモンの一体を掴んで飛び、セピックモンへワームモンの口を向けた。

 

ワームモンは蜘蛛の巣のような糸を吐き、セピックモンのブーメランを手ごと糸で絡めさせた。

 

「ウキ!?」

農園のワームモンは、糸の粘着力に全能力を注ぎ込んだ種である。

それ故に、成熟期のセピックモンといえど粘着糸を破るのは容易ではない。

 

コエモン達とシャーマモン達は、最前線のカメモンに武器で殴りかかった。

 

だが、カメモン達がやったことは前と同じだ。

戦いながらも前に進み、武器の攻撃を受け止め…

隣と後ろのカメモンが石槍でカウンター攻撃をする。

そして体制を崩したコエモン達を転倒させて集団で踏み潰し…

最後にトータモンが鋭いクチバシで頭部を噛みちぎってトドメを刺す。

 

奇妙な光景だった。

コエモンやシャーマモンは、大勢で同時に攻めているはずなのに。

いざぶつかり合った瞬間には、常に「多vs個」の殴り合いという状況を強いられていた。

 

戦いながら前進するトータモン部隊は、どれだけ殴られようが止まらない。

 

「ウ、ウホーーー!!」

無傷のジャングルモジャモンが、コエモン達を助けようと、前線のカメモン達に飛びかかる。

 

…フライビーモンは、糸を吐いたワームモンをトータモンの上へ着地させると、待機していた方のワームモンを掴んで飛んだ。

そしてジャングルモジャモンの腕へ、ワームモンが粘着糸を吐きかけた。

 

「ウホゴォオオオ!!」

腕に粘着糸が絡んだジャングルモジャモンは、動きにくそうだ。

 

ワームモンが2体いたのは、一度糸を吐いたワームモンを休ませ、待機していたワームモンへと交換することで、強力な粘着糸の連続発射をするためだったようだ。

 

「ウ、ウホォオ!!」

糸を絡められたジャングルモジャモンは、腹にトゲが突き刺さったジャングルモジャモンや、ブーメラン投げを粘着糸で封じられたセピックモンと共に、カメモンをゴリ押しで殴り倒しにかかった。

 

いくらDP低めといえど、それはあくまで成熟期基準だ。カメモンより格闘能力は遥かに上。

殴り合いなら負けはしない!

 

護りの硬いカメモンも、さすがに成熟期のパワーでボコスカ殴られたらダメージが入る。

 

…そのうち、3体のカメモンは、セピックモンに掴みかかって動きを封じた。

 

「ウキ!?」

 

そしてセピックモンの体を、トータモンの方へ向けた。

 

トータモンは、長い首を振り落ろし、仮面で覆われたセピックモンの頭部へ鋭いクチバシを打ち付けた。

 

「ウギャガァアア!」

セピックモンの仮面が割れた。

 

「ガアアァ!」

カメモン3体に捕まって暴れているセピックモンに対して、トータモンはさらにクチバシを打ち付けた。

 

セピックモンの頭部からは噴水のように真っ赤な動脈血が吹き出し、セピックモンは地に倒れ伏した。

 

「ウホォオォォオ!」

ジャングルモジャモンは、シャーマモン達と共に、死にものぐるいでカメモン部隊を殴り倒そうとするが…

カメモン達は耐える。

 

さすがにカメモン達も疲弊してきている。

石槍がぼきりと折れたり、顔面を殴られて倒れるカメモンが現れ始めた。

 

「ウホッホォォ!」

ジャングルモジャモン達は雄叫びを上げた。

 

だが、フライビーモンに掴まれたワームモンが、ジャングルモジャモンの腕にさらに粘着糸を浴びせる。

 

粘着糸は硬化し始め、どんどんジャングルモジャモンの動きは鈍っていく。

 

カメモンの一体は、腹部にトゲが刺さっている方のジャングルモジャモンに狙いを定めると、腹部に刺さっているトゲに頭突きをした。

 

「ウゴホァアアアア!!」

 

カメモン達は、ジャングルモジャモンの腹部のトゲにかわるがわる頭突きをした。

 

「ゴ…ゴボオォ!」

 

ジャングルモジャモンの傷口から、真っ赤な血が吹き出す。

何度も打ち付けられたトゲが、ついに太い動脈を貫いたようだ。

 

「ヒ、ウホッヒイイイィィ!!」

 

地に伏し激痛に転げ回るジャングルモジャモン。

戦いながら前進するカメモン達は、それらを石槍で刺しながら踏みつけて、トータモンの前へ転がす。

 

「ガオオォォ!」

 

トータモンが長い首の筋力を活かしてクチバシを打ち付け、ジャングルモジャモンの頭蓋を叩き割った。

 

「ウ…ウホヒ…?」

残った方のジャングルモジャモンは、戦況を見渡した。

気付いたら、相方のジャングルモジャモンとセピックモンはどちらも死んでいた。

 

シャーマモン達とコエモン達の数も、ずいぶん減っていた。

 

…このままでは勝てない。

そう察した残党たちは…

 

「ヒ…ヒイィーー!」

 

踵を返し、背を向けて一目散に逃げ出した。

 

カメモン達は足が遅い。

全力で逃げる霊長類デジモン達に追いつけはしないだろう。

 

…だが。

トータモンは、ジャングルモジャモンの背へ、トゲをミサイルのように撃ち込んだ。

 

「ウホギャアアア!」

転倒するジャングルモジャモン。

のしりのしりとゆっくり接近したカメモン達は、転げ回るジャングルモジャモンを石槍で突き刺した。

最後にトータモンが、クチバシでジャングルモジャモンの顔面を叩き割った。

 

フライビーモンは、背を向けて逃げる残党のシャーマモンとセピックモンに飛んで追いついた。

 

そしてそれらへ次々と、毒針を突き刺した。

 

悲鳴を上げたシャーマモンとセピックモンは、そのまま逃げ続けたが…

麻痺毒が回り、ばたりと倒れた。

 

そしてカメモン達は、倒した蛮族デジモンを捕食してエネルギー補給をした。

 

…なんということだろうか。

負傷して戦闘不能になったカメモンは2体ほどいるものの、部隊は一体の戦死者も出さずに、成熟期3体+成長期10体の蛮族の群れを全滅させてしまった。

 

部隊はそのまま突き進み…

とうとう蛮族集落へ突入した。

 

トータモン部隊は、目標へ向かって真っ直ぐに突き進み、それを破壊するという戦術を取った。

 

家屋も、食料貯蔵庫も、幼年期の育成室も。

すべてを破壊して回った。

 

トータモン達を止めようと飛びかかってきた蛮族デジモンを、先程と同じ戦法で叩き伏せた。

敵わないと悟った残党は逃走し…多くが背後からフライビーモンの毒針で仕留められた。

 

そうしてトータモン達は、蛮族の集落を占拠した。

 

たまに蛮族デジモン達が集落を奪還しようとして攻めてくるが…

やめて諦めたようだ。

 

こうしてこの小集落は、トータモンの手に落ちた。

 

トータモンやカメモン達は、集落を開拓し、農園から持ち込んだ苗を植えて畑を開墾し始めた。

 

そのうち、今回の戦いで経験を積んだカメモンの一体がトータモンへ進化すると…

元祖トータモンは、ディノヒューモンの農園へ引き返していった。

 

…驚いた。

スティングモンが編成した亀デジモン部隊が、ここまで強いとは…。

 

ディノヒューモンが農耕の天才であることは間違いないが、彼の農園をこれまで蛮族から防衛してきたスティングモン…

あのスコピオモンの子孫であるスティングモンは、決して「デジクロスしたら強い奴」というだけではないようだ。

 

彼の血を受け継いだ我々のワームモンも、このように育ってくれるだろうか。

 

うーん…

トータモン達は優秀なデジモンだな。

組織行動ができ、防御力がとにかく高い。

 

デジタマが欲しいところだが…

コマンドラモンが透明化の力を失ったこともあり、デジタマ採取は厳しそうだ。

 

それをケンキモンの本体へ聞かせると…

「はやく デジタマをうんで かこのわたしのぶんしんを そだてなくては…」

…だいぶプレッシャーを感じてしまったようだ。

 

そんな話をしていると、シンが声をかけてきた。

「ようやくキンカクモンのデジタマが孵ったッスよ!」

おお、ついにか!

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