さて、翌日。後藤ふたりは相変わらずピンクジャージを着こなしながら、STARRYにいた。
入り口で、五分たったら入ろう!いや、十分、十五分……となる事となく、普通に入って今現在。テーブルを前にして椅子に座っている。
「はい!という訳で、記念すべき結束バンド、第一回ミーティングを始めます拍手ー!!」
ぱちぱちとマイペースに手を叩くリョウ、わー!と相変わらずキターンな笑顔で拍手する喜多と、合わせる形で手を叩くふたり。
「それじゃあえっと……。う~~~ん」
「思えば全然仲良くないからなに話せばいいかわかんないや!」
てへへな笑い方をする虹夏を見ながら、確かにその通りだと ふたりは思う。昨日会ったばかりだし。
実際、話題を振られても困る。ふたりは現状、ぼっち街道まっしぐらな為に、話題に出せそうなものなど生前の姉の奇行くらいなものだ。
腐る程に見て来たし、なんならパターン別に分けてるくらいである。
「練習はいいんですか?」
少し不安そうに聞くと、だいじょーぶ。と虹夏は答える。
「なんとか形にはなりそうだし、インストの予定だったけど、喜多ちゃん歌上手いしね」
救急、ギターがもう一人入ってくれた為に……とりあえず無理せず、喜多は間奏のみギターを弾いて、それ以外はボーカルに集中という形になった。
その間奏だって、ふたりも弾くので何とかなるだろう。的な感じである。
本当は、無理してギター弾かなくても良いのではともなったが、それだと間奏中にやることなくてオロオロしてしまうとの事なのでそういう話になったのである。
「わたしド下手ですけどね」
「うぐっ、その節はなんというか……」
めっちゃ引きずるふたりと、ぷっ、と笑うリョウ。
「まぁ、大丈夫!どうせ来るの、私の友達だけだし!普通の女子高生に演奏の良し悪しとかわかんないって」
「私はわかる」
ドヤるリョウと、何時もの反応をするイエスマン喜多郁代。
「とにかく!練習も大事だけど、ほら。私達って知り合ったばっかだし。こうやって交流を深めるのも大事だと思うの。
でもさっき言った通り、なに話したらいいか全然わかんないでしょ? そこでー……」
「こんなものを用意してきた」
出てきたのは大きなサイコロ。
ふむ、とふたりは思う。学校の話や好きな音楽の話は解る。
でも……バンジージャンプってなに?
「それじゃ、早速……ほいっと!」
ふたりがツッコミを入れる前に、サイコロを投げる虹夏。
「なにっがでるかな~なにっがでーるかなっ」
「ででてんでんででん」
「学校の話~!略してー」
「がこばな~」
息ぴったしな山虹コンビ。
はいどうぞ! と話を振られ、はぁい!と元気良く返事をする喜多ちゃん。
学校での過ごし方やらなんやらを彼女は語るが、リア充ではない作者には扱えない話題の為にカットである。
「どっちも秀華高だよね? 家ここら辺なの?」
「後藤さんは、確か家遠いのよね?」
「え、そうなの?」
「はい。片道二時間くらい。県外です」
「えっ、二時間!? なんで!?」
「えーと。わたしを知ってる人がいないとこに行きたかったからですね」
「はいっ、がこばな終了~!」
喜多のおかげで温かくなっていた空気が一気に冷え込む。
「あはは……わたしは別に、苦痛とか感じてないから大丈夫ですよ?」
生きてるのが既に苦痛だけど。
「……よし、次は……好きな音楽の話~!略してー」
「おとばな~」
そんな調子で、緩い雰囲気で会話が進む。
それぞれが好きな音楽で話題が進むのを眺めながら、そういえば、わたしって特に好きな音楽とかないなとふたりは思う。
昔好きだったのはいろいろあるが……。
「ふたりちゃんは?」
「わたしは……青春ソングとか、応援ソングとかは苦手ですね。なんていうか、お前に何がわか──」
「よし、この話はやめにしよう。はい、やめやめ」
そして再び終了のホイッスルが鳴り響く。
まずい、と伊地知虹夏は思う。
虹夏は、ふたりとの距離感をはかりかねていた。
喜多からの話だと、あまり誰かと一緒にいるわけではないが……話せばちゃんとハキハキ答える為に、あえて一人でいるリョウみたいなタイプだと虹夏は思っていた。
しかし、なんというか。こう、思ってたより地雷が多い。
喜多も、基本的に学校ではギターの練習でしか交流がなく、あえて孤高を貫く可愛くてかっこいい人だと思っていた。
イメージと違う為に起きるコミュニケーションエラー。
焦る虹夏と少しオロオロしている喜多。そして、なにくわぬ顔をしているふたり本人。
山田リョウだけは、この変な状況を楽しんでいるのだった。