昼休み。謎スペースに響くギターの音色。
喜多にギターを教える時間。
ふたりとしては、この時間が嫌いではなかった。
少しだけ、昔を思い出す。姉にギターを教えてもらった日々を。
すぐに飽きてしまったのが……今となっては勿体無い。
もっと。聴いておけば良かった。もっと。教えてもらっておけば良かった。
「……ん? 喜多ちゃん、どうしたの?」
彼女の音色が途切れた事に気付き、声をかける。
「え?……あ、大丈夫よ。ちょっと、疲れたのかも」
「そう? ならいいけど」
「……ねぇ、後藤さ──」
そこで、昼休みの終わりが告げられた。
「それじゃあまた、放課後にね!」
昼休みが終わり、喜多はバタバタと去って行く。
ふたりも、少し急ぎ気味にギターを片付けた。
放課後。前のミーティングの結果、今日からSTARRYでバイトをする事になった。
山田リョウの残した 『アットホームで和気あいあいとした職場です』というのが微妙に気になるものの、虹夏さんがいるから大丈夫だろうとふたりは思う。
「……」
最近は、何か一日が長いような。短いような。変な気分だ。
悪い気分……ではない。
でも、楽しいとは思わない思っちゃダメだ。わたしは楽しく生きたらダメなんだ。
ふぅ、と息を吐き出した。
それから放課後。喜多は少し用事があった為に、ふたりは先にSTARRYに来ていた。
「チケットの販売は五時からですよ」
階段を降りようとした矢先、そう声をかけられる。
そちらを向くと、長い金髪の目付き悪い女性がたっていた。
「───。まだ準備中なんで」
一瞬だけ、その眉がピクリと動いた事に、ふたりは気付かなかった。
「……店長さんですか?」
ふたりはそう尋ねた。虹夏の姉が店長やってるのは知ってる。
そして、間違いなくこの人は虹夏さんの姉だろうとふたりは判断していた。
主に頭のてっぺん辺りを見ながら。
「……虹夏が言ってたっけ、そういや。後藤、ふたりちゃん?」
「はい。今日から、お世話になる……予定です」
「……………そう。ま、中に入んなよ」
そう言って、歩き出す。
ふたり的には、もっと虹夏感のある朗らかな女性だと思っていたが、なんというか、厳しそうな人だと思った。
まぁでも、わたしもあんましお姉ちゃんと性格は似てなかったと思うし、そんなものなのかも。
そんな事を考えながら、階段を降りて中に入る。
「………」
「………」
気まずい。伊地知星歌と簡単に自己紹介した後、ほぼ会話なく時が進んでいる。
なんというか、ヤンキーな見た目とは裏腹に可愛い飲み物を口にする姿はギャップがあって良いと思うが、それはそれとして何か、すっごい見られている。
「えっと……」
「ギター」
「え?」
「ちょっと見せてよ」
まぁ、間が持たないし。見せるくらい別にと、ギターケースから愛用のギターを取り出す。
姉の。三代目ギター。
ソレを見て、星歌は目を細めた。
「……いいギター使ってんじゃん。大事にしなよ」
「はぁ……」
いいギター……なんだろうなと思う。いいねいっぱい貰えてたし。
「お!ふたりちゃんはやいね~」
そこに虹夏が現れて、ふたりはほっと一息つく。
「おはようございます、虹夏さん」
挨拶を返し、少し談笑する虹夏とふたり。
そんな光景を、星歌はどこか複雑そうに眺めながら呟くのだった。
「……後藤ひとりの妹、か……」
ライバルとして見ていたギタリスト。その妹がやって来て、自分の妹とバンドをする。
なんともまぁ……おかしな気分であった。
ちょっとした捕捉シリーズ
ふたりから見た他キャラの印象
喜多ちゃん→明るい子だけど結構変わり者。ちょっと苦手
リョウさん→野草を生で食うやべー奴
虹夏さん→唯一の常識人。お金の管理は彼女がやると聞いた際はホッとした。
他から見たふたりの印象
喜多→かっこ良くて可愛いギターの天才!でもよく寂しそうというか、辛そう通り越して痛そうな顔してて心配。意外と情緒不安定?
リョウ→後藤ひとりの妹。ギターヒーロー二代目。意外とおもしれー女。
虹夏→二代目さん!印象よりもだいぶ繊細そうでちょっとやりにくい。
キャラ捕捉
伊地知星歌
もと・御茶ノ水の魔王。星歌21歳の時ひとり19歳。
年齢近いのもあり、原作のような矢印は向いてなかった模様。原作ひとりと大槻ヨヨコっぽい関係だったと思われる。
ひとりが事故死して喪失感が癒えない内に母親もああなった為に、原作以上に情緒ぐちゃぐちゃだったが原作通りに復活出来た。