「さて、今日のお題はこちら!」
より一層バンドらしくなるには!
どどん!とスケッチブックを開きながら元気いっぱいな声がSTARRYに響く。
今日はミーティングというから、どんな感じかと思ったら、ずいぶんとざっくりしてるなとふたりは思う。
バンドらしく、という言葉に、山田リョウが少しつまらなさそうにした事に、ふたりは気付かない。
「いや、もちろん練習あるのみーっていうのは分かってるんだけどね?
でも、やっぱりそれだけじゃね? 前のミーティングの時も言ったけど、こうやって交流も深めなきゃね! いろいろ話をするのも大事でしょ?」
まずは形から入るのもありでしょ~、と虹夏と喜多は朗らかに会話を続けている。
実際のところ、今回のミーティングはふたりと喜多の為にやっているところがある。
最近頑張っている喜多ちゃんの息抜きと……ライブ後、少し壁が厚くなった気がするふたりのためだ。
壁に関しては気のせいかもしれないが、ふとした拍子に思い詰めた顔をしている事が増えたのは確かである。
「そんなわけで、まずバンドグッズ作ってきました!」
思ったより形から入って来たなと思いつつ、ふたりは尋ねる。
「……それ、結束バンドを腕に巻いただけじゃないですか?」
「え? かわいくない?? いろんな色あるよ~」
そう言って、色とりどりの結束バンドを取り出す虹夏を見ながら思う。
…………バンド名は、結局『結束バンド』で良いのだろうか。
絶対変えるから~! と言って頭を掻いていたが、結局しっくりきてしまったのか、物販で五百円で売るとか言ってる青いベーシストに言いくるめられたのか。
……結束バンド一本の値段は十円もないくらい。だったと思う。
そう考えると凄い。スーパーサイヤ人になる以上の倍率だ。確かアレは五十倍。
「サイン付きは六百五十円」
そんなぼったくり根性丸出しの発言に、いつのまにかイソスタ大臣に任命されている喜多は。
「安い!買います!」
とか言っていた。そういえば、ノルマ代を貢ぎたいとかなんとか言ってたなとふたりは思い出す。大丈夫だろうかこの子。
更に、やたらと高いファンクラブの設立を企む山田。
「年会費は一万円。年に一度のタコ焼パーティー。材料はファン持ち」
「安い!入ります!」
ことごとくファンを食い物にしようと企むベーシスト。
「あと、欲しい物リストを載せておこう」
「きゃーっ!私が全部貢ぎますー!」
おい、その先は地獄だぞ。
献身的というか、破滅への道を突き進んでいるようにしか見えない喜多ちゃん。
幸い、虹夏がいるからなんとかなってる感がある。
「………」
コーラを一口飲みながら、頭のモヤを取っ払おうとする。
わたしがここにいるのは、バンド活動だから。
わたしがここにいるのは、変に愛想悪い態度をとって雰囲気を悪くしたくないから。
自分なんかのせいで、いい雰囲気が悪くなるなんて。誰かが不幸になるなんて、あってはならない。
「………」
「……それともうひとつ!」
席を立った虹夏は、笑顔で言った。
「アー写を撮ろう!」
「アー写……?」
確か、最初のライブの前に撮った気がする。
「あれは時間なくて、仕方なく撮ったところがあるからね~。今は落ち着いてるし、今のうちにいいアー写を撮りたいなって思ってさ」
「いいですね!でも、ここで撮っちゃダメなんですか?」
「アー写ってのはバンドの方向性とかメンバーの特徴を一枚で伝える大切なものだからね。
ライブハウスの告知やフライヤーや雑誌……どんな媒体で使われてもインパクトがある事が大事!」
「じゃあ、気合い入れて撮らなきゃですね!」
「その通り!」
きゃっきゃと盛り上がる虹夏と喜多。
そんなこんなで、アー写撮影の為に街に繰り出すのであった。