そんなこんなで下北沢をうろつく事になった後藤ふたり。
青空の下、学校行事でもないのに集団行動は久しぶりだ。太陽の光が、やけに眩しく感じる。
まぁ、わりと楽だと思う。
基本的に虹夏と喜多が喋っているので、その後ろを着いていけば良いし、無理に喋る必要もない。
自分一人だけがそんな態度なら気にされたかもしれないが、幸いにもこのバンドには無口なリョウがいる。
その為に、口数の少なさは気にされなかった。
「あ!良さげな壁ありましたよ!」
いい感じの場所を見付けてはしゃぐ喜多と、でかしたー!とテンション高い虹夏。
それから、とりあえず一枚写真を撮った。
「うーん、メンバーのキャラは出てるけどバンド感が……もっとバンドっぽさを感じる要素が欲しいなー」
「んー……あ、楽器とか持ってくれば良かったですね」
喜多の言葉に、あ、とふたりは呟く。
「君達はね……!」
ふたりは知ってる。姉のバンドのドラマーが、そこら辺をめちゃめちゃ愚痴っていたからだ。
当時、七歳の自分に愚痴っても仕方なかったろうに。印象には残ったけど。
確か、アイツらのギターとベースを全部破壊(デストロイ)して、その残骸の上でドラムスティック掲げるアー写を撮りたいわぁ~とか言ってた。
「なら、『バンドマンのお手本たる存在』こと私の表情をマネしてみて」
なんだかよく分からないが凄い自信である。
まぁ、バンドマンを基本的にクズだと仮定するならば、ある意味リョウはお手本たる存在かもしれない。
「先輩の言う通りにすれば間違いないわ!ねっ、後藤さん」
「えっ……まぁ、他に案もないし、試していいんじゃない?」
「ん~……じゃあやってみよっか」
そんなノリで撮れた写真は、なんかお通夜のようだった。
「あ、じゃあ皆でジャンプとかどうですか?
絵になるし、皆の素の感じ出そうですけど」
「それいいかも!」
「有識者が言っていた……OPでジャンプするアニメは神アニメだと……。
つまりアー写でジャンプすれば神バンドになるのでは……!?」
せやろか。
まぁ、とりあえず試しにと、ジャンプして撮ってみた。
これで終わったらいいなと思う ふたり。そこで……
「あ、ふたりのパンツが」
「とんでもない写真が撮れちゃったなぁ~」
「…………えっ!?」
目を見開き、ふたりは思わず慌て出した。
「えっ、嘘!? あ、け、消して!消して下さい!」
露骨に慌てるふたりを見ながら、ニヤニヤしながらも虹夏は思う。
あー、これこれ。こういうかわいい反応。なんだろ、何故だか安心した……。
「ご、後藤さん大丈夫よ? ちゃんと伊地知先輩消してくれたみたいだから、もういっかい撮りましょ?」
「……」
意外な所でメンタルダメージを受けてしまったふたりだったが、こんなところで無駄な時間を使うわけにもいかない。
なんとか立ち上がり、そして今度こそちゃんとしたアー写が出来上がったのであった。
それから、現場はお開きのムード。
「あれ?リョウさんは?」
「そう言えばいないわね……帰っちゃったのかしら?」
「本当に自由なんだから……」
はぁ、とタメ息をついて、それじゃあお疲れと解散するメンバー。
ちょっと、困った。歌詞を書いて来たのだけれど。
みんなに見せるよりも、作曲するリョウには一番最初に見せるべきだと ふたりは考えていたので、終わったら見せるつもりだったのだが……。
「まだ、近くにいるかな……?」
ロインで、確認をとるとすぐ既読が着いた。
近くの喫茶店にいるらしく、ふたりはそこに向かった。
少しばかり安心する。今日中に歌詞を見せられそうだし……なにより、喫茶店に行ったという事はだ。
それはつまり、もう草食う生活は終わったという事だろう。