ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

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鬼滅の女

 

 

オーディションは終わった。なんとか合格出来たようで安心する。ダメ出しが始まった時はどうしようかと思ったが。

 

 

 

ふぅ、と息を吐いて……後藤ふたりは雲を眺めていた。

 

 

 

今、彼女は問題を抱えている。

 

 

それは、ノルマチケットだ。

 

 

ノルマ五枚。正直な話、気が引けるものの父と母に二枚は何とかしてもらった。

 

 

両親共々、自分がギターを弾くことを複雑に思っている……と思っていたが、父も母も非常に喜んでくれていた。

 

 

それはそれで、少し複雑だが。

 

 

 

 

…………なんにせよ、問題は残り三枚だ。姉は、犬のジミヘンにも売り付けようとしていたなとふたりは思う。

 

流石にそんな非常識な真似はしないが、それはそれとして困った。

 

 

何故なら自分には友達がいない。小学生から中学の友人達とは自ら距離をとったからだ。

 

今更、チケットを売るために連絡するような人間にはなりたくない。

 

高校になっても、会話はしても最低限。なるべく距離をとりながら生活している。

 

 

なので。やはり。チケットを売るために友達を作るなんてしたくない。

 

 

 

後藤ふたりにもう友達は必要ないと思ってつくらなかったが、まさかこんな状況になるとは……。

 

いや、今まで考えないようにして逃げていただけかもしれないが。

 

 

 

頭を抱えるふたり。昔、姉にいった……友達いないもんね! が、またしてもブーメランだ。まぁ、作れないのと作らないのは違うけれども。

 

ピロリンとロインが鳴る。恐る恐る見てみると、どうやら喜多も虹夏も捌いたらしい。まぁ、この二人は当然だろう。

 

特に喜多ちゃんは、十枚でも二十枚でも行けそうな感じだ。

 

 

この二人は良い。しかし、納得いかない。

 

 

 

 

『なんか売れた』

 

 

この人──山田リョウがしれっと売れている事実が、微妙に納得出来ない。

 

だって、理由はさておきこの人も友達いないと言っていたのだ。

 

 

自分と同じく、あえて作らないタイプのはず。

 

 

なのに、いったいどんな裏技を使って売り捌いたのか。

 

 

 

 

ますます困ったと、ふたりはまた頭を抱えた。

 

なんやかんや、リョウだけは仲間だと思っていた。だから、自分だけが売れてないという状況は避けられるはずだと。

 

 

しかし、結末はこれである。現実は厳しいね……。

 

 

 

「………」

 

今日練習来る?というロインに対し、チケット売るために頑張ってみますと返事をする。

 

 

親には、頼りたくない。心配をさせない為に、一応は友達がいるという事にしているからだ。

 

 

 

「……」

 

しかし、何も思い付かない。どうするふたり?

 

「………うっ」

 

頭を掻き毟るくらいに追い詰められていた所に、うめき声が聞こえた。

 

 

その方向に目をやると、なんと人が倒れている。

 

 

 

「──えっ。だ、大丈夫ですか!?」

 

思わずふたりは駆け寄った。こんな所で倒れるなんて。行き倒れ? 病気? 熱中症?

 

 

 

「み…ず…。お水ください……」

 

「水ですね!? ちょっと待ってて下さい!」

 

すぐに走りだそうとしたその瞬間、足首を掴まれてこけそうになるふたり。

 

 

「それと酔い止め…あとしじみのお味噌汁……おかゆもたべたぁい。介抱場所は天日干ししたばっかの布団の上で……」

 

「………」

 

 

あ、ただの酔っ払い(クズ)だ。ふたりは思った。

 

 

「………」

 

「……なんですか?」

 

 

急に大人しくなり、こちらの顔を見て……顔?

 

いや、一点を見つめるこの感じ────

 

 

 

「オロロロロロロロローーーーー!!!!」

 

「ぎゃっ……ぎゃあーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

幸い、衣服にかかる前に避ける事には成功した。

 

もういろいろキツい。正直無視して帰ろかと思ったものの、本気で具合悪そうだったので仕方なしに水を買いに行く。

 

 

 

「………はぁ」

 

 

そして、なんやかんやシジミのお味噌汁まで買ってしまった自分にちょっぴり自己嫌悪。

 

 

 

「ぶはぁ!しみるー!……ありがとねー。いやぁ、お水だけじゃなくて味噌汁まで買って来てくれるなんてー」

 

「そこまで買う気はなかったんですけどね……」

 

 

頬を引き吊らせながらふたりはぼやく。

 

 

「あ~……頭取り外して中身丸洗いしたぃ~……内臓取り出してお腹のアルコール絞り出したいぃ~……」

 

「…………」

 

ヤバい奴だ。本当にヤバい奴だ。

 

ふたりの頭の中で警鐘が鳴り響く。コイツは、姉のバンドメンバー並か……いや、下手したらあの人達よりもだいぶヤバい人種かもしれない。

 

 

なにせ既に、大量のパック酒を並べている。

 

倒れて、見知らぬ年下に水と味噌汁を奢ってもらい、そこからあの量の酒を呑もうというのだろうか?

 

 

「お酒はほどほどにぃ~……って、言ったそばから呑んじゃうんだけどねぇ! あはは!いえ~い!む か え ざ け ぇ !」

 

 

「……じゃあ、わたしはもう行きますので」

 

「あ、待って待ってぇ。お名前なんってーのぉ?」

 

「………後藤です」

 

「………後藤ちゃんかぁ~……後藤ちゃんも呑む? って、安酒だけど!

ん?後藤ちゃん未成年? って、あれぇ~聞いてるぅ~???」

 

コンクリートみたいに冷たいぞ!とか、やっぱお酒のむぉっくぁあッ!!!とハイテンションの女(クズ)を横目に、ふたりはそろりと逃げようとする。

 

 

 

が、退路にあった彼女の胃袋から吐き出されたブツを避けようとして、外回りしようとした際に出来た僅かなタイムロス。

 

 

「あ、ギターだぁ。弾くの?」

 

 

掴まってしまった。

 

 

「………まぁ、弾きますけど」

 

「お~。いいねぇ!私も楽器やってんだぁ、ベースだよぉ!」

 

 

こいつ……ベーシストか。ふたりは思う。

 

 

姉のバンドのベーシストもかなりヤバい奴であり、山田リョウもベーシストだ。

 

 

今のところ、ふたりの知るベーシストにろくな奴がいない。

 

 

「お酒とベースはぁ、私の命よりも大切な物だから。

肌身離さず持ってるんだよぉ」

 

「……?」

 

酒は解る。何処からともなく大量に展開していたからだ。

 

じゃあ、ベースは……?

 

 

「あの、ベースが見当たりませんが……?」

 

「………お店に置きっぱなしだ」

 

 

 

 

「取りに行くよ後藤ちゃん!」

 

「な、なんでわたしまで……!」

 

 

強引に引っ張られる後藤ふたり。

 

こけないようにしつつ、今日はとんだ厄日になりそうだと思うのだった。

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