ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

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主役の消えた世界の詩(ロック)

 

「後藤さんお願い!ギターの先生になって!」

 

「えっ……」

 

穏やかな春の風が舞う爽やかな外………とは裏腹に、埃舞い散る椅子とかなんやかんや置いてある謎のスペースで、後藤ふたりは喜多 郁代という、それはそれはこんな場所には似つかわしくないキラッキラの少女にそんなお願いをされていた。

 

 

 

 

 

少し時を遡る。後藤ふたりは、現状は十と五。女子高生となっていた。

 

ショートの髪を春の日差しと風に遊ばせながら、絶賛登校中なのである。

 

 

 

ぼろぼろだったあの頃と比べれば、とある目標が出来た彼女は多少は明るさを取り戻していた。

 

 

 

もっとも、完全に戻ったわけではないが。

 

「ふたりちゃん、おはよー!」

 

「おはよう」

 

笑顔で挨拶をするクラスメイトに、同じく笑顔で返す ふたり。

 

入学式からまだ一週間もたたないが、既に ふたりは注目を浴びていた。

 

綺麗な桜色の髪と、青空を映したような瞳。

 

普段はうつむき気味ではあるものの、姉と違い顎が二重になるレベルでうつむく訳でなく、短めに前髪を切り揃えている為にその綺麗な顔もはっきりと世界に晒している。

 

 

後藤ひとりに似ている彼女は、まさに美少女だ。

 

しかし、挨拶をしたクラスメイトは思う。

 

 

ふたりちゃんはとっても綺麗な子なのに……なんで、ジャージなのだろうと。

 

 

彼女が制服を着てきたのは初日だけ。後は、謎のピンクジャージだ。

 

クソだせぇピンクのジャージを、なんか妙に着こなす美麗な少女。キャラクターとしては実に強いものがあった。

 

 

まぁ、もっとも。後藤ふたりには他人とそんなに深く繋がるつもりは更々ないのだが。

 

 

 

「あ、それもしかしてギター? 弾けるの?」

 

「……うん。弾けるよ」

 

「へぇ、聴きたい聴きたい。今度聴かせてよ!」

 

「うん。まぁ、いつかね」

 

 

 

会話はそれでおしまい。実に淡白なものである。

 

最初は話しかけられる事も多かったが、それも若干減ってきた。

 

 

一応、話し掛けられれば笑顔で対応するし、当たり障りない応対は出来るしする。

 

 

ただ、遊びの誘いは家が遠い事やらなんやらを理由に断るし、食事等も適当に言い訳をして独りで食べている。

 

 

 

彼女は、友達等を作る気がない。というか、幸せになる気がないからだ。

 

 

表向きは明るくなってはいるが、あの日から本質は変わらない。

 

 

今でも自分を責めているからこそ、幸せになる資格がない。そう思っているのだ。

 

 

 

 

「……さて」

 

良い場所を見付けたとふたりは思う。

 

かつて、姉である後藤ひとりもまた愛した謎スペースを発見した ふたりは、そこで昼食をとっていた。

 

偶然であり、ふたりはそこが姉の住みかであったことは知らない。

 

 

可愛らしい弁当箱。中身は少ない。

 

これは、あの出来事以来、すっかり食が細くなってしまったせいである。

 

 

故に、当時の姉より背が低いし、どことは言わないがそっちも姉には負けている。

 

 

……まぁ、それでも後にバンドを組む事になる約二名よりかはあるのだが。

 

 

 

 

ご馳走さまでしたと一言呟き、早速とばかりにギターを取り出す。

 

学校に持ってきたのは勿論、練習をするためだ。

 

 

何せ、家から片道二時間程かかるのだ。中学の時程には、練習の時間を作れない。

 

 

出来るだけ、時間は有意義に使いたいなと思った為に、こうやって学校にギターを持ってきたのだ。

 

 

 

 

 

 

ふぅ、と息を吐いて……目を閉じる。

 

 

 

 

私は後藤ふたり。ギターヒーロー二代目。

今は亡きギターヒーローの音楽(ロック)を終わらせない為に。

少しでもあの音を、多くの人に響かせる為に。

 

 

わたしは生きている。

 

今日もわたしは。この世界にあの人を忘れさせないために。ギターを弾く。

 

 

 

 

 

人の通らぬスペースに、ギターの音色が響く。

 

 

とり憑かれたような音色。音の奴隷。そんな演奏。

 

 

伝わるのは鬼気迫る必死さ。意地。生きる理由。

 

 

 

歪(いびつ)ではあるが。それでもその演奏技術は高く、独特な雰囲気は確かに一部の心を掴む演奏。

 

 

 

 

……そして確かにこの日、一人の少女の胸を突き刺した。

 

 

 

心臓をぶちまけねば、取れないところまで。深く。

 

 

「感動!後藤さん、ギター上手いのね!」

 

「わっ……!」

 

 

独りの世界であったはずなのに、それを裂くようにいきなり声をかけられて、驚いてふたりはそっちに目をやる。

 

 

そこには、とびっきりのキラキラした笑顔を携えた、とても可愛らしい赤髪の少女が立っていたのだった。

 

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