ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

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遊びに行こうよ!

 

 

 

 

 

───それで。ふたりは何がしたいの?

 

 

「……わかんないよ」

 

 

 

何時もの悪夢の部屋。ふたりは、後藤ひとりの形をした自分の分身と向き合っていた。

 

 

──私の事を忘れて、楽しくやるの?

 

 

「……そんなわけ、ないじゃん」

 

 

 

胸が、ぎゅってなる。最初から解ってる。

 

コイツはわたしだ。わたしなんだ。

 

罪と罰の象徴。……だからこそ、コイツの言葉は刺さるのだ。

 

 

 

───幸せになりたいの?

 

「わからない」

 

───悲劇を忘れたい?

 

 

「無理だし、忘れちゃいけない」

 

───じゃあ、何時もみたいに独りにならなきゃねぇ。

 

「それも違うって、解ってる」

 

 

変わらないといけないんだ。向き合ってくれた人達に向き合う為に。その優しさに報いる為に。

 

 

今まで、言い訳ばかりでずっと、逃げてた。目を背けて来た。

 

一人でずっと、拗ねてた。小さな子供みたいに。

 

 

 

優しい両親。姉のバンドメンバー。結束バンドのみんな。ファンになってくれた人達。

 

 

そして……いつか、謝りに行きたい。昔の友達に。

 

 

小学生から中学生にかけて、手をとろうとしてくれた、かつての友人達に。

 

 

 

───そっ。まぁ、好きにしたら。

 

 

 

 

「……ねぇ」

 

「……ねぇ、お前なら、なにかわかる……?」

 

 

わたしがどうしたらいいか。どうしたら変われるか。

 

 

 

───さぁね。知ってても、教えてあげない。

 

 

 

 

「………」

 

まぁ、知ってる筈がない。コイツは、わたしなんだから。

 

 

 

───まぁ、どうしてもというなら教えてあげてもいいよ? 条件があるけど。

 

 

「条件? ……お姉ちゃんの虚言なら消さないよ?」

 

───……なんでそこはそんなに頑ななの。

 

「だって、お姉ちゃんの事を宣伝する為に……何時か、ギターヒーロー虚言集とか出したいし」

 

 

───待って。なんでそんな邪悪な事考えてるの……。

 

 

 

 

はぁ、とふたりはタメ息。何故か姉の姿のわたしは。変なとこだけ、本物にちょっと似てる。本当に、ちょっとだけ。

 

 

───よし、こうしよう。……冷凍庫のアイス食べていいよ。

 

 

「……ここ夢の中だし。それに、わたしもうそれで喜ぶ年齢じゃないよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、目が覚める。今日も押し入れで寝落ちしていた。

 

 

 

 

変わる。成長。前に進むという事。

 

思ってたよりも、どうすればいいか解らない。

 

考えても解らないし、最早魂に刻まれた罪悪感が邪魔をする。

 

でも、頑張らないと。もうあんな無様な『後藤ふたり』には戻りたくない。

 

 

再びタメ息。オーディションのときにも思ったけど、本当に難しい。

 

 

 

「………さて、準備しなきゃ」

 

今日は、約束がある。

 

 

結束バンドのメンバーで、遊ぶ約束。

 

断ろうとも思ったが、それだといつもの自分と変わらない。

 

差し出してくれた手を振りほどくのは、もうやめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ふたりちゃん!こっちこっち!」

 

駅で、迎えにやって来た喜多。駄洒落ではない。いいね?

 

お洒落な格好の喜多ちゃん。

 

 

対するふたりはピンクジャージ……ではない。

 

 

 

今日はギターを弾く予定がないし、バンド活動の一環でもない。

 

 

純粋に、友達と遊ぶ為の一日。

 

 

白いブラウスに青いスカートといった衣裳に、目をキラキラさせる喜多。

 

 

「やっぱり、可愛いわねふたりちゃん!……学校の制服も、ちゃんと着ればいいのに」

 

「……それは、まぁ」

 

 

………変わるのならば、ピンクジャージも着ない方がいいのだろうか?

 

いや、それは発想が極端な気がする。いやでも?

 

「ふたりちゃん?」

 

心配そうにする喜多に、ハッとするふたり。

 

 

「あ、いや、なんでもない、ごめん。……それで、今日はどうするの?」

 

「うーん、実はちゃんと決めてないのよねぇ~」

 

 

「……そうなの?」

 

「うん。だから、今からSTARRYで決めるのよ!」

 

そう言って、彼女はキターン!と笑う。

 

……今更だけど、この音は何処から出てるんだろうか。

 

 

「ねぇ、ふたりちゃんは何処行きたい? どんな事が好き?」

 

「え……えっと」

 

昔の自分を思い出す。好きな事は、たくさんあったはずだ。

 

探せ探せと、頭の中の後藤ふたりが記憶の段ボールをあら探し。

 

「……急に言われても困るわよね。STARRYに着くまでに、考えてみて!」

 

 

再び鳴り響くキターン!の音。

 

うん。その音源については考えなくていい。わたしのやりたい事を考えろ後藤ふたり。

 

 

 

 

 

 

しかし思い付かない!

 

変わろうと思った挙げ句この様である……。

 

 

 

お前は思ってた以上に薄っぺらい人間だね後藤ふたり……もしかしたら人間以下かもしれないよ。ミジンコ以下かもしれないよ。

 

 

 

 

「だ、大丈夫ふたりちゃん?」

 

「……大丈夫。生きてる」

 

 

 

そう言って、片手を挙げる。

 

とにかく、STARRYに着くまで時間はある。

 

考えろ、考えろ後藤ふたり。変わるんだ。そのために来たんだから……。

 

 

 

そう思って歩く後藤ふたり。

 

 

いや、そもそも。普段ならやらず避けてた事だからといって、遊びに行くのが変わるという事なのだろうか?それが成長に繋がるのか??

 

 

 

 

───なんか、もう早くもわからなくなってきたよ……。

 

 

「ふ、ふたりちゃん、本当に大丈夫……?」

 

「あ、はい。サイボーグです」

 

「ふたりちゃんが変なこと言ってる!?」

 

「あ、いや、噛んだだけ」

 

……まぁ、いいや。とにかく信じよう。

 

 

かなぐり捨てて来た事の中に、きっと答えはある。

 

 

そうして、ふたりはSTARRYの階段を降りるのだった。

 

 

 

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