ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

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出発前

 

「おはようございまーす!」

 

「おはようございます」

 

 

STARRYに入ると、既に虹夏とリョウがいた。

 

 

まだ朝だが、店長とPAさんもいる。

 

 

 

 

………あと、なんか廣井さんがいる。

 

 

 

 

なんでこの部外者の酔っ払いがいるんだろうと思うふたり。

 

いや、本当になんで。なんで酒呑みながらSTARRYの床に寝転がってるのこの人。

 

しかも、辺りにはパック酒の残骸が……。

 

 

 

「ニートは平日の朝からダラダラ酒飲めていいよな。消えねぇかな」

 

「ニートじゃないんですけど!」

 

 

ニートと呼ばれ、そこは否定する廣井。バンドマンだからニートじゃないという主張なのか、なにか職なりなんなり就いてるのか。

 

 

 

「おー、おはようさん……って、ふたりちゃん今日はずいぶん可愛いな……!」

 

「あれー?それって私服ですかぁ?」

 

 

ジャージ以外を見た事ない星歌とPAさんが、少し目を丸くした。

 

リョウは、ほう。と一言。分かってる事だけど、ふたりちゃんは可愛いんだよ! と言わんばかりにうんうん頷く虹夏。

 

 

「お!なになにー! おめかしして、どっか行くのぉ?」

 

 

起き上がる廣井らを見ながら、ふたりは少し顔を反らす。普通に、照れているのだ。

 

 

「いや、今日はギター弾かないので……」

 

「へぇ……普段はそういうの着るんだ?」

 

 

可愛いもの好きな星歌は、何時もより表情が明るい。

 

 

「んー? でも、ちょっと大きそうですねー?」

 

PAさんに言われて、ああ、とふたりは呟き。

 

 

「これ、お姉ちゃんのお下がりなので……」

 

「………後藤ひとりの」

 

「お下がり………?」

 

 

星歌と廣井は、その言葉に固まった。

 

 

「えっ、アイツそんな可愛い服持ってたの??」

 

ジャージかバンドTシャツくらいしか見た事がなかった。

 

廣井も、ジャージ以外のひとりを知らないので、じーっと眺めている。

 

 

「お母さんが買って来るんですけど、お姉ちゃん趣味じゃないって言って、着なかったんですよ」

 

 

「……ジャージは趣味なのか」

 

 

勿体無いなと星歌は呟く。アイツ、良く見ると美人だったんだが。

 

というか、ふたりがひとりに似てるので当然ともいえる。

 

 

 

「……お姉ちゃん、可愛いって言われても不服そうというか、納得出来ない顔する人でしたからね……。

かっこいいって言ったら、凄く喜ぶんですけど……」

 

少年みたいな趣向ですねー、とPAさんは思う。

 

 

 

「ジャージも別にかっこよくはないだろ……」

 

「ダサいですよね、あのジャージ」

 

 

 

再び固まる面々。ああうん、ダサいけど……。

 

「で、でも好きで着てたんだし、本人的にはかっこよかったんじゃ……?」

 

自分で言っておいてなんだがと、星歌は一応のフォローにはいる。

 

しかしふたりは首を横に振った。

 

「いや、お姉ちゃんも芋ジャージって言ってたし、かっこいいとは思ってなかったと思います」

 

「………じゃあなんで常にピンクジャージだったんだ……」

 

夏場でもあの格好だったぞ、あいつ。

 

 

 

ふたりもいつもあのジャージだが、理由聞くとわりと重い答えが帰って来そうなので星歌と廣井は問わなかった。

 

 

 

「ま、まぁいいや。遊びに行くんだって?」

 

ここら辺の話は、星歌からの粋な計らいもある。

 

丁度四人とも休みにしてくれたのだ。

 

 

 

「どっか行きたいとことかあるの?」

 

 

「………それを、今から話し合う感じですね」

 

まだ何も思い付いていない為に、頬が思わず引き吊るふたり。この表情は後藤ひとりっぽいなと星歌は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて!とりあえずどこ行こっか?」

 

椅子に座って、響く虹夏の元気な声。

 

 

本当にノープランなんだなと思ったものの、みんな、行きたい場所がそれぞれあるらしい。

 

「お洒落なカフェに、古着屋にハードオプ……あと、映画とか!」

 

虹夏が言って、映画、と呟く。最近は全然観てない。

 

 

リョウはよく映画鑑賞するらしいので、面白いのを知ってるのだろうと期待の眼差しをふたりは向けたら。

 

 

「……正直、映画は一人で見る派だけど」

 

そこまで言って、親指を立てる。

 

「任せて。最近公開された、素晴らしいサメ映画がある……!」

 

 

あ、ダメそうだ。ふたりは思った。

 

 

「ふたりちゃんは、なんか決まった?」

 

「……ちょっとまって下さい」

 

 

絞り出せ、絞り出せ……なんか。何かあるはず……!

 

「そ、そんな無理しなくても……ふたりちゃんのやりたい事を探すなら、とりあえず街をぶらぶらするだけでも良いと思うし?」

 

 

そんなフォローを受けつつも、あ、とふたりは呟いた。

 

 

 

「……ライブハウス」

 

「ん?」

 

「えっと、その……勉強にもなるし、他のライブハウスも見てみたいかなって……」

 

 

「あー……うん。良いんじゃない?」

 

そう言って、虹夏は笑う。ちゃんと自分の意見を出したのが嬉しい。

 

 

「……でも、大丈夫ですか?」

 

「うん? なにが??」

 

「いや、その……STARRY以外のライブハウスに行くのは裏切り行為にならないかなって……」

 

「ならないならない!」

 

変に考え過ぎるなこの子は!

 

 

 

「なになにぃ~? ライブハウス行くの~?」

 

そして、花の女子高生らの会話に割って入る酔っ払い。

 

 

「まぁ、まだ何処に行くかは決めてないですけど……」

 

「そっかそっか」

 

 

それを聞くや否や、廣井きくりはポケットをごそごそし。

 

 

「はい。これあげる」

 

この前のお礼だよと、チケットを取り出した。

 

 

「今日ライブすんの~。良かったら遊びに来なよ~」

 

「ライブ……」

 

この人のライブか。ふたりは思う。

 

ふたりは知っている。この人の実力を。

 

 

あの路上ライブでもかなり凄かったが、アレは全力ではないだろう。

 

 

正確には、初めての曲だから本来の実力は出せていないはずだ。

 

 

 

……ただ。売れてるのだろうかこの人。お金なさそうだし。

 

実力があるからといって、売れるかどうかは別らしいし。

 

 

 

「あ、お金出しますね」

 

ふたりだけでなく、三人にもチケットを渡す廣井。

 

山田リョウは、何時もの倍の俊敏さを見せてチケットゲット。財布を出す素振りも見せない。

 

 

「いーよいーよ、あげるあげる!」

 

 

「えっ、でも……」

 

「無理しないで下さい」

 

 

「えっ……君達、私が女子高生からお金巻き上げる貧乏バンドマンだと思ってる……?」

 

「違うんですか?」

 

 

「ちくしょー!」

 

 

そして、おにころをごきゅごきゅする廣井。

 

 

 

それから、インディーズでは人気バンドだと言い出した。

 

まぁ、あの実力だ。人気バンドやれそうではあるけれど。

 

 

話によると、虹夏の家でシャワー借りたりしているらしいこの人が、本当にそんなだろうか。

 

 

 

「SICK HACKのライブをタダで見れるなんて、胸熱……!」

 

「四苦八苦?」

 

 

リョウの話によると、本当に人気バンドらしい。

 

泥酔しながら歌詞がとんだり、観客に対し口に含んだ酒を吹き掛けたり、リョウは顔面踏まれたらしい。本人的にはいい思い出らしいが。

 

 

それを聞いてふたりは、成程と思った。

 

 

 

 

 

 

───お姉ちゃんと同じタイプのバンドか。

 

 

と、するとメンバーもこの人並にアレな人かもしれないなとふたりは思う。

 

「……でもお金持ってないですよね?」

 

「いやいや!本当にもうかってるから!」

 

「……なんか、虹夏さんの家でお風呂借りてるみたいだし、電車代とお水と味噌汁代もまだ返してもらってないですし……」

 

「……やっぱり巻き上げてるじゃねぇか!」

 

思わず椅子から星歌が立ち上がった。

 

「こ、これには深い訳がぁ~」

 

 

話によると、機材やらなんやら壊すせいで借金が増えているらしい。

 

つまり、自業自得である。

 

 

「ふたりちゃん。コイツから他には?」

 

「あ、廣井さんからはそれだけですけど……」

 

「そういやリョウ。カレー代、ちゃんと返したの?」

 

話題が飛び火するリョウは、知らんぷりを決め込もうとした。

 

 

………が、駄目!

 

 

 

 

 

「ク ズ ど も 」

 

「お金返すの遅くなって申し訳ありませんでしたって言え」

 

 

そうして、手元に返って来たお金を微妙な表情で受け取るふたり。

 

 

 

「……それじゃ、街行こっか」

 

「リョウ先輩!お金なら私が──」

 

「ほーら、甘やかさない!」

 

 

そんな会話を追って歩き出す。

 

 

「それじゃあふたりちゃん、また後でねぇ~」

 

そう言って、既に出来上がった顔で廣井は手をひらひらさせた。

 

 

 

………演奏は出来ると思う。路上ライブでもあれだけ飲んでしっかりやってたから。

 

しかし、アレでライブハウスまで辿り着けるのだろうか……。

 

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