青い夏空の下。少女達が街を行く。
最初はお洒落なカフェである。とにかく、喜多ちゃんのテンションが高い。
「店内のインテリアもセンスありますよね!
お店の中に雑貨屋さんも入ってるんですよ!」
とハイテンションで言って、やって来たケーキを写メりまくっている。
ふたりは、陽キャとはこんな感じで楽しむのかと少し目を白黒させた。
なんか、こう、お洒落な店でお洒落に時間を過ごすものだと思っていた。
具体的にどういう感じかと聞かれても、答えられないが。
喜多が写真をとりまくっている間に、ふたりは半分、虹夏は完食間近。
リョウはとっくに食べ終わり、自分の世界に入っていた。
「そういえば、みんなは休みの日はなにしてるんですか?」
ふと、気になって聞いてみる。
ギター弾いてるか、動画編集してるか、親の手伝いしてるくらいしかない自分よりは、充実した夏休みを過ごしているだろうと思ってだ。
聞いてみて、喜多は流石に凄かった。ほぼ毎日予定が埋まっているらしい。
流石に疲れるんじゃないかと思うが、本人はこの通りエネルギッシュだ。凄い。
リョウは映画観たり、古着屋巡りに廃墟探索。それから音楽関連のアレコレしてるらしい。
リョウさんは一応女の子だし、廃墟探索とかは危なくないだろうかと少し心配になる。
………まさかその際に野草等を調達しているのだろうか。
二人とも随分と充実している。
ただ、虹夏はわりと……なんというか、自分とあまり変わらない感じがするなとふたりは思った。
基本的に、バイトか家事。後は勉強。
ちょっぴり親近感。ただ、家事に関しては姉がアレらしくほぼ全部やっているらしい。凄い。
喫茶店から出たら、次は古着屋。リョウが、生き生きとコーデやらなんやらをしてくれた。
何気に自分で服等を買わない為に、勉強になる。結局自分はピンクジャージが基本だろうけど、下に着る物くらいはちょっと良い感じにしたい。
次にハードオプ。ここは完全にリョウの世界だった。
目を金にしながら辺りを探索するリョウパイセン。
……が、虹夏も意外にテンション上がっている。
ふたりとしては、こういうのも勉強したり拘ったりした方がいいのだろうかと二人に着いて行っていたが、喜多が珍しくポツンとしていたのでそっちに行った。
「あ、ふたりちゃん。……いいの?」
「……まぁ、わたしには良く解らないし。今の環境で音楽やれてるし、いいかなって」
変わろうと思ってこれはどうかと自分で思うが、それはそれとしてである。
「そっか。……先輩達はしゃいでるわね」
「リョウさんはともかく、虹夏さんはちょっと意外かも」
目を金にしながらニヤニヤとあれこれ手にするリョウ。
転売なりなんなりするらしいが、それで儲けてもまたすぐに草食う生活になるのはどういう事なのか。
ジュースを一口飲んで、ふぅ、と一息。
「ねぇ、ふたりちゃん」
「ん?」
「えっと……今日、楽しい……?」
「………」
少し、止まる。魂に刻まれた罪悪感で心が揺らいだ。
でも、だ。それでも………。
「うん。………楽しい」
楽しいのは本当だった。こうやって、みんなで街に出て、食べて、お店に入って……本当に、久しぶりだから。
特に、小学校低学年だったあの頃は出来なかった事は、初めての経験だ。楽しくないわけがない。
だから、笑おうとしたけれど、いつもみたいには笑えなかった。
本当に楽しんでいいのかという疑問と、変わるんだろうと問い掛ける自問。
その狭間で、絞り出した笑顔。
「………」
喜多の瞳に映るふたりの笑顔。
何処か辛そうで、泣きそうにも見えるけれど、ちゃんと笑っている。
何時も見せる作り笑いなんかじゃない、本当の笑顔。
「……うん、なら良かった」
そう言って、喜多も笑った。
今は、きっとこの笑顔で良いのだ。
少なくとも、手応えは感じた。進歩はある。
……何時か、最高の笑顔を見る為に。これからも。
「……よーし!冬休みは毎日みんなで遊びましょ!いっぱいいーっぱい思い出を作ろうね!」
キ タ ー ン !
「え……いや、流石に毎日はちょっと……」
バイトやバンド活動、プライベートもろもろの関係で、そもそも不可能だろう。
「お待たせ~」
そこに虹夏とリョウが戻って来た。
さて、次は何処へ行こうか。