とりあえず、映画館へと向かおうとするものの、上映まで時間がある。
近くにゲームセンターがあるので、とりあえずそこで時間を潰そうという事になった。
後藤ふたりは、何気に入るのは初めてかもしれないと思う。
両親と来る事もなかったと思うし、姉は多分こういったとこ行きたがらないだろうし。
クレーンゲーム。アレはとりあえず金食い沼だと知っているのでやらない。喜多ちゃんは向かって撃墜したけれど。
おとこぎコアラとやらが欲しかったらしい。
レースゲームやガンシューティングといろいろやってみるが、どれも難しい。
昔はゲームはむしろ得意だった気がするけれど。
ちなみに虹夏は太鼓ゲームやっている。
ジュースを買って、ふぅ、と一息。それからふと目に入った格闘ゲームをやってみる事にした。
「ほう……やる気かね」
そしたら、なんか妙に気取った口調の山田リョウ。
「ん?あれ?これ対戦する感じになるんですか?」
反対側にいたから気付かなかった。
「それ、ふたりが乱入してくる形になった」
「ああ、成程。……せっかくだから、やってみていいですか?」
「いいよ。このゲーム、キャラクター三人選んで全員倒せば勝ちなんだけど……ふたりは初心者だから、一人倒せたら負けって事にしてあげる」
「……それなら、いいですね」
一人くらいなら倒せるだろうと、軽い気持ちでふたりはてきとーにキャラを選ぶのだった。
「ふぅ、メダルゲームも結構遊べるねぇ」
「そうですね……」
結構遊んだなと休憩中の虹夏と、少しへこみ気味の喜多ちゃん。
そんなにあの変なコアラが欲しかったのかと、内心苦笑する虹夏。
「……ふたりちゃん。楽しんでるかな?」
「ええ、さっき話したら、楽しいって言ってました」
「そっか!……なら良かった!」
空き缶をゴミ箱にいれて、そう言えば今どこにいるかなと二人で歩く。
『どうしたァ!どうしたァ! 遊びは、終わりだァ!泣け!叫べ!そして死ねェ!』
案の定、リョウにぼこられているふたりの姿があった。
それを見ながら、大人気ねぇ~……と内心思う虹夏。
「………」
「………リョウさん、もう一戦やりましょう?」
「そしてこっちは意外に負けず嫌い!」
そもそもどのキャラがどんな動きが出来るかも解らないので、相手になるはずがないのである。
『月を見るたび思い出せ』
余談だが、リョウが使っているキャラクターもベーシストだ。
「……もう一戦お願いします」
「……」
そんな感じで十戦目。そこそこ戦って、リョウは負けてあげた。
ちなみにこれは後輩に花を持たせた良き先輩……という訳ではなく、これ以上ふたりに金を使わせたら奢って貰えなくなるかもしれないと考えた為である。
「あ、そろそろ時間だ」
「ん。じゃあ行こっか」
こうして上映時間。ついに始まるサメ映画。
「………」
正直、期待は出来ない。まぁ、ある意味面白いらしいが。
ちょっとスマホで調べたら沢山あるサメ映画。みんないったい、サメに何を求めているのだろうか。
今この瞬間も大海原を泳ぐ彼等に、どんな期待をしているのだろうか。
こうして映画館へと入って行き────
「面白かったですね、サメ映画!」
後輩ふたりはまさかの完堕ちしていた。
「まさかサメが大気圏外まで飛んで衛星を破壊するなんて思ってもみませんでした……!」
「感動のスペクタクル超大作だった。サメ映画にはずれなし」
普段無口なのにサメ映画で盛り上がる二名の背中を、そうかぁ? という顔で虹夏は眺める。
「喜多ちゃんはどうだっ──
「先輩の好きなものは私の好きなもの。先輩の好きな映画は神映画。先輩の……」
「喜多ちゃん!帰って来て~!」
後ろが惨事になってる事に気付かないサメフォロワーは、まだ語っている。
「他にどんなのがあります?」
「おすすめはこれ。エクソシストとサメが戦うやつ。
サメが直接人を襲うシーンがほとんどないから子供でも安心。
無駄に歩いてるシーン流して尺を稼いでるのもポイント高い」
熱心に話を聞くふたりの姿に、微妙な表情しか出来ない虹夏。
「あれぇ~ふたりちゃ~ん?」
そこに、今朝聞いた声が聞こえた。
「やっほ~」
「廣井さん……?」
なんでここにいるのだろうとふたりは思う。
ライブの時間考えるに、そろそろ……というかとっくに、リハの時間では?
「いやぁ、酒呑んでたら電車寝過ごしちゃってさ~……って、丁度いっか!新宿FOLTまで一緒行こ~!」
と、今朝と変わらずベロンベロンな廣井きくり。
「……あの、リハーサルとか大丈夫なんですか?」
「ん~……まぁ、へーきへーき!」
虹夏に肩を貸して貰いながらの酔っ払いを見ながら、ふたりは軽く苦笑する。
初めて行くライブハウス。そして、この廣井きくりのバンドメンバー。
どんな人達なんだろうかと、ふたりは新宿FOLTに入って行くのだった。