ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

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SICK HACK

 

新宿FOLT。……初めて来るライブハウス。

 

最初にSTARRYに行った時も少し緊張はしたが、今回は何故かあの時より緊張する。

 

 

 

「ここが私の活動してる箱、新宿FOLTでぇす!ささ、入って入ってぇ」

 

そう言って、酒瓶片手にのらりくらりと歩き出す廣井の背を追って、それぞれが歩き出す。

 

「何か、スターリーとは随分雰囲気違いますね~……」

 

珍しく、喜多ちゃんもちょっぴり緊張気味だ。

 

「だいじょーぶ!うちと変わらないよ」

 

と、笑顔で励ます虹夏。

 

 

 

ふと、ふたりはテーブル席を見た。すると一人の少女と目が合う。

 

 

 

「………」

 

 

なんか、凄く睨まれている気がする。

 

……が。普通ならば、流石に怖く感じるところだが──不思議と、彼女から恐怖心は感じなかった。

 

 

 

 

 

 

この少女──大槻ヨヨコと本格的に関わるのは、もう少し先の話となる。

 

 

 

「銀ちゃん、おっはよーう!」

 

「……あ?」

 

廣井きくりが一人の男性に軽い調子で声をかけた。

 

対する男性は……鋭く不機嫌そうな目付きで、ドスの効いた声で短く返事。

 

 

 

ふたりも、思わず心臓がきゅっとなった。こっちは怖い。

 

 

 

 

「………お姉ちゃんに会いたい」

 

こちらも普通に怖かったのか、虹夏もびびって涙目だ。

 

 

「……あぁん?」

 

眉間に皺を寄せて、少し困惑気味に結束バンドのメンバーを眺める男性。

 

「この子らが、前に言った結束バンドの子達だよぉ~」

 

「は、初めまして……」

 

 

緊張した様子で、虹夏は会釈した。

 

落ち着かない様子で、はらはらとふたりも成り行きを見守る……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらぁ~! 随分ピチピチの子達とお友達なのね~!

吉田銀次郎!三十七歳でぇす!」

 

好きな音楽は、パンクロックよ~! と続ける姿に、ポカンとする面々。

 

それを見ながら、廣井はケラケラと笑う。

 

 

「見た目とのギャップに脳がバグるよねぇ~。安心して、銀ちゃんは心が乙女なただのオッサンだから!」

 

 

ちなみに、さっき不機嫌な対応だったのは……リハーサル遅刻したにも関わらず反省の色が欠片もなく、しかも酒の臭いを撒き散らしながらイラッとするくらい陽気に話し掛けて来た酔っ払いのせいである。

 

 

 

 

「おい」

 

そこにまた響く、少し不機嫌そうな大人の女性の声。

 

 

「廣井。遅刻するなっていつも言ってるよな」

 

現れたのは、短めの黒髪をしたかっこいい感じ女性と。

 

 

「もうリハーサル終わっちゃいまシタヨー!」

 

むーっ、と頬を膨らませ、ぷんぷんと可愛らしく怒る、金髪の女性。

 

 

 

「……外国人?」

 

思わず呟くふたり。……この二人が、バンドメンバーだろうか……?

 

 

「……結束バンドの子達ですか?私、廣井のバンドのドラムスの志麻です」

 

黒髪の女性がそう声をかけ、虹夏が少し緊張した様子で返事。

 

 

「最近、うちの廣井がご迷惑をおかけしてるようで……」

 

つまらないものですがと、『お詫びの品』を手渡す志麻という女性。

 

 

 

 

………あれ? ちょっと信じられないくらいまともな人が出てきた……?

 

 

もっと姉のバンドのようなやべー奴等の集まりだとか、珍獣の森だとか思っていた為に、ふたりは困惑中だ。

 

 

「ワタシ、イライザ!イギリスに十八歳まで住んでマシタ!日本、サンネンメー! 仲良くしてネー!」

 

と、エネルギッシュに可愛らしく自己紹介。

 

テンションがちょっと苦手だが、やべー奴感は特にない。

 

 

邦ロックが好きなのかと聞かれると、彼女は苦笑混じりに首を横に振った。

 

「アハッ……ノン!コミケ参加したくて日本キタノー。

本当はアニソンコピーバンドしたいネ」

 

 

 

……アル中の酒カス。真面目で大人なイケメン女性。陽気な日本アニメ大好き娘。

 

 

 

 

───接点は、なんだ??

 

 

 

「それじゃ、私達は準備してくるからぁ、ごゆっくり~」

 

 

そう言って、廣井きくりはメンバー達と共に楽屋裏へと。

 

 

 

 

そうこうしてる内に、どんどん客が増えていく。

 

 

 

この新宿FOLTを埋め尽くさんばかりのお客さんの数には、ふたりとしては驚きと納得が入り雑じる。

 

 

 

まぁ、メンバー二名がまともなのと、スリーピースなのには驚いた。

 

 

 

しかし、リョウの話的にはやはりアレなバンドではあるのだろう。

 

 

廣井きくりだけがはっちゃけたバンド。

 

 

 

後藤ふたりは、ふと思う。もし、姉がまともなバンドにいたらどんな感じになったのだろう。

 

 

……いや、まともな人達ならば姉はいろいろと持て余すかもしれないが。

 

 

 

まぁ、もしもだ。姉の奇行を受け入れられるくらい器のでかい、ある程度まともなバンドと組んだら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………例えば。この『結束バンド』のような。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、リョウ先輩は?」

 

きょろきょろとリョウを探す喜多の声に、ふたりは思考を中断して、ん?と呟く。

 

 

「前の方にいるんじゃない?」

 

顔踏まれたらしいし。そしてそれが良い思い出らしいし。

 

 

そんな予想を裏切り、リョウは一人後方の椅子にいた。

 

ドヤ顔をしながら、腕を組んだ姿勢で確かにそこにいた。

 

 

 

 

「……ふっ。『音』を聴け『音』を!」

 

 

「…………」

 

 

なんというか。なんというか、ふたりは察した。察して特に何も言わず近くまで行く。

 

 

 

「そういえば、どんな感じの曲とかやるんですか?」

 

 

我等がリョウさんはファンなので、どんなジャンルか知ってるだろうと尋ねてみた。

 

 

話によると、サイケデリックロック。そこからすっごい早口で……いつも口数少なめな彼女とは思えない程に長い説明が入った。

 

 

長いし早口で、あまり頭に入らなかった。まぁ、今から演奏だし直接聴くのが一番か。

 

 

 

 

 

幕が、上がる。歓声が響く。

 

 

ふたりもまた、食い入るように舞台を見詰めた。

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