ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

37 / 99
とっておきの唄

 

 

「文化祭? いいじゃん!出よう出よう!」

 

気付けば修羅場が終わり、ニコニコ笑顔な虹夏がいた。

 

 

 

山田リョウの、家の机じゃないとまったく勉強が頭に入らないという発言により、勉強会はお開きとなったのだ。

 

 

 

「ここでやるのとは違った良さがあるよ~」

 

虹夏とリョウは、中学の時に文化祭でライブした事があるようだった。

 

リョウが別のバンドにいた事は知っていたが、虹夏も別のバンドにいたのだろうか。

 

それとも、中学での文化祭のためだけのバンドだったのか。

 

 

 

「マイナーな曲弾いて会場お通夜にしてやった」

 

虹夏がどんなライブをしたのかは解らないが、山田リョウはそんな事をドヤ顔で言った。

 

 

 

 

……その時のバンドは、文化祭の為の即興バンドだったのか、それとも以前いたバンドだったのか……。

 

 

後者なら、売れ線に走るようになった理由って………。

 

 

 

そこまで考えて、ふたりは考えるのをやめた。

 

「私もリョウと文化祭ライブしたことないし、出たいな~」

 

「じゃあ、決まりですね!」

 

喜多がとても嬉しそうに笑いながら、両手を叩く。

 

みんなやる気であり、既に結束バンドの空気は温かい。

 

「………」

 

 

そんな光景を眺めながら、心はモヤモヤ。ふたりは思う。

 

この気持ちに折り合いをつけるには、きっとこの気持ちそのものに慣れなきゃいけない。だから、場数を踏みたい。

 

 

 

 

………そして。出来るなら。叶うなら。いつか、心の底から───。

 

 

 

 

───願っても、いいのかな?

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、三曲。全部、結束バンドのオリジナル曲で行こう」

 

リョウと虹夏の話から、そういう方向に進んでいた。

 

「でも、全部オリジナルはちょっと攻め過ぎじゃないですかね……?」

 

少し不安そうに喜多が言って、確かにとふたりは思う。

 

でも、それほど心配していない。なんというか、喜多ちゃんの人気は学年で凄いので、キターン!でごり押せそうな気がしなくもないからだ。

 

 

「他にも文化祭出るバンド、全部コピーバンドでしたよ?」

 

「ん~そりゃ勿論、コピー曲のほうが盛り上がると思うけど! 私達は結束バンドの曲を皆に聴いて欲しいからね~。

こんなバンドがあるって、知ってもらうにはこれが一番かなって」

 

そう言って、ニコニコ笑う虹夏ちゃん。

 

 

「それに、文化祭なんてよっぽどじゃない限り盛り上がるもんだよ!」

 

そんな虹夏様の御言葉に、うんうんとふたりは頷く。

 

 

それこそ、喜多ちゃんがキタキタキッタ~ン!!!と盛り上げてくれる事だろう。………。

 

 

 

 

「まぁ、まれに例外はあるけど……」

 

と、希有な例外を作った人が呟いた。

 

 

「大丈夫。仮に滑っても怖くない。四人いるから、痛みは四等分……」

 

「……リョウさん、さっきのドヤ顔でした話って、もしかして強がりだったりしますか?」

 

 

突然、ヤル気だったにも関わらず弱気な発言をかましたベーシストに、ふたりは疑いの目を向けた。

 

すると山田リョウは、少し固まって。

 

 

 

 

「………たまに、お通夜状態になったライブたまに夢に見る……」

 

 

まさかあんなにしらけるとは……そう呟いて、リョウは机に突っ伏した。

 

「リョウ、みんなにも同じトラウマ植え付けようとしてない?」

 

 

はぁ、と虹夏はタメ息。そんな様子を眺めながら、青春ですね~とPAさんは呟く。

 

 

 

ちなみにこの話題が出た際に、なになに?ライブすんの~!?とはしゃいだ廣井きくりの姿はここにない。

 

何故なら、奴はその直後に酔いが回りきり、見事な粗相を働き追い出されたからである。

 

 

 

「………」

 

やる気が漲るメンバーを一瞥し、眉間に皺を寄せながら星歌はパソコンとにらめっこ。

 

多分、晴れ舞台を観に行く為に予定を調整してるんでしょうね~とPAさんは思うのだった。

 

 

 

 

そんなこんなで、今日は解散。

 

 

一人、ふたりは歩く。文化祭。姉にとって、叶えた夢のひとつ。

 

自分にとっては、通過点……なのだろうか。

 

 

少し目を閉じる。イメージする。舞台の上で、みんなと一緒に……クラスの人達が観る演奏。

 

 

 

 

どくんと動く心臓。少しだけ熱くなる身体。

 

 

……それと相反するように。

 

 

──ねぇふたり。本当に良いの? なんで、そこにふたりが立つの?

 

 

 

そんな声が聞こえた気がする。ダメ、弱気になるな。

 

電車に乗り、座る。

 

 

お姉ちゃんがそんな事を言う訳がない。思うわけないって知ってる。お前がそんな奴なのを、お姉ちゃんのせいにするなよ後藤ふたり。

 

 

胸を押さえつけ、身体を丸めた。一人になった途端に、襲い来る自分。さっき感じたモヤモヤ。罪悪感。

 

ここで、負けるな。変わらないといけないんだろ? また、迷惑をかけるぞ。

 

ぎゅっと、目を閉じる。考えるな考えるな考えるな────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────とぅいんくるとぅいんくる りとるすたー。

 

 

 

 

ハッと目を開けた。ふいに頭に浮かんだあの景色。

 

それが、心のモヤモヤを。暗雲を振り払ってくれた。

 

 

ふっと、少しだけ微笑んで……ふたりはぎゅっと、ギターケースを抱き締める。

 

 

 

 

 

 

 

────うん。頑張る。……ありがとう、お姉ちゃん。

 

 

 

ガタンガタンと、電車は揺れた。

 

「……とぅいんくる とぅいんくる りとるすたー」

 

まばらに利用する乗客達に聞こえないように、ふたりはひとり、小さく呟き歌った。

 

 

 

はうあいわんだー わっゆーあー。

あっぷぁばうだ わーそーはい。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。