ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

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同じ高さまで

 

 

 

それから、ふたりは結束バンドと共に文化祭をまわる。

 

お化け屋敷、クレープ、射的に……秀華高校の文化祭は、本当に充実していた。

 

 

 

 

中学の頃。文化祭になんて興味がなかった。

 

楽しむという事に興味がなかった……わけでは、なかったんだと今なら思う。

 

 

ずっと蓋をして、独りになっていた。光に目が焼かれないように。

 

 

 

 

だって。幸せになる資格なんてない。

 

 

 

 

 

 

でも、今。こうやって文化祭をバンドメンバーと……『友達』と、歩きまわっている。

 

自分で限界を感じるまで追い込んで。差し出された手を取って浴びる光は、目なんて焼かない。優しい光。

 

 

 

 

でも、それでもまだ闇は晴れない。そこから伸びる自分の手が、心を掴む。

 

 

 

「……とぅいんくるとぅいんくるりとるすたー」

 

 

でも、大丈夫。前に、虹夏の言ってくれた言葉を思い出す。

 

 

 

 

 

『……でもね、そんな時は何時も思い出すようにしてるの。お母さんが昔、言ってくれた言葉』

 

 

 

 

 

自分にとっての、魔法の言葉。

 

ちょっとだけ心を軽くして、ちょっぴり前に進むためのちっぽけな魔法の歌。

 

とっておきの唄。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~……いやぁ、本当にすっごく充実してるねぇ~……」

 

うちとは大違い。と虹夏はちょっぴり苦笑。

 

 

「ふたりちゃん、大丈夫?」

 

少し調子悪そうに座るふたりに喜多が声をかけた。

 

ふたりは、大丈夫ですと苦笑する。

 

 

「なんっていうか……こういうお祭りって久しぶりで……歩き疲れたっていうか、目が回ったっていうか」

 

本当に、不思議な気分だ。

 

 

最近は本当に、世界が廻ってる気がする。

 

置いて行かれないかと、少し不安になったり、むしろ置いていかれて良かったのではと思ったり。変な気分だ。

 

 

 

でもね……今は、悪くないよ。きっと。

 

 

「……その、ありがとう喜多ちゃん」

 

「え?」

 

 

不思議そうに目を丸くする喜多に、少し気恥ずかしそうにふたりは言葉を続ける。

 

「いや、その……あの日、喜多ちゃんがわたしに話し掛けてくれなかったら、きっとわたしはまだ……独りでギター弾いてたんだろうなって……」

 

独りで、いじけながら。

 

 

 

 

 

そう、初めて学校にギターを持って来たあの日。

 

 

─────空が割れた日。

 

だから、ふと……お礼を言いたくなった。

 

 

 

「……どういたしまして」

 

ふたりの言葉を受け取って。少し考えてから、喜多はそう言って笑う。

 

「ねぇ、ふたりちゃん。私ね……自分を変えたかったの」

 

「……え?」

 

「勿論、前に言ったみたいにリョウ先輩が目当てでギター始めようと思ったんだけどね?」

 

普段、決して見せない陰のある表情。

 

……喜多ちゃんも。喜多ちゃんだって、こんな顔するんだ。

 

「私って、自分で言うのもあれだけどそこそこ勉強も運動もできるのよ。友達だって多いし。

……でも何かが特別秀でてるわけでもないし、ほんとふつーっていうかね」

 

ポツリポツリと、彼女は言葉をもらしていく。

 

「楽しいんだけど、味気ない人生だなってぼんやり思ってて……。

リョウ先輩の路上ライブ観た時にね? 普通じゃない道を歩いてるのが羨ましいなって思って」

 

 

そこまで言って、目を閉じて……ふーっ、と喜多は息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

……そっか。形はどうあれ、喜多ちゃんも変わりたいんだ。

 

こんなに優しくて、素敵な人でも、変わりたい。変えたいって。

 

───そこは、わたしと同じだね。後藤ふたり。

 

変わるって。やっぱり難しいよね。

 

 

 

 

「でも、買ったギターはベースだったし……多分、あのままだと私、逃げ出しちゃってたと思う。

そして、ずっとそんな自分を許せなくて、ずーっと苦しみ続けたのかも」

 

表面上は、明るく振る舞う事が出来たかもしれないけど。その傷跡は、きっと腐っていったと思う。そしたら、いつか私は───

 

 

 

「………」

 

 

 

 

自分を許せない気持ちは、よく解る。それが、どんな形であれ。

 

大も小もない。他人よりも、ずっとずっと、自分を許すのは難しいんだから。

 

 

「──だからね?」

 

「私にギターを教えてくれて。大切なギターを貸してくれて ありがとう、ふたりちゃん」

 

 

そう言って、喜多郁代は微笑んだ。

 

少しだけ言葉に詰まって。だけど、後藤ふたりも微笑んだ。

 

「……どういたしまして」

 

そして、さっき彼女が言った言葉を、自分も贈った。大切な友達に。

 

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