未確認ライオット。とりあえず参加する事に決まった。
緊張が抜けて、ふたりはどっと疲れた気がする。
なんというか……みんな同じ気持ちで。あんな話をされた後でも、みんな変わらずで嬉しかったのだ。
「……そういえば、なんでわたしがギターヒーロー二代目って知ってたんですか?」
話を聞いてみると、最初の演奏で気付いたらしい。癖と、ギターで。
「二代目さん。……ふたりちゃんに、演奏する楽しさを知って欲しかったから。だから、誘ったの」
そう言って微笑む姿に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
リョウとしては、二代目を迎え入れる事で昨日みたいなトラブルがある事を予見していたものの、虹夏の意見とほぼ同意だったらしい。
リスクを知った上で、この結束バンドに迎えてくれた事が嬉しかった。
ちなみに、喜多ちゃんはふたりを凄い凄い言ってたので、実は知ってると思っていたらしい。
それはさておき、デモ審査。ウェブ審査。ライブ審査があって、最終審査はフェス形式でやるようだ。
未確認ライオット………。
「……そう言えば、お姉ちゃんも出ようとしてたっけな」
ふと、思い出した。多分。確か、これだった。と思う。
「そうなの?」
「凄いバンドだったんでしょ? どこまで行ったの?」
虹夏と喜多が興味本意で聞いてきて、えーととふたりは思い出す。
参加しようとしたキッカケは、小遣い稼ぎの為。だったはず。
優勝賞金の百万円に目が眩んだバンドメンバー達は、ひとりをめっちゃよいしょして乗り気にさせて参加を決意。
『山分けして一人二十万。後は活動資金な!』
とか言って、妹ちゃんにもベース買ってあげますよ~とベーシストがベース押し付けようとしていたっけか。
何故か姉を除き、誰も自分達の優勝を信じて疑っていなかった。そして結果は────
「デモ審査で落ちた」
その言葉に、思わず表情が引き吊る虹夏と喜多。
「え……かなり実力あるバンドだったんでしょ?」
「まだ、それほどでもない時期に参加したとか……?」
「いや、実力の問題じゃなくて……わたしも聞いた話だけど、普段の奇行が有名過ぎて、こんな奴ら出したら滅茶苦茶になるって判断されたみたいで……」
「………あー……」
「……素行には気を付けましょうね」
微妙に盛り下がってしまったが、まぁ、気を取り直そうと虹夏は咳払い。
ちなみに、デモ通ったら秘密裏にベーシストが、優勝を磐石なものにするべく……参加者を一人一人闇討していこうというとんでもない計画を一人考えていたので良かったかもしれない。
姉の仲間達で前科者が出るという事態は避けれた。まぁ、流石に実行に移す前に他のメンバーが止めたと思う。流石に止めたはず。信じたい。
なんにせよ、まずはデモ審査。締切は四月。
それまでに曲とMV等を作り等々たくさん活動していかなくてはならない。
これから忙しくなりそうだ。
ちなみに優勝賞金が百万円も出ると知った店長星歌が。
「思う存分ここでライブしなよ。分け前五十万な」
とか言っていた。冗談なのかよく分からないが、ふたり的には結束バンドが優勝すること前提なのはちょっぴり嬉しかった。
それから、同世代の人気バンドのチェック。リョウが、即興で調べてくれた。
都内中心に活動しているエレクトロロックバンド、ケモノリア。
大阪のなんばガールズ等。
そして、最近『新宿FOLT』で活動中のメタルバンド……SIDEROS。
前に廣井きくりのライブを見る為に行った、あのライブハウスで活動してるらしい。
「このギターボーカルの大槻ヨヨコって子がリーダー。結成一年足らずでワンマン出来るくらい人気みたい」
その姿は、ふたりには見覚えがあった。
新宿FOLTに行った際に、椅子に座ってこちらを見ていた人だ。なんとなく、印象に残っていたのである。
「一年足らずで……」
凄いなと思う。わたし達、結束バンドも一年たってないけど……。
「活動自体は三年前からしてるらしい。けど……」
三年前から活動はしていた。その情報に、少しだけホッとする。だいたい同じくらいなのにそこまで差があるのかと思ってしまった。
ちなみに、話によるとメンバーをクビにしまくってて現メンバーでは一年目らしい。
まるで暴君な話に、虹夏と喜多が少し引き気味だが、ふたりは小首を傾げる。
何故かは解らない。でも、この人はそんなに怖い人に思えなかった。何か事情があったのでは? なんて思ってしまう。
「……同世代に、これだけ活躍してる人達がいるんですね」
喜多がポツリと呟く。当面は、この人達が目標という事になるのだろう。
まだ半年ちょっとの結束バンド。曲はもちろんの事、知名度が圧倒的に足りない。
「私達のオリジナル曲は、今三曲しかないから後一曲……それでミニアルバムを作って、MVも撮ろう」
「だから次の曲は最高の一曲を作ろう。その曲を、デモ審査に送る!」
リーダーの虹夏の言葉に、ふたりは少し喉を鳴らす。プレッシャーだ。
でも、頑張ろう。あの女が言った事は、全部でたらめだって証明したいから。
みんなが、ガチじゃないわけがないんだ。
「……リョウさん、頼みにしてますよ?」
「まぁがんばるわ」
少し緊張をほぐそうと思って声をかけると、リョウは素っ気なく返事をした。
「………?」
素っ気ない反応には慣れているが、なんとなく何時もと違う気がして小首を傾げる。
……案外、ガラにもなくプレッシャーを感じてたりするのだろうか?
「ふたり」
「……はい」
「作詞作曲者には印税が入るんだぜ。
タワマン住めるくらいの凄いの作ろうぜぇ」
そう言って、サムズアップする姿にふたりは苦笑する。
……まぁ、リョウさんなら大丈夫かな。と思う反面、なにかあったら力になりたいなとふたりは思う。
なんやかんや、作詞の際にアドバイスをもらったり、相談に乗ってもらったりとこの人には世話になってるのだから。金銭的な意味でお世話もしてるけれど。