ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

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大槻ヨヨコの憂鬱

 

 

 

 

「SIDEROSと結束バンドがゲスト出演……!?」

 

 

新宿FOLTにて、大槻ヨヨコの荒げた声が響く。

 

その声を向けられた廣井きくりは、にへら~と笑いながら、いやぁ、と頭を掻く。

 

「元々前座で出る予定だったバンドが出られなくなっちゃってさ~」

 

ヨヨコは、ムスッとした顔をますますムスッとさせた。

 

 

 

 

大槻ヨヨコ。彼女は廣井きくりをとても慕っている。

 

 

かなりの実力があり、自分と親しくしてくれる人物であるからだ。

 

「あんな無名バンド出してもメリットなんてないです!シデロスだけで十分ですよ!

真面目に考えてますか!?」

 

ぷりぷりと怒る可愛い後輩の姿に、ちゃんと考えたってばと廣井は困ったように笑う。

 

「大槻ちゃん、メンバー以外友達いないし。友達作るいい機会かな~って……」

 

あの子達、優しいし。きっと、大槻ちゃんとも上手くやれると思うんだよね~。

 

 

そんな想いからの言葉だが、友達いない発言にヨヨコはビクリと肩を揺らした。

 

「とっ、友達はいます!」

 

そして、思わず否定。そうなの? と少し不思議そうに……でもちょっと嬉しそうな廣井に対し、ヨヨコは言う。

 

「ライブに来てくれる皆……あと、トゥイッターのフォロワー!……とかも入りますよね?一万人はいます!」

 

「いや入らない」

 

大槻ヨヨコ、起死回生の発言!それに対する廣井きくりは………完全に真顔だった。

 

 

「……が、楽器屋さんの店員さ──

「入らない」

 

再度、廣井に真顔で言われてヨヨコは撃沈した。ヨヨヨ。

 

「……じゃ、そんなわけで当日よろしく~~!」

 

気を取り直すようにそう言って、傷心モードのヨヨコを置き去りに廣井きくりは片手をヒラヒラ去って行く。

 

 

 

「え~。結束バンドいいじゃないっすか~」

 

話を聞いていた長谷川あくびはそう言った。

 

 

同世代のバンドと関わる事はあまりないために、あくびとしては今回の話は普通に楽しみなのである。

 

「……なに、ふざけたこと言ってるの! 皆練習して!」

 

そんなあくびの発言をバッサリ切り捨てつつ、復活を果たしたヨヨコは立ち上がる。

 

 

 

……大槻ヨヨコは、廣井きくりを慕っている。

 

そう、今までずっと自分達SIDEROSと仲良くしてくれたのだ。

 

 

 

 

 

 

『お金貸してー』

『シャワー貸してー』

『ご飯おごってー』

『借金立て替えて~』

『うっぷ……袋。エチケット袋ちょうだ───オロロロロロロロロ!』

 

 

 

 

 

 

 

今までずっと仲良くしてくれたのに!と頭を抱えるヨヨコと、最近廣井さん居なくて超平和っすよね~と思うあくび。

 

メンバー内で既に温度差が生まれているが、とにかくヨヨコとしては大好きな先輩をとられたように考えているのである。

 

 

特に後藤ふたり。廣井は最近は彼女達の話題ばかりであり、それがまた面白くない。

 

それに、あの子は。この前に観た演奏してる姿を思い出して───

 

 

 

 

 

 

 

関係ない!関係ない!関係ない!関係ない!

 

私にはなんの関係ないわ!姐さんだってただの気紛れ!すぐにまたシデロスと仲良しに戻るはず!

 

 

 

姐さんの仲良しは結束バンドじゃあない!このSIDEROSよ!!

 

 

 

 

ギターを手に取り、苛立ちながら掻き鳴らそうとするも、音が鳴らない。しかももっしゃもしゃする。

 

 

「なんで音が鳴らないのよ!」

 

そりゃそうである。何故なら今彼女が手にしてるのは箒なのだから。

 

そんなリーダーの奇行を見ながら、ふざけてんすか?

とあくびはツッコミをいれてあげた。

 

 

「この煎餅噛み砕けない……!」

 

そう言って、今後はCDを口にいれ噛み砕こうと頑張るヨヨコを見ながら、SIDEROSのベーシスト……内田幽々は、ふざけてんの~?と長い紫の髪を揺らしてクスクスと笑った。

 

 

 

 

関係ない!気にしない!結束バンドなんて知らない知らない!どうでもいい!!!

 

そんな事で頭を満たしたリーダーの奇行は、その日の練習が終わり解散となるまで続いたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすっかり寒くなったわね~」

 

白い息を吐く喜多の隣で、そうだねとふたりは頷く。

 

バイトと練習を繰り返したこの日々は、とても短く感じた。

 

 

街はクリスマスムード。冬休みも近い。

 

 

「冬休みまであと少しだし、待ち遠しいわ~」

 

「学校行かなくていいのは楽でいいよね」

 

軽く同意しつつも、冬休みかー。とふたりは思う。

 

ギターヒーロー二代目宛のリクエスト、この時期は似たようなのばっかだから嫌なんだよね。弾いてて黒い気分になるし。

 

 

「クリスマスにはパーティーもしましょ!」

 

「いいね。やるとしたらどこでやる? わたしの家は、絶対いやだよ」

 

 

その言葉に、以前ライブTシャツを作る為にふたりの家まで行った事を思い出して、喜多は苦笑を浮かべる。それはそれで楽しそうだけどなー。

 

 

 

 

そんなこんなでSTARRYまでたどり着き、よーし、と喜多が気合いを入れる。

 

 

「今日のライブも、頑張りましょうね!」

 

キ タ ー ン !と煌めく喜多に頷いて、ふたりは階段を降りてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、少しして。憔悴した顔の大槻ヨヨコがその場所に現れた。

 

STARRYの階段を降りて行き、どのバンドを見に来たか問われ───

 

 

「………結束バンドです」

 

そう、呟くのだった……。

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