ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

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大槻ヨヨコとファン二人

 

 

結局STARRYまでやって来たヨヨコは……早速、居心地の悪さを感じていた。

 

慣れない場所故である。ライブ見たらすぐに帰ろう。そう考えながら周囲を見る。

 

 

 

 

……客は二十人前後か……思ったより入ってるけど……。

 

 

少し心配気に辺りを見渡していると──

 

 

「あの~今日初めてライブ来た感じですか?

結束バンドを見に来たんですよね?」

 

不意に声をかけられた。ヨヨコは少し肩をビクリと鳴らす。

 

「名前なんて言うの? 私は──」

 

 

そう、彼女達は結束バンドの。そしてふたりのファン二名である。

 

 

「えっっ……大つ……つ、つっきー、です……」

 

 

SIDEROSの大槻ヨヨコとバレたくない為に、即興でそう答えるヨヨコ。

 

それに対し、ファン二名はきゃぴきゃぴとしている。

 

 

「つっきーちゃん?可愛い名前だね!」

 

「今度から一緒にライブ行こうよ~!」

 

 

凄くフレンドリーな対応に、さっきまでの嫌な気持ちはなくなるヨヨコ。

 

思っている以上に単純な彼女は、来て数分足らずで既に、下北沢悪くない……とか思っていた。

 

ラインを交換する流れになり、やった事ないから苦戦しつつも応じようとした所で、ヨヨコはハッと我に返る。

 

 

「いや、わ、私は別にファンじゃない…!」

 

ここはしっかりと否定しておかなくてはならない。ヨヨコは思う。

 

ファンの人を相手に同じバンドのファンを装うのは失礼なはずだから。

 

 

「そうなの?」

 

「じゃあなんで今日見に来たの?」

 

当然で単純な疑問を投げ掛けられて、それは、と小首を傾げている二人を見ながら少し考えて。

 

 

「初めてライブ映像を見た時、凄い衝撃を受けて……」

 

正直な話、想像以下的な意味で。……光るものは感じたが。

 

「考えたくなくてもずっと結束バンドの事ばっか考えてて……ネットで色々調べちゃって……。

きょ、今日だって気付いたら衝動的に来てただけ!」

 

「それはファンなのでは……?」

 

 

意味合いはいろいろ違うものの、行動に関してはファンと言われても仕方ない。

 

良い言い方が思いつかず、ヨヨコは思わず頭を掻いた。

 

 

 

そうこうしているうちに、ライブが始まった。

 

 

大槻ヨヨコの目が、一瞬で鋭くなる。

 

 

 

……ゲストやるレベルには達してない気がするけど、映像の時より悪くない。格段に良くなってる。

 

 

 

そう、客観的に分析する。これなら、もうちょっとファンがいてもいいはずだ。日が悪い? ヨヨコはスマホを取り出す。

 

 

「宣伝力があまりないのかな? バンド名で検索しても引っかかりにくいだろうし……。

SNSや音楽配信サービスはどんどん利用していかないと……今の時代、良い曲作ったってすぐ埋もれちゃうんだから……」

 

 

ぶつぶつと呟くその様子から、マネージャー志望なのかな? とファン二人は温かな目で眺める。

 

 

 

 

 

 

まぁ、思ったよりしっかりしていて安心した。映像で観たレベルなら、正直な話だがゲスト出演は辞退して欲しかったが。

 

 

「………」

 

それは、それとして。やはり気に入らない。ヨヨコは、舞台の上で演奏をする桃髪の少女……後藤ふたりを見る。

 

 

 

 

───なんで、そんな辛そうに演奏するのよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「つっきーちゃん、物販も見たら?

今日やってた曲のデモCDとかいろいろあるよ!」

 

 

ライブが終わり、帰ろうかと思った所でファン二人にそう声をかけられた。

 

言われて見ると、成程。確かに。物販は意外と充実している──ように見えた。

 

 

「あ!新作リストバンド出てるじゃん!」

 

「え……」

 

喜ぶファン二人の隣……ヨヨコは驚愕する。

 

これ、ただの結束バンド……! しかも五百円!?

 

「普通のリストバンドはライブでしか使い道ないけど、これコード束ねたり出来て便利よね!」

 

 

そう喜ぶ本物のファン達を見ていると、そっちが本当の用途だから!!とは口に出せない。

 

 

しかも他に、メンバーの私物という名のガラクタまで置いてあるではないか。

 

 

 

ヨヨコが絶句している間に、ライブを終えた結束バンドのメンバーがこっちにやって来るのが見えた。

 

大丈夫だとは思うが、顔を見られたらバレるかもしれないと、ヨヨコは今度こそ帰ろうとする。

 

 

新宿FOLTで共にゲスト出演する事になってるのだ。自分の事を知っててもおかしくないし、変に下見に来たと思われるのも嫌だ。

 

……思ったよりは、しっかりしたバンドだったし。

 

 

 

「新しいファンの子、連れて来ました~!」

 

「えっ、ちょっ……!」

 

しかし、ファンの片方に捕まり逃げられなくなってしまったヨヨコ。

 

リストバンドという名の結束バンドについてなにやら話をしているが、それどころじゃない。気まずさに顔を反らしつつも、ヨヨコは結束バンドのメンバーを見る。

 

……仲は良さそうに見える。メンバーの不仲が原因って訳じゃない?

 

って、私には関係ない!そう頭を振り、ヨヨコは再度帰宅しようとする。

 

 

 

そんな様子に、ん?とふたりは小首を傾げた。

 

 

あれ?この人……。

 

「みんな、つっきーちゃんにサイン書いてあげてよ~」

 

しかし、手をがっしりと掴まれ逃げられないヨヨコ。

 

ファン二人としては、あれだけ真剣にライブを観ていたのだから、かなりのファンなのだろうとヨヨコは認識されている。

 

ついでに、きっと照れ屋さんなのだろうと思われている。

 

 

「え~サインなんて考えてないなー」

 

虹夏が言って、わたしもとふたりは同意する。そういうのも、考えておいた方が良いのだろうか?

 

とりあえず名前を書いて、じっとふたりはヨヨコを見て。

 

 

 

「……あの。もしかしてヨヨコさんですか? SIDEROSの……」

 

直球で、思わずそう尋ねた。

 

「えっ、いや、違います!」

 

思わず否定するヨヨコ。対するふたりは、気付かないふりした方が良かったかと反省する。思わず尋ねてしまったけど、失敗したな……。

 

周りのメンバーも、SIDEROSという言葉に反応してしまっていた。

 

 

「みんらぁ~!」

 

そこに、今日の酔っ払い廣井きくりが現れた。

 

相変わらずのベロンベロンっぷりであった。

 

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