ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

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暗い部屋の中で

 

 

 

それから気を取り直して、ギターヒーローの動画を観ていく。

 

流石に全部は時間がないので飛び飛びで。

 

 

 

「………」

 

やっぱり上手くて凄くて。でも、何故だかこの指使いを知っていて。

 

 

 

不思議な気分で喜多は動画を観ていく。

 

 

 

………そして、ある日を境に虚言のコメントがパタリと止むのを複雑な気持ちで眺める。

 

 

 

 

次に観たのは、後藤ひとりとバンドメンバーのライブ映像やMV。

 

 

 

独特なMVが多いものの、やっぱり凄かった。

 

ライブ映像も、本当にアレなパフォーマンスも目立つものの、どれも凄い。

 

 

 

 

 

「まぁ、お姉ちゃん達も最初から凄かったわけじゃないみたいだけどね」

 

当たり前といえば、当たり前の話。みんな、苦労していた。頑張っていたのだから。

 

 

 

「………」

 

喜多は不思議な気分だった。後藤ひとりが楽しく生きていたみたいで、何故か安心していて、何故かちょっぴり寂しくて……。

 

 

 

 

 

 

ふと、喜多はふたりを見る。姉の事を語る彼女は。姉の残姿を見るその目は優しくて寂し気で。

 

 

 

「……お姉さんの事、大好きなのね」

 

「……うん。わたしは、おねえちゃんのこと大好きなんだ」

 

 

 

分かっていたけれど……本当に、姉の事が大好きだったんだろうなと、喜多は思った。

 

だから、この子の胸中を考えると……張り裂けそうになる。

 

 

 

 

 

 

 

それから夕食を御馳走になって、今日は眠る事に。ふたり的に思うところがあったのだろう、喜多も頷く。

 

 

 

「………」

 

友達が、寝る時間にも居てくれるって変な気分。ふたりは思った。

 

せっかくだから、少しおしゃべりしてから、ゆるやかにふたりは夢の世界へと。

 

 

 

 

 

 

 

夜。静かな時間の中、ふと喜多は目を開ける。

 

頭がぼんやりするけれど、何故か眠れない。

 

 

 

 

 

────喉が渇いたわ。

 

 

 

 

ふらりと起き上がり、部屋の外へと。

 

他人(ひと)の家の冷蔵庫を勝手に開けるのは良くないが、持って来ていた飲み物を冷やしておいてくれたので、喜多はそれを手にした。

 

 

 

 

「………?」

 

やっぱり、頭がぼんやりする。寝惚けているのだろうか。

 

 

頭を少し押さえながら部屋に戻ろうとして、足を止めた。誰かいた気がする。

 

ふたりちゃんか、ご両親か。もしくはワンちゃんか。そちらに目をやると───その誰でもない。

 

 

 

 

小さな小さな女の子。……心なしか、ふたりによく似ている子供がそこにいた。

 

 

以前来た際に、お仏壇のあった部屋からひょっこりと顔を出している。

 

 

 

 

「……えっと、こんばんわ?」

 

「あっ、はい……こ、こんばんわ……」

 

 

「……ふたりちゃんの、妹さん?」

 

「えっ? ………あっ、あっはい。そ、そんな感じ……です」

 

 

 

 

「………──そう。眠れないの?」

 

「……あっ、そうですね……ちょっと、まだ眠れそうになくて……」

 

「……なら、ちょっとだけおしゃべりする?」

 

 

 

頭は妙にぼんやりするけれど、不思議と眠れそうにない。だから、ちょっとだけお話するのもいいかもしれない。

 

 

「今は夜遅いから、静かにね?」

 

時計に目をやるも、暗いせいかよく見えない。何時か分からなかった。

 

 

 

「あっ……じゃ、じゃあちょっとだけ……へへへ。あ、お父さんもお母さんも、ふたりも起きないと思うから、普通に喋って大丈夫だと思います……」

 

「そう? じゃあ、そうしましょっか」

 

 

 

女の子がソファーに座ったのを見て、喜多も隣に座る。

 

 

「あっ、あの……」

 

「……なぁに?」

 

「ば、バンド、やってるんですよね……結束バンド。き、喜多ちゃんの歌、私、好きです……」

 

「……ふふ。ありがとう」

 

 

少し笑って、喜多は虚空に視線を彷徨わせた。

 

 

 

 

 

「でも私、まだちゃんと歌えてないのよ……。歌詞の意味が分かればちゃんと歌えるかなって思ったけど、ふたりちゃんの境遇とか考えたら……分からなくなっちゃって」

 

 

 

 

 

 

 

「……大事な人を喪うって、想像もしたくないもの……」

 

 

 

 

 

そんな痛みに耐えながら生きる人が創った歌詞。それを、平凡な自分が歌えるのか。

 

 

 

 

「あ、その、だ、大丈夫です。……た、多分」

 

「多分……」

 

今一自信のなさそうな女の子に、喜多は苦笑した。

 

 

「き、喜多ちゃんは変わりたいって思ってて、ふたりも変わろうと思ってて……ふ、二人とも、そこは似てるんです……そう思うんです」

 

「……それに、明るい人生を生きてきた喜多ちゃんだから出来る表現もあって……。

喜多ちゃんは、ふたりに歩み寄ろうとしてくれてます。

理解しようとしてくれてます。……その想いを乗せて歌えば、きっと……上手くいきます」

 

 

 

 

 

多分、恐らく、きっとと小声になっていく女の子の横顔を、喜多はぼんやりと眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

──────りちゃん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふふ、ありがとう。ちょっとだけ元気が出たわ」

 

そう言って微笑む喜多。同時に、どっと眠気が押し寄せた。

 

「……ごめんなさい、私はそろそろ眠るわね?」

 

「あっ、はい。おやすみなさい……あ、最後にいいですか?」

 

 

 

 

 

「……もし憶えてたら、私もふたりのこと大好きだよって、伝えておいて下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、喜多ちゃんおはよう」

 

 

鳥の鳴き声を聞きながら、喜多は目を覚ました。

 

まだ少し煙るような頭を押さえながら、喜多は布団から身を起こす。

 

 

 

「……ふたりちゃん、変なこと聞いていい?」

 

「うん?いいけど……なに?」

 

 

「……ふたりちゃんって、妹さんいる?」

 

「いや、いないけど……」

 

 

 

そうよね、と喜多は苦笑を浮かべた。夢、か。

 

 

 

「ちょっと変な夢見ちゃって。ふたりちゃんの妹さんと会ったのよ」

 

「わたしの妹……」

 

 

仮にいたとしたら、名前は何になるのだろう。さんにん??いや、まさかそれはないだろうけど……。

 

 

 

「でね、夢の中の妹さんが……私もふたりの事が大好きって、言ってたのよ」

 

「………そう、なの?」

 

 

 

 

 

少しふたりは、視線を天井にさ迷わせて……。また、そっか。とだけ呟いた。

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