「えっ、あのベース買い取ってもらえたの?」
頷く喜多ちゃんを見ながら、へぇ、と ふたりは呟く。
ここは、既にSTARRYの中。後藤ふたりは、喜多に案内されながら特に緊張した様子もなく中に入った。
少し、早く着いてしまったようだが、中には入れた。
なんでも、このライブハウスは、バンドメンバーの一人である伊地知虹夏の姉が店長らしい。
それは、ずいぶんと便利な話だとふたりは思う。
虹夏という人は、同じメンバーである山田リョウを迎えにいったらしい。
別に、そんな事しなくてもいいんじゃないかと思ったが、まぁ、いいや。なにか事情があるんだろう。
山田リョウ。どうやらお金持ちらしい。
まぁ、そうでもないと、ベースみたいな高価な物をぽんと買うなんて出来ないだろう。
「ただ、その時にね……」
『これで私は所持金が底を尽きたので。草でも食べて生きていきます』
「……って、言ってたのが気になるのよね」
「なにそれ……」
ふたりは苦笑を浮かべた。なんともまぁ、ユニークな人だ。
でも、良い人なのだろうなと思う。そうでもないと、わざわざ買い取ってくれないだろう。
きっと……大切に使ってくれるに違いないとふたりは思った。
そこに、扉が開く音がして───
「あ、リョウ先ぱ───
そこに現れたのは、中性的な顔立ちの美少女だった。
短めに切り揃えた青髪と金の瞳。
成程、確かに喜多ちゃんが言ってたように『顔が良い』なと……普通ならば、ふたりは思っただろう。
現れたそいつは、葉の着いた枝をくわえたかと思えば、豪快に葉っぱを食べたのだ。
「え───」
舞い散る青々とした葉っぱ。思わず固まるふたり。とんでもない奴が現れたと停止する思考。
「流石先輩!ワイルドで素敵!」
「───え」
そしてとんでもない奴がここにもいた。どうしよう、もう帰りたい。
「こーらリョウ、あの子、すっごく引いてるじゃん!」
その後ろから、小型な少女がピョコッと現れる。
金のサイドテールを活発に揺らしながら、固まっているふたりに軽く手を合わせた。
「ごめんねー、いきなり変なとこ見せちゃって……えーと、キミがふたりちゃん……でいいんだよね?」
声をかけられたふたりは、はっと我に返り。
「あ、はい後藤ふたりです。大変申し訳ありませんでした。では」
「ちょっ……待って待って!帰り支度を始めないでー!」
ヤバい奴等とは関わりたくないと考え帰宅しようとするも、虹夏に止められなんとか収まる。
とりあえず、まともな人が一人いる。
お陰でなんとか帰らずに踏み止まれたのであった。
「えーと、私は伊地知虹夏!ドラムだよ!
こっちは山田リョウ。ベースをやってるんだ」
「はぁ、成程……」
変人と言ったら喜ぶという情報が付け加えられ、嬉そうに照れてるその顔を見る。
ここに来てようやく、確かに素敵な顔立ちだとふたりは思う。
ミステリアスさを感じるその風貌から、とてもさっき草食ってた奴に見えない。
「それでさ……ふたりちゃん、ギター上手いんだよね」
はい!とっても上手なんですよと身を乗り出す喜多ちゃんを尻目に。
「まぁ、それなりだと思います」
と、当たり障りなく返事をする。
「そっか。えーと、その……」
虹夏は少し考えて、快活な笑みを浮かべた。
「せっかくだから、ちょっとセッションしてみない?」
にこやかな申し出に、ふたりは少し考えて。
「いいですよ」
そう答えた。別に、損な話ではないし。
よーし、とテンション上がってる虹夏と喜多。マイペースなリョウを尻目に楽譜を見る。うん、普通にいける。
ギターヒーロー二代目として弾いた事ある曲だ。
それぞれが準備を済ませたので、自分も準備オーケーのサインを送る。
自信はある。そのくらいにはギターを弾いた。
合図のドラムの音が鳴り───後藤ふたりはギターを掻き鳴らした。