ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

70 / 99
闇鍋ブッキング

 

 

 

 

やれやれと、伊地知星歌は思う。また妹を拗ねさせてしまった。

 

 

 

───しっかし、このライブハウス……まだこんな感じなのか。

 

よく潰れねーなと呟く。

 

 

 

適当に呼び集めただけのブッキングライブ。……自分達が現役の時もそうだった。

 

 

 

ぶっちゃけ、あのライブで懲りたんじゃないかと思ってたが……まぁ、そんな箱に自分の妹と後藤ひとりの妹がライブしに行くとは、数奇な運命を感じてしまう。

 

 

 

 

…………まぁ、観に行くだけ行かないとな。

 

失敗した場合のフォローの言葉を考えながら、星歌は外に出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし!今日はがんばろー!未確認ライオットに向けての前哨戦だよ!」

 

妙にテンション高い虹夏を見ながら、ふたりも心なしか心が昂る。今日は、どんな感じになるだろうか。

 

 

少し緊張しながら、虹夏らの背を追いライブハウスの中へ。

 

 

「おはようございます!結束バンドです!」

 

「あっ、はよっす……」

 

 

元気な虹夏の声……対照的に、スタッフらの反応は、妙にしらっとしたものだった。

 

 

 

「あ~~っ。え~とどちらさんでしたっけ。輪ゴム?あっ、けっそく?バンド?さんっすね~。

出演頂きありがとうございます。ブッキングマネージャーの柳です」

 

 

なんか、凄いチャラチャラした感じの男性がへらへらと現れて、簡単な自己紹介をして。

 

 

 

「そんじゃリハやるんで準備おなしゃーす」

 

と、随分とあっさりとした感じだった。

 

 

 

「………」

 

感じの悪さに、ふたりは少し尻込む。

 

 

 

「あの~バンド名覚えられてなかったですよね……?」

 

「わっ、分かりにくいバンド名だし、そんな事もあるでしょっ」

 

小声でする喜多と虹夏のやりとりを聞きながら、むしろ覚えやすそうな名前だけどとふたりは思う。

 

 

他にどんな人達が出るのかと、辺りを見ると……。

 

 

「あ~おはようございます!地下アイドルの『天使のキューティクル』です」

 

「今日はよろしくお願いしまーす!」

 

 

 

「デスメタルバンド、『屍人のカーニバル』デス……」

 

「定年退職したからこの機会に弾き語りを始めてみようと思ってねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

……そこには(地下)アイドルがいた。顔を真っ白に染め派手なメイクをしたメタラーがいた。定年者らしい、しょぼくれたおじさんがいた。ほかにもなんかいろいろいる。

 

 

 

 

…………なんというか、異様な光景であった。

 

 

静観していたリョウは、思った以上に闇鍋だなと思う。

 

 

 

「あれ……今日のイベントのテーマって仮装大会でしたっけ?」

 

「いや、違うはず……」

 

 

すっかり固まる喜多と虹夏。

 

「いや~、私は弾き語り始めてまだ半年なんだけど、ここから絶賛のメールが届いてね……」

 

定年のおじさんがそう言って、メールを見せてくれた。

 

 

「まぁ、自分ではハードロックではないと思ってるんだけど……最近はこういう曲もロックに分類されるのかな?」

 

 

その文面は、結束バンドに届いたものとまったく同じであった。

 

 

 

 

……なんか、嫌な感じだなとふたりは思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

例の箱に、星歌もまたやって来た。

 

少しばかり苦い思い出と……後藤ひとりの事を思い出す。

 

 

 

 

 

 

後藤ひとりとそのバンド。九年前だったか、八年か……まぁ、そのくらいに。

 

彼女らもまたこの箱でライブしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その時もなんと、こんな感じの闇鍋ブッキングであり、ひとりちゃんと愉快な仲間達は窮地に立たされていた。

 

 

いろんな人達がいたが……その中でも特に目立っていたバンドによるものである。

 

 

彼等はキラッキラの、陽キャでリア充うぇーい!な青春謳歌メンバーであり、ひとりとその一味は浄化されそうになっていたのである。

 

ベーシストとドラマーは、こういうノリは苦手な上に……ひとりと出逢ってからというもの、更に苦手になっていたのだ。

 

 

 

絶体絶命の大ピンチ……そんな時、後藤ひとりはこう発案した。

 

 

 

『……あっ。こ、こうなったら、わ、私達も対抗して……EDMガンガン掻き鳴らして、エナドリ片手に踊り狂いながら待機してましょう……!』

 

そんな彼女の提案に、メンバー達はそれだと立ち上がったのだ。

 

 

『それだゴッドひとり!』

 

『流石ロックの神ですねぇ……今日も冴えてますぅ』

 

 

『みんな、あった!エナドリがあったよ!』

 

『でかした!!』

 

 

 

そうして、控え室でEDMを掻き鳴らし、エナドリ片手に踊り狂うひとりフレンズ達。

 

 

そして自分達の番が来るとそのテンションのまま舞台へと飛び出し、三人で武田信玄!とかはっけよいのこった!とかうちわ!とかやって場の空気を大紅蓮地獄へと変えたのだった。

 

 

 

ちなみに、控えにいたリア充バンドらはこの地獄の中でライブしなくてはならなくなった。

 

一応記しておくが、別に彼等は悪さをしたわけはない。

 

ひとり達に嫌な事をしたわけでもなく、普通に今日という日を頑張り青春を謳歌していただけである。

 

 

 

 

…………まぁ、持ち前のリア充オーラで彼等はなんとか乗り切ったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

外でタバコを吸い終えて、そろそろ入るかと思った矢先……星歌は見覚えのある後ろ姿を見付けた。

 

 

 

 

「はい~……本日はどのバンドを観に来られました~?」

 

「けっ……結束バンド……!」

 

 

 

 

佐藤愛子……この前、ぽいずん(はーと)やみとかふざけた名前を名乗っていたやつだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。