ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

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遊園地にて

 

 

 

ブッキングライブから少したち、ふたり達はよみ瓜ランド……遊園地に来ていた。

 

ライブの打ち上げとSTARRYスタッフ一同慰安旅行という名目である。

 

 

そして、今日は未確認ライオットの審査結果が来る日でもある。

 

 

 

……まだ、音沙汰なしだ。

 

 

 

「……今日は日頃の不安を吹き飛ばすくらい遊ぼーーーーー!」

 

そう。半ば現実逃避旅行である。

 

 

 

「………とりあえずふたりが面白い」

 

ぼそりとリョウは呟く。

 

 

ふたりは、審査落ちたらどうしようという不安な豆腐メンタルと、小さな頃以来、更に大きくなって初めて友達とやって来た遊園地に対するウキウキでバグっていた。

 

ちなみに、今日のふたりはジャージでなく可愛い感じの私服である。

 

 

 

 

遊園地の遊具を目をキラキラさせながら眺めていると思ったら、急に青ざめた顔になりふらふらし、そこから急に立ち直ったりと情緒不安定である。

 

 

 

ちなみに今は、青ざめた顔で目だけキラキラさせている。

 

 

 

「お姉ちゃん達も今日は楽しんでねー!」

 

一緒に来ていた保護者三名。星歌とPAさんと何故かいる廣井。

 

「しんどい……」

 

「だるい……」

 

「吐きそう……」

 

 

 

しかし三人とも、なんか既にいろいろヤバかった。

 

 

 

「この歳になるとこういう所に来るのが辛くなってくんだよ。

自分の道が間違ってたとは思わないけど……」

 

死んだ魚のような目をして同年の子連れを眺める星歌。

 

 

「毎日家に帰っても一人……おかえりと言ってくれる人もいない、料理しても誰も食べてくれない……。

添加物満載のコンビニ弁当を貪る毎日、壊れてく身体壊れていく心……」

 

なんか、妙に病んでるPAさん。

 

 

「私達の見てる景色って同じですよね!?」

 

あまりの惨状に思わず声を上げる喜多ちゃん。

 

 

目で見てる景色が同じでも、心が違えば変わるのである。

 

紅葉を綺麗と思うか、枯れそうになってるだけじゃんと思うかで全然違うのだ。

 

 

ちなみに廣井は平常運転なのでスルーされた。

 

 

「こんな天気悪い曇りの日に遊園地なんて来るもんじゃねーよ」

 

「ほら雨降って来た……あ、私の涙か」

 

 

 

「いや今日快晴だけど!?」

 

遊園地に来ただけで深刻なダメージを受けている大人組。

 

 

「喜多ちゃん、セロトニン持ってきて!」

 

「はい!!」

 

 

なにやら指示を受け駆け出す喜多を見て、ふたりは軽く小首を傾げる。

 

「セロトニンってなんですか?」

 

「幸せホルモンとか呼ばれてるやつ……不足するとイライラしたりストレス貯まったり不安を感じたりする」

 

 

「……成程」

 

テストは悪いけどこういうのは知ってるリョウの説明にふたりは頷く。確かに、セロトニンが不足してそうだ。

 

 

どうやって持って来るんだろうと思っていたら、喜多ちゃんらしい可愛い感じの物を持って来た。

 

 

「セロトニンですよ~!」

 

キターンとした笑顔。対する星歌はスンとしている。

 

 

「大人はそんな単純じゃないんだよ……」

 

どうやらセロトニンはドロドロで使い物にならないらしい。

 

そうして、ゆっくりと彼女達は立ち上がる。

 

 

「なんか食べて時間潰そうぜ」

 

そう言って去って行く小さな幸せを喜べない人間達の哀愁漂う背中を、喜多は哀れみを込めた目で眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱ酒が一番効くよな」

 

「大人って最高ですね~」

 

「うめ~~~~~!」

 

 

それから少しして見掛けると、アルコールを補充しご満悦な様子であった。

 

 

やはり酒……!!酒は全てを解決する……!!

 

 

 

 

「あっちはほっといて周ろっか……ってなわけで、テーマパークマスターの喜多さんに進行をお願いします!」

 

「今日は私に任せてくださいっ!楽しい一日にしてあげます!」

 

 

と、喜多ちゃんは自信満々だ。

 

実際、このメンバーだと一番こういう所に来るだろう。

 

 

 

「家でだらだらしたかった……」

 

とか言ってベンチに座る山田を見ながら、むしろ喜多ちゃん以外は来ないかもしれないとふたりは思う。

 

 

自分は勿論、虹夏もバンドとバイトと勉強等々で来なさそうだ。

 

 

 

 

「…………」

 

それはそれとして、マスコットキャラらしい瓜ボーの前で喜多は止まってしまった。

 

映える写真を撮るべくいろいろな角度でアレコレ奮闘している。

 

 

 

虹夏的にもあのマスコットは良いらしいが、ふたり的には今一よく分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

それから一日、いっぱい遊んだ。

 

最初はあまり乗り気でなかったリョウも普通にアトラクションを楽しんでいた。

 

 

 

 

………ふたりとしても、目一杯楽しんだ。

 

 

 

「お化け屋敷怖かったですね~」

 

と、全然怖がってなさそうな喜多が言う。

 

まぁ、真剣に怖がってたのは虹夏くらいだったが。

 

 

「ふたりちゃんは、お化けとか平気?」

 

「怖いのは、結構テレビで見たりしますから」

 

 

 

ちょっぴり、昔を思い出す。

 

本当に小さい頃は、怖いテレビを観ては夜に一人でトイレに行けなくなってしまい……姉に起きてもらって着いてきてもらったものである。

 

 

少し、おっきくなった五歳か六歳の頃。

 

怖いテレビを観た後に一人でトイレまで行った時に、姉はわざわざ起きて着いてきてくれていたのだ。

 

 

 

 

『あれ~……おねーちゃんなにしてるの~?』

 

 

『あっあっあれ? トイレ怖くないの……?』

 

『え~~? もうひとりでおトイレいけるし~~こどもじゃないけど~~~』

 

 

……一人で行けるようになった誇らしさと、心配になって来てくれた姉への嬉しさと照れ隠しから、キャハハと笑った。そんな、ちょっぴり素敵な思い出。

 

 

 

 

 

 

……………まぁ、実際にひとりちゃんにどんな考えがあったのかは、あえてここには記さないでおく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからジェットコースターに乗ったらリョウがドヤ顔で腰を抜かしたり、アシカショーで、テンション上がったふたりはだいぶ前の席に行ってしまい、結構水をかけられたり。

 

コーヒーカップで少し酔ったりしながら、楽しい一日になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ? 伊地知先輩は?」

 

少しだけ別行動をとったら、虹夏とだけはぐれてしまった。

 

 

「……ロイン、既読着きませんね?」

 

「電話も出ない」

 

 

「……スマホ、充電切れたのかな?」

 

 

三人で少し小首を傾げて、それから探す事にした。

 

陽が少し傾きだした遊園地を、ふたりは歩く。

 

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