ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

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春の陽炎

 

 

 

 

虹夏は一人……暮れ始めの空をぼんやりと眺めていた。

 

……昔の事を思い出す。昔──小さな頃、この遊園地に来た事があった。

 

 

 

姉が、バンドを辞めた辺り。……たまにはとこの遊園地に遊びに連れてきてくれて、その日に迷子になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ、あの、大丈夫……ですか?』

 

 

そんな時、一人の女性に声を掛けられたのだ。

 

落陽の逆光で顔はよく見えなかったけれど、長い桃色の髪とピンクのジャージ。

 

 

 

 

『……迷子に、なっちゃったの……おねーちゃん……』

 

『……そ、そっか……あ、じゃ、じゃあ、私が……一緒に探しますね』

 

『……本当?』

 

 

一人で心細かったあの日の自分は、涙を拭って女性を見上げた。

 

知らない人に着いて行っちゃダメだと言われていたけど……不思議と、その人は知らない人じゃない。そんな気がしたのだ。

 

 

 

 

『それでね、おねーちゃんバンドやってて……やめちゃったけど、すっごくかっこよかったの!』

 

『……そっか』

 

女性は、ポツリと呟いた。やめちゃったんだと。

 

 

少し寂しげに見えたその女性に、それでもと星歌の自慢をした。ギターのかっこよさを。

 

 

『……あ、そう、なんですね。……自慢のお姉ちゃんなんだ、へへへ……』

 

 

 

 

 

 

『………で、でも、あ、私も実はギターやってまして……』

 

『背、背ギターとか歯ギターも、出来ますし……あ、左利き奏法も、ぶつけ本番でスライド奏法も出来ます、ふへへ……』

 

『あ、それにネットでもそれなりに知名度がありまして……うへへ……』

 

 

『…………』

 

 

………子供心に。物凄く大人気ない人だと思ったのを覚えている。

 

 

 

 

『虹夏!』

 

『あ、おねーちゃん!』

 

 

そんな際に、自分を探していたであろう星歌を見付けて虹夏は大きく笑顔で手を振り駆け寄った。

 

 

『………ったく、心配かけやがって……今、誰かといたか?』

 

『うん!えっとね……あれ?』

 

その女性は、いつの間にかいなくなっていた。

 

『あれー?さっきまで一緒におねーちゃんを探してくれてたのに……えっとね、ピンクの長い髪で、ピンクのジャージ着てて……』

 

 

それを聞いた姉は、大きく目を見開いた。

 

それから、目を細めて虹夏の頭を優しく撫でる。

 

 

『………そうか。お礼、言えたか?』

 

『……ううん。言う前に、いなくなっちゃった』

 

『………じゃあ、もし次に会えた時に言え』

 

『……うん!』

 

 

少しだけ微笑んで、星歌は空を見上げて……ありがとな、と一言呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな、ちょっとした、昔の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………虹夏ちゃん』

 

「………───え?」

 

 

桃色の髪。空色の瞳。───。

 

 

 

「虹夏さん、ここにいたんですね……みんな心配してましたよ?」

 

「………あははー、ふたりちゃんかー」

 

見開いた目を細めて、少し困ったように虹夏は笑った。

 

「……そりゃ、心配するよね。勝手にいなくなってごめんね?みんなにも、謝らなきゃね……」

 

そう言って、空を見上げる彼女の隣に、ふたりは心配そうに座った。

 

「……なにか、あったんですか?」

 

「……んー、ちょっとね」

 

心配そうなふたりに、虹夏は少し寂しげに笑ったまま答える。

 

 

「………昔、お姉ちゃんとここに来てさ。迷子になった事があるんだよねー」

 

「それでさ。その時、一緒に探してくれた人がいたんだけど……私、ちゃんとお礼言えなくてさ」

 

「…………また迷子になったら、逢えるかなって思ってさ………」

 

そんなわけ、ないのに。

 

 

 

「……やっぱ、もう逢えないかー……仕方ないよね、行こ? ふたりちゃん」

 

立ち上がり、虹夏は振り返って笑った。

 

ふたりは、うつむき気味に微笑んでいた。

 

 

 

 

「……あ、大丈夫です。……きっと、また逢えますよ。虹夏ちゃん」

 

「───え」

 

「………? どうかしましたか、虹夏さん?」

 

 

不思議そうに小首を傾げるふたりの姿に、虹夏は笑った。笑って……目から零れるモノを見せないように、慌てて背を向けた。

 

 

「……あー!もう、ずっるいなー!……もう!」

 

「……虹夏さん?」

 

目を擦り、虹夏は笑う。

 

 

 

「……なんでもない!行こ?ふたりちゃん!」

 

………またね、ひとりちゃん!

 

 

 

笑顔の虹夏に胸を撫で下ろして……ふたりは彼女に着いていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして合流して謝罪して、みんなで最後にと観覧車に乗っていた。

 

醜い下界の様子も見えてしまったが、見なかった事にする。

 

 

……ふたりとしては、星歌評が高い為にいろいろ残念な気持ちになっている。

 

 

……まぁ、店長さんはいろいろ大変だろうし。こういう事もあるよね。

 

 

と、そんな感じで無理矢理納得するふたり。

 

 

 

「……あ、そういえば連絡来ました?」

 

もう一日が終わってしまう。しかし、未だに連絡が来ない。

 

 

 

 

 

 

 

───落ちたか?

 

 

 

 

観覧車の中が重苦しくなったその瞬間に、ピロンと連絡が来た。

 

 

厳正なる審査の結果……どうやら、通過となったらしい。

 

 

 

「……や、やったーーーー!」

 

みんな喜んだし、ふたりもホッとして、そして喜んだ。

 

 

まだまだデモ審査を通過しただけだけれど……それでも、心底安心したし、とても嬉しい!

 

 

ふたりは暗くなった空と、イルミネーションの光をその瞳に映した。

 

 

これからまだまだ忙しくなるだろう。

 

同時に……とてもとても楽しみなのだった。

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