───いろんな人達が、結束バンドに投票してくれていた。
いろんな人達が協力してくれていた。
「結束バンドさんたち凄いね~!皆、いれてあげようよ!」
「天キュルファンにも呼び掛けますね!」
最近、ライブハウスで一緒になった人達。
「ほら……この前に路上で聴いたバンド、エントリーしてるらしいよ」
「へー。曲よかったし応援するか~」
路上ライブの時に聴いてくれたカップル。
「ねぇねぇ、結束バンド知ってる?ライオット出るってさ」
「そうなの?ちょっと、いいじゃん」
「投票するー?」
「………今やったー」
「じゃあ私もー」
いつかのライブで、少しずつ追うようになった人達。
ファンの二人と、かつてのひとりのファンだった二人組。
そして────。
「やっほー。こうやって、全員集まるのは久しぶりだねー」
……立ち入り禁止の看板がある荒れた廃工場。そこに青いショートヘアーを靡かせて、彼女はいた。
かつて、この世界において後藤ひとりと共に舞台に立ったバンドメンバーの女性だった。
ポジションはギターボーカルであり、ふたりは彼女をお姉さんと呼んでいる。
「おい、遅いぞ呼び出したくせに」
長い銀髪のドラマーと、こちらに目もくれずベースを弾いてる瓶底眼鏡の緑髪の女。
そんな様子に、お姉さんはにへっと笑う。
「変わりないようでなによりなにより。……今日はなんと!無理言ってひとりちゃんにも来てもらったよ!」
そう言って彼女の遺影を取り出すと、片方は目を細めて、片方のベースの音が僅かに乱れる。
「未確認ライオット。……覚えてるでしょ?」
「あー……まぁな」
「うひひ……懐かしいですね~。あの時は時代が私達を恐れてデモ審査で落ちましたっけねぇ~」
そんな会話に、うんうんと頷いて。
「なんと!私達のふたりちゃんがデモ審査通りました!拍手喝采せよ!」
「………へぇ!」
「スターソングさんの妹と組んでるんでしたっけ~?やりますねぇ、ひひひ」
本当だよねとお姉さんは笑う。
「……ふたりちゃんは、私達の気持ち妹みたいなもんだ。だから!私達も協力しようじゃない!」
「当然だな。……私の知り合いに広めるとするわ。あと、ひとりの追っかけの奴等。あのモヒカン共は協力してくれるだろうよ」
「いいね!私も実家の若い衆に声かけるつもりだよ!」
「……ひひっ」
きゃっきゃとしていると、邪悪な笑い声が木霊した。
「じゃあ、私は今度こそ例の計画を実行しますかね~……まずは火炎瓶の準備と、参加者の住所ですね~」
「………おい、コイツなにも成長してないぞ」
「うーん、流石に冗談だと思うけど…………仕方ないな、呼んどいてなんだけど暴走する前に始末しとくか……」
そう言って、お姉さんはポケットからスマホを取り出し、うひうひ笑う危険人物の耳元へと近付けて──
『殴り合って~喧嘩して~やんちゃしたけど
さいこ~~~のダチまじ卍
いっしょ~~バカやってたい死ぬまで地元離れね~~
走るぜ湘南~女乗せて~~
アクセル~ふかすぜNカスタム
BUN!BUN!BUN!』
今ではすっかりビッグになった、昔同じ箱でライブしたリア充バンドの曲を全開で流す。
すると、ヴォっ!むりこれ逝ぐ!とか汚ならしい声と顔を晒してアホはそのままくたばった。
「ふぅ……昔の一件以来、すっかりこういうのに弱くなって助かるよ………ってあれ? コイツだけじゃなくてホタルも死んでる」
銀髪を床に散らばらせて倒れたドラマーを見ながら、やれやれと頭を掻く。
ちなみに、触れてもいないし風もないのに、立てておいたひとりちゃんの遺影も何故か倒れていた。
「……ま、いいや。どっちもすぐ生き返るでしょ。……私達の、ファンでいてくれた人達にも呼び掛けないとねー」
そう言って、お姉さんはケラケラと笑うのだった。
いろんな人達が、結束バンドを応援していた。
「…………」
パソコンと向き合いながら、なんどもなんども記事を書き直す、佐藤愛子も含めて。
特別編
山田リョウの墓参り
青い澄んだ空の下。……お墓の前で、山田リョウはその曲を流していた。
トゥインクル・スター。後藤ふたり作詞の曲。
「……これ、ふたりが書いた詩。──最初に、ひとりに聴かせたかったから持ってきた」
ようやく、ここに来る決心も出来たしね。
「……いい歌詞だよね。私は、凄く好き。そして、ふさわしいくらい良い曲に出来たと思う」
「…………」
「………郁代と初めて会った時からさ。夢を見てたんだ」
「郁代が逃げて。虹夏が、ひとりを連れて来る夢。何故かひとりが、私達とだいたい同じ歳なんだ」
静かに、静かに。澄んだ青空を見上げた。
冬の空。澄んでいて綺麗で。──遠くて、どこか寂しい。
「……私達は、ひとりの事をぼっちって呼んでさ。ぼっちも、喜んで……」
「あ、初めてひとりを見た時も、何故かそう呼びそうになったっけ」
「……ねぇ。ぼっちって、呼ばせてよ。呼んで、いいよね?」
白い息を吐く。空に昇り雲になる事なく、消えていく。
「それでさ、ぼっちが郁代を連れて来て。……それから楽しくバンドをするんだ。具体的な内容は思い出せないけど、凄く楽しい夢。そしたらさ」
「郁代が、ふたりを連れて来た」
「………なんだか、運命っていうのを信じそうになったよ」
ぽつりぽつりと、言葉を呟く。
少し風が吹いて、少しだけ身震い。
「………でもさ。分かってたけど──ふたりはふたりだね」
「……ひとりじゃ、ないね」
流していた曲が、終わる。リョウは、目を閉じて冷たい空気をいっぱいに吸い込んで……目を開き、少しだけ笑った。
「……安心して。それでも楽しくやれてるから。──また、逢えるでしょ?」
きっと、何度だって出逢えるよ。次に会う時は───雲の隙間で。
「……それじゃ」
身を翻し歩くリョウ。しかし、その足はピタリと止まった。
「………あ、ふたりの夢枕とかに立って、もっとリョウさんに奢るよう言っといて。それじゃ、ぼっち。バイバイ」
───………………。
「あ、リョウさん」
翌日、STARRYで山田リョウはふたりに呼び止められた。
「昨日、何故か急に思い出したんですけど……この前に貸したお金、そろそろ返してくれませんか?」
「……………」
おのれ、ぼっち。