ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

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赤天、茜空。

 

 

 

 

その日、合わせの練習は午前中に終わった為に……少し暇なので、ふたりは一人でゲームセンターに来ていた。

 

やっているのは格闘ゲーム……以前、リョウと対戦しフルボッコにされたやつである。

 

 

 

あの惨敗以来、こうやってたまにやって来ては……いつか再戦し勝つ為に遊んでいるのである。

 

 

本人的にはそんな理由だが、ギター以外に趣味のない彼女には……無自覚ではあるが、数少ない趣味となっている。

 

 

 

「……よし、やっとこの変な踊りする女に勝った……次がラスボスかー……」

 

 

ふぅ、と軽く息を吐く。こいつに勝てたら、リョウさんに再戦を───

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここですか?』『ここですか?』『ここですか?』『ハハッお別れです!』『ここですか?』『ここですか?』『ここですか?』『お別れです!』『ここですか?』『ここですか?』『遅いですねぇ』『お別れです!』『ここですか?』『ここですか?』『神罰です!』『お別れです!』

 

 

 

「なんだコイツ………」

 

そしてふたりはCPUのラスボスに惨敗していた。何回か挑んだが、ほぼ同じ結果である。なんでこいつ必殺技をゲージ関係なく撃ってくるの?????

 

 

『ハハッお別れです!』

 

 

 

 

 

なにやってもダメである。ほぼパーフェクト負け。ウィーナーイズゲーニッ!

 

じゃあこんなやつ相手にどうやって戦えばいいんだ!!!

 

 

…………となった為に、今回は切り上げる事にした。

 

 

 

「……あれ?」

 

とぼとぼと帰宅していると、以前、喜多ちゃんと一緒に行ったカラオケボックスに通りかかり──そこで、大槻ヨヨコとバッタリと顔を合わせた。

 

 

「ヨヨコさん?こんにちは」

 

「え、ええ、後藤ふたり……」

 

 

普通に挨拶するふたりと、目に見えて動揺しているヨヨコ。

 

 

 

「ち、違うのよ!今回もたまたまメンバーの予定が合わなかっただけなのよ!それでも予約しちゃってるからキャンセルするのもなんだと思ったし店員さんに悪いしそれにもしかしたらみんな予定終わらせて合流するかもしれないしここの料理美味しいしついでに練習しておこうかと思っただけで最初からヒトカラしようと思ったわけじゃないのよ勿論ヒトカラが悪いことでもみじめなことでもないけどとにかく私はそういう理由で来たのであって───

 

 

「あ、大丈夫です。分かりました」

 

無呼吸打撃とばかりの息継ぎ無しの言葉を、ふたりは制した。このままだとヨヨコさんが酸欠で死にかねない。

 

 

対するヨヨコは、顔を真っ赤にして目をぐるぐるさせてしまっている。ヨヨヨ……

 

 

………別に、最近だとヒトカラだってそんなに珍しいものだと思わないけど。

 

ましてやバンドマンなのだ。いい練習場所のひとつだろう。

 

 

 

「………──わたし今日は暇なので、良かったらご一緒してもいいですか?」

 

実際、後は帰るだけだし。ふたり的には、ヨヨコはあまり会えない恩人でもあるし、出来れば仲良くしたいと思っている相手である。

 

なんにせよ、その言葉にヨヨコはピタリと止まり、パッと顔を光らせて……ふん、とおすまし顔。

 

 

「……ま、まぁ、暇だっていうならそれもいいわね……いいわ、一緒に入ってあげる」

 

そんな姿にふたりは苦笑を浮かべる。

 

なんというか……かわいい人だと思う。

 

 

 

二人きり。……そんなに話すわけでもない為に、ヨヨコはやや緊張気味だ。

 

対するふたりは、リラックスしている。

 

 

……ふたりとしては、不思議と初めて会った時からヨヨコには妙な……親近感とでも言うのだろうか?

 

なんにせよ、落ち着いて関われる相手なのである。

 

 

 

「……あの、ヨヨコさん。何か歌わないんですか?」

 

料理等の注文だけして、腕組みをしたまま動かないヨヨコに、ふたりは軽く首を傾げ尋ねる。

 

 

対するヨヨコは、じろりとふたりを見て返事。

 

「……まだ店員さんが、料理とかドリンク持って来てないじゃない」

 

「………ああ。ああ、成程」

 

 

なんとなく、納得した。そういう人なのだろう。

 

 

 

…………お姉ちゃんもそうだったな。

 

 

 

そんなこんなで料理とドリンクが運ばれて来る。

 

前も思ったけど、結構食べるな……。

 

 

 

そうしてやっと歌い出すヨヨコ。SIDEROSの曲。

 

「………」

 

やっぱりこの人の歌は好きだ。CDも買ったけど、こうやって直接聴くと全然違う。

 

 

「………ん」

 

マイクを差し出されて、ああ、とふたりは呟く。そう言えば曲をいれてなかった。

 

 

お前も歌えという事だろう。……このまま大槻ヨヨコの歌を一人間近で聴き続けるのもいいと思うが、せっかくだし歌わせて貰おう。

 

 

 

 

 

『わたしなーどーいないもいっしょ、いないもいっしょ、いないもいっしょ、いないもいっしょ、いないもいっしょ、いないもいっしょ、いないもいっしょ呼べるもんならよーんでーみなー』

 

『窓から漏れる出す灯り、話し声、笑い声ー。家族に囲まれた少女が、ろうそくの火にいきをーかけーる。

そのー、あまりにもちいさーく 儚くて無邪気な姿に目をつぶりー。

そのうーちだれもーが。あんなふうに笑えなくなるってすどーりするのさ』

 

 

『抱いて、ちゃんと抱いてこーの身体にのこーるよーに、強い力で。もう泣かーないーでーいいよーに

どーこまーでも、行けるよぉな気がしてーた、でも寒ぅくて。とてもさーむくてー歩けなーい……もう歩けないよー』

 

 

 

 

 

「………」

 

前に一緒だったから知ってたけど、暗い曲ばっかね……別にいいけど。

 

実際、キラッキラでチャラッチャラのリア充ソングを歌われる方が苦しいので、ヨヨコ的にはOKであった。

 

 

 

 

 

なんにせよ、互いに楽しい気持ちでカラオケは終わった。

 

外に出ると、夕日が眩しい。

 

 

 

「ん! ん!」

 

外に出ると、ふたりは何故かスマホで攻撃された。

 

何事かと思うが、なんとなく察する。

 

「あ、ロイン交換しときますか……また、予定が合うなら来たいですし」

 

「………まぁ、一緒に行ってあげなくもないわ」

 

少し目を逸らしつつ、ヨヨコは連絡先を交換し──ニヨニヨとした顔を一瞬して、元に戻る。

 

 

 

「………──そう言えば」

 

駅に向かう途中。ふと、ふたりは口を開く。

 

なんとなく。なんとなく、聞いてみたかった。

 

 

「……ヨヨコさんは、どうしてバンドを始めようって思ったんですか?」

 

「うぐっ………!」

 

ふと口に出した質問に、ヨヨコは露骨に顔を引き吊らせた。

 

それを見て、しまったとふたりは思う。

 

 

 

「あ、言いたくないなら別に──

 

「………いいえ」

 

眉間に皺を寄せつつ目を閉じて、ふーっ、とヨヨコはタメ息。

 

「……以前、貴方の心に土足で踏み込んだんだもの。私だけ言わないってのも、おかしな話だわ」

 

「……それは──

 

「ただし!」

 

 

夕焼けに負けじと頬を朱く染めながら、ヨヨコは言う。

 

 

「絶っっっ対に笑わない事!いいわね!?」

 

「………はい」

 

なんというか……本当に、律儀で優しい人だと思った。

 

ふぅ、とまたヨヨコは息を吐き出して。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………端的に言うと───ちやほやされたかったからよ」

 

「…………─────」

 

 

……ああ、そうかと、ふたりは思う。

 

 

 

 

 

「私、目付き悪いし運動も出来なくて……ちびだからからかわれるし、友達も出来なかったから……せめて勉強だけでもって頑張ったのよ。学年で一番になったら、からかってきた人達が見直してくれた」

 

「一番になったら、周りが見てくれる。世界が認めてくれる……なら、もっと好きな事で一番になりたいって」

 

 

 

「……まぁ、みんなからちやほやされたかったのよ。最初に言った通り、つまりね」

 

目を閉じて、ふぅ、と息を吐いた。

 

 

そんな彼女の横顔を、ふたりはぼんやり眺めた。

 

 

 

………似てるんだ、この人。

 

 

見た目とか性格とか、本人が持ってる才能とか、それよりもっともっと深い部分が似てるんだ。

 

 

 

 

…………お姉ちゃんに。

 

 

 

 

「……っ、あは、あはははは!」

 

笑いだしたふたりに、ぐっ、と呟くヨヨコの顔は更に真っ赤になる。

 

「ちょっと後藤ふたり!笑わないでって───

 

 

「あは、あはははは………」

 

「……ッ、ちょっと、なんで泣いてるのよ……」

 

 

零れてしまった涙を拭い、ふたりは首を振った。

 

「……ごめんなさい。その、ヨヨコさん似てたから。わたしの、お姉ちゃんに」

 

「……お姉ちゃん。後藤ひとり、ギターヒーローに?」

 

 

少し困惑した様子のヨヨコに、うん、とふたりは頷いた。

 

「お姉ちゃんも、ちやほやされたかったからギター始めたんだよー……お姉ちゃんの場合、勉強も出来なかったけど」

 

「………ふぅん」

 

そう、とヨヨコは呟き空を見上げた。そうなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

………ねぇ、後藤ひとり。私、あんたに会ってみたかったわ。

 

 

 

 

 

 

 

「……そう。それなら、私の事をヨヨコお姉ちゃんと呼んでもいいわよ?」

 

少し得意気な顔でそう言うヨヨコ。対するふたりは、片手を口元に当てて、少し思案。

 

 

「それは………うーん、ちょっといいかも? ヨヨコお姉ちゃん?」

 

 

 

「…………っ」

 

また、その頬は朱くなる。

 

 

「………やっぱりなし!今まで通りで!」

 

「そうですか? ちょっと、残念かも」

 

「………ふんっ」

 

それから互いに特に話すでもなく、歩いた。

 

どことなく、心地好い時間だった。

 

 

駅まで着くと、彼女は身を翻した。

 

「……それじゃ、また会いましょう。ふたり」

 

「……うん。それじゃあ、また」

 

 

 

 

 

 

「ヨヨコお姉ちゃん」

 

「…………~~~~っ!!!」

 

去って行く後ろ姿に。夕焼けに溶けていく影に、ふたりは手を振って、駅に入っていくのだった。

 

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