ギターヒーロー二代目【完結】   作:怒雲

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盤外戦術

 

 

 

 

未確認ライオット、ライブ審査当日。

 

ついに、この日がやって来た。

 

 

場所はまさかの新宿FOLTで、オープニングはSICK HACKらしい。

 

 

実力はともかく、廣井さんは大丈夫だろうか。

 

今日も酔っ払ってベロンベロンで歌うんだろうなぁ、とふたりは思う。まぁ、なんやかんやそれが平常運転だろうし、大丈夫だと思うけれど。

 

 

 

 

新宿駅から機材を運びながら、喜多と虹夏と移動。これが中々に……というか、だいぶキツい。

 

小柄で体力のないふたりはそれで結構いっぱいいっぱいだが、機材の多い虹夏はかなりだろう。

 

「夏休み、車の免許とりにいこうかな……」

 

そんな事を呟いていた。自分も、三年生になったらとりに行こうと思う。

 

 

 

 

………ちなみに、合流地点に寝坊した山田さんは、そんな三人を車から眺めて去って行った。

 

 

辿り着くや否や、遅いとか言い出す山田さん。

 

虹夏が攻撃しなかったのは、疲れていたからだろう。

 

そうでなければ、刃牙ばりのフロントネットロックが炸裂していただろう。命拾いしたものだ。

 

 

 

 

 

さて、そんなやり取りをして間も無く、忙しそうに新宿FOLTの店長である吉田銀次郎が、両手いっぱいに水の入ったペットボトルを抱えて姿を現せた。

 

 

「おはようございます!結束バンドです!今日はよろしくお願いします!」

 

「あら~結束バンドちゃん、久しぶり~」

 

虹夏に声をかけられ、慌ただしそうにしながらも銀次郎は返事をする。

 

 

「ごめんね、今ちょっとバタバタしてて~……また後でゆっくりお話しましょ~!」

 

開催場所の店長だ。それは忙しい事だろうとふたりは思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「水買ってきたわよ!!生き返って~~~!!!」

 

 

と、少し様子を見ていると……そこには倒れている廣井きくりの姿があった。

 

 

こんな大事な日になにやってるんだこの人。

 

 

 

話を聞くと、まだ失敗してもやり直しがきく若者達を見ていたら飲まずにいられなくなったらしい。酷い話である。

 

今まで見た中で一番重症そうだ。本当に大丈夫だろうか……。

 

廣井さんならなんやかんや大丈夫と思う自分と、廣井さんだしダメそうだと思う自分に揺れつつも、ふたりは周囲を見回す。

 

 

普段のライブハウスでは見掛けないような人もちらほらいて、なんとなくピリッとした空気も感じる。

 

「主催のお偉いさんとかレーベルの人とかいて、なんだか堅苦しいわよね~……まぁ、あまり意識せずやっちゃいなさいね?」

 

そんな人らがいる中で、廣井きくりなんかの介抱をしなくてはならない銀次郎の心境やいかに……。

 

 

「ちなみに、あたしも審査員の一人。身内だからって、もちろん贔屓なんてしないわよ?」

 

 

だって、そんな事しなくても結束バンドは客を魅了できるものを持ってると思うから。そう言って、彼は人差し指を口に当てて、上品に微笑むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、いろんなバンドが来ている。外よりもやはり、空気はピリついていた。

 

 

 

そんな中で、なんとなく視線に止まるバンドがいた。

 

 

ケモノリア。以前、SIDEROSと共にチェックしたバンドである。

 

その中でもボーカルの人は、かなり良い大学に入っているようだ。

 

 

 

 

そんなケモノリアは……一番、ピリピリしていた。

 

 

「……なら、今日限りで解散だ!」

 

「恥を晒すよりマシだし、いいけど?」

 

バチバチとしてギスギスした雰囲気に、ふたりは苦いモノを感じる。

 

苦手な雰囲気だ。近くにいるだけで、居心地が悪い。

 

 

 

ふいに、ボーカルの人の両目から涙が零れ出す。

 

 

「なんで分かってくれないんだ!!」

 

 

 

 

 

「皆で楽器を軍配に見立てて甲斐の虎!武田信玄~!とか言ったら絶対ウケるって!!」

 

「しらけるわ!!」

 

 

 

 

 

「……………」

 

どうやら、とんでもなくしょーもない事で言い合いになっていたようだ。

 

 

はて、あの人はかなり頭の良い大学に行ってるそうだが……。

 

 

ギャグのレベルはお姉ちゃんくらいみたいだ。

 

 

「ウっウチは面白いと思うけんね~……流石天才たい!」

 

仲間からのアシストに、だろう!?と喜ぶケモノリアボーカル。

 

 

 

「も~イヤッ!そうやって毎回持ち上げるからこの人が調子乗るんですよ!」

 

 

そんなやりとりを、大変そうだなー、と眺めていたふたりの隣……リョウは、少し思案した様子を見せる。

 

それから、スススー……とケモノリアに近付いて。

 

 

「武田信玄、ロックでウケると思います」

 

「ちょっ……山田ァ!!」

 

なんと、煽って自滅を誘う盤外戦術に出たのだ!

 

 

「おお!話が解るな!!」

 

効果覿面なようで、彼女は満面の笑みだ。

 

そんな様子に、少しタメ息混じりにふたりは近付いて行き…………。

 

 

 

 

 

 

 

「わたしのお姉ちゃん、結構人気バンドだったんですけど、それやってましたよ」

 

「ふたりちゃん!?」

 

そして、山田の支援を開始したのだ!

 

 

ふたり的には、盛り上がったとかそういった嘘はついてないのでオッケーだと考えているのか、他の人がそのネタすでにやってますよとやめさせようとしたのかは分からないが、とりあえず喜多はふたりの手を引っ張りつつケモノリアの方々に頭を下げる。

 

 

ちなみに、その隣で山田は虹夏に首を絞められ連れて行かれていた。

 

 

 

「ふむ………」

 

ボーカルの人は、ふたりの桃髪を見ながら少し目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

その瞼の裏に浮かぶのは、長い桃髪をした、ギターの少女。

 

はっけよいのこった!とかやってたのを見て自分はおおいに盛り上がっていたが……。(ちなみに、周囲が盛り下がっていた事には気付いていない)

 

 

「……既にやってたのか」

 

成程。彼女ならばこのくらいの事、簡単に思い付き実行するであろう。

 

 

パクりは良くないな、と判断し……結果的に、ケモノリアは救われたのだった。

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