そして、新学期が始まった。
制服は部屋に厳重に隠して、ふたりは再びピンクのジャージに身を包んでいた。
………まだまだ暑いし、やっぱり制服もいいだろうか。ふたりは思う。
家に帰って、明らかに誰かが制服を取り出した形跡があったりしたら、わたしは辛い。耐えられない。
……それはそれとして、新学期から一週間。誰も未確認ライオットについて触れて来なかった。
少し不思議に思うし、困る。何故なら話し掛けられても話題がないからだ。
相変わらず、ふたりにはろくな話題がないのである。が、もう最近は若干だが開き直りつつあったりもする。
「後藤ふたりよ」
「いかなる理由があろうと、お前はコミュ症陰キャとなってしまったんだ」
「だから真っ当な会話など出来ず、リア充陽キャ達に一方的かつ社会的に殺されるしかないんだ」
「悔しいだろうが仕方ないんだ」
と、自分に言い聞かせるのだった。
「後藤さーん」
そう諦めの極致にいたふたりに、クラスの女子が声をかける。
「今日さ~。放課後喜多ちゃんと付き合ってもらいたいんだけど…」
「今日……?」
少しふたりは考える。正直、断りたい。
だが、喜多ちゃんがいるならば、会話はそっちに任せればいいかと判断。
「……まぁ、今日は大丈夫だよ」
それに、もう無下に断りたくないしね……。
断りたいけど断りたくないという矛盾に囚われながらも……ふたりは喜多と共に、放課後を歩く。
向かった先は、カラオケ店。
…………何度か来た事がある場所で、脳裏に大槻ヨヨコお姉ちゃんの姿が浮かぶ場所である。
「カラオケかー……」
それなら、隅っこの方で歌聴いとけば問題ないなとふたりは思う。陰キャでも大丈夫な場所チョイスだ。
「ほら、ふたりちゃん。行きましょ?」
入り口でキョロキョロしてるふたりを見て、喜多は声をかける。
それに対して、ん、と呟き。
「他の人は?」
そういえば、そもそも何人くらいで集まるのかとか聞いてなかったなー、と思うふたりに、喜多はクスクスと笑う。
「みんな、もう先に入ってるわよ?」
「……そうなの?」
小首を傾げるふたりに、ええ、と喜多は頷く。
「じゃあ、早く行かないとね」
そう言って歩いて、部屋まで着くと───
パンッ!という音。聞き覚えのある音だ。
……クラッカーの音。
「喜多ちゃん後藤さん!未確認ライオットお疲れ様ー!」
飾り付けられた室内を見て、ああ、とようやくふたりは察した。
……サプライズパーティーというやつだ。
…………クラッカーは、以前に両親がやらかしたイエーイウェルカム事件と、闇鍋ライブの時にいた不発のクラッカーおじさんのせいであまりいい印象がなかったけど……。
こうやってみると、いいものだな、なんて……現金にも思ってみる。
「わ~!最高のサプライズだわ~!」
そして、明らかに知っていたであろう喜多ちゃんは白々しくもそう言って、喜びはしゃいでみせたのだった。
「え~では本日の慰労会、司会進行は私。佐々木が務めさせていただきます~。
特に何も考えてないんで、二人をちやほやしてあげてくださーい」
そうして、次子の司会と共に突然始まったサプライズパーティー。
嬉しい反面気恥ずかしく……ふたりは、スススー……と、まるで流れる水の如し動きで隅のほうに移動を開始する。
「二人ともおつかれ~」
「凄かったね~!」
「ネットでも配信されてたんだよ。めっちゃ良かった~」
しかし、やはり回り込まれるふたり。
「ほら!端っこいないで真ん中座って!」
「これ着けて!」
『本日の主役2』と書かれたタスキを受け取り、観念したふたりはそちらに向かう。
最早、激流に身を任せ同化するしかないのだ。
「いい?ふたりちゃん」
隣に座ると、『本日の主役1』のタスキを着けた喜多ちゃんは、何時も以上の輝きを放ちながら腕組していて……。
「主役はドシっと構えておけばいいのよ」
と、圧倒的な主役慣れした者の王気(オーラ)を纏い、見事なキターンなドヤ顔を見せるのだった。