思い付いたので書きました
自分はなんのために生まれてきたのか。
家族三人で、一緒に暮らすために戦士になったはずだった。
だが、父親はそんなこと望んでいなかった。
弾を込める。
自分の力で掴み取ったはずの戦士の力は、弟の安全のためを思い兄が裏から手を回したから手に入った力だった。
銃を取る。
自分を庇ったせいで彼は死んだのに、俺は戦おうともせずに逃げ出した。
弾を銃へ
英雄になりたかった。
誰かに尊敬されたかった。
銃を口へ。
悪魔を皆殺しにすれば世界を救えて、英雄になれる。
そのために作戦を中止して引き返そうとした二人を無理矢理説得して悪魔たちの住む壁の中に入ったのに、そこに住んでいたのは悪魔なんかじゃなかった。
俺たちと同じ人間だった。
口内へ、頭が吹き飛ぶように。
大勢の人が死んだ。
大勢の人たちもあいつの母親も、みんな喰われた。
俺のせいでみんな死んだ。
俺が殺したんだ。
それなのに俺はあいつらの兄貴面して、あいつらと同じ屋根の下で、同じ飯を食って、あいつらと一緒に努力して、あいつらと一緒に笑いあっていた。
引き金に指を。
一緒に笑いあったあいつらを俺は裏切った。
みんな喰われて、あいつも喰わせた。
自分で喰わせておきながら、俺は驚いていた。
どうしてあいつが喰われているんだって。
自分のせいであいつは死んだのに、あいつの仲間のようにあいつの仇を討った。
引き金に指を。
みんなを殺しておきながら、二人を見捨てておきながら、俺は一人生き残った。
引き金に指を。
どうして生きている。
苦しい。
死んでしまいたい。
誰か殺してくれ。
消えてしまいたい。
毎日そんなことばかり思ってしまう。
そんな資格なんてないくせに。
もう……限界だった。
引き金の指が。
★
「……っっ!!」
その瞬間に目が覚めた。
全身に嫌な汗をかいていて心臓が破裂しそうなくらい激しく鼓動している。
思わず後頭部に手を当てるが、銃で撃って出来た穴なんてあるはずがない。
そのことに安堵して、それと同時に死んでいないことを残念に思ってしまった自分に苦しくなりながら呼吸を整える。
「またあの夢……いや……違う」
あの苦しみは、決して夢なんかじゃない。
俺がしたこと、してしまったこと。
夢だからと、無かったことには出来ない、出来るはずがない。
「どうして……俺は」
生きている。
生きているのが辛すぎて、苦しみから解放されたくて無責任に死んだはずなのに、俺はこうして生きている。
いや、生きていない。
俺は死んで、そして生まれ変わった。
日本。
それが俺が今の俺が生まれた国の名前だ。
この世界にはマーレという国やパラディ島も、巨人の力も存在しない。
人に聞いても、いろんな文献を読んでも、あの世界には無かったインターネットというもので調べてみても似たような名前や歴史の国はあったりしたが、それでも巨人なんてものは全く出てこない。
何もかもが違う知らない世界に俺は生まれた。
「死んだから……なのか?」
俺がなんの責任も果たさずに逃げたから。
自分だけが救われようとしたから。
あの世界のことなんて誰も知らないこの世界に産み落とされた。
あの世界のことを言っても、誰にも信じてもらえない。
俺がしたことを白状しても、誰にも信じてもらえない。
この苦しみも後悔も罪悪感も誰にも言えないまま、言っても理解も信用もされることなんてない。
救われることなく一人孤独にで生きていくのが、きっと俺に与えられた罰なんだろう。
「許して……くれ」
それでも。
許されるわけがないのに、そう思ってしまう。
俺の罪を知る者も、俺を裁いてくれる者も、誰もいない。
いっそのこと、また自分で死んでしまおうかとも思った。
けれど
『お前らができるだけ苦しんで死ぬように、努力するよ…』
その言葉が俺を止めてくれる。
「そうだよな……苦しまないとな」
奪ったのだから、罪を犯したのだから、苦しまなければならない。
そうじゃなければ殺された人たちが、殺してしまったあいつらが浮かばれない。
もう何度目になるかもわからない事実を突き付けられて、何度も死にたくなりながらベッドから起きる。
起床の時間にはまだ早いが、もう一度眠ろうという気にはならない。
まだ眠っている子供たちを起こさないようにしながら部屋を出て食堂へ向かう。
他の子供たちはまだ眠っているが、大人たちは起きて朝食の準備をしている。
「おはようございます」
「おはようライナー。相変わらず早起きだね」
食堂扉を開けてあいさつすると職員の人が笑顔あいさつしてくれる。
ライナー・ブラウン。
ここでも俺はあの世界と同じ名前で生きている。
姿はともかくどうしてこの名前なのか職員の人に聞いたら、赤ん坊だった俺がこの名前が書かれた紙と一緒に施設の前に捨てられていたらしい。
あの世界の俺と全く同じ姿と同じ名前。
大きな意志のようなものを感じるが、俺にはどうすることも出来ない。
だから俺は今日も生きている。
あの時と同じように。
「朝食の準備、手伝いますよ」
「いつも手伝ってくれて助かるよ。それじゃ食器を並べてくれるかい?」
「わかりました」
善意からやっているわけじゃない。
何かしていないと罪悪感に苛まれてしまうからだ。
何かをしていれば、余計なことは考えなくてすむ。
誰かの役に立っていれば、自分は生きていてもいいんじゃないかと思ってしまう。
そんな汚い自分に嫌になりながら手伝っていると、食堂の扉が開いた。
「おはようございます。あ、ライナー。あいかわらずはやいね」
「おう、おはようアイ。お前だって十分早いぞ」
星野アイ。
この養護施設で一緒に暮らしている子供たちの一人。
アイは俺を見ると笑顔で駆け寄ってくる。
「私も手伝うよ」
「大した数じゃないから大丈夫だ。アイはゆっくりしてていいぞ」
「いいから、いいから。二人でした方が早く出来るでしょ」
「……っ」
アイはいい子だ。
様々な事情から家族と暮らせない子供たちは余裕がない。
わがままを言ったり、他の子とケンカしたり、夜中に泣き出したりと不安定な子が多い。
そんな子が多い中でアイはとても安定している。
わがままを言ったりせずに他の子の面倒を見てくれて、今もこうして俺の手伝いをしようとしてくれる。
誰にでも優しい。
だからだろうか、そんなアイの姿が彼女と重なった。
「どうしたのライナー?」
「いや、なんでもない。そうだな、二人でやった方が早くすむな。それじゃあ、頼んだ」
「うん、任せて!」
頭に浮かんでしまった彼女を振り払う。
(何を考えているんだ俺は!)
髪の色も瞳の色も声も、名前だって違う。
何もかもが違う二人を優しいというだけで重ねるなんて、二人に失礼だ。
最低なことを考えた自分に嫌悪しながら、それでもアイと一緒食器を並べるが先にしていたことにくわえアイと二人でしたことであっさりと終わってしまった。
「ありがとうなアイおかげで早く終わった」
「ううん、もともとライナーがしていたからだよ」
「それでもだ。手伝ってくれてありがとなアイ」
「ふふ、どういたしまして」
「……っ」
手伝ってくれたことにたちが感謝しながらアイの頭をなでる。
嬉しそうに笑うアイが守るべきだったあの子に重なった。
「……ライナー?」
なでていた手が急に止まったのを不思議に思ったのか、アイが俺を見る。
「あ、いや……髪にホコリが付いていてな。よし、これでとれたぞ」
「そうだったの?ありがとねライナー」
「大丈夫だ、気にすんな」
なんとか誤魔化せたことに内心ほっとする。
(またかよ、クソ!)
さっきの時といい、またアイと彼女たちが重なる。
(いい加減にしろ!ここはあの世界じゃないんだぞ!)
ここはあの世界とは違う。
わかっていても、どうしても思い出してしまう。
みんなで騒いでいるときや、みんなで勉強をしているとき。
食事をしているときや、ケンカを止めているときに、今みたいに誰かの頭をなでているとき。
些細なことであの世界で生きていたときのことを思い出してしまう。
「よし、じゃあ他にもなんか手伝えることが無いか聞いてみるか」
「おお、さすがライナー優しいね」
「さすがって、別に優しいことなんかないさ。……普通だよ」
アイはそう褒めてくれるが俺は優しくなんてない。
ただあの時と同じように演じているだけだ。
彼のような頼れる兄貴分を。
「食器並べるの終わりました」
「ありがとうライナー。ずいぶんと早かったね」
「アイも手伝ってくれましたから」
「そうだったのか、アイもありがとうね」
「ほとんどライナーが並べてたから」
「でも手伝ってくれたんだろう?ありがとうねアイ」
「はい!」
嬉しそうに笑うアイを見て思わず俺の頬も緩む。
アイが手伝ってくれたのは偶然だが、手伝ってよかったと心から思う。
「他に何か手伝えることはありませんか?」
「あとは料理だけだから特にないよ。朝ごはんまでまだ時間があるからゆっくりしていなさい」
「あ、それじゃあライナーと一緒にお散歩に行って来てもいいですか?」
「ん?俺もか?」
「そ、いつもみんなと一緒だから二人っきりで話とかしたことないでしょ?だから散歩しながらお話とかしたいと思ったんだけど……ダメ?」
俺の方が身長が高いこともあり自然な上目遣いで首を傾げるアイについ仕方がないと思ってしまう。
それにアイの言う通り施設には多くの子供たちがいるから誰かと二人っきりになることなんてまず無いだろう。
それにただの散歩だ。
そんなに拒むようなことでもない。
「部屋に戻っても特にやることもないし、俺なんかでよかったら一緒に行こうか」
「本当!?ありがとうライナー!」
嬉しそうに笑うアイを見て、一緒に行くと言ってよかったと思う。
「それじゃあ、俺も一緒に散歩してきます」
「ライナーも一緒だから大丈夫だと思うけど気を付けてね。朝ごはんまでには戻って来るんだよ」
「わかりました」
「ほら、はやく行こうよライナー」
「待てってアイ」
アイに引っ張られながら外に出る。
朝早いということもあり誰もいない道を二人で歩く。
「ありがとうねライナーお散歩に付き合ってくれて」
「別にいいさ、いい運動になる。それにアイと二人で話すこともあんまりなかったからな。何か悩みでもあったら聞くぞ」
アイが自分から何かをしたいと言うことはあまりない。
大人の言うことはよく聞いて周りの面倒もよく見てくれる。
そんなアイに職員の人たちや俺も助かっているが、アイに我慢をさせてしまっているのではないのかとみんな心配していた。
だからアイが俺と一緒に散歩がしたいと言った時、少しホッとした。
「うーん、悩みとは少し違うような気がするけど、あんまり誰かに聞かれたくないから近くの公園に着いたら話すね」
「そうか、わかった」
誰かに聞かれたくないとアイは言った。
もしかしたらイジメにでもあっているのかと思うが、アイの様子からそんな暗い感情は読み取れない。
アイがうまく隠しているとも考えられるが、無理矢理聞き出すよりも本人が話すと言っているのだから待った方がいいだろう。
「聞いてよライナー、この前学校でね」
公園に向かう間も二人で他愛のない話をした。
学校のテストでいい点を取ったことや体育の授業で活躍したこと。
同級のあの女子はどうやらあの男子のことが好きらしいなんてことも。
そんな他愛のない話をしながらも歩き続けていると目的の公園に着く。
「着いたーー!!」
「おいおい、あんまりはしゃぐと転んじまうぞ」
「だーいじょーぶ!!」
施設の近くにある公園は普段は施設や近所の子供たちが遊んでいるが、今はまだ誰もいない。
そんな誰もいない公園に、アイははしゃぎながら行く。
いつも大人しいアイがこんな風にはしゃぐのは珍しいからこっちも嬉しくなってしまう。
「なんかいいねこの感じ!公園を貸切にしたみたい!」
いつもならたくさんの子供たちがいてにぎやかな公園に俺とアイのたった二人しかいない。
誰もいない公園の真ん中。
そんな公園に笑いながらアイは立つ。
その姿がステージに立つアイドルのようで、思わず見惚れてしまった。
「ライナーもそう思わない?」
「あ……ああ、そうだな。いつもはみんなと一緒だから新鮮だな。それより話ってなんなんだ?公園に着いたし、誰もいないんだからそろそろ教えてくれないか?」
アイに怪しまれないように返事をしながら話を逸らす。
公園に着いたら話すと言っていたから、俺から切り出してもおかしくないはずだ。
「私、ライナーにずっと聞きたいことがあったんだ」
「聞きたいこと?」
「そう、ずっと気になっていたことがあるんだ」
アイが俺に聞きたいことがあるなんて初めて知った。
少し考えてみるがアイが俺に何を聞きたいのかさっぱりわからない。
さっき女子の好きな男子の話をしていたから俺の好みのタイプでも聞かれるとのんきに構えていた。
「ねぇ、どうしてライナーはそんなに辛そうなの?」
まるで心臓を直接握りしめられたように一瞬、鼓動が止まった。
全身の血が抜けてしまったように体が冷たくなり、力が入らなくなる。
「な……なにを……言って」
否定しなければいけない。
辛いことなんてないと言わなければいけないのに、俺を見るアイの目が、その瞳の星が嘘をつくことを許さない。
「ライナー時々すごく辛そうにしているでしょ?みんなでご飯を食べている時や私たちに勉強を教えてくれている時に、ケンカを止めてくれた時。ほんの少しだけど、すごく辛そうにしているよ」
「それ……は」
バレている。
そうだ、些細な日常の中で、兵士としてあいつらと生きていた時のことを思い出してしまう。
楽しかったあの日々。
それを自分の手で壊してしまったこと。
そして、その罪から逃げてしまったこと。
誤魔化したいのに、頭が動かない。
「最初は施設に来る前のことを思い出しているのかと思ったんだ。施設に来たばかりの子がお父さんやお母さんのことを思い出して泣いちゃうことあるでしょ?それかなって」
子供たちの中には両親を失ってしまったせいで施設に来る子もいる。
そんな子はアイの言ったようにふとした瞬間に前の生活のことを思い出して泣いてしまったりする。
だからアイが俺もその子たちと同じように施設に来る前の生活を思い出してしまっていると考えるのも無理はない。
だが、
「でもライナーって赤ちゃんの時から施設にいるんでしょ?だから他の子みたいに施設に来る前の生活を思い出したりは出来ないよね?」
赤ん坊の時から施設にいる俺には思い出せるような生活の記憶はない。
だが、俺にはこの世界に生まれる前の記憶がある。
あいつらと一緒に飯を食ったこと。
一緒に努力したこと。
一緒に笑いあったこと。
それらの記憶をどうしても思い出してしまう。
「なのに……どうしてライナーは辛そうなの?」
『何で被害者面してんだ……お前は』
あいつの声がする。
俺のせいで母親が食われたあいつの声が。
「ライナーは何を知っているの?」
『ただの人殺しだ。何の罪もない大勢の人々を殺した。大量殺人鬼だ!!』
「……てくれ」
わかっている、自分が人殺しだってことくらい。
でも知らなかったんだ。
俺たちと同じように生きているなんて思いもしなかったんだよ。
「誰かと生きていたの?」
『一人前に人らしく悩んだりしてんじゃねぇよ!!もう人間じゃねぇんだぞ、お前らは!!』
「やめ……てくれ」
兵士でも戦士でもない半端な存在。
たくさんの人を殺しておきながら被害者ぶった、最低なクソ野郎。
それが俺だ。
「誰かを愛していたの?」
『お前らができるだけ苦しんで死ぬように、努力するよ……』
「やめろ!もうやめてくれ!!」
もう無理だった。
俺を責める声に耐えられずに叫ぶ。
「俺が人殺しだってことくらいちゃんとわかってる!苦しんで死ななきゃいけなかったってこともわかってるんだ!だから……」
わかっているんだ。
俺が人殺しだってことも、戦士でも兵士でもないってことも、苦しんで死ななきゃいけなかったってことも。
何もかも投げ出して逃げ出したクソ野郎だってこともちゃんとわかってるんだ。
そうやって無様に叫んで気付いた。
呆然と俺を見るアイの姿。
「あ……アイ。ち……ちが。いや、ちがわないんだ……俺は」
俺は、何をしている。
違うんだと否定しろ!
でも俺は人殺しだ!
否定出来ない!
ちがう!
今はアイのために言わないと!
でもなにを言えば。
頭の中がぐちゃぐちゃになって言葉が……。
「ごめんね……ライナー」
悲しそうにアイが謝る。
「……あ」
その瞬間、あれだけぐちゃぐちゃになっていた頭の中が真っ白になる。
「違う!!違うんだアイ!!悪いのは俺なんだよ!!」
地面に這いつくばりながら叫ぶ。
そうだ、悪いのは俺だ!
二人は帰ろうとしていたのに!
俺が無理矢理説得したからだ!
「俺があの時食われていればよかったんだ!!」
彼は俺を庇ったせいで巨人に食われたのに、俺は助けようともせずに仲間を見捨てて真っ先に逃げ出した!
あの時食われて死ぬべきだったのは俺の方だ!
「なんの力も無いくせに……英雄になりたいなんて思ったから」
体力も、頭脳も、射撃能力も、格闘術も、何の取り柄もないくせに自分の力で戦士になったと思い上がった。
「全部……俺が悪いんだよ」
あの時作戦を中止して帰っていれば。
あの時食われたのが俺だったら。
戦士に選ばれたのが俺じゃなかったら。
あんなことにはならなかったのに。
「……嫌だ……自分が」
自分を庇ってくれた彼を見捨てたくせに。
大勢の人を殺した大量殺人鬼のくせに。
一緒に笑い、努力し合ったみんなを裏切ったくせに。
あいつを食わせたのは俺なのに。
二人を見捨ててたった一人生き残ったくせに。
戦士として果たすべき責任も守るべきあの子たちから逃げておきながら。
被害者ぶって苦しんでいる自分が大嫌いだ。
「もう……」
消えてしまいたい。
そう言おうとしたとき……ぬくもりに包まれた。
「ごめんね……ライナー」
顔を上げると、アイが俺を抱きしめていた。
「気付いてあげられなくて……ごめんね」
『誰か僕らを見つけてくれ……』
違うんだと。
アイは悪くないんだと。
悪いのは俺なんだと言わないといけないのに。
包み込んでくれるぬくもりが……それを許してくれない。
「つらかったでしょ?……よくがんばったね」
「…………ッ!!」
やめてくれ。
そんなことを言わないでくれ。
溢れ出そうとする思いを歯を喰い縛って抑え込む。
つらかったのも苦しかったのもあいつらの方だ。
たくさんの人たちを殺されて、一緒に過ごした仲間を殺されて、信じていた俺たちに裏切られた。
あいつらの方が俺の何倍も、何十倍も、何百倍もつらかったに決まっている!!
だから俺は許されちゃいけないのに。
もっと苦しまないといけないのに。
「もう……泣いてもいいんだよ」
「…………あ」
それが限界だった。
いけないとわかっているのに、溢れてくる。
今まで抑え込んでいたものが。
「…………ああ」
つらい、苦しい、嫌だ、許してくれ、殺してくれ、消えてしまいたい。
自分が悪いとわかっていてもどうしても抱いてしまう思い。
誰かに知って欲しいと思っていながら、知られるわけにはいかなかった罪。
死にたいと思っていても死ぬわけにはいかなかった。
生きて苦しむことが俺に与えられた罰なんだと……そう言い聞かせていたのに。
その言葉がどうしても響いてしまう。
『つらかったでしょ?』
ずっと誰かに言って欲しかった。
つらかっただろうと。
その言葉を認めることは出来なくても、それでも言って欲しかった。
『気付いてあげられなくて……ごめんね』
バレてはいけなかった。
みんなを騙して、仲間のフリをしていた。
そうしている間は少しだけ楽だったからだ。
絶対にバレてはいけないのに、それでも気付いて欲しかった。
『誰か僕らを見つけてくれ……』
俺たちを見つけて欲しかった。
騙しているのは俺たちなのに……誰かが気付いてくれれば楽になれるんじゃないかと思っていた。
気付いてくれたあいつと話し合うこともせずに殺したのは俺なのに。
「大丈夫だよ……ライナー」
「うわああああああ!!」
まるで小さな子供をあやすように頭を撫でられて、小さな子供のように泣き喚く。
殺して、騙して、逃げ出した。
そんな俺が、救われてしまっている。
ああ……やっぱり俺は最低だ。
気付いた二人の共通点
父親がいない
母親に愛されていなかった
嘘を付いている
刃物で刺された
トップアイドルであるアイとこれだけ共通点のあるライナーも実質アイドル!!