【推しライナー】   作:チェシャ猫もどき

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アクアの視点だけだと物足りないかなと思ってライナーの視点を書き始めたら筆がビックリするくらい進みました

自分の中のガビ山先生に脳を焼かれたので初投稿です


なりたい自分に

 

俺とルビーが産まれて1年がたち、ようやく立ったり喋ったりしても怪しまれないようになった。

 

いや……本当に長かった。

 

ライナーさんがいる時はまだマシだったけど、いつもいるわけじゃないからいない時はミヤコさんやアイ、B小町のメンバーの子たちがしてくれた。

ミルクはまだしも、オムツは本当にキツかった。

 

女性、しかもアイドルでそのうち1人は生前の推しだったわけで、オムツを替えてもらうたびに大切な何かがゴリゴリと削れていた。

 

赤ちゃんの頃はミルクやオムツのたびに泣くしかなかったが、立って話せるようになったからはおなかが減ったり、オムツだってある程度は自分でなんとか出来るようになった。

 

今までずっと耐えてきた。

その結果が今日だ!

 

アイドルとしてさらに人気になっているB小町とアイ。

中でもアイはモデルやラジオアシスタントと着実に仕事を増やしていき、ドラマに出演するまでになった!

 

そして、今まではB小町のライブやイベントくらいにしか連れて行ってくれなかったけど、今日はアイのドラマの撮影現場に連れて行ってくれる!

 

「いいか、2人とも。大丈夫だとは思うが、撮影現場で泣いたりして迷惑をかけるんじゃないぞ」

 

「わかった」

 

「絶対に泣かないから大丈夫!」

 

「2人ともすっごくいい子だから大丈夫だよ!」

 

撮影現場に向かう車の中でライナーさんに注意されるが、それに関しては問題ない。

俺もルビーも転生者だから周りに迷惑をかけるようなことはしない。

ましてやアイの今後にも関わってくる大事な仕事なんだから尚更だ。

 

「それと2人とも、アイのことはママって呼んでもいいぞ」

 

「え、いいの!?」

 

「いや、ダメだろ」

 

ママと呼んでもいいという言葉にルビーがものすごい勢いで喰いつくから一応ツッコむ。

一応なのはアイドルであるアイをママと呼ぶなんて大問題なはずだとわかっているはずのライナーさんがそれを言って来たからだ。

 

きっと何か策がある。

 

「アクアとルビーは知らないだろうが、今までB小町のみんなとアクアとルビーが一緒にいる所をSNSにアップしていてな。そのおかげでB小町のメンバー全員がお前たちのママみたいな扱いになっているからアイのことをママって呼んでもいいんだ」

 

「そ、そうなんだ!」

 

「へぇー、初めて知った」

 

まるで初めて知ったみたいな反応をする。

 

すみません、ライナーさん。

俺たちアイのスマホを勝手に使っていたから知っているんです。

ルビーにいたってはアンチとレスバしまくっていたし、『私たちのママなのに!』と言ってB小町のみんなをママと呼ぶファンたちともやり合っていたんだ。

 

ちょっと申し訳なく思いながら、言うわけにもいかないからそのことは黙っておく。

 

「アイをママって呼ぶための条件って言うとあれだが、アイだけをママって呼ぶと怪しまれるから他のメンバーのこともママって呼んでくれ」

 

「アイは……それでいいの?他の人が俺たちにママって呼ばれるの」

 

俺とルビーがB小町のみんなに紹介されてから、B小町のみんなも俺たちのことを可愛がってくれるし、世話もしてくれているからママと呼ぶのは作戦的にも気持ち的にもありなんだろう。

 

だけど、本当の母親なのに仲のいい他人のフリをして、他のメンバーが俺たちにママと呼ばれることにアイは納得できるのか少し心配だった。

 

「大丈夫!だって本当だったらアクアとルビーがみんなの前で私のことをママって呼ぶことなんて出来なかったんだよ!だからアクアとルビーが私のことをみんなの前で堂々とママって呼べるのがすっごく嬉しいんだ!」

 

アイが心から嬉しそうに笑う。

他の人がママと呼ばれるのなんて全く気にしていない。

俺たちがアイのことをママって呼べることを心から喜んでくれている。

 

「アクアとルビーがみんなのことをママって呼んでも私がママじゃなくなるわけじゃないし、それにみんなもアクアとルビーのことを大切に思ってくれてるからみんなも2人のママでもいいと思ってるよ!」

 

B小町のみんなも俺たちを可愛がるだけじゃなくて、ミルクやオムツといった世話もちゃんとしてくれた。

それをアイも知っているからそこまで抵抗がないのかもしれない。

 

「それに私だけがママって呼ばれてたらまたみんなからズルいって言われるかもしれないしね」

 

苦笑いしながらアイが言う。

アイは活動休止中に俺たちの世話をしていたということになっている。

それでアイの妊娠は誤魔化せたけど、他のメンバーからは俺たちのお世話をしていてズルいとよく言われていたからな。

 

「だから私のことは気にしないで大丈夫!むしろみんなのことをママって呼んでくれたらみんな家族みたいで素敵でしょ!」

 

賑やかで楽しい家族になる。

 

病院で君は笑顔でそう言った。

 

なら、たくさんのママがいる俺たちはきっとすごく賑やかで楽しい家族になれるはずだ。

 

「ママ!私たちみんなのことママって言うけど、本当のママはママだからね!」

 

「僕も!最推しはアイだから!」

 

「アクア!ルビー!ありがとう!」

 

アイは嬉しそうに笑いながら俺たちを抱きしめる。

これなら大丈夫。

何も問題はない。

 

「あ、でもみんながアクアとルビーのママならさ、ライナーはアクアとルビーのパパだね!」

 

「おい、なんてことを言うんだ!」

 

アイの発言にライナーさんがメチャクチャ慌てた様子で叫ぶ。

きっと、自分がパパにされるなんて思っていなかったんだろうな。

 

「だって、2人が私のお腹の中にいた時からずっとサポートしてくれてくれているんだから、B小町のみんながママならライナーはパパでしょ!」

 

「あいつらと俺とじゃ立場が違うんだよ!」

 

同じグループかつ女性のB小町のメンバーがママって呼ばれるのと、男性かつマネージャーのライナーさんがパパと呼ばれるのは全然違う。

言っていることはわかるけど、実際父親と言ってもいいくらいライナーさんは俺たちの面倒を見てくれている。

 

「パパだっこして!」

 

「パパ、パパ。なでなでして」

 

ルビーの悪ノリにノッてしまったけど、正直俺だってライナーさんのことは血の繋がりがなくたって俺たちの父親みたいな存在だと思っている。

普段はパパなんて呼べないんだからこれくらい許して欲しい。

 

「ほら、2人もこう言っているよ!」

 

「炎上じゃすまないから勘弁してくれ」

 

「仕方ないなぁ」

 

本当に困ったようにライナーさんが言うからこれ以上はやめておく。

それがたとえ嘘だろうと本当だろうと関係なく炎上ってのは起こるから、ライナーさんとしてはその火種になるようなことはしたくないんだろう。

 

マネージャーが担当している未成年のアイドルを妊娠させるなんて大問題だからな。

 

「みんなに迷惑かけるわけにはいかないから仕方ないね。アクアもルビーもみんな(・・・)の前でライナーのことパパって呼んだらダメだよ」

 

「わかった、みんな(・・・)の前では言わない」

 

みんな(・・・)の前じゃ言わないから大丈夫だよ!」

 

「みんなの前じゃなくても言わないで欲しいんだが……まぁ、今はいいか」

 

みんなの前では言わない。

その意味を俺もルビーも理解したしライナーさんも理解していたけど、やめさせることは出来ないと一旦諦めるみたいだ。

 

「まぁ、俺のことよりまずはお前たちのことだ。アイのことはママと呼んでもいいが、他のメンバーもママと呼ぶこと。どうしてママと呼ぶのか聞かれたらみんなが面倒を見てくれたからって言っておいてくれ。そうすればそこまで怪しまれることはないだろう」

 

中身が転生者とはいえ、肉体は1歳くらい。

俺たちがみんなをママと呼んでも、小さな子供だからって納得されるだろう。

 

「いろいろ言ったが、お前たちはいつも通りでいい。細かいことは俺たちが説明したりするから大丈夫だ」

 

子供の俺たちが説明したらしたで逆に怪しまれるかもしれないし、そもそもライナーさんたちの方でいろいろと考えているはず。

それなら俺たちが余計なことをするより2人に任せてしまった方がいい。

 

「俺たちに任せろ」

 

その言葉に簡単に安心してしまう。

普段から俺たちのことを守ってくれているライナーさんの言葉だから、心から信じられる。

 

「わかった!いつもみたいにママとパパって呼ぶね!」

 

「わかってないじゃん」

 

「頼むから俺のことをパパって呼ぶのはやめてくれ」

 

ルビーも冗談で言ったんだろうが、ライナーさんも困っているからツッコンでおく。

俺たちが原因ではあるけど、いろんな意味でライナーさんも大変だな。

 

「改めて言っておくが、まず第一に騒いだりして周りに迷惑をかけないこと。次にアイとB小町のみんなをママと呼ぶこと。最後に俺をパパと呼ばないことだ。これを守ってくれたらこれからもいろんな場所に連れて行ってやれるからな」

 

「わかった!絶対に守る!」

 

「大丈夫、みんなに迷惑をかけたりしない」

 

「2人ともいい子だから大丈夫だよ!」

 

俺もルビーもライナーさんたちが俺たちのためにどれだけ頑張ってくれているのか知っている。

だからみんなに迷惑をかけるようなことはしないとハッキリと言える。

 

ルビーはちょっと怪しいけど、たぶん大丈夫だろう。

 

「よし、着いたぞ。まずは現場の皆さんにあいさつだ」

 

「「「はーい」」」

 

そんなこんなでドラマの撮影場所に到着する。

車から降りて現場まで歩いていて、アイは演技が出来るのか気になった。

 

「ねぇ、アイってこれが初めてのドラマ撮影だけど演技の経験とかってあるの?」

 

「何言ってるのアクア。ママは演技の経験なんか無くたって完璧に演じられるに決まっているじゃん!」

 

「信頼がすごいね」

 

アイドル活動の中で演技とかしたことないから少し心配になったから聞いてみたのにルビーの特に理由のないアイへの信頼の言葉をかけられた。

アイが演技しているところとか見たことないのに、その信頼はどこから来るんだか。

 

「演技の経験はないけどあまり心配はしてないかな。だってステージの上だとどの角度からもみんなに可愛くしなきゃいけないけど、ここではたった1人。カメラに可愛く思ってもらえばいい。MVと同じ要領ならむしろ得意分野だよ」

 

自信満々に言い切ったアイはやっぱりかわいい!

演技について全然わからないけど、これならきっと大丈夫だ!

 

「苺プロのアイです。本日はよろしくお願いします」

 

撮影する教室の入口でアイがあいさつをするとなんか怖い顔のオッサンが近づいて来て、アイをジロジロと見だした。

 

「どうかしました監督?」

 

「いや、別に」

 

「なんか怖いね」

 

「顔がな」

 

「こら、そういうことを言うんじゃない」

 

どうやら監督だったみたいだけど、顔が怖かったからそのことをルビーと小声で言っていたらライナーさんに叱られた。

 

「ん、この子供は?」

 

「この子たちはうちの事務所の社長の子供です」

 

ライナーさんがフォローすると監督は驚いた表情になった。

 

「え、あんたの子供じゃないのか!?」

 

「違います。この子たちは生まれつき色素が薄いので髪が金髪なんです。なので俺の子供じゃありません」

 

「へぇー、そういうこともあるんだな」

 

ライナーさんの説明で納得してくれたみたいでよかった。

だけど、仕方ないとはいえライナーさんに自分の子供じゃないって言われるのはちょっとだけショックだな。

 

いや、何ショックを受けているんだ俺は。

ライナーさんは俺たちの父親じゃないし、社長たちの子供ってことにしているんだからライナーさんが正しいに決まっているだろ。

 

「しかし、マネージャーが子連れで現場にねぇ」

 

まずい、怪しまれている!

やっぱり俺たちが一緒に来たのはまずかったか!?

 

「あ!働き方改革ってやつか!?」

 

「そんなところです。この子たちに寂しい思いをさせないようにみんなで面倒を見ているんです」

 

「時代だなー。まぁ現場に犬連れて来る人もいるし……」

 

なんか勝手に解釈してくれた監督にライナーさんも乗っかって解決してしまった。

まさかこうもうまくいくとは。

 

「あー、まぁ撮影の邪魔だけはすんなよ」

 

そう言って監督が現場に戻っていったのを見て全員がホッと息を吐いた。

大丈夫だと思っていてもやっぱりバレてしまったらと思うと心臓に悪いからうまくいってよかった。

 

「……うまくいったな」

 

「怪しまれた時はバレちゃうかと思ってドキドキしちゃったよ」

 

2人も内心焦っていたらしくすごくホッとしている。

アイは俺たちの母親だし、ライナーさんは俺たち以上にバレた時にどうなるかわかっているだろうから焦るのは当然か。

 

「撮影まで時間あるから他の人たちにも挨拶に行くぞ」

 

「「「はーい」」」

 

みんなで返事をして共演者やスタッフの人たちに挨拶をしていく。

挨拶の度に俺たちの説明をするのはバレやしないかとヒヤヒヤしたけど、まさかアイドルの隠し子がいて、さらに一緒の現場に連れて来ているなんて思われなかったみたいですんなりと受け入れられた。

 

「双子ちゃん!!かわいーっ」

 

「ほっぺモチモチだね!」

 

受け入れられた結果、俺たちはグラビアの子や『可愛すぎる演技派』とか言われてる若手女優に可愛がられていた。

 

ルビーはかわい子ぶってエンジョイしていたけど中身が30近い俺にはキツかった。

トイレに行くなんて言って廊下に避難すると監督がいた。

 

「お?マネージャーのガキじゃねぇか。いるのは構わねぇが、泣き出して収録止めたら閉め出すからな」

 

まずい!

ここで悪い印象を与えたらアイの印象も悪くなって今後に関わる!

なんとかしないと!

 

「あっいえ!我々赤ん坊ですが、その様な粗相はしない様努めますので!現場の進行を妨げないのは最低限のルールと認識しております!弊社のアイを今後とも何卒ご贔屓に!」

 

「めちゃくちゃ喋るなこの赤子!?どこで覚えたそんな言葉!?」

 

「ライナーさんに少々……」

 

「あいつこんな赤子にもうこんな教育してるのか!?時代だなー!?」

 

なんとか誤魔化せた。

ライナーさんが教育熱心な人に思われそうだけど、ライナーさんなら察して話を合わせてくれるだろう。

 

「早熟な子役は結構見るが、ここまでのは初めて見たな。お前も演技とかするのか?」

 

そのあと、監督に気に入られたらしい俺は名刺を貰って業界の話やアイについて話をして撮影は終わった。

 

けっこう撮ったからドラマの放送を楽しみにしていたのに、アイの出番はほんの数秒だけ。

そのことについて監督に文句を言ったら業界の事情を説明された。

 

なんでも『可愛いすぎる演技派』として売り出している若手女優よりアイの方が可愛かったから出番を削ったらしい。

 

納得いかなかったけど、監督が出番を削った代わりにアイに映画の仕事を振ってくれた!

なぜか俺が出ることが条件だったけど。

 

演技の経験なんてないけど、アイのために俺は映画に出ることにした。

 

そして今日、俺は撮影のためにライナーさんに連れられてルビーと一緒に撮影現場に来たのだが。

 

「ママぁああ!!ママぁあああ!!ママどごがえりだい!!なんでママいないの!!」

 

ルビーがアイに会いたいと大泣きしている。

中身が何歳なのか知らないが、いい歳して恥ずかしくないのか?

 

「アイとは撮影日が違うんだよ」

 

「早く帰ってバブりたい!!ママの胸でオギャりたいよーーーー!!私をオギャバブランドに帰してーー!!」

 

「こらルビー、他の人たちの迷惑になるだろ。大きな声で騒ぐんじゃない」

 

さすがにこのまま騒ぎ続けたら周りの迷惑になるし、アイの評判が落ちて俺たちを一緒に連れて来てくれなくなるかもしれないから無理矢理にでも黙らせるべきかと思い始めたとき、控え室のドアが開いてライナーさんが入って来た。

 

「ライナー!!」

 

「おっと」

 

ライナーを見たルビーは起き上がり勢いよくライナーさんに抱きつく。

 

「まったく、ルビーは本当に甘えん坊だな」

 

「えへへ!」

 

仕方ないと言いたげなライナーさんがルビーの頭を撫でる。

ライナーさんに頭を撫でられているルビーさっきまでの騒ぎようが嘘のように満面の笑顔だ。

 

「大人しく待っててくれてありがとな。偉いぞアクア」

 

「別に、普通だよ」

 

「そうか」

 

ルビーだけじゃなくて俺の頭も撫でてくれるライナーさん。

頭を撫でられるのが嬉しくてちょっと恥ずかしくてそっけない返事をしてしまったのにライナーさんは優しく笑ってくれた。

 

「アクアだけ褒められててずるい!」

 

「騒いでたお前が悪いんだろ」

 

褒められた俺にルビーが嫉妬するけど、どう考えても騒いでいたルビーが悪い。

むしろ、あれだけ騒いでいたのにほとんど叱らずに済ましてくれたライナーさんに感謝しろよ。

 

「ここはプロの現場なんだけど!遊びに来てるんなら帰りなさい!」

 

俺たちが言い合っていたら台本が机に叩きつけられて叫ばれる。

 

「すみません有馬さん。もうこういったことがないように注意しておきます」

 

「気を付けてよね!」

 

女の子はライナーさんに偉そうにしているが、俺たちが悪いから文句なんて言えない。

 

「えと……」

 

「私は有馬かな。今日の共演者よ」

 

有馬かな。

テレビに出ていたから見たことあるけど、何か言われていたような気がする。

なんだっけ?

 

「……あ、この子あれじゃない?えっと、なんだっけ……」

 

ルビーも覚えがあるらしく思い出そうとしている。

 

「重曹を舐める天才子役?」

 

「10秒で泣ける天才子役!!」

 

さすがに重曹は違ったらしい。

 

「ドラマでの泣きっぷりが凄いって皆言ってるの!凄いんだから!!」

 

「私この子あんま好きじゃないのよねー、なんか作り物っぽくて生理的に無理」

 

「たまに子役に対して異様にキビシー奴っているよな」

 

有馬は自慢しているがルビーはあんまり好きじゃなかったらしい。

別に子役くらい気にしなくてもいいだろうに。

 

「知ってるわよ!貴方コネの子でしょ!本読みの段階じゃ貴方もアイドルの子も出番無かったのに……監督のゴリ押しってママも言ってた!そういうのいけない事なんだから!」

 

「いや、そういうわけじゃ……」

 

ドラマの出番をかなり削ったからそのお詫びみたいなものだからコネとは違うような気が。

 

「こないだ監督が撮ったドラマ見たけど、全然出番なかったじゃん。どうせカットしなきゃいけない程へったくそな演技したんでしょ。媚び売るのだけは上手みたいだけど!」

 

そんなことを言ってあのガキは控え室から出て行った。

 

「お兄ちゃん」

 

「分かってる相手はガキだ……殺しはしない……」

 

そう相手はまだ小さなガキなんだ。

俺たちは転生していて大人だから寛大な心で許してやろうじゃないか。

 

そう、だから殺しはしない。

 

殺しはしないが、どうしてくれよう有馬かな。

 

「お前たち少し落ち着け。有馬さんは事情を知らないんだから仕方ないだろ」

 

「でも!」

 

事情を知らないのはわかってるけど、あれだけ言われたらカチンときてしまう。

 

「それとさっきみたいなことはあまり言わないでくれ、頼む」

 

きっと俺が言った『殺しはしない』と言う言葉だろう。

ライナーさんに言われて俺の中にあった怒りが一気に萎んだ。

ライナーさんの言葉が正しいのもあるけど、それ以上にライナーさんが少し悲しそうな顔をしていたから。

 

「ごめんねライナー」

 

「ごめんなさい」

 

「気にするな。アイのことをあんな風に言われてムカつく気持ちは俺もわかるからな」

 

俺たちが謝ると、ライナーさんは膝をつき目線を合わせて俺たちの頭を撫でてくれる。

 

「だけど、アイドルが初めてドラマに出たのに出番はほんの数秒だけだった。なのにその次は映画に出演、しかも直前まで出番がなかったんだ。事情を知らない人からすればコネを使って無理矢理出番を作らせたんだと思われても仕方ないだろ?」

 

「だけど……」

 

ライナーさんの言っていることは正しいけど、ドラマのためにアイが頑張っていたのを知ってるから俺もルビーも納得しきれない。

 

「それにコネで仕事をもらったとしても実力がないと意味がない。テレビや映画に出られるかもしれないが、そんなの一時的なもんだ。今回アイはコネで映画に出たことになるかもしれないが、アイの実力は本物だ。2人だってそう思うだろ?」

 

「うん!ママの演技上手だった!」

 

「目を引くって監督も言ってた」

 

「なら何も問題ないじゃないか」

 

たしかにライナーさんの言う通りだ。

全然演技がうまくないのにドラマや映画に出る役者はいたけど、すぐに見なくなるのがほとんどだ。

きっとその人たちは実力が足りなかったんだろう。

 

「今回はコネだったかもしれないが、アイならコネなんか無くたって映画やドラマに出れるに決まってる。だから周りの言葉なんて気にするな」

 

誰がなんと言おうとアイの実力は本物だから必ずドラマや映画の仕事が向こうから来る。

俺たちは周りなんか気にせずにアイのことを信じればいい!

 

「それと今日はアクア、今日はお前の出番なんだからアイの心配をしている場合じゃないぞ」

 

「う、たしかに」

 

「どうすんの!?演技の経験なんてないのに!このままだとあの子に負けちゃうよ!」

 

アイの実力は本物だけど、俺は演技の経験なんてない。

ここで俺が無様な演技をしようものならまたあの子にとやかく言われるに違いない。

 

「まぁ、アクアに演技の経験がないのは監督だって知っているからきっと向こうがうまいことやってくれるだろ。せっかくの機会なんだから上手に演技しようなんて考えずに楽しむくらいの気持ちでやってこい」

 

そうだ、さっきの子も言っていた。

アイも俺も本来なら出番はなかった。

つまりこれは俺の存在を知ってから監督が追加したということだ。

 

俺に演技の経験がないことくらい監督は知っているはずだ。

なら、監督が俺に求めているのはきっと演技力なんかじゃない。

 

「ありがとうライナーさん。この撮影なんとかなりそうだ」

 

殺したりなんかしない。

だけど目に物見せてやるからな有馬かな!

 

 

 

 

「よく頑張ったな、アクア」

 

「ありがとうライナーさん」

 

撮影が終わり監督と話していたアクアが俺たちのところに戻って来る。

俺たちを見たアクアはホッとしている。

演技の経験なんて無いのに映画に出演させられたんだ。

プレッシャーは半端じゃなかっただろう。

 

まだ小さいのによく頑張ってくれた。

 

「しかし演技凄かったな」

 

「そう?いつものお兄ちゃんだったけど」

 

「たしかにそうだが、あの場面にはピッタリだった。アイに演技教わったのか?」

 

ルビーの言う通り、あれは演技というよりいつものアクアだった。

だが、あの場面においてはピッタリの演技だったと思う。

 

「いいや、アイに教わったわけじゃない。思いついたから試してみたんだ」

 

「自分で思いついたのか、すごいなアクア」

 

「自分で思いついたわけじゃないよ。思いついたのはライナーさんのおかげだよ」

 

「俺の?」

 

俺のおかげと言うが、心当たりが全くない。

俺は演技についてアドバイスなんてしていないんだが。

 

「ライナーさん言ったでしょ?僕に演技の経験がないことくらい監督は知っているって。だから、監督が求めているのは演技力じゃなくていつもの僕なんだって思ったから、いつもの僕でやってみたんだ。だからライナーさんのおかげだよ」

 

たしかにそう言ったが、まさかそれだけで求められているのが演技力じゃないと気付いてさらに本番で実行出来るとはな。

 

「たしかにきっかけは俺かもしれないが、それを思いついて本番で実際にやったのはアクアだ。1番すごいのはアクアなんだから自信を持て」

 

「……うん」

 

そう言ってアクアの頭を撫でる。

少し恥ずかしそうにするが頑張ったんだから大人しく褒められてしまえ。

 

「アクアずるい!ライナー私も!」

 

「わかったよルビー」

 

「やった!」

 

「……ずるいのはどっちだよ」

 

ねだられたからルビーの頭も撫でる。

本当に嬉しそうにするからついつい甘やかしてしまう。

 

「それにしても初めてであんなに演技出来るなら大きくなったら役者になれるな」

 

「別に……演技に興味ないよ」

 

「そうか、なら仕方ないな」

 

初めてであれほどの演技が出来るならこのまま続けていけばもっと上手になれると思ったが、興味がないなら仕方がない。

無理矢理させる必要なんてないんだから。

 

「ライナー!私はアイドルになる!絶対にママみたいなアイドルになるんだ!」

 

「そうか、ルビーはかわいいから絶対に人気アイドルになれるぞ!」

 

ルビーはアイだけじゃなくてB小町のメンバーみんなのことが大好きだ。

だから自然とアイドルに憧れるようになったのだろうし、アクアとルビーはアイに似て美形だから大きくなってアイドルになったら間違いなく人気になるだろう。

 

「アクアは何か興味があることはないのか?」

 

アクアの興味があることがわかれば将来に影響するかもしれない。

それに、これからいろんなところに連れて行ってあげる時にアクアの好きなところを目的地にしてあげられる。

 

そう思って聞いたのだが。

 

「マネージャーに興味がある……かな」

 

『鎧の巨人を継承するのは俺です』

 

あいつとアクアは関係ない。

あいつを思い出したのはきっと偶然だ。

2人とも金髪で少し似ていたからだ。

守るべき存在だったから重なっただけだ。

 

「どうして……マネージャーに興味があるんだ」

 

きっとアイやB小町のみんなと一緒にいることが多いからみんなを支えるマネージャーに興味を持ったんだろう。

きっとそうだ。

 

「僕は男だからアイやB小町のみんなのようなアイドルにはなれないけど、だけどみんなの力になりたいって思うんだ」

 

やっぱりそうだった。

みんなと一緒にいるから、みんなの力になりたくてマネージャーに興味が湧いたんだ。

 

「それにルビーがアイドルになるなら僕がマネージャーになった方が良さそうだし」

 

「私のためにマネージャーになるとか、シスコンじゃん!」

 

「ルビーだけじゃアイドルとしてやっていけるか心配なんだよ」

 

『俺は……弟を守りたかった』

 

アクアとルビーは双子だが、アクアが兄だ。

上の子が下の子を守ろうとするのは普通のことだ。

何もおかしくない。

 

だからこの子たちをあいつらと重ねたりするな!

アクアもルビーもあの世界とは何の関係もないだろ!

 

「マネージャー……か。結構大変だぞ」

 

「それはライナーさんやミヤコさんを見てたからわかってるつもりだよ。マネージャーがすごく大変だってこと」

 

アクアとルビーにはあまり大変なところは見せたりしないようにしているつもりだが、一緒にいることが多くなってそういったところも見せてしまっていたのか。

 

「だけど、なりたいんだ。ライナーさんみたいなマネージャーに」

 

『どうやったら……そうなれる。お前や……ミカサみたいになるには……どうやったら』

 

「ダメだ。俺のような人間にはなるな」

 

アクアの言葉を遮るように言ってしまった。

悪いとは思う。

だけど、俺はお前たちが憧れるような立派な人間なんかじゃないんだ。

 

「……ライナーさん?」

 

「……ライナー?」

 

あまりの言葉に2人が呆然としている。

 

何をやっているんだ俺は!

 

2人を傷付けるようなことを!

 

「すまない……2人とも。俺の言い方が悪かった」

 

俺は半端なクソ野郎だ。

それは間違いない。

だけど、それを正直に言ったら優しい2人は傷付くだろう。

 

だから、言うんだ。

2人が納得出来る理由を。

 

「アクアと俺は違う人間だ。年齢や体の大きさに性格、他にも違うところなんていくらでもある」

 

何もかも違う。

 

本当に……何もかも。

 

「だから俺には出来るのにアクアじゃ出来ないことはあるし、逆に俺には出来ないのにアクアなら出来ることだってあるはずだ」

 

俺はあの世界で何一つ成し遂げることは出来なかった。

だけど、この世界なら。

 

アクアなら。

 

ルビーなら。

 

きっとなんだって出来るはずだ。

 

「だから俺みたいにならなくていい。アクアはアクアのままですごいマネージャーになれる」

 

膝をつきアクアの頭を撫でる。

アクアは賢くて優しい子だ。

 

他の誰かになる必要なんてない。

 

「ルビーもだ。ルビーもルビーのままですごいアイドルになれる」

 

ルビーの頭を撫でる。

ルビーは明るくて優しい子だ。

 

他の誰かになる必要なんてない。

 

『マルセルが必要なら……俺がマルセルに……なるから……』

 

「だから誰かに憧れたとしても、その誰かのようにはならなくていい。お前たちはお前たちのままですごいんだ」

 

あいつの変わりになろうとして、結局俺は何にもなれなかった。

あいつにも、戦士にも兵士にもなれなかったただの半端なクソ野郎。

 

それが俺だ。

 

だから、どうか俺みたいな存在にはならないでくれ。

 

「うん……わかった」

 

なんとか誤魔化せたみたいでホッとする。

 

子供だからアクアとルビーがどうしてもあいつらと重なってしまうことがある。

アクアとルビーが大きくなってあいつらと同じくらいの年齢になったらその頻度はさらに増えるかもしれない。

 

この世界とあの世界は違う。

 

この子たちとあいつらを重ねてしまわないようにもっとしっかりしないといけない。

 

「大丈夫だよライナー!私ママみたいなアイドルになりたいけど、ママよりすごいアイドルになるつもりだから!」

 

「はは、そいつは楽しみだな!」

 

それは嘘なんかじゃない。

ルビーは本気でアイよりすごいアイドルになるつもりだ。

 

「アイよりすごいアイドルになるなんて無理だろ」

 

「なるもん!ママよりすごいアイドルに絶対になるもん!」

 

「アイよりすごいアイドルになるのは大変だと思うが、お前たち2人なら大丈夫だ」

 

2人の頭を撫でる。

この子たちなら何も心配はない。

 

「たとえ1人じゃ無理なことでも、2人でなら乗り越えられる。お前たちにはそれだけのすごい力がある。だから大丈夫だ」

 

アイよりすごいアイドルを目指すなら、その道のりは決して楽なものじゃない。

辛くて苦しい思いを何度もすることになるだろう。

 

だけど、アクアとルビーなら大丈夫。

 

この子たちは強くて優しいから。

何があっても2人で乗り越えられる。

 

俺だけじゃない。

きっとみんながそう言うだろう。

 

それくらいこの子たちはすごい子なんだから。

 

「だからあまりケンカなんてするなよ。アクアはお兄ちゃんなんだから妹のルビーを守ってやるんだ」

 

「うん、わかった」

 

アクアは冷静だから兄としてもマネージャーとしてもルビーのフォローを上手くしてくれるだろう。

まだ1歳ちょっとだが、アクアは頼りになる子だ。

 

「ルビーは明るいのはいいが、感情的になって相手とケンカしたりするなよ。どんなに嫌なことがあったとしてもそれを全部笑顔で乗り越えていくのがアイドルだからな」

 

「わかった!」

 

ルビーは明るくて甘えん坊でみんなを笑顔にしてくれる。

だからアイドルに向いていると思うが、アイドルに限らず何事も楽しいことばかりじゃない。

辛いことや苦しいことに嫌なことなんていくらでもある。

どうかそれらを笑って乗り越えて欲しい。

 

「2人なら大丈夫だと思うが、もしそれでも辛くて耐えられないことがあった時は遠慮なんかしないで俺たちに言え。俺たちはいつだってお前たちの味方だ」

 

あいつらのことをずっと騙していた。

信じてくれていたあいつらのことを裏切った。

そんな俺が言っても信じられないかもしれないけど。

 

それでもこの子たちの味方でいたいってのは本当なんだ。

 

「ありがとうライナーさん」

 

「ありがとうライナー」

 

嬉しかったのだろう。

2人が俺に抱きついてくる。

 

ああ、やっぱり俺はどうしようもない奴だ。

 

「アクア、ルビー……ありがとう」

 

守るべきこの子たちに、救われてばっかりだ。

 

 





カラス少女の定義では前世の記憶を持つアクアとルビーも神と言える
この作品のライナーも前世の記憶を持っているから少女の定義ではライナーも神

進撃の世界における神のような存在は始祖ユミル

始祖ユミルは奴隷だった
ライナーはエルディア人でマーレでは奴隷に近い扱い

始祖ユミルは豚を逃して迫害された
ライナーはエルディア人だから迫害されていた

始祖ユミルは光るムカデと接触して力を手に入れた
ライナーは鎧の巨人を継承して力を手に入れた

始祖ユミルは王に愛されていなかった
ライナーも母親に愛されていなかった

始祖ユミルは自殺した
ライナーも自殺しようとした

これだけ共通点のある始祖ユミルとライナーは同じ存在といえる!

つまり俺たちは選ばれし神の子!!

ライナーの民だ!!

うおおおおぉおお!!



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